13.数日
またまた遅くなりました。すみませんm(__)m
今回は千夏視点に戻ります。
生徒会の手伝いをしてから数日がたった。
あの後、私が推した主人公は生徒会を手伝い始め、もうすぐ役員に立候補するそうだ。よかった、これでとりあえずは乙女ゲームのストーリー通りになったはずだ。
この数日で主人公と攻略対象のキャラとの出会いイベントは全部見た。さすが「背後の千夏ちゃん」。行く先々でイベントが目の前で起こったよ……。
見た感じ、1番好感度が高そうなのは今、絶賛イベント中の無口キャラである西澤瑠衣だ。
イベントの場所は寮の庭のベンチ。私がいる場所は寮の4階の自室のベランダだ。
毎日毎日、私がベランダから覗くたびにイベントしてるんだけど。それもそのはず、乙女ゲームの西澤瑠衣のルートはほぼ、この場所でイベントがあるのだ。まぁ、わかってはいても覗くと絶対いるから少し怖いわ。
……そんだけ毎日イベントがあるわけだから、自然と好感度も1番高いようで……あっ、ほら!今西澤瑠衣が主人公髪の毛についた花びらをとって笑った!普段はまったく笑わない設定の西澤瑠衣が!これはかなり好感度が上がっているということで間違いないだろう。
そうやって二人の様子を見ていると、毎回主人公がこちらを振り返ってにこりと笑ってくる。最初は偶然かなって思ってたけど、こう何度もされると……うーん、何なんだろう。
「お昼だよー!食べよ!」
そう言ってお弁当を持ってこちらに駆け寄ってくるのは唯ちゃん。それを危ないわよと声をかける春乃。お昼はこの二人と食べている。
なんだかよくわからないが、私と春乃はやけに唯ちゃんに懐かれている。中身は男でも見た目は可愛い女の子なのだ。悪い気はしない……いや、むしろ嬉しかったりする。
「千夏ちゃん。はい、いつもの。」
「あ、先輩!ありがとうございます!」
生徒会の手伝いをした次の日から毎日、宮本先輩がお昼に私にアメを届けに来てくれようになった。最初は悪い気もしていたが、今では慣れた。もちろん感謝の気持ちは忘れないようにしているよ?
「完全に餌付けされてるわね……。」
「そんなことないよー。おいひいー!」
今日はチョコバニラ味だ!
「千夏ちゃんはそのアメが好きなんだね。」
にこにこと唯ちゃんが言う。やっぱり男の子には見えないなぁ。
「うん!……あっ!あげないよ!」
「何食い意地はってんのよ。」
軽く春乃に頭を叩かれる。酷い!
まぁ、こんな感じで私は私なりに学校生活を楽しんでいた。
私にはゲームをプレイしていた当時から、いいなぁやってみたいなぁと思うことがいくつかあった。その内の1つは高田先生の手作りスイーツを食べること。これは達成した。予想以上に美味しかったのでまたたかりにいこう……で、2つ目は西澤瑠衣が1番好きな小説を読むこと。私はこう見えて、趣味は読書です!と書くくらいには読書好きなんです。そんな私が気にならないはずがないでしょう!?
……ということで、ただいま放課後、図書館なうです。
この学校の図書館は広く、普通の教室6つ分くらいある。置いている本のジャンルは様々で見ているだけでも楽しい。
さて、西澤瑠衣の本を探しますか。それから5分くらい探して案外すんなりと見つかった。よし、借りて帰って寮でゆっくり読もう!そう思い、帰ろうとした時、後ろから誰かに腕を引っ張られた。
「うわ!」
引っ張る力は思いのほか強く、私は尻餅をついた。いった!なんだか最近こういうの多いな……。
「……お母…さ……。」
振り返ると、私を引っ張ったのはどうやら西澤瑠衣のようだった。なんでここにいるの、確か今はイベント中のはずじゃ…それにお母さんって……。
「ええっと、西澤くん?ちょっと手を離して欲しいんだけど。」
返事がない。
……なんで寝てんの!?え、さっき引っ張ったのは無意識ですかね!!恐ろしい!!!
しばらく声をかけたり揺すったりしていたがまったく起きない。熟睡してやがる……。掴んでいる腕を離してくれないと帰れないんだけど。
「まぁいいや。」
どうせこの後予定は何もない。なら、寮で読むのもここで読むのも一緒でしょ。と思い私は小説を読み始めた。
図書館にはなぜか普段いるはずの当番の生徒もいなく、私と西澤くん以外は誰もいない。私たちが座り込んでいる場所は窓際の本棚のそばで、春の暖かい日が差し込み、案外居心地のいいものだった。




