ミッション
GLあり、BLあり。キス表現あり。
さて、今日起こった出来事を整理しよう。
1.大天使ミカエル様に、犬猿の仲である幼馴染と結婚しろと言われた。
2.人間界で暮らすことになった。
3.ベッドが一緒。吐いた。
4.ユラが出ていこうとした。
5.ちょうどよく、ミッションが来た。その内容が、『一時間以内にキスをしろ』←今ここ
「誰がやるかクソ天使ィィィィィィィィ!!!!」
悪魔ヴィランはスマホに映し出されるミッションを凝視し、頭を抱え叫んだ。
「ミカエル様にクソとか言うなクソ悪魔!!!」
すかさず天使ユラがヴィランを怒鳴る。
「クソ⋯よりにもよってこんなやつと⋯というか、順序を飛ばしすぎ⋯⋯あぁもう!一回神界に戻って説得⋯」
「どうやって戻るんだよ?」
「⋯⋯」
そう、今の彼らには翼が無かった。
神界に帰ってこれないようにと、対策が施されていた。
「じゃ、じゃあスマホに⋯」
だが、返信機能はどこにもなかった。
これじゃ返信もできないどころか、自分の意見を言うこともできない。
「⋯⋯どうする?」
「悪魔、その品性もない低俗な脳で考えろ。何が出来る」
「めっちゃ余計だなその言葉?!?!ほんと性格わりぃな昔っから!!!」
その時、インターホンが鳴った。
「!ミカエル様か?!」
「ぜってーちげぇだろ」
ガチャっとドアを開ける。そこにいたのは。
「やっほー!」
「あ、ユラくん、お久しぶり」
「⋯姉さん」
「あ、ねーちゃんじゃん!」
ユラの姉、ユラニマと、ヴィランの姉、ヴィオラだった。姉弟は、性格が正反対だった。
二人は昔に結婚して、現在、人間界で幸せに暮らしている。
「ちょっと〜、聞いたわよ?アンタたち、結婚したんだってね?」
「白紙にするつもりだよ」
「おう!」
「えぇっ、もったいないよ⋯二人とも、とてもお似合いなのに」
「「どこが!!!」」
声が揃ったことが気に食わなかったのか、ユラは舌打ちをし、ヴィランは睨みつけている。
「あららぁ?結構仲良しじゃないの〜。ユラ!ヴィランくん泣かしたら許さないわよ!」
「ヴィランも、ユラくんに迷惑をかけないようにね?」
「泣かすも何も、もう関わりたくないんだけど⋯」
「俺もだ!こんなやつ、誰が!」
「もー、昔っから変わんないわね、アンタたち!」
やれやれ、とユラニマがため息を付く。
そして、小さな袋を取り出した。
「これ!ヴィランくんの好きなおまんじゅうと大福!」
「マジ?!?!」
「姉さん、こいつを甘やかさないでよ⋯」
「私からは、ユラくんが大好きって言ってたミロワールショコラとティラミス!」
「本当ですか!」
「ねーちゃん!こいつに何も与えなくていいって!」
2人は、お互いの好きなものを見て目を輝かせている。
神界では年に一度、選ばれし神、天使、悪魔が人間界に行き、色々な食物を持って帰るという伝統がある。ふたりはそれで、「おまんじゅう」と「大福」、「ミロワールショコラ」と「ティラミス」という存在を知った。
大昔、まだヴィランとユラが生まれてもない頃。神界は果実等しかなく、動物は勝手に狩るのを禁止されていた。ルールを破ったら、禁固30年だ。
そのルールに耐えきれず、世界は弱肉強食という悪魔がデモを起こした。
このままだと、また戦争が起きかねないと考えた、まだ幼い偉神の子シヴァは、父親である偉神シルクと、その妻ヴァイオレンスに頼み、人間界から食べ物を持ってくるというルールを追加した。
そして現在、すっかり人間界の味に溶け込んでしまった神界。
人間界に行くことは神界の者たちにとって至高だった。
⋯結婚、という形で行かなければならないが。
「まったく、少しは仲良くしなさいよ!私たちみたいにね!」
「そうよ?2人は永遠の愛で結ばれるの⋯」
「⋯姉さんの隙あらば恋人を自慢してくるところ、僕嫌いだよ⋯」
「⋯ねーちゃんのロマンチストなとこ、俺嫌いだわ⋯」
またもやシンクロする2人。
「僕の真似しないでくれる?」
「あ?お前のほうが真似してんだろ?」
そして、またもや睨み合う2人。
仲良く出来るのは、まだ先のようだ。
すると、スマホが鳴る。
『まだしないのか?』
「見てんのかよ!!!」
「ということはミカエル様を待たせている、ということ?!」
『私はいつでもお前たちを見ているぞ』
「こっわ!!!監視こっわ!!!」
「わぁぁ了解致しました!今すぐ行為を行います!」
「っはぁっ?!?!?!」
ミカエル様への忠誠心が高いあまり、先走ってしまった。
姉2人は「あら、アツアツね」、「じゃあ、これで帰りましょうか」と言って帰っていった。
「待ってぇぇぇ!!!ねーちゃん、ユラニマさんっ!!!」
「さぁ、腹をくくれヴィラン!!!」
「忠誠心高すぎるだろやめろーッ!!!」
ユラが勢いよくヴィランの頬を掴み⋯。
——ちゅっ——
力任せにキスをした。
そして、すぐに離れる。
すると、スマホからピロンと音がした。
『ミッション完了』
緑色画面に、白い文字が映し出されていた。
「よし、できた。これでミカエル様からの信頼度はあっぷしただろうかっ⋯」
やはり、ミカエル様しか考えていない。
「⋯⋯」
ヴィランはというと、俯いていた。
「⋯?おい悪魔。どうした?」
「⋯⋯ぞ」
「え?」
「初チューだったんだぞ!!!」
ヴィランは涙目だった。
「は?」
「ファーストキス!初めてのチュー!わかる?!?!」
「⋯いや、それが?」
「はぁ?!?!お前罪悪感とかねぇのか!!!」
「僕もだけど?」
「⋯⋯え?」
「僕も、ファーストキスだったけど?」
止まった。主にヴィランが。
目を見開いている。
というかめちゃくちゃ凝視してくる。
「⋯⋯は???」
「ん?」
ユラはと言うと、きょとんとした顔でヴィランを見ている。
「⋯お前、結婚したくないんじゃなかったのかよ」
「したくないよ。君とはね。けれど、冷静に考えてみなよ。翼もない、神界への通信技術も、このスマホ、しかも返信不可のものだけ。これはもう、抗えないんだよ」
「⋯⋯確かに」
「あとミカエル様が喜ぶかなって」
「なんでだよ!!!あの人そういう趣味ねぇだろ!!!」
そしてうずくまり、
「⋯⋯そこは、もうちょっと愛とか、ある感じじゃねぇのかよ⋯」
「愛を求めるだなんて。悪魔は飢えてるねぇ」
「あーはいはい!愛に飢えてますとも!!」
しかし、ユラは少し考え、
「⋯じゃあ、こうすればいいの?」
「は?」
ガタンッ。
ユラがヴィランを壁まで追い詰めた。いわゆる、壁ドンというもの。
「ねぇ、キスしていい?⋯好きになっちゃった」
「⋯⋯」
ヴィランは目を見開き、
「⋯⋯⋯〜〜〜〜!!!///////////」
顔を真っ赤にさせた。ものすごいスピードで。
ユラはそれを見て固まる。
「⋯っ、ちょ、攻めすぎ⋯散歩行ってくる!!!ついてくんなよ!!!」
「う、うん⋯⋯」
ヴィランは荒々しく玄関のドアを開け、外に出る。
ユラはへたっと座り込んだ。
「⋯⋯は、はは⋯⋯⋯なぁんだ」
ぺろっと舌なめずりをし、
「可愛いとこ、あるじゃん」
ニヤッと笑った。
本作を読んでくださりありがとうございました!初投稿ですので、お楽しみいただけていたら幸いです!
あれあれ、ユラさん最後ちょっと動き始めましたね。ユラさん?ユラさん???
分かりにくいかなと持ったので説明しておきます。
ユラの姉は元気で活発なユラニマ、ヴィランの姉は大人しくロマンチストなヴィオラです!
これからも2人の甘々ほのぼの日常生活を書いていきます!どうぞ完結まで、お付き合いいただけたら嬉しいです……!




