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天下一★文化祭  作者: 浅野エミイ


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21/21

乱入者 6-1

 ――そしていよいよ文化祭。初日は学内の関係者や、生徒の家族のみが訪れる。一般の来客は2日目だ。


 僕は一足早く、学校へ登校していた。早めに来て、機材などのチェックをしている音響関係のスタッフや、屋台の食べ物の確認、仕込みを始めている生徒たちがいた。


「おはよう、準備はどうだ?」

「よっ、上崎。お前が声かけてくれて今日一日ラッキーになりそうだわ」

「ははっ……」


 挨拶して、愛想笑い。まぁ2日間ケガなく無事に文化祭が終わればいいんだけどな。

 僕はひとりで開会前の文化祭の出し物を巡る。パンフレットで様々な出し物があるらしいことを知っていたけども、こうしていよいよ本番前となると、こちらも気分が高揚する。


「よう、上崎!」


 見回りが一通り済んで、正門の入口前のブースで受付準備をしていたらFDの4人が立っていた。


「おはよう。君たち、お揃いだね」


 声をかけてくれた和宮に言う。4人の中のギター担当の和宮とベースの領土が楽器を持っていた。僕はあれ? と首を傾げる。


「君たち、ステージは明日の夕方だろう? 今日のうちに楽器を運ぶのか?」


 たずねると、和宮と領土は顔を見合わせた。


「えっ、と……今日もステージの練習をしようと思って」


 最年少の領土が説明すると、和宮も強くうなづいた。


「そうそう! ステージの音響の生徒たちとも打ち合わせたかったし」


 ふぅん、確かにそうだな。明日に向けての準備も、前日からしないといけない……。僕は4人に聞いた。


「君たち、当日の整理券の配布はできたのか?」


 僕はみんなの顔を見回す。すると強く首を縦に振った。その中で中山が口を開く。


「おうよ、もちろんっ! な、イチバン」

「はい。事前の整理券はすべて配り終えました」

「すべて? ってことは、ソールドアウトしたのか?」

「すげえじゃんっ!」


 和宮と大里がバシバシと中山と領土の背中を叩く。……確かにすごいな。FDは噂に寄ると、『売れるバンドを作りたい』と言うことで和宮が作ったばかりのバンドだ。元から中山と領土には固定ファンがいたとは聞いていたが……。あっ、そうだ。


「和宮と大里の分のチケットははけたのか?」


 僕が聞くと、ふたりはサムズアップした。……すごいな、マジか。


「華太とイチバンのおかげもあって、俺たちも売り切れたぜっ!」


 大里は他人のふんどしを借りてはいるが、和宮はにやりと笑った。


「なーに言ってるんだ。お前、歌ってみた動画とかアップして、そこでチケット売ってただろ。知ってるわ」

「……そういう真尋も新曲6つの動画、2000再生行ったじゃん。そこからライブに来るやつら、いるんだろ?」


 大里も和宮も、案外真面目だな。しかし、本題はこれからだ。4人の集めた観客の警備……大丈夫だろうか。一応警備担当の生徒たちには話してあるけども。

 入口横のブースで、パンフレットを重ねて置くと、ひと息。


「君たちもステージ頑張れよ。本番は明日だろうけど」

「ありがとな、上崎」


 和宮がお礼を言うと、4人は教室に向かって行った。僕も準備をすると、一旦教室でホームルームだ。


 出欠と、文化祭の注意事項を教師から告げられると、チャイムが鳴った。いよいよ文化祭1日目開始だ。僕は『文化祭実行委員会』の腕章を付けると、教室を出て、また入口前のブースへ向かった。

 先についていた女子の委員会の子に挨拶していると、ヅカ愛好会が一声をかけてきた。


「上崎! ステージはよろしく頼むよ」


 極は相変わらず両手に花だ。横に、花柳と千家を立たせて華やかだ。僕はヅカ愛好会ならではの迫力に圧倒されつつ返事する。


「ああ。ところで君たちも整理券ははけたのか?」


 お決まりの質問。FDは満員御礼。ヅカ愛好会はどうだろう。事前情報では、FDとアイドル研より集客力があると聞いている。だったら当然……。


「うん、ありがたいことにね。そうそう、みっくちゅ♡じゅーちゅもソールドアウトだって聞いたよ」

「FDにもみっくちゅ♡にも、負けていられないでしょう?」


 千家と花柳、極は一部ずつパンフレットを手に取ると、ステージのタイムテーブルを確認する。


「今日の昼過ぎのクレイジー・グラス……がみっくちゅ♡じゅーちゅに変更か」

「あっ、上崎くんの見たがってたマジックもあるんだ」

「うん、まぁね」


 僕が素っ気なく言うと、花柳が妖艶に微笑んで僕に言った。


「よかったら、私たちと一緒に文化祭を回らない? 上崎くん、マジックまで時間あるでしょう?」


 あごにちょんと触れられるが、僕は真顔で断った。


「色仕掛けされても困る。僕は見回りとかもあるんでね」

「なんだぁ……」

「祈、笑留、仕方ないさ。彼には仕事があるんだから」

「悪いな」


 軽く断ると、極は女子を連れて手を振った。


「じゃ、もし気が向いたら、僕たちのステージも来てくれ、な」

「ああ、わかったよ」


 同じように手を振ると、分担させられた見回りポイントを確認する。

 1階お化け屋敷、絵画発表、習字発表……。そして2階が、あっ。


「はぁ……女装メイド喫茶……あいつらか」


 僕はパンフレットを持つと、まずはさっそく校舎内の様子を確認しに行くことにした。

 

 1階のお化け屋敷と展示は、問題なさそうだった。ぱっぱと見て、異常なしを確認。お化け屋敷は段ボールや発泡スチロール、布を使っているため火気厳禁だが、1階は展示のみなので大丈夫だろう。

 そして、僕が頭を抱える女装メイド喫茶に移動する。


「おかえりなさいませ! ご主人様っ!」

「きゃあっ! ご主人様、お待ちしておりましたぁ~!」


 月本が僕の前に立って、腕に絡みつく。僕はそれを引き離して、咳払いした。


「勘違いしないでくれ。来たのは仕事でだ」

「なんだぁ。でもゆっくりして行ってよ」

「サービスするよ?」


 ふたりに絡まれるが、僕はマイペースを崩さず遠慮した。


「いや、長居はしない。仕事だからな」


 そう言って、火の元になりそうなものはないか、探す。……特に異常なし。お茶やコーヒーは電気ケトルやポットを使っているし、スイーツはケーキなど、事前に購入して冷蔵庫に入れてある様子だ。


「……売上はどうだ?」

「ぼちぼちだよ」

「でも、福の神・上崎が来たからこれから増えるかも?」

「……僕は仕事だからな。わからないぞ」

「おーい! 上崎、いるか!?」


 軽口を叩いていると、生徒が教室に駆け込んで来た。――一体何があったんだ!? 


「ステージに、乱入者だっ!」

「はぁっ!?」

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