3話 パーティーへ その1
「ミリー嬢、お久しぶりでございますね」
「これはヘンリック様、お久しぶりでございまうす」
「ミリー嬢は本日も美しいですね。いやはや、夫になられる方が羨ましい」
「まあ、とんでもないことですわ」
私はパーティー会場で、伯爵令息のヘンリック様と話していた。なかなあ俗なお世辞が言えるお方で悪い方ではない。それ以外にも何人かの人達と話し込んでいたのだけれど。これは良い気分転換になった。やっぱり、屋敷で引き籠っていては身体に悪いわね。
お父様もパーティーを楽しんでくるように言っていたし。今日は楽しませてもらおうと思っている。ボイド様とシエナ様の一件は気になるところだけれど……なんとか前向きに考えないとね。
「しかし、ミリー嬢。妙な噂が流れておりましてな」
「ヘンリック様、どうかしたんですか?」
変な噂? 一体なにかしら。ヘンリック様が言いにくそうにしているのが気になった。
「噂ってなんでしょうか?」
「はい……実はミリー様の婚約者だった人……ええと、ボイド・フューリ―侯爵のことですが」
「えっ?」
ボイド様のこと? なんだか嫌な予感がしてしまった。あんまり聞かない方が良いかもしれないわね。
「妹君のシエナ様が虐められているとかなんとか……」
「あ、そ、そのことですか……」
「は、はい。ええと……あまり聞いてはいけないことだったみたいですね。すみません、失礼します」
「あ、ヘンリック様!」
先ほどまで親しく話していたのに、急によそよそしくなり、ヘンリック様は去って行った。まあ、変な噂に巻き込まれたくないということなんだろうけれど。シエナ様を私が虐めているという噂……少しずつ流れているのかしら。
とてもマズイ状況ね……完全に濡れ衣なのに。でも、ここで声を大きくして訴えることもできない。どうしたらいいのかしら?
「あ、失礼します。少しよろしいでしょうか?」
「えっ、私ですか?」
突如、私を呼ぶ声が聞こえて来た。私はそちらに振り返るけれど……そこに居たのは。
「……ルシエド?」
「やっぱり、ミリーだったか。久しぶりだね」
「そうね……私が婚約する前に会ったのが最後だから、1年振りくらいかしら?」
「もうそんなくらい会ってなかったか」
まさかの幼馴染との再会だった。ルシエド・キラウィング公爵令息……私よりもはるかに位は高い人だ。そして、私の初恋の相手でもあったりする。