044 その錬金術師は郵便物(面倒事)を受け取る
郵便物なのに面倒事とはこれいかに……。
「配達でーすっ。配達なのですよー、配達でーす!あーけーてーくーだーさーいー!」
「――んぁ?」
ドンドンと鳴る音。
扉を叩いてるんだろう、若干騒々しいその音は、玄関も兼ねている台所の方から響いていた。
同じく声まで響いてきて目を瞬く。
「配達なのー!配達なんですー!開けて開けてー!受け取ってー!この思い―♪」
「最後のは何か違わないか?」
若干まだ寝ぼけつつも、どこかリズム良く聞こえてくる騒ぎ声に、ようやく寝台から滑り降りる。
陽は上ってるから、それなりに明るい。ただ、まだ早朝とも呼べる時間帯である。
それでも来客だと、椅子の背もたれに掛けたままだった若草色をしたコートを手に取り、羽織りながらも玄関へと向かった。
「開けて―!ここ開けてー!開けてーなー!パフパフー♪」
「あーハイハイ。今開ける。開けるから、もうちょっと静かにしてくれ。」
「――了解なのです?」
玄関を開いた先には――あれ?何も居なかった。
思わず、左右を見渡して首を傾げる。
「あのー、ここです。ここ、ここ。下です。目線を下げて下さいなっ。」
「あ?」
「ここー、ここなのですよー。」
言われるままに下げて見れば、そこには膝までの高さしか無いペンギンが一体、チョコンと上目遣いで佇んでいた。
――否、ペンギンじゃないな。ペンギンの着ぐるみを着た幼児だ。しかもめっちゃ小せぇ。
「嬢ちゃん、どうした?迷子か?」
「嬢ちゃんじゃなくて男なのです!性別雄!雌じゃないやい!」
「あ、ああ。で、どうした?坊主。」
「配達なのですよ!お届け物なのです!」
「――俺に?」
「そう!あと、坊主って歳でもないのです!」
「ほほう。」
何か、コクコクと頷くペンギン、もとい幼児だが、癒し系な感じがする。
無駄に動きが力いっぱいって感じだ。コミカルで面白い。ただ、声はでかいから早朝に聞くのはちょっと辛いな。
しかし、わざとってわけじゃなさそうだ。ヘラヘラと笑ってるが、時折キリッとした表情作ろうとしては失敗するのを繰り返していた。
どうにも締まらないタイプらしい。種族的なものか?
「届けもん、ねぇ。」
「はい!こちらにサイン願いまーす!」
「ほいほい。」
差し出された羊皮紙に、内容へと一応目を通してから、言われた通りに名前を記す。
そして、代わりに渡された一通の手紙を見て、俺はまた首を傾げた。
「誰から?」
「領主様からです!」
「……。」
「古代文字?面白い字を書くんですね、お兄さん。」
思わず俺の顔が真顔になるのは仕方無いだろう。一気に目が覚めた。
「突き返すのって、有り?」
「いえ、無しです!そんなのしたら首飛んじゃいます!」
「あ、そう。」
もうこれ、知らぬ存ぜぬを貫けないわ。しかも、サインが古代文字扱いとか泣ける。内容と同じ文字だろ?一応。
(まだ常識に差異があったのか。)
溜息と共にその場で開封し、中身を取り出す。
その頃にはもう、配達に来た幼児は、家の外付け階段を駆け下りて行くところだった。
「有難うございましたー!」
「お、おう、気を付けて行けな?」
「はーい!」
配達員の幼児は――多分、俺の知らない人型の種族なんだろう、きっと。
妖精種なんかは寿命も長いし、多分その辺りなんじゃなかろうか。
まさか本物の幼児がつい去年まで危険だった森の中へお使いに来るとは思いたくもない。
無いよな?多分、無いよな?
「ふむ。」
まぁ、今は森も安全だし、大丈夫だろう。そう思って、手紙へと視線を戻す。
「あれ?また封筒?」
持って来られた手紙は、封蝋のされた封筒の中に、更に封筒として入っていたらしい。
それから中身を更に取り出しつつ、今度こそと、便箋へ目を通す。
そして俺は、そっと嘆息したのだった。
「あーぁ。」
明ける空の下、俺の嘆きが虚しく響き渡る。
そこに記載されていた内容は、簡単に言えば招集。悪く言うと、出頭を促すものであった。
ようやく本編が動き出します。今までの主人公の詰めの甘さがここに来て繋がるという。
準備期間が長かった?いや、実はまだ書いてない部分がありましてね……?
個人的には生産重視で行きたいので、そっちの比重が何かと多くなりがちです。ご了承下さい。
2018/10/17 追記
作中の文字に関してですが、後々何が違うのかが出てきます。
そこで、ハイファンタジーではなくローファンタジーを選んだ理由も何となくお分かりいただけるかと思います。一応、この世界は地球ベースの異世界(?)なので。
作者的には未だどっち?って感じなんですけどね。やっぱりローじゃなくてハイファンタジーの方になるのかなぁ?
うむ、分からん。




