プロローグ 王宮のホールにて
「この場を持ってソフィア・アメジスとの婚約を破棄する!!」
王立学園の卒業生を祝う国をあげた式典で王太子サイラスがあろうことか婚約破棄を叫んだ。
その声は学園の卒業生や在学生のいる1階ホールから、その周囲の保護者の貴族、各業界の要人や近隣国の来賓がいる2、3階のテラス席の隅々まで響き渡った。
徹夜明けの霞目に煌びやかなシャンデリアの光が目に沁み、王子のビリビリと響き渡る声が疲労により軋む身体を突き刺した。
「ついに来てしまったかぁ〜」
情けない声も漏らしつつ王子の叫びを一身に受ける王子の婚約者であるソフィア嬢を見やる。俺とは対照的に、取り乱しもせず凛と佇むその姿に、現実から逃避しかけていた意識が引き戻された。
一度目を閉じ、右親指の腹で眉間を刺激した。喫煙したい気持ちをグッと堪え、反対の手でポケットから飴を手繰り寄せると口に放り込んだ。すぐさま口の中にぶどうの芳醇な甘みが広がり、思わずフッと息を吐き、身体から力が抜けるのを感じた。
2階の端、階段出入り口付近の席に座る俺は、今回のこの婚約破棄騒動のために事前に動いていた仲間たちに視線を送った。その視線に俺の2人の悪友たちも、1人は頷いてみせ、かたやもう1人はニヤッと笑ってよこしやがった。この状況を楽しんでるなアイツ・・・。
その後、1階の貴族席の上座へ視線を滑らせると、この舞台を肴にワインを嗜む王弟と目が合った。目を細めこっちにウィンクをよこし左手の人差し指で机をトン、トンと叩く仕草を見せた。
「存分に叩きのめせ。」
…という意味だ。その証拠に目が笑ってない、怖い。
ぎこちなく笑みを返した後、舞台の王子達に視線を戻した。「断罪」という名の子供達の茶番劇を見ながら、これまでのことを振り返っていたが、どうしてもこの言葉が浮かんでしまい、天井を見上げ情けもなくこぼしてしまった。
「…どうしてこうなった。」
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