8話 〜推しどころ〜
チリン、チリン、
「いらっしゃいませ」
「あの〜」
「1名さま?カウンターでいいですか?」
「はあ……」
「お飲み物は?」
「あ、いやぁ……」
「いいですよ、ゆっくりで。決まりましたら声かけて下さい」
「はあ……」
「ノリちゃんコレお通しね」
「ナミちょっと待って、何か……」
「ん?」
「マスターおかわりね〜」
「はいよぉ」
「はいどおぞっ」
「あの人ってお客さんなの?」
「キョウもそう思うんだ、何か違うよね?」
「て、あの人が見ているのメニューじゃないよね?」
ああ、多分俺のこと何か言ってんだろなぁ?
はぁ〜、でもあの店主らしき人、人が良さそうだし……言ってみるか?
「あっ?決まりました?」
「いえ、あの〜これをこちらに置いてもらえませんか?」
「えっ?シャンパンですか?」
(いきなり本題に入るとは——こいつは……)
あれ?パンフに見入ってるぞ、この店主。
やったぁ、いけるのか?
「う〜ん、シャンパンねぇ……」
「どれも好評ですよ。あと他にもウイスキーや……」
「ふ〜ん?いいかもなぁ」
おっ、手応えありそうかぁ?
「う〜ん、契約したいけど……まずは話の前に、、、」
「ああ!?そうでしたね?ビールください」
「あ!?いいんですか?呑んじゃって?仕事中なんじゃ……」
「いいえ、全然平気ですよぉ。呑むのも仕事のうちですから」
「はいよっ!ナミぃお通しね」
「はい、は〜い」
「はいどうぞ、うちはね、肉巻きと味噌カツが特におすすめですからね」
「あ、じゃあ味噌カツをください」
「はい分かりました」
「何、何、なぁに?何か良さげなの揃っているわね?」
「はぁ〜?」
この人は店の人?
いや、あそこで呑んでたお客さんのような?
「う〜ん、もし良かったら私からもマスターに……」
「ええ!?ありがとうございます。ぜひっ」
「うっうん、何か喉の調子が、、、」
「あ、何か一杯ご馳走させてください」
「ええ〜っ、悪いじゃないそんなの……ノリさん果実酒!レモンのブランデーお願い〜」
「はいよぉ〜」
「ふ〜ん、これなんか結構するのね〜?」
「はい、アサミぃどうぞ」
「はあーい、かんぱぁ〜い。いただきます」
「あ、マスターさんも良かったら?」
うん、うん、初の契約が取れればこのくらい……
「え〜本当に悪いじゃないですかぁ?じゃ瓶ビールを」
なんの、なんの、お返しはたんまりといただきますからね?
「じゃあ、ナミも頂こう」
「いただきま〜す、かんぱ〜い」
「いやぁ、これ美味しいですねぇ?」
「ホント?良かった。今日は、牛すじもありますからねぇ」
「じゃあ、それもください」
「はぁい、ありがとうございます」
いかん、いかん。ついつい呑みすぎてしまった。
「で、マスター。店に何本ほど置いてもらえますか?」
「え!?あ〜ぁ。でもなぁ……うち居酒屋だし、シャンパン呑んでくれる人あんまいないしなぁ?」
えぇーっ!
さっきと……
「いや、置いてくれるんじゃなかったんですか?」
「いやぁ、置くとは一言も……」
確かに言ってはなかったよ?
でも、でも、、、
「私も料理も頼んだし、ご馳走まで……」
「ん?あぁ、それはありがとうね?それにしてもなぁ?」
いやいやいや、頼んますよぉ〜?
「アンタもさぁ、諦めなよ。要らないってやんわりと言ってんだからさ」
「えぇっ!?さっき味方してくれるようなことを——」
「あ?ん、そうなんだけどね?あー喉乾いた」
いやぁー、もうやらんで!
アンタ信用ゼロだよ?
「マスター何とかお願いしますよぉ」
「ちょっと待って、今オーダー入ったからさ」
うわぁ〜、急によそよそしいなぁ?
まさかハメられたやつか?
気づくの遅いよ俺、トモキのバカっ!
「女将さんも何とかダメですかぁ?」
「う〜ん、マスターに聞いてみてぇ」
「ねぇ、アンタも男ならスパっと諦めて……」
「ああ、もうオバ、、、オタクは黙ってて」
「このヤロ〜ウ、オバって何だよ?オバって」
「いや、もうアンタ紛らわしくなるから席に戻ってよ」
「なによぉ、アンタ急に。人が大人しくしているうちにさぁ……」
「煩いなぉ本当に。関係ないだろ?」
「なによぉ?その言い方ぁ。アタシに喧嘩売ってんのかい?」
「だったら何だよ、このたかりババァ」
「なっ?言い切りやがったなぁ、本当のことを」
「こらこら2人ともやめなよぉ」
「ノリさん止めないで、コイツだきゃあ許さないからね!」
チリン、チリン、
「あ!?良いとこに来たぁ?マサユキ」
「あ?マサくんこの人がいじめるのぉ〜」
「何言ってやがんだババァ、、、て?兄ちゃん」
「トモキじゃないか?」
「えぇ〜!?先に言ってよぉ、マサくんの弟なら〜」
無理だろ?
完




