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クロのトマトの美味しい食べ方、りゅうとの野菜嫌い

無理

クロ、トマトの美味しい食べ方は、、、

「ガチャガチャ!」


音の正体は――ミキサー。

クロはトマトを入れてトマトジュースを作っていた。


「お、おい、気を早めるな!」


りゅうとが焦り気味に叫ぶと、クロがちらりと視線を向けて言った。


「りゅうと、もしかして……勝負のこと忘れたクロ?」


「そ、それは……」


「勝負は勝負クロ。どんな手を使ってでも食べるのが流儀クロ! それも分からないクロ?」


「うぅ……」


クロの言葉にかんなが笑いながらひと言。


「りゅうと、クロに完全敗北してる!ちょっと面白い」


顔を真っ赤にしたりゅうと。

でも負けっぱなしではいられない――と、一応頑張る。


「パクッ」


キャベツをもそっと口に入れ、牛乳で無理やり流し込む。


「う……!」


野菜嫌いのりゅうとにとっては、相当つらいようだ。

かんなは眉をひそめる。


(そもそも、美味しく食べるつもりすらないのでは……?)


すると、クロが遠慮なく言い放つ。


「りゅうとは、もう少し頭使った方がいいと思うクロ」


「そ、そんなこと……ぬいぐるみに言われたくねぇよ!」


悔しそうなりゅうとの顔は、どんどん茹でたトマトみたいに赤くなる。


「りゅうと、もしかして……悔しいクロ? こんなぬいぐるみに……ま・け・て?」


「いや! 負けてねぇし!」


かんなも、つい口をはさんだ。


「いや、完全敗北してるのに、よく言えるね〜」


「俺の賢さ、見せてやる!」


りゅうとがキャベツをシチューの器へぽとんと落とし、混ぜて食べる。


「パク!」


一口食べるも――


「な、なんだこれ!」


その表情は微妙に歪んでいる。


「りゅうと、そのシチュー……もともとめっちゃ野菜入ってるよ」


「し、知ってるし! だから食べたんだし!」


(嘘が雑すぎる……)


かんなは心の中で突っ込んだが、空気を読んで口には出さなかった。


そこへ、クロが静かに動く。


「キャベツの食べ方はこうクロ!」


スッとスプーンでクラムチャウダーにキャベツを入れる。


とろっとしたスープの熱とキャベツの甘みが溶け合い、見事な一体感。

その香りは鼻をくすぐり、味は舌の上でとろけた。


しかも、クラムチャウダーには元々野菜が入っていなかった。

完全に計算された勝利。


「う、嘘だろ……。お、俺だって、それくらいできるし!」


慌てたりゅうとは、方向転換してパスタに手を伸ばした。


「え? 野菜食べないクロ? クロでも食べるのに、りゅうとは情けないクロね〜」


「ち、違うって!」


そう言いながらも、りゅうとの顔はトマトより赤く染まっていた。

 

無理

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