車椅子の少女と領主様と
突如、魔物供が町中に現れてロッペンハイマーは大混乱に見舞われてしまい、戦う術も無く必死に逃げ惑う市民を魔物供が襲いかかっていた。奴等が手に持っている武器を振るうたびに1人づつ善良な市民が倒れていく。ゴブリン供が武器店に置いてある武具の略奪していたり、レストランでは客が食べていたであろう食事をオークが食い散らかしていた。
どうして……どうしてこうなったのだ?
その現状を目の当たりにした領主ノイエ・フォン・ヴァイツゼッカーは30人の私兵を連れて来ていた。部下から話を聞いて直ちに駆けつけたのだがまさかこの様な惨状になっていたとは思いもよらなかった。
ノイエは馬から降りて目の前で倒れている女性に駆け寄ると女は目を薄っすらと開けてノイエを見た。
まだ辛うじて息がある。内臓がやられているのか口元からの出血があり、もうすでに目の焦点が合ってないがそれでも何かを伝えようと必死になって生にしがみつき、言葉を紡ぐ。
――どうか……あの子を助けて――
女はノイエの腕の中でそのままスッと静かに息を引き取った。
近くに子供がいるのか?
一体何処だ?ノイエは辺りを探し始めた。
かどを曲がった所で車椅子に乗った少女がオーガに襲われている。1匹のオーガが車椅子の少女に向かってこんぼうを振り上げる。今すぐにアレを止めないと! だがまだ30メートル程の距離がありノイエが走ったところで間に合うはずがない。ム……ムリなのか? 私では助けられないのか?
「念力」
突然、空からメアリー達が現れて念力でオーガを吹き飛ばしていった。
「先生、塔の1番上まで上がって正解でしたね」
「そうね 一目見るだけで、町の状況がわかったわね」
それは一瞬の出来事だった。ノイエにはオーガが自分から飛んで行ったように見えた。車椅子の少女の無事を確かめるとノイエはホッと胸をなでおろし少女のそばへとツカツカ歩み寄り、少女の頭を優しく撫でた。
「怖かったろすぐにお父さんやお母さんの所へ帰れるからそれまで辛抱してくれるかな?」
「お父さんはアタシ達を守ろうとして魔物供に殺されました。そしてお母さんもアタシを庇って魔物供に殺されてしまいました。」
やはり先程の女性はこの子の……
それにしても彼女達はどこからともなく現れ魔物をあっさり倒してくれたが………しかし何故か空中に浮いているこの魚のような生き物とその上に乗っている少女? ………… 彼女達は何者なのだ?
「そうだ先生、私良い方法を思いつきました。挑発! 」
おーっ!メアリーの能力によってこの町にいる魔物供がどんどんコチラに集まってきたわ。
「魔物供に囲まれたわね。ちょっとそこのヒゲおじさんみんなを一ヶ所にかためてくれるかしら」
さーてみんな集まったところでそろそろ反撃と行きますか?
「あの、先生私はどうしたらいいんですか?」
「メアリーちゃんはもちろん『ガンガン行こうぜ』よ!」
「アンタ達〜っ隠れんぼはそろそろお終いよ♪」
屋根や家の中や壁に隠れていた4匹のゴブリンが念力でメアリーの目の前に集められた。
「さぁメアリーちゃん出番よ〜っ!」
「エア・クイック・シールド! 2ndシールド! まだまだ〜っ!」
メアリーは半透明の盾をゴブリン達の目の前に展開して動きを止め、1番近くにいたゴブリンの腹部に硬化拳をくらわせた。
「さぁてどんどん行きますよ『炎纏』 『エア・クイック・シールド 』 」
メアリーは半透明の盾を踏み台にして思いっきりジャンプした。
「そしてーっ!空中からの硬化拳」
「ギャギヤシャャーっ」
ゴブリン達も先程武器店で見つけた新品の剣でメアリーに、斬りかかるが硬化拳で弾かれそのまま顔面に正拳突きをくらって立ったまま失神する。
更に後ろのゴブリンが剣で斬りかかるが失神しているゴブリンを押しつけ素早く横へ回り込み裏拳をくらわせた。
いいわね!メアリーガンガン攻めてくれたおかげで新品の剣が手に入ったわ
「『毒付与』よーしこれで毒の剣の完成よ〜っ!」
アタシは念力で剣を操ってビュンビュン飛ばす。
「メアリーちゃん交代しましょ 次はアタシの技を見せてあげるわ、行けーっ 飛べーっ 毒の剣よ!」
宙を舞う剣がゴブリン達を次々と切り裂いて行く
更に後ろにいる蛇のような姿の魔物ナーガだったかしらササッと切り裂いてやったわ。毒付きなんでちょっとでいいのよね〜後は勝手にくたばってくれるのだから
アタシの探知で見つけられる限りジャンジャン切り裂きまくりに行くわよ。
— 数分後 —
コボルト供、牛人供、大鼠供、あと大蟷螂?とにかくこの町にいる魔物は全てチョイチョイっと切り裂いて来たので全滅するのは時間の問題ね。
「メアリーちゃん、終わったわよ」
「すっすごいですね! 先生1人だけでほとんどの魔物を倒してますよ!」
メアリー達から少し離れた所にいるノイエ達は伝達兵から町に侵入した魔物は全て倒された事を聞き、
私兵達と歓喜に打ち震える。……がそれと同時に新たな恐怖が目の前に存在しているという事を認識する。
私の私兵によると町に侵入して来た魔物の数は25〜40匹程だという
それをこの魚の魔物だけでほぼ全滅さたというのか
この魔物、今は味方みたいだが もしコイツがシルヴェニア王国の敵となってしまったとしたら……我が国にとって最悪の存在となるであろうな。
いや、そんな事はさせんぞ………断じて!
反対側からヨハン爺とボミエが駆け寄って来た。えっ今頃〜? コイツらは今までどこにいたのかしら?
「ちょっとアンタ達、今まで何してたの?」
「ワシらはそこの宿舎でのんびりと昼寝しとったんじゃがが何やら外が騒がしいので先程目が覚めてのう
ところで先程の浮遊する剣はお前さんの技かの?」
「そうよーっこれで大方片付いたのよ♪」
「じゃったら裏山の騒ぎもお前さんの仕業かのう?」
「裏山…何よそれ知らないわよ?」
「のうボミエ、そういえばさっきうちの隣に住んでる人が裏山の方から何か妙な叫び声がしたとか何とかいっておったがのう」
「それはきっと何処かのスケベカップルが真っ昼間からイチャイチャしているニャ」
「はぁ? ボミエさんが何を言っているのか私にはよくわかりませんが?」
「メアリーちゃんはそんな事気にしなくてもいいのよ! さっさと店に帰るわよ」
「そうだ私今晩はハンバーグが食べたいです」
はいはいはいそれじゃあさっさと店に帰るわよ。
被害とかそういう後の事はそこにいる貴族とかに任せて
「ま…待たれよ!」
「はい?」
「私はノイエ・フォン・ヴァイツゼッカーと申す者だがその……貴殿らと少し話がしたいのだが?」
「こ…これは領主様」
「オイ、お前らも挨拶しろニャ」
アラ〜何? このヒゲ男爵みたいな人 何故かアタシに熱い視線を向けて来たわね〜 もしかしてアタシに一目惚れしたとか? そんな訳ないかーっ! だって魚だしね……
んじゃ何まさかメアリーか? ヤダだわロリコンじゃないのよ〜
「先生、この人はきっと町を救った私達に何かお礼がしたいんじゃないでしょうか? だったら私、ハンバーグがいっぱい食べたいです!」
そうかーっ!
やっぱそうよねなんかご褒美が貰えたりするーっ?




