ニートな女神と初めての泥
玲愛はもう今の時点でだいぶチート化が進んでいると思う人。
手を挙げてください……はい。
マッドゴーレムのHPは大ケージ1本分と半分くらいあった。
ストーンゴーレムが大ケージ1本分しかないことと比べるとやはり強化されてるみたい。
というか、普通は泥よりも石の方が硬そうで強そうに思えるのだけど。
それでもちろん先に攻撃をしかけたのは私の方だった。
まずは顔面に1発ウォーターボールを当ててみたら、なんと弾かれてしまった。
ダメージはあるにはあったんけどすごく少なかったというか。
どうやらマッドゴーレムは水属性に耐性があるみたい。
でも、マッドマンの方は水属性が弱点だったと思うんだけどな。
泥っていうのは土が水気を吸って出来ている物質で小さい塊であれば水をさらに含ませれば形を崩すのに対し、大きければ逆に水を弾いてしまうか、あるいは吸収してしまう……ということなのか。
「なら風はどうだろう。ウィンドボール!」
私はウォーターボールの効き目がないと分かった直後に連続でウィンドボールも当ててみたら、こちらの方はちゃんと弱点だったようで2割ほどHPを削れた。
しかしそこでマッドゴーレムももちろん戦闘状態に移行して、まずストーンゴーレム同様に腕を大きく振り上げて叩き潰し攻撃をしてきた。私はそれを回避した。いや、回避できたと思っていた。
「うわ、崩れた。うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
マッドゴーレムの腕は地面に叩きつけられた瞬間にボロボロに砕け散って破片を周囲にまき散らした。
石よりも泥の方がやわらかいからわかるんだけど、この飛び散った破片にもダメージ判定があって。
しかもそれは土属性の魔法攻撃扱いだったのか結構なダメージを受けたのだ。
「やっぱ、そんなに甘くはないか」
そして続くマッドゴーレムの攻撃は、頭部の口が開いてそこからマッドマンが使用したのと同じマッドショットの魔法。ただ、これは射程が短いので回避は余裕だった。
けれどもしも食らってしまったら大変だっただろう。なにせ敏捷が下がると動きが遅くなってその後であの腕の叩き潰し攻撃を直に受けたらそれこそ即死コースまっしぐらだ。
「ウィンドボール!、ウィンドアロー!、ウィンドエッジ!」
私はマッドショットを回避するとすかさず自分が覚えている風属性の魔法を3連発で放った。
ただ、さすがに顔面を狙う余裕はなかったので魔法はすべて体か腕に命中したけど。
それでも今の連続攻撃でHPは大きく削れて残りは大ケージ1本分の9割。
「グオオォォォォォォ!」
「ロケットパンチ来たぁ~!!」
さらに予想通りマッドゴーレムもストーンゴーレム同様に遠距離にいるプレイヤーに対して腕を切り離して射出する攻撃をしかけてきたのだが。
まずストーンゴーレムとの相違点は、マッドゴーレムの腕はなんと切り離しても本体の肩からまた腕が再生されるのだ。これはつまりストーンゴーレムにあった最大の弱点である切り離した腕を再びくっつけようと腕の方へ寄ってくるという隙がなくなったということを意味している。
さらにもう1点。さきほどの叩き潰し攻撃の時もそうだったが、マッドゴーレムの切り離された腕が地面に落ちた瞬間に腕はボロボロに砕け散り破片が周囲に飛び散る。
もちろんそれにもダメージ判定はあるわけで、つまり回避することが非常に困難になっている。
「くっそ、こいつ。……じゃあ至近距離で戦わないといけない、けど近づいたらマッドショットが。……なるほど、強いな」
このゲームの開発陣もちょっと本気を出してきたっぽいぞ。
これは遠距離でも近距離でもソロプレイヤーには倒すのが難しそうだ。
ただし、攻撃は強い分こいつは防御力はそこまででもないようで。
「疾風斬り!……おお、一気に2割削れた」
とくにストーンゴーレムでは苦戦させられた耐久力の高さはなかった。まあ泥だしね。
魔法攻撃もそれなりに効いてたから賢さもそこまで高くはない。ということはやはり攻撃面、力の値が強化されているのだろうけど。
ストーンゴーレムの時でさえたった一撃で大ダメージを受けていたのだ。こいつの物理攻撃は絶対に食らってはいけないと私は思った。
幸いなことにマッドゴーレムの攻撃方法は今紹介したものと腕の振り回し攻撃だけで特別に変わった攻撃こそしてはこなかった。だから落ち着いて戦えば私も普通に勝てたよ。
それで1体で500の経験値をくれたんだけど、やっぱりそれくらい強いってことなんだろう。
私はストーンゴーレムとの戦いの経験が十分すぎるほどあったからな。それがマッドゴーレム戦でも生かせたのが良かったよ。
それでドロップアイテムについてだけど、まあそれはもう皆も想像はついてるでしょう。
そうだよ、マッドゴーレムの心臓だよ。……うわぁ、気持ち悪い!
「なんか拾いたくないアイテム多いな、このフィールド。粘液とか、カエル肉とかさぁ」
それでも落ちてる物は拾う主義の私は拾ってアイテムボックスに入れたけど。
でも前にも思ったんだけどこの心臓ってアイテムは本当に何に使うのだろうか。
全然使う用途が想像すら出来ないのだけど。……やっぱ、錬金術とかに使うのかなぁ。
「お、今回も装備品落ちてる。これは……腕輪?」
マッドゴーレムは心臓以外にもちろん装備品もドロップしていて、今回のそれは腕輪だった。
そしてこのアイテムがかなりすごいアイテムであって。
〇力の腕輪
STR+25
「へぇ、25ねぇ。……え!?、25!?」
そう、25%ではなく25。これはゲーム内では特に序盤ではとんでもない数値だった。
おそらくこれ、花畑のエリアボスのウェアウルフが落とすやつの上位互換となる装備なんだと思う。
ウェアウルフが落としたのは力の指輪で、効果はSTR+10だった。
つまり〇〇の指輪というアイテムの上には、同じ〇〇で腕輪のアイテムもあるということ。
私はすでに力の指輪の他にも、守りの指輪(落:ストーンゴーレム)と賢さの指輪(クエスト報酬)を持ってはいるけど、つまりこの先、その守りと賢さについても腕輪アイテムがあるのだろう。
「これは、絶対に装備しておいた方がいい。なんだけど……あー、どうすっかな」
私は現在装飾品の装備スロット(装備できる枠)を3つすべて埋めてしまっている。
装飾品1:ドラゴンの腕輪
装飾品2:カラスの指輪
装飾品3:賢さの指輪
この中でもしも1つ外すとしたら間違いなく賢さの指輪だろう。
それを外して力の腕輪をつける。これで私の物理攻撃は大幅に強化されることになる。
しかし逆に賢さの指輪を外すということは、装備品の効果のING+10の効果がなくなるということ。つまりそれだけ賢さが下がった分魔法攻撃の威力が落ちるわけで。
「物理か、魔法か……ぬあーーーー!!」
私は迷っていた。しかし私はそこで確認をし忘れているあることに気づいた。
マッドゴーレムからは何かスキルか魔法は得られなかったのだろうか、と。
「お、やっぱエリアボスだったからもらってるな。えっとー……あ」
そしてそのスキルを確認した私はすぐに先ほどの迷いを解決した。
力の腕輪は、今はまだ装備する必要はない。なぜならば私が今回得たスキルは……
<新しいスキルを入手しました>
スキル:剛腕Ⅰ
〇剛腕Ⅰ
効果:STRの値が5%上昇する。
「ふ、ふふふ、ふふふふふふ。はははははははは!!!!」
私はそれを確認すると思わず笑い声をあげてしまった。
うん、きっと今の私を他のプレイヤーが見たら発狂でもしたんじゃないかと疑うレベルで。
だって、このスキルは私が欲しいと思っていたやつの1つだったからね。
つまりこの剛腕のスキルは、耐久が上がる頑丈、敏捷が上がる俊敏と同じ系統のスキル。
頑丈のスキルをくれたストーンゴーレムと同じだとすればマッドゴーレムも30体倒せばスキルレベルが最大のⅩにまで成長するはず。そうすればきっとスキルの効果はSTRが50%上昇になるはず。
そうなればもう力の腕輪など装備しなくても十分だろう。
「よーし、そうと決まればあれだな。ふふふふ……マッドゴーレム狩りだ!!」
ああ、なんて哀れなマッドゴーレム。有用なスキルをくれたばっかりに君は、いや君たちは私というチートの化け物に目をつけられてしまったんだよ。
これは本来私が口にするべき言葉ではないのだが、周囲に誰もいないため仕方なく私が言うことにする。
「……可哀そうに」
なにが、というのはもう言わなくてもわかるよね。
――そしてそれから4時間後――
そろそろ陽も傾いてきた頃、私はフローリアの街の薬屋にいた。
マッドゴーレムとの戦いはもちろんのことMPを多大に消費するのだ。その都度聖水を使い回復させてはいたけれど、他のモンスターとの戦闘にも魔法やスキルでMPを消費するわけで。
結局アイテムボックス内にあった店売りの通常の聖水は100個あったのが半分の50個くらいに減っていた。もちろんこれは昨日の夜の牧草地帯の探索でもいくつか聖水は使っていたので今日だけで50個使ったわけではないのだけど。私はまた100個になるまで聖水を買い足しておいた。
え?、スキルの方はどうなったのかって?
いやいや、君さ。私がもう街に帰ってきてる時点でわかってるよね?
もちろんマッドゴーレムさんを30体ばかし倒させていただきましたけど何か?
その証拠にほら……
〇剛腕Ⅹ
効果:STRの値が50%上昇する。
……ね?
「それにしても、また随分とたくさん買ってくれたね。普段そんなに魔法やスキルを使うのかい?」
「いやぁ、今日はたまたまですよ。ちょっと、たくさんモンスターを倒したい気分だったので」
「そうかい。それは何よりだな」
「ええ、本当に」
私はルドルフにそう言って笑うと、薬屋を出た。
そして向かったのは冒険者ギルド。もちろんクエストを受けるためだけど、そうだその前に武器屋によっていこうかな。
だってねぇ。ほら、力の腕輪とか私は30個持ってるし、さすがにこんなにいらないからね。
それに力の腕輪を手に入れたことでウェアウルフからもらった力の指輪がもういらなくなっちゃったからさ。
それでやってきた武器屋はもちろん今日行ったばかりのあの店。
「おや、嬢ちゃんさっきも来たね」
「ええ、約束通りにすごいアイテムを売りに来ましたよ」
「なんだって?」
そこから先のやり取りは割愛させてもらうよ。
だってもうわかってるからね。ただ、言っておくとおっさんの顔は一気に青ざめたということと、直後に一気に高揚して赤くなったということ。
たぶん、売った金の代金を支払って大損だと思ったが、よく考えればそれ以上の値段でも十分に売れるアイテムだということに気づいたということだろう。わかるわかる。
「じゃあまず力の指輪を4つで、1個1500Gだとして6000Gでもいいかい?」
「いいですよ」
「それじゃあ力の腕輪だが、こっちは1個3000Gでどうだい?」
「いいですよ」
「そうかい。じゃあそれが25個で、75000。で、合計して81000Gだな」
「はい。じゃあそれでいいですよ」
「お、おう。……こっちから聞いといてなんなんだが本当にそれでいいのかい?、もしかしたら俺はとんでもなく安く買いたたこうとしてるかもしれないぞ?」
そう、それは実際に第1階層で経験した話だった。
だけど私は思ったのだ。よくよく考えればそんなことはどうでもいいと。
だってアイテム自体は取ってこようと思えばいくらでも取ってこれるしね。
それに仮に他の武器屋に行った時に同じアイテムを売って、そっちの店の方が高くアイテムを買い取ってくれると言うなら前の店にはもう行かなければいいだけのことなんだし。
「はい。私ならその2つのアイテムならいくらでも取ってこれるので」
私はこともなげに店主のおっさんにそう言うとおっさんは呆れ返ってこう言った。
「おいおい、まじかよ。俺だってこの街の武器屋やってるから知ってはいるぞ。この力の腕輪は……」
「沼地のマッドゴーレムがすごく低確率で落とすレアアイテム、なんですよね?」
「あ、ああその通りだけど。……いや、ちょっと待て。それならどうして25個もここにあるんだ!?」
「もちろん私が倒して手に入れたからですよ。それとここにあるのは正確には30個です」
「はぁ?」
「まだ私、同じアイテムを5個持ってるので」
「ああ……そう」
おっさんはその言葉を最後にもう何も言わなくなった。たぶんそれ以上あれこれと考えることが面倒になったんだろう。重要なのは今この場にそのレアアイテムが25個あって、それを私がおっさんの店に売ったという事実のみ。
ただ、私が店を出る前におっさんが私に向かってつぶやいたであろう一言を私はしっかり耳にした。
化け物、と。
店を出てから私はしばらく考えていた。
化け物とか、私これでも一応神様なんだからちょっと傷つくよね。
でも、ここはゲーム世界の中で、あのおっさんはゲーム内のキャラだから別にいいか。
それに……
「人間からしてみれば、神も化け物も似たようなものなのかもしれない」
それは人間ではない、人間には理解できない超常の生物として見ればの話だが。
<第2階層:花の都フローリア:冒険者ギルド>
ギルドへとやってきた私はまず銀行の窓口へ行き、所持金から10万Gを預けた。
さっきの武器屋で得た金+今回の探索でモンスターから得た金を合計した上で、キリの良い数字を預けたのだったが、まあ受付の人は驚いてたよ。
私が10万という大金を一気に預けたことにもだけど、すでに預け金が25万Gもあることにも驚いてた。
それでよく銀行の受付とかできるなと思いもしたけど、まあ気持ちはわからなくないよ。
だってこの第2階層は、第1階層よりは敵が強くてお金も多く落とすとはいえフィールドのザコモンスターから得られる収入なんてたかが知れているし。
それに一気に10万預けるやつなんてまずいない。普通は途中で死んだりして失うことを恐れてもっとこまめに預けに来るものだろうしね。異常なのは私の方だ。
「まあ、それでもまだ所持金結構あるんだけど」
マッドゴーレムを30体も倒したし、その狩りの最中も他のモンスターとは普通に戦ってたからね。
というか、たった4時間で30体倒したと聞けばそんなでもないような気がするけど、それっておよそ8分に1体倒してる計算になるよね。
この時点で私はもうすでにこの階層はたぶん余裕で突破出来るんじゃないかという確信が強まった。
そして今日の探索でマッドゴーレムを30体倒したこともあり私のレベルはさらに2つ上昇して現在は23になっていた。やはり1体で500の経験値はすごくおいしいモンスターだったよね。
レベル23
HP:210/210 MP:134/134
STR:54
VIT:54
AGI:48
ING:45
DEX:27
LUX:26
(まだ使っていないスキルポイント:56ポイント)
私はスターテス画面を見ていてちょっとだけ気づいたことがあった。
STRの値がすでに50を超えている。ということは剛腕ⅩのスキルはSTRの値を元々のスターテスの50%上昇させるのでつまり今の段階で+27。
力の腕輪の装備品の効果を上回っちゃってるよ。えげつないな。
これで後は賢さの値を上昇させるであろうスキルが手に入れば完璧だな。
というか私は今のところ他のスターテスに比べて賢さが低いのだ。
別に私は片手剣の物理攻撃がメインなので賢さはそこまで高い必要性はないのだけど。
でも最近ではもう結構魔法も乱発したりして魔法攻撃も戦闘の主体になりつつあるし、何よりも敵からの魔法攻撃によって受けるダメージが痛い。
いや違うか。耐久とかもう強化しすぎてて物理攻撃だとエリアボスクラスでもないとダメージなんて早々発生しないからこそ魔法攻撃のダメージが目立ってるだけかも。
「これで賢さまで強化されたらいよいよ私は化け物だな。まったくチートが過ぎるよ」
しかしこれも私の神様としての恩恵の効果でって、もう何度も言ったからいいよね。
というか、まじでそろそろ1回ちゃんと確認しておいた方がいいんじゃないだろうか。
いや、いつかは絶対に確認しなきゃいけない時がくるだろう。
さすがにいつまでも自分の恩恵の効果を知らないままでゲームをするというのはね。
「でも今はまだ、その時じゃないな。うん」
私はそう自分に言い聞かせるとそれできょとんとした顔の銀行の受付員に礼をしてからギルド掲示板の方へと向かった。
牧草地帯のクエストを受けておくためだ。牧草地帯は夜になってしまうと昼間に出現するモンスターが出現しなくなってしまう。
ちなみにゲーム内での夕方はゲーム的にはまだ昼という扱いになってるけど。
今ここで牧草地帯の昼間に出てくるモンスターの討伐や、素材採取のクエストをこなしておく。
牧草地帯のギルドクエストには、コボルトサーベルとグラスウィードの討伐もあったが、これは夜になってからやればいい。今は牧草地帯の昼に受けられるギルドクエストを片付けよう。
――そして40分後――
私は牧草地帯と街を往復した。
牧草地帯で受けられるギルドクエストは9件。そのうちの2件、つまり先ほどのコボルトサーベルとグラスウィードの討伐以外の7件のクエストはクリアした。
時刻は現在午後6時30分。この階層の夜は8時からなのでまだ1時間半ほどは夕方もとい昼だった。
夜になればすぐにまた牧草地帯で残りの2件のクエストを片付けてから、夜の沼地を攻略しに行こうと思っているんだけど。
「うーん。でもそれまで暇だな。また住人クエストでもやろうかな」
50件あるこの街の住人クエストのうち、私は『短剣入門』のクエストをクリアしたことですでにその半分となる25件を依頼達成していることになる。
そしてその残りの25件のうちクエスト内でボスとの戦闘が待ち受けるボスクエストがまだ2つ残されていた。もちろん今ボスクエストを受ける気はない。けれどそれでもあとまだ23件も住人クエストが残っているのだ。
前から言ってるけど、別に全てのクエストをやる必要などどこにもないのだ。
でも私はもう第1階層のクエストはコンプリートしてしまったし、それならせっかくだから出来る限りこの階層のクエストもコンプリートしてやりたいなってだけで。
ただ、クエストのコンプリートを目指すということはヤタガラスと同じレベルのクエストボスと戦うことになるボスクエストもクリアする必要があって。それはソロではおそらく無理だと思う。
「そういえば、ローズ達はもうこの第2階層に……さすがに来てるはずだよな。まだ出会ってないけど」
ローズ達もきっとドラゴンは倒してこの第2階層に来てるとは思うんだけど。
そうだな。私はもうすでに最後のフィールドである沼地を攻略中で、しかもそれよりも前のフィールドってほとんど行かなくなってるし。
街にも長く留まることはあまりないからタイミングを逃せば出会わないことの方が多い。
「あ、そうだ。フレンド登録してるから普通に連絡できるじゃん」
私はそのことに気づきフレンド画面を開いたら好都合なことになんと今まさに4人全員がログインしていた。そして現在位置も第2階層のフローリアの街となっている。
「え、今この街にいるの?」
私がそれを確認したのは街の祭壇がある公園のベンチ。
「どうしよう。ちょっと連絡してみようかな」
と、私が4人のうちの誰かに連絡してみようと思っていた時だった。
「だーれだ!」
「うわぁ!」
突然私の背後から伸びてきた誰かの手が私の目、視界を覆い隠した。
私はそれに驚きつつも今の声で犯人はすぐにわかった。
「ま、マロンちゃん?」
「えへへへ~。当たり~」
私が名前を言い当てると私の目を覆っていた手はどけられた。
そうして振り返った私は、私の座っているベンチの後ろで立っていたマロンちゃんを見つけた。
いやいや、それはさすがに気づかんよ。たぶん先にこっちの姿に気づいて後ろから忍び寄ってきたんだろうけど。
「久しぶりだね。お姉さん」
「う、うん。久しぶり?」
私はマロンちゃんにそう言い返しながらも内心で思った。
いや、久しぶりって言うほど前に会った時から期間空いてないと思うんだけど。
<モンスター辞典>
〇ブルーフロッグ
水族。スラッガー同様にゲーム初登場となる水族のモンスター。
直訳すると青い蛙という名前だが体色は青というよりは水色である。
蛙らしく飛び跳ねながらの変則的な移動に加えて攻撃方法も多彩で意外と苦戦するプレイヤーが多い。
一部の両生類大好きのプレイヤーはテンションが上がってたみたいだけどね。
雷属性が弱点で、もちろん水属性に耐性があるよ。
なお、倒した時に落とすカエル肉だが、料理というアイテム作成スキルのレシピの中にはちゃんとカエル肉のから揚げというアイテムレシピがあるよ。まあ、作ったそれを食べるかどうかはプレイヤーの自由だけど。
ドロップ:カエル肉
〇マッドマン
物質族。ストーンマンの強化版というか亜種で、体が泥で出来ている人型のモンスター。
基本的な行動はストーンマンと同じだが、こちらはストーンバレットの代わりにマッドショットという魔法を使用してくる点が違う。
マッドショットは前回の本編で説明したようにプレイヤーの敏捷を低下させる効果のある支援魔法で、これを食らうと地味に辛い。とくに上記のブルーフロッグとマッドマンが同時に出現した場合などは注意が必要である。ただでさえ素早いブルーフロッグがこちらの敏捷が下がったことで相対的にもっと速く動くように感じるので。
弱点はストーンマン同様に水属性と風属性。ただし耐性は火属性がなくなった代わりに土属性に変更されているので注意。(逆に言うと火属性の攻撃は普通に効くようになった。)
ドロップ:命の石
※マッドマンのドロップアイテムについての描写は、本編内にありませんでしたが、落としたものはストーンマンと同じで命の石でした。筆者は命の泥にしようかとも思いましたが、命の泥ってなんか嫌だったので同じにしました。もちろん玲愛はちゃんと拾ってるよ。不本意ではあるけども。
※マッドゴーレムについては次回紹介。
※沼地の昼間にはもちろん既存のモンスターもいくつか出現していますが、そのことについては次回以降の本編内で語られるのであしからず。




