表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第2階層―GREEN―
63/171

ニートな女神と初めての通り名

皆さま、明けましておめでとうございます。

というわけで本日からまた更新が再開しますが、私は特に何日に1回だとか、何曜日に更新だとかは決めずに気分が乗った時にさらさらと書いていくタイプの人間なので今年も更新までの日数は不定期です。

でも、最後までちゃんと書くので!

 それからのことだが、まずは私を3人のパーティに入れてもらうと私の提案でクイーンビー討伐のギルドクエストをこの4人で受けることに。私が今回3人のクイーンビー討伐に参加しようとしたのはもちろんこのギルドクエストをクリアするためだったのだけど。


 ちなみに、クエストについてだがクエストを受けた後でもパーティメンバーの変更や増員は可能だが、あくまで依頼書を受注した際にギルド側に申請したメンバー以外は、クエストをクリアしてもクリアした扱いにはならず報酬も受け取れない。

 ギルドでクエストを受け、それをクリアして報酬を受け取れるのはあくまで依頼を受けた時にギルド側に申請したプレイヤーのみだということだ。


 ただし、たとえばAさん、Bさん、Ⅽさんの3人であるクエストを受注して、そのクエストをAさんとBさんの2人だけでクリアしてしまった場合などは、Ⅽさんはクエストクリアにならず報酬も受け取れない。ようは依頼申請に名前だけ登録しておいて1人だけズル休みはできないってことだ。


 それでギルドを出てから10分くらい、各自アイテムの補充などを済ませる時間を設けた後で、私たちは街の南東門の前に集合した。


「あ、そうだ。フィールドに出る前に玲愛ちゃん。玲愛ちゃんって武器は何使うの?」

「え?」

「ああいや。私たちはこれまでずっと3人でやってきたから。玲愛ちゃんを入れて4人でってなると陣形とか戦い方も変えなきゃいけないかなって」

「ああ、そうですね。えっと、私は片手剣がメインですけど攻撃魔法も割と使います」

「そうなんだ。じゃあ、えっと……とりあえず中衛を任せられる?」

「はい、わかりました」


 パーティでの戦闘では陣形というか、基本的なプレイヤーの連携を行うための隊列の組み方が重要になる。多くの場合、プレイヤーは前衛、中衛、後衛の3か所に分かれることになるわけだが。


 まず前衛とは、主に物理攻撃が主体となる戦い方をするプレイヤーが配置され、モンスターの攻撃を引き付ける壁役などもここに置かれる。

 序盤は特に初期武器には剣や槍などを選んだプレイヤーが多いだろうから、プレイヤー全体を通してもきっとこの前衛を担当するプレイヤーが結構多いのだと私は思う。


 後衛は逆に、遠距離からの攻撃や前衛のプレイヤーに対して支援を行うプレイヤーで、弓や銃、そして魔法使いは大体がここに置かれる。後衛のプレイヤーは耐久が低いことが多いので前衛プレイヤーは後衛プレイヤーが攻撃されないように全力で守るというわけだ。

 パーティ編成では回復魔法等を使うヒーラーはまず間違いなく後衛に置かれる。


 そして、私が任された中衛というのはまあ基本は自由にしていいということだ。

 前に出てモンスターに直接攻撃してもいいし、後方支援に回ってもいい。

 よくいえば万能型のプレイヤーだが、悪くいうとどっちつかずで器用貧乏。

 でも実際の戦闘では意外と活躍する機会も多いらしいから、まあやってみて、かな。


「えっと、パス太さんは片手剣と盾、ペペロンチーノさんは大剣使いで前衛。それでナポリたんさんが弓使いで後衛ってことでいいんですよね?」

「ああ、そうだよ。本当はもう1人魔法メインで戦えるプレイヤーも欲しいところなんだけどね」

「昨日も言ってましたね、それ」


 前衛2人に後衛1人というのは3人パーティでは特に珍しくもないが、3人全員が物理攻撃メインの戦い方をする場合は少しだけ不安があるというのもわかる。

 耐久が高い敵などにはやはり魔法攻撃が得意なメンバーがいた方が戦闘も安定するのだ。


 ああ、そう考えるとローズ達のところは上手い具合に分かれたな。

 ローズと李ちゃんが前衛で、マロンちゃんとラフィアちゃんが後衛で魔法使い。

 仲良し4人組だけどそういうところはきっちり考えているんだな。ただの偶然かもしれないが。


 本当に酷いパーティだと6人組で全員が前衛、なんていうところもあると聞くし。

 まあそういうところはむしろ、全力で力押ししてモンスターを倒しまくっていくのだろうから問題はないようにも思えるがやはりパーティ編成はバランスが大事だな。うん。


「それじゃあ行くか」


 そうしてパス太を筆頭に、私たちは門を出てまずは花畑フィールドに。


 で、そこからダンジョンである森に向かうまでのことについてだが、戦闘は大体が前衛の2人でモンスターの大半を倒してくれて私とナポリさんは後ろで暇を持て余していた。

 たまに2人が打ちもらしたモンスターが数体来てもナポリさんが弓で止めをさしていたので私は本当にやることがなかった。だから道中は主にナポリさんとお喋りをしながら歩いていたのだけど。


「そういえば、皆さんはクイーンビーについてどこまで知ってるんですか?」


 私は3人の中でもきっとブレーン(色々考える役)であるナポリさんに聞いてみた。


「うーん。なんか強力な雷属性の魔法を使ってくるってことくらいかな。ああ、あとはもちろん昆虫族のモンスターだから火属性が弱点ってことくらい」


 なるほど。だけどそれでは一番厄介なあのことについては知らないわけか。


「そうなんですか」

「ええ。……それにしても驚いたな。まさか噂の竜鱗りゅうりん乙女おとめが玲愛ちゃんのことだったなんて」


 …………ん?


「え、何の話ですか?」

「何って、玲愛ちゃんの通り名のことよ。……あれ、もしかして初耳だった?」

「通り名……?」

「あなた第2、第1階層じゃ今かなり話題に上がってるのよ。……攻略サイトの掲示板とか見てないの?」

「掲示板?……いえ、見てないです」


 え、というかちょっと待って。


「そうなの。まあ、私たちも熊を倒した後で街に戻ってきてから聞いたんだけどね。リアルで掲示板探ってみたら結構噂になってたわよ?」

「あの、その。竜鱗の乙女っていうのは……」

「まあまず間違いなく今玲愛ちゃんが着けてるその装備からきてるんでしょうけど。序盤じゃほぼ不可能とされている迷宮のボスをソロで撃破したプレイヤーっていうことですごく話題になってるみたい。私も気持ちはわからなくもないけど」


 なんということだろう。そりゃあたしかに私も少しは他のプレイヤーにも知られているというか、ちょっと噂になってるかなくらいのことは思ってたけどまさかそれで通り名とかつけられてたとか。

 しかし竜鱗の乙女か。悪くはないんだけど女の子からしたらちょっと複雑な気分にもなったり……いや、しないな。私の場合は。


「あれ、でもほぼ不可能ってことは以前にも何人かいたってことですよね。その、ドラゴンをソロで撃破したプレイヤーが」


 私はそこでさっきのナポリさんの言葉を思い出してナポリさんに聞いてみた。


「そりゃあ、ねぇ。さすがにそう何人もいるわけではないだろうけど、たとえば今ゲーム攻略最前線で頑張ってる人の中にはそういう化け物クラスのプレイヤーが何人かはいたんでしょうけど」

「化け物クラス……」

「ああ、ごめんごめん。別に玲愛ちゃんのことを言ったわけじゃなくてね。えと、つまりはそう、ゲーム序盤からものすごく強いプレイヤーって言うのかな」

「……ああ」


 そうか、そりゃあまあいるにはいるよな。

 もしも私があのドラゴンをソロで倒した初のプレイヤーだったとしたらきっと今以上に騒ぎになっていることだろうし、そうなればいくら私でも気づくはずだ。

 それがそうなってないということはつまりいたわけだ。以前にもドラゴンをソロで撃破したプレイヤーが少なくとも1人は。

 ……まあ、その人はたぶん今はもっとずっと先の階層にいるだろうし私の今の攻略ペースじゃこの先出会うことなんてまずないんだろうけど。


<第2階層:森>


 私たちは花畑を抜けるとようやくダンジョンの森までやってきた。

 ソロの時と違ってパーティを組むと意外と移動に時間がかかったりするのだ。

 その分戦闘にかかる時間が短縮されているはずだが体感ではやはりそう感じてしまう。

 そもそも今の私からしたらソロで戦った時の方が戦闘は速く終わるし。


「よーし、一応前に来た時にだいたいのマッピングは済ませておいたからボス部屋の場所はわかっている。皆準備はいいかな?」


 森に入ったところでリーダーのパス太がそう聞いてきたので私は無言で頷いた。

 そうしてまあ森の中では、私も中衛として時に前に出て剣を振るったりしながら戦闘に参加する機会も増えたから退屈はしなかったよ。

 ただ、途中でナポリさんになんか私が倒したモンスターからは100%の確率でドロップアイテムが出ていることに気づかれたため私はそこで白状することになったのだけど。


「私の神様の恩恵の効果です。その、運の値に補正がかかってて、モンスターからドロップアイテムが出やすくなってるんです」

「へえ、なるほどね。それじゃあ素材アイテムとかも結構貯まるからお金には困らないでしょう?」

「ええ、まあ。ちょっとした小遣い稼ぎ程度ですけど」


 もちろん嘘は言っていない。ただ、私自身それが事実であるのか知らないだけであって。

 もちろん3人には今言った情報は口外しないように言っておいた。まあ、それがどこまで意味があることなのかはわからないけど。

 でも、よくよく考えてみれば私の恩恵の効果(推定)って、別に他のプレイヤーにばれてもとくに影響ないんじゃないかなとは、最近ちょっと思うようにもなったんだけど。


「そういや攻略サイトで話してたやつがいたな。たしかツクモガミだったか。モンスターを倒したときにアイテムがドロップしやすくなるっていう。君のも似たようなものなのか」


 ペペさんがそう教えてくれたけど、なるほど、似たような効果でそういう神様もいるのか。

 ツクミガミ、という名前の神様は私は神界でも聞いたことはないけどアイテムを落としやすくするだなんて、そいつは「幸運」か、あるいは「窃盗」でも司っているのだろうか。

 神様の中には、そういったどう考えても悪い意味にしか捉えられないものを司ってる邪神と呼ばれる神も少数だが存在している。そういうのはだいたい性格も悪くてひねくれてるやつが多いから神界でも嫌われているけど。


「こーら。それ以上の詮索はマナー違反よ。ペペロンチーノ」

「うお、ああ、すまん」

「……ああ、そうだ。それなら皆さんの恩恵の効果も、ちょっとだけ教えてもらえませんか」

「そうね。元はと言えば私が玲愛ちゃんの恩恵に気づいちゃったのが原因なわけだし、いいわよ」


 ということで私は麺類トリオのそれぞれの神様の恩恵の効果をちょっとずつだけだが聞いた。

 まずパス太は、戦闘中だけ力と敏捷がちょっとだけ強化されるという非常にシンプルだが剣士としてはとても有用な効果を得ているらしい。

 ペペさんは耐久が強化されるというこれまた壁役には嬉しい効果が。

 それでナポリさんについてだが、弓矢の命中率が上がるというものらしい。これに関しては私は弓はまだ装備できないのであまり実感は湧かなかったけどまあ本人は満足しているようだったので良い効果であることは間違いない。


「私が聞いた話だと、最初に教会で神様の恩恵を授かるじゃない。でもたとえば私のがわかりやすいけど、私の神様の恩恵って、初期武器を弓にした人じゃないと得られないものらしいの」

「え、どういうことですか?」

「うーんとね。神様によってはある程度条件が必要なものもあるって話。たとえば、この神様は種族がエルフやドワーフにした方が選ばれやすいとかね。まあそれでも神様の種類ってほんとに多いからランダムに決まることには違いはないんだろうけど」


 なるほどな。たしかに言われてみればその通りなのかもしれない。

 弓の攻撃の命中率があがるという恩恵の効果の場合、初期武器が弓でないとゲーム序盤はまったく何の意味もない恩恵の効果であることは間違いないだろう。

 少なくとも先の階層で弓を装備できるようになるまでは無意味な効果だ。

 だからそういう恩恵の効果をもたらす神の場合は、事前に作ったプレイヤーキャラの設定等も考慮した上でプレイヤーに与えられるのだろう。

 ただ、事前に自分が好きな神様とかいたりした場合、それでゲームを始める前に攻略サイトとかでその神様の恩恵の効果が得やすい組み合わせとか調べて、それを元にキャラクターメイキングするやつとかもいそうだなとは思ったが。


「ま、それはプレイヤーの自由ってことか」


 私は1人そうつぶやくと剣を振るい前衛の2人が取りこぼしたモンスターを斬り伏せた。


 それでそれからも順調に森の攻略は進んでいきついにあの巨大ハチの巣がある部屋の手前、つまりボス部屋の手前のルームに到着した。

 やはり4人パーティになるとソロでは苦戦したニードルラビットの群れなどもあっさりと倒すことができて楽だったな。


「……よし。この先がボス部屋だ。皆、準備は出来てる?」

「ええ、私は大丈夫です」

「俺も問題ない」


 リーダーのパス太の問いかけに対して他の2人はそう答えた。しかし私は……


「あの、すみません。私からちょっといいですか?」


 私はそこでやっぱりそれは言っておくべきだろうと思い3人に声をかけた。


「ん、何かな?」

「あの……実は私、皆さんに黙ってたことがあって。その、実は私前に1度クイーンビーと戦ったことがあるんですけど……」

「「「……え?」」」


 私がそこから一気にその時のことを話すと3人はそうだったのかと最初は驚いたけどその後で笑って許してくれた。というか、むしろ1度戦ったことがあるプレイヤーがいるのなら助かると言ったような感じであれこれとその時の戦闘のことを聞かれた。

 もちろん私は正直に前回のクイーンビー戦のことを話した。ただし、ドラゴン召喚からのファイアーブレスのところは抜きにしてなんとかゴリ押しで倒したことにしたけど。


「え、じゃあ玲愛ちゃんまさかソロでクイーンビー倒しちゃったわけ!?」

「ええっと……はい。一応は」

「すごいな。いや、しかしあのドラゴンをソロで倒したんだからそれも当然と言えば当然……なんだろうか?」


 いや、そんなことを聞かれてもわからないけど。


「でもそうか。そんな君でさえ苦戦を強いられた相手ともなると、心してかからないといかないな」


 ペペさんは私の話を聞いてそう言ったけど。


「あ、それは大丈夫だと思います。クイーンビーとの戦いは、まず周囲のキラービーを皆で手分けして倒してからなら。普通にクイーンビー本体に攻撃も通じますし」


 だから私は皆の士気が下がらないようにすかさずフォローを入れた。

 それを聞いて3人はそれもそうかといった顔でどうやら納得してくれたみたいだけど。


「でも玲愛ちゃん。それなら別に私たちと一緒にクイーンビーを倒しにいく必要はないんじゃないの?」

「え?」

「そうだな。玲愛さんはもうソロでも1回倒してるらしいし」

「なんでわざわざ俺たちと一緒に討伐クエストを受けてくれたんだ?」


 あー、そっか。それはそうだよね。

 うん。まあ別に私もやろうと思えば実際はクイーンビーをソロで倒すことはできるんだ。

 ただその場合、またあのドラゴン召喚からのファイアーブレスの使用が必須であり、そしてまたあの恐ろしい光景と女王蜂の断末魔にも似た悲鳴を聞くということでそれはもう勘弁願いたかった。

 それに、あまり召喚のスキルに頼った戦闘をしているといつの間にか使うことがクセになっていきそうでちょっと怖いという思いもあったから、強力すぎるスキルというのも考え物だな。


「えっと、前にソロで戦った時はその、危うく死にかけて。それで今回はより安全に倒したいなと思って。だから一緒に」

「む?……そうか、なるほどな」


 良かった。どうやら今ので皆納得してくれたみたいだ。

 ただ私がなぜ今このタイミングでこの話をしたのかと言うともちろんそれには理由があって。


「それであの、ここで皆さんに聞いておきたいんですけど。皆さんはその、クイーンビーとの戦いって今の状態のままで戦いたいですか?」

「うん?、それはどういう意味だ?」

「実は私。クイーンビーとの戦いに役立つアイテムとかちょっと持ってて。それがあるとほんの少しだけではあるかもですがクイーンビー戦がちょっと楽になると言うか、比較的安全に倒せるようになると言いますか」


 そう、本題はそのことについてだった。

 というのもおそらく私の読み通りであるならば、まず間違いなくクイーンビーはキラービーからの攻撃によって受ける麻痺の状態異常よりも強力な麻痺にしてくる攻撃を使用すると思われたからだ。

 前回私が戦った時は私はすでに麻痺無効のスキルがあったために確認することは出来なかったのだが、クイーンビーも第1階層のビッグポイズンスパイダーと同じ流れを組むモンスターであればその可能性は高い。

 ビッグポイズンスパイダーから受ける毒の状態異常が、通常のポイズンスパイダーから受ける毒よりも強力であり市販の毒消し薬では解毒できなかったという事実はすでにローズ達を救出した際に確認済みだった。

 だからおそらくはクイーンビーの攻撃で受けるだろう麻痺も、市販の麻痺消し薬で直せないレベルのものではないかと思うのだ。


「それで皆さんは今のままの状態で挑むか、それともできるだけ安全に倒せる方法があるならそっちの方がいいのか。ちょっと、聞きたくて」

「ふーむ。そうだなぁ……ごめん。ちょっと向こうで3人だけで話し合わせてもらえないか?」

「もちろん大丈夫です」

「わかった。よし、じゃあちょっと話し合おうか」


 そうしてパス太、ナポリたん、ペペさんの3人は私からちょっと距離を置いて私の提案に乗るかどうかの話し合いを始めたが、意外にも結論は早く出たみたいで話し合いは2分とかからなかった。


「玲愛さん、結論が出たよ」

「はい。それでどうしますか?」

「うん。ぜひとも安全策で行かせてもらいたい。だから、もしも君が良ければボス戦で役立つアイテムがあるというなら貸してもらいたい。もちろん、戦闘が終わったら君にもらったアイテムはちゃんと返すし、消費アイテムで使っちゃった分は、そのアイテムに見合うだけの代金を支払うから」

「え?……あー、はい。そうですね。それじゃあそれで」


 本当は代金とかいらないと言っても良かったけど、ローズ達との一件もあるしここはもうそれで了承しておいた方が良さそうだった。うん、あくまで私は今回だけの臨時メンバーで、アイテムを貸したりするのも今回だけのことだしね。


「それで、クイーンビー戦に役立つ……かもしれないアイテムって具体的にはどんな?」


 ナポリさんが興味津々といった感じでそう聞いてきたので私はアイテムボックスから実物を取り出すととりあえず3人の前で1つアイテムを見せて説明した。


「えっと、皆さんにあげ……あ、お貸しするアイテムなんですけど。2種類あります。そのうちの1つはこれです」

「それは……指輪、か?」

「はい。これは耐麻痺の指輪というアイテムで装飾品です。これを装備していれば仮に敵がこちらを麻痺にする攻撃を使ってきてそれを受けたとしても、50%。つまり2分の1の確率で麻痺の状態異常になることを防いでくれます。そしてこのアイテムをまず皆さんに1つずつお渡します」


 私はそう言ってパーティメンバーである3人に耐麻痺の指輪を1つずつ譲渡した。

 もちろんこのアイテムは、前回私が倒したクイーンビーから4つも手に入れたものであり、私はもう麻痺は一切効かないのでこのアイテムは無用の長物と化していたのだが、やはりまだ売らずに持っておいて正解だったな。

 ただ、私が装飾品というこの時点ではかなりレアなアイテムを簡単に人に、それも合計3つもポンと貸し出したことに対して受け取った側の3人はかなり驚いていたっぽいけど。まあでもそこは何も言わずに素直に受け取ってくれた。そして私は3人にもう1つアイテムを譲渡した。


「そしてこれがもう1つのアイテムで、こっちは消費アイテムなんですけども」


 私がとりあえずアイテムボックスから取り出したそのアイテムを見て3人はちょっと首をかしげた。


「えっと、それは?」


 私が取りだしたのは中になにやらオレンジ色の液体が入っていた小さなペットボトルだった。


「ふふふ。これが対クイーンビー戦でもっとも役に立つであろうアイテム。オレンジジュースです」


 私がそう言うと3人は今度こそ本当に口を開けたまま固まってしまった。

 いや、ほんとこれ冗談抜きでマジの話だから。そんな顔されても。


<神様の辞典>

〇ツクモガミ

下界では主に日本の伝承内に登場する神で「道具」を司る。

ただしこの名前を持つ神は実は存在しておらず、ツクモガミとは正式に言うと道具を司る神々の総称である。

下界に存在するありとあらゆる道具にそれぞれ神が宿っており、またそれらの道具を司るという思想の中で誕生した神の名前であり、よって神界にもツクモガミという名前の神は存在していない。

アストレアがツクモガミという名の神のことを聞いたこともなかったのはそれが理由である。

なお、下界の漢字では付喪神、九十九神などと書かれる。


ただし、神界にはその分多くの道具を司る神が存在しており、それぞれが〇〇ノツクモという名前の神を名乗っている。実は神界でもっとも多く存在するのはこの道具を司る神たちである。

理論上は下界に存在する道具の数だけそれを司るツクモガミが存在する計算になるが、今現在神界に何柱のツクモガミが存在しているのかは誰も知らない。なお、ツクモガミの多くは神界では会社や企業で社畜としてこき使われていたり、主に神界全体の中でも下の方の仕事をしている者が8割である。

例)オノノツクモ、ツリザオノツクモ、フライガエシノツクモ、フンドシノツクモ……etc



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ