ニートな女神と初めての牧場
アストレアが女神なのにあまり女性っぽくなくむしろ男みたいだという感想をいただきました。
しかし、ニートであり性格も面倒くさがりでズボラ。しかも1人暮らしの女性というものの中には、そういうタイプの人もいるわけで。どこか中年のおっさん臭い感じもしてますよね。
というか、実はアストレアには筆者の現実の女友達でモデルにした人がいるのです。まあその人はアストレアほど極端ではないですしニートではありませんが性格的な部分は似てます。まあその友達からはこの物語を読んでから、全然似てないよって言われたんですけど(笑)
スリープシープを倒したらドロップしたスリープシープの角というアイテムは、眠り消し薬の素材になるのだが、眠り消し薬の作成にはまだ眠り消し草というアイテムが必要だ。
森のダンジョンでは見かけなかったからてっきりこの牧草地帯に生えているのかと思ったがそれらしい草は見当たらない。
薬草は緑、毒草は紫、麻痺草は黄色、魔力草は青っぽい色の草だ。
毒消し草は緑に紫の斑点付き。麻痺消し草は緑に黄色の斑点付き。
これから察するに眠り消し草も緑に何色かの斑点がついてる草だと思うのだけど。
「ふーむ。あ、また羊だ」
スリープシープを再び発見した私。
スリープシープについて、何度か戦ってわかったことがある。
まずこいつは、フィールドに出現した時やあるいは軽く目覚めたとしても数分後には熟睡して向こうから攻撃をしてくることはないということ。
これはストーンゴーレムやフォレストベアと同じだからいいだろう。
そして耐久の値が高く物理攻撃が効きにくい。さらに火属性に耐性ありと見た。
弱点は雷属性で、上手くいけばサンダーボール一発で倒せるがHPが少しでも残ると非常に高い確率で仲間を呼び、さらに一定以上のダメージを受けたことで眠りから完全覚醒し、激怒。それまでとはうって変わって非常に攻撃的(アクティヴ状態)になる。
スリープシープが呼んだ仲間は最初からアクティブ状態で出現するが、呼ばれた仲間がさらに仲間を呼ぶで別の個体を呼ぶことはなく、1度仲間を呼んだ個体も2度目はない。
呼ばれる仲間の数はまちまちで少ないときは1体しか呼ばれないが、多いときは10体くらい呼ばれてさっきみたいな地獄に陥る。
そしてアクティブ状態のスリープシープは近くに仲間が5体以上いる場合は集合して全員で突撃攻撃をしかけてきてこれが速い上に攻撃力も高く大変危険。
攻撃力はその集団を構成している羊の数が多いほどに高くなる。
ただし数が4体以下になった場合は個別に攻撃をしかけてきて集合突撃はしてこない。
「最初に戦ったやつが10体も呼んできたのは運が悪かったんだな」
私はそう言うとそこで画面を開きスキルを確認した。
スリープシープからはもちろん眠り耐性(微小)のスキルがもらえて、それが毒耐性や麻痺耐性と同じように1体倒すごとに耐性が1%ずつ上昇していく。
まず最初に11体も倒したためにいきなり耐性は11%になってたけど。
私は50体を倒すまでは1体ずつ慎重に倒していったが、最後の方はあえて怒らせて仲間を呼ばせることで一気に倒してスキルの強化を計った。
なので比較的速くスキルは進化し眠り耐性は眠り無効へと変わった。
眠り無効のスキル効果についてはもう言わなくてもいいだろうが、眠りの状態異常にはならず眠り攻撃によってダメージも発生しないというもの。
「それにしても、状態異常って全部で何種類あるのかね。このまま1つずつ無効化していったらいつか全状態異常無効なんてスキルになったりして。ははははは」
いや、笑い事ではなく本当にありえそうな話なんだよね、それについては。
ああ、そうそう忘れるところだった。
それでこの牧草地帯にはもう1体新たなモンスターが登場してたんだけど。
というかそいつは意外と遭遇率が高くて、でもまあそれも納得できるわけで。
ある意味ではこの牧草地帯のフィールドに最もふさわしい外見のモンスターというか。
それはもちろん、牛さんだ。あのモーって鳴く動物。下界ではホルスタインっていうのかな、あの白と黒のカラーリングの乳牛がモンスターとして出現するのだ。
モンスター名はワイルドカウってなってたけど、もしかするとこいつこそがワイルドボアの強化版のモンスターだったのかも。
私がそう思った理由は単純で、攻撃方法がワイルドボア同様にこちらに向かって一直線に突進してくるだけだったから。
しかも力がウェアウルフ並みに高く素で受けたらダメージが発生した。さらに後方に吹っ飛ばされた。
耐久も高く賢さもそこそこあってHPも高い、力と敏捷も申し分ないというまさに欠点のないモンスターで、実は今までに遭遇したザコモンスターの中ではフォレストベアに次いで強いモンスターだったりした。でも、落ち着いて対処すればまだ倒せるけどね。
それで倒すとドロップアイテム、牛肉と牛乳を落とした。
「あれ、乳牛も牛肉に加工されるんだっけ?」
私の中では乳牛はあくまで牛乳を生産するものであって、牛肉等に加工されるのはもっと別の品種なんじゃないかと思ったのだが、そこらへんの知識はあまりないのでよくはわからない。
今度リアルで農業とか畜産を司る神にでも会ったらちょっと聞いてみようかな。
「まあゲームの中だしね。それ言ったらワイルドボア倒して豚肉が落ちたり、フォレストベアが木彫りの熊とか落としたりすることも……いまだに、納得いかないんだけど」
ただ、このワイルドカウから私は新たにスキルを入手した。
<新たなスキルを入手しました>
スキル:突撃
「ん?、突撃?」
それは、ワイルドボアからもらった突進のスキルの上位互換的なやつ?
〇突撃
10メートル前方に突撃攻撃を繰り出す。スキル発動中に直接触れた敵にダメージを与える。与えるダメージは自身のSTRとAGIの値を足した値が敵のVITの値を上回っている分増加する。敵のVITの値が自身のSTRとAGIの値を足した値よりを上回っている場合や、スキル発動中にオブジェクトにぶつかった場合は自身がダメージを受ける。
消費MP:6 リキャストタイム:15秒
「ん~?、突進と何がちが……ああそうか」
突進の方はこちらのVITと敵のVIT、ようは硬さと硬さのぶつかり合いなのに対し突撃の方は、敵はVITで受けるがこちらはSTRとAGIの合計。力と速さで勝負しているということ。
向こうがVITという単一の能力値であるのに対し、こちらはSTRとAGIという2つの能力値の合計値で判定するのでまあよほどのことがない限りこっちに分があるだろう。
自分のSTRとAGIの合計値よりも敵のVITの方が上っていうのは、そいつはよっぽどの鉄壁なんだろうし。ていうかそれならそいつには魔法で攻撃するし。
「突進よりも数値の勝負で勝ちやすいというか。VITの値よりもSTRとAGIの方に自信があるプレイヤーは突進よりもこっちの方が使いやすいか。あ、でも突撃の方がMP多く消費するのはやっぱこっちが2つの能力値の合計で勝負してるからかな」
2つのスキルは攻撃の射程は同じようなのでおそらくそれが理由だろう。
うーん、正直突進とかも。事前に覚悟してないといきなり前方に投げ出されたからな。
ようは使用する前にちゃんと姿勢を構えておけばいい話なんだけど。
「まあ、直線状に1体しか敵がいない時とか、あとは硬い敵にもどうしても強力な物理攻撃を当てたい時とかに使えるかな?」
ただ1回でMPを6消費というのは今の私のステータス的にはちょっと多い。
それになにより、私の場合はVITが十分高いので突進の方でも問題はないのだ。
突進の方が消費MPは3と突撃の半分で済むし、リキャストタイムの方も10秒と突撃よりは短い。
まあそれにしたって、私は突進の方も使うことはほとんどないのだけど。
私はワイルドカウの落とした牛乳(瓶に入ってる)を拾って、ふたを開けてその場で飲んでみた。
「おお。ハニービーのはちみつもうまかったけど牛乳もなかなかうまいな」
ゲーム内での妙なリアリティーは食べ物の味にも反映されているみたいだ。
というか、私は思うのだがこのVR系のゲームの中で味覚を再現する必要があるのだろうか。
視覚、聴覚、触覚と後はまあ嗅覚も一応ゲームの世界をリアルなものとして実感するためには最低限必要な要素だろう。
でも味覚って、ゲーム世界の中で何か食べ物を口にしないと感じられないし。
そしてVR世界の中では食事を摂る必要なんて本来はない。
もちろん戦闘中に回復アイテムなどでポーションを使用することもあるが、それも使用するだけで実際にアイテムとして液体を飲む必要はないと思うんだ。
ポーションを使うを選択すればそれで自動でHPが回復するんでも良くないか?
「まあ、あえて絶対に必要ではない味覚も再現したのはきっと、五感すべて再現してますって言うのが一定の売り文句になるからだろう」
下界にはこのゴッドワールド・オンラインのようなVRゲームが流行だという話だったけど、やはりそのゲーム会社毎の技術力や開発力の差というのがあって、このゲームのように五感をフルに再現したものはかなり少数なのだとか。
多くは味覚、そして嗅覚までの再現には至らず酷いものは触覚の再現まで完璧にはできなかったせいで体を動かしたときに違和感がすごいと非難や苦情が殺到したものも多かったらしいし。
まあそれでも最低限、視覚と聴覚がある程度リアルに再現できていれば後は多少問題があっても楽しめるのだろうけど。
でも、そんなやつが多いからこそ少数の五感のフル再現を実装したゲームとそれを制作したゲーム会社は一躍有名になっているという話だ。
ただ、ゴッドワールド・オンラインの一番すごいとされている点はそこではなく。
このゲームを始めた時にも言ったが実はこのゲーム、無料でダウンロードできるソフトなのだ。
しかも、ゲーム内でリアルマネーを使っての有料コンテンツの類は一切存在しないという。
それなら大本のゲーム会社はどうやって利益をあげているのだろうか?
確実に言えることは、ゴッドワールド・オンラインというゲームはまず間違いなく下界に存在するVRMMORPGの中でもトップクラスの面白さと満足度、そしてプレイヤーからの支持を得ているという事実だけだ。
ゴッドワールド・オンラインは12歳以下の人間はプレイが禁止されている。(表向きは体への負担があるかもしれないためと言われているが、まあ一部残酷な描写もあるらしいし)
そしてゴッドワールド・オンラインは時間加速機能がないため、現実の世界とゲーム内の時間がリアルタイムでリンクしているんだけど。
学生は平日は午後まで学校があるだろうし、社会人は仕事があるだろうし。
だからそれがまあ一番大きな理由なんだろうけどこのゲームを常時プレイしてるやつなんてのは不登校の生徒か社会人ニートくらいのものだ。あるいは裕福なゲーム廃人。
「ここまで再現できるんなら時間加速機能もつけれただろうに」
時間加速機能というのは、つまり現実世界では1時間しかたっていなくてもゲーム世界では12時間経過しているとかそういうやつだ。
逆に言うとゲーム世界で半日過ごしたとしても現実世界ではたった1時間しか経っていないということになるが、この点が実はちょっと問題があるらしい。
プレイヤーにはゲーム世界で過ごした12時間分の記憶がもちろんあるため、つまり現実の肉体とゲーム内にいるプレイヤーの意識、精神との間に齟齬が生じるのだ。
ようは肉体年齢と精神年齢が大きくずれてしまう可能性があるようで、それが直接的に脳に過度な負担がかかるという問題もある。
だから時間加速機能を搭載したVRゲームでの加速の度合いは大きくても6倍程度で、その場合でも1日のうちにプレイしても大丈夫な時間というものがメーカー毎、ゲームごとに設定されているらしいのだが、下界ではそれを守らなかったために現実世界で精神に変調を来たして病院送りになった者が続発して、VR依存症という言葉も生まれたほど。
「あくまでとことんリアリティーの追及に力を入れているっぽいから時間加速とかも、できないようにした理由もわかるけど」
ちなみに私は今の情報について、街で他のプレイヤーに色々聞いてみて知った。
冒険者ギルドや酒場、あとは住人クエストをやってる合間とかにね。
だけど聞けば聞くほどに面白いな、下界。そしてそこに住む人間たちも。
今まであんまりって言うかほとんど知らなかったからね、私。
いや、普通は神様ってもっと下界の人間のこととか知ってるようなものなんだろうけど私の場合は司るものを知ってから必死にそれが何か神界で調べたりして、それでわからなかったからもういいっやってなって。
「ああー。そうだなぁ。そういや私って下界なんて直接見たこと2、3度くらいしかないし。今どんな世界があってどんな感じになってるのかとか知らないからな」
私は今度機会があればちょっと今の下界がどんな感じなのか覗いてみようと思った。
神界には下界の門という場所があって、その場所から神は下界の様子を見たりあとは直接下界に行くこともできるのだが。私は過去に2、3回くらいしか行ったことはないし、前に行ったのは私がまだ実家にいた時に地元の友達とかと一緒に遊びで見に行った時だからもう……何年前だろう?
少なくともそれがパッと思い出せないくらい前の出来事だということはわかる。
下界の様子を見るだけなら神様ならいつでも誰でも自由に見れるんだけど、下界に行く場合は事前に色々と申請書類とか書かされて面倒なんだよな。
まあ、行くとしたらゲーム攻略が一段落したあたり、暇がある時に、だな。
<第2階層:牧草地帯(牧場)>
「ここが牧場かぁ~」
私は牧草地帯で一通りモンスターを倒して、眠り無効のスキルも手に入れたので牧草地帯にある木でできた柵を伝って歩き、ついに牧場の入り口を発見すると中へと入った。
ちなみに木の柵は私の腰くらいまでの高さしかなかったけれど乗り越えることはできず柵の上には見えない壁のようなものがあるようだった。ただ、柵の奥にある牧場の景色は見えてるんだけどね。
入り口はすごくわかりやすかった。
大きな木でできた門の上にでかでかと看板が掲げられておりそこにはこう書かれていた。
『ようこそアーネル牧場へ!』
どうやらこの牧場はアーネル牧場という名前らしい。
中に入って現在地点を確認して見てもそう表示されたいたので間違いはない。
そして牧場に入って少し進んだところでいかにもこの牧場の主って雰囲気のNPCがいたので私は声をかけてみた。その人はなんか鍬を持って畑の土を耕していたようだけど。首に白いタオル巻いて、麦わら帽子を被ってるおじさん。
「こんにちわ!」
「おお、こんにちわ。この牧場に何かご用かな?」
「いえ。たまたま通りかかったのでちょっと見学を。あなたがアーネルさんですか?」
「ああそうだよ。この牧場は私と私の娘2人でやっていてね。ああ、すまないんだが牧場の見学をしたいならまずはあの建物に行ってくれ。今は上の娘がいるはずだから」
「はい。わかりました」
ふむ。やっぱりアーネルは人の名前、この経営者のおじさんの名前で合ってたか。
しかしこの広い牧場をアーネルさんと娘2人の3人で経営してるっていうのは凄いな。
私はアーネルさんに言われたとおりに牧場にある一番大きな建物に行ってみた。
するとその建物の1階はそれなりに広いスペースだったようで他のプレイヤーの姿もあった。
どうやらここは見学しに来た客が集まる休憩所みたいなとこらしい。
そしてその休憩所の中に、いかにもさっきのアーネルさんの娘だとわかるようなNPCの女性がいた。
「こんにちわ」
「あら、こんにちわ。あなたも冒険者さんね」
「そうです。けど、あの、ここは?」
「ああ、この建物は観光客や冒険者の方たちのための休憩所よ」
「ああ、やっぱりそうだったんですか」
「ええ。最初はなかったんだけどね。お客さんがよく来るようになったから新しく建てたの」
「へぇ~」
それはつまりこのゲームが配信された当初はなかったけど、後から足されて作られた施設という意味なのか。それともそういう設定?……いや、それはどうでもいいか。
「あ、そうだ。あなたも何か食べる?、うちで作ってるソフトクリームは絶品なのよ?」
「おお!、そうだった。はい、じゃあソフトクリームを1つお願いします」
「はーい。ちょっと待っててね」
そういやギルドの受付のお兄さんも言ってたっけ。ここの牧場はソフトクリームがおいしくて有名だって。ソフトクリームは基本の白いやつしかなかったけど値段は1つ130Gと安かった。
「どうぞー」
「どうも。…………こ、これは!!」
「どう?、おいしいでしょ?」
「はい!、すごく甘くて、おいしい」
ソフトクリームはおいしかった。ゲームの中のはずなのに感動して涙が出そうになった。
現実世界でもこんなにおいしいソフトクリームは食べたことがないぞ。
なんだこれは。いや、ものはソフトクリームなんだけど。だけど味覚の再現率がすごい。
私はお姉さんから手渡されたソフトクリームをすぐに食べつくすと2個目をもらった。
そして2個目も食べ終えたところで私はお姉さんに聞いてみた。
「あの、この牧場では他にも何か売ってるんですか?」
「もちろんよ。あ、もしかして何か買いに来たの?」
「いえ。あの、どんなものが売ってるか教えていただいても?」
「ええ、いいわよ」
ということで私の眼前に牧場で売っている物のリストが表示された。
どうやらこのお姉さん、アーネルさんの上の娘さんはここの牧場のお店の店員さんでもある扱いのNPCらしい。で、牧場で売ってたものだけど。まあ大方予想通りではあった。
牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品。卵もあったからここは鶏も飼育してるのだろう。
そして野菜類もだいたいは街の野菜屋さんと同じような品揃えだった。
フローリアの街には、商店街のようにお店が密集している場所はなかったけど街の地理はもうあの花壇に水やりクエストでだいたい把握していたし、それぞれのお店の商品も店員さんに声をかけて確認済みだ。
まあ第1階層の始まりの街と売ってるものはほとんど変わってないようだったけど、例えば魚屋には川魚が置いてあったりしてやはりちょっとは違う部分も見受けられた。
あれ、でも待てよ。
そういや魚屋とかに海の魚とかあったけど海とかない階層のああいうお店って、どこからどうやってそれを仕入れているんだ?
いや野菜や果物に関してもそうだ。第2階層にはここにこうして牧場とかあってちゃんと育てて収穫してるっぽい場所があったけど、第1階層には少なくともなかったはずだ。
でも実際に店にはその商品があるわけだしやっぱり何らかの方法があるんだろうか。
いや、RPGでそんなこと気にする方がどうかというのもわかるんだけど。
「あの、お客さん。どうしました?」
「え?……ああ、ごめんなさい。ちょっと考え事してました」
「はぁ。そうでしたか」
「あ、そうだ。さっきこの牧場のアーネルさんに聞いたんですけど、あなたはアーネルさんの上の娘さんなんですよね?」
「ええ、そうですよ。私はシアっていいます。もう1人妹がいるんですけど妹は、この時間なら牛舎の方にいると思いますけど」
シアは、見た目的にたぶん20歳前後だろう。ということは妹は10代後半くらいかな。
「この牧場って、牛と鶏の他にも何か飼育してたりするんですか?」
「いいえ。うちはそれだけです。後は野菜ですね。一応裏手に牛用の餌とか、あとは野草とかも生えてるところがありますけど……」
「野草!!、えと、それってどこですか。案内してもらっても?」
「あ、案内はえっと。すみません今は他のお客さんもいることですし。あ、でも道なら本当にすぐこの裏ですからここを出てぐるっと回りこんでもらえれば」
「ありがとうございます。さっそく行ってみます」
「ええ?、え、でもあの、本当にただの草ですよ……」
私はシアに礼を言うとすぐに休憩所を飛び出して裏手にあるという野草が生えている場所へと向かった。
NPCの多くは薬草や毒草などの素材アイテムの区別はつかないだろうから野草って表現になってるんだろうけど、わざわざ家畜用の餌とは別に野草があると言ったのはつまり生えているのがプレイヤーからしたら意味のある草系のアイテムだからなのだと私は見た。
できればそこに眠り消し草があればいいけど、とにかく行ってみよう。
<モンスター辞典>
〇スリープシープ
獣族。名の通り常に気持ちよさそうに寝ている羊のモンスター。
しかしダメージを受けると目覚めて攻撃的になるので要注意。とくにHPが減ると非常に高確率で仲間を呼んでくる。さらにこちらを眠り(微小)の状態異常にしてくる音符攻撃もあるので警戒が必要。
弱点は雷属性で火属性と氷属性に耐性がある。
また、仲間を呼ぶで呼ばれた新たなスリープシープは最初から攻撃的な状態であり、さらに近くに5体以上の仲間がいると寄り集まって集団突撃攻撃をしてくる。この集団突撃攻撃は集団を構成するスリープシープの数が多いほど攻撃力も高くなるので要注意。
ドロップ:羊毛、スリープシープの角
〇ワイルドカウ
獣族。野生の牛のモンスターだが雄牛ではなく見た目は乳牛である。
攻撃方法はワイルドボアと同様にプレイヤーめがけて一直線に突進してくるというものであるため、よくワイルドボアの強化版ではないかと言われるが一応ゲーム的には2体のモンスターに関連はない。
第2階層に出現するモンスターの中では森のフォレストベアに次いで能力値が高く、こちらはフィールドで普通に遭遇し戦闘になるため実はプレイヤー間では熊よりも牛の方が恐ろしいと言われていたりする。
弱点はないが、土属性に耐性があるので攻撃はそれ以外の属性で。
なお、モンスター名は最初、ホルスタインにする予定だったが、それだとあまりに現実的かつ、動物としての種族名をそのまま使うことははばかられたので変更になった。先の階層でも同じような名称の変更を余儀なくされたモンスターとしてテナガザル、ホオジロザメなどがある。
ドロップ:牛肉、牛乳




