ニートな女神と初めての謎とき
次回、玲愛はダンジョンへ挑む。
ボスゴキブリとの戦闘を終えた時点で私の視界にクエスト達成の文字が表示された。
あとは始まりの街に戻って、まずは依頼者の老婦人に報告を済ませて、そしてギルドへ依頼達成書を提出して受け付けてもらえばこのクエストは終わりだ。
そうそう、ボスゴキブリはヤタガラスと同じく経験値とお金を落とした。
280の経験値に750のゴールド。まあ、かなりいい方なのだろうか。
それとボスゴキブリからはスキルがなんと2つも手に入れられた。
<新しいスキルを入手しました>
スキル:昆虫殺し
スキル:根性
〇昆虫殺し
昆虫族のモンスターに与える物理攻撃のダメージが25%上昇する。
〇根性
自身のHPを超えるダメージを受けた時、一戦闘中に1度だけHP1で持ちこたえる。
私はそのスキルを確認して納得した。
ああ、だからボスゴキブリはあのダークボール連撃を受けた後もギリギリで生き残ってたのか。
正直この根性スキルが発動する時ってもうすでに状況が詰んでいる気もするけど。
だけど1度だけ死を回避出来るというのは確かに心強い効果でもあるのでありがたくもらっておこう。
昆虫殺しの方は、どうしてこんなスキルを手に入れたのか謎だったけどもしかするとボスゴキブリを倒したことで入手できたスキルというわけではないのかもしれない。
昆虫族というのはモンスターの種族の1つで虫のような姿かたちをしたモンスター群のこと。
種族とはモンスターをおおまかな種類に分けたものの総称で他にも色々なものがある。
いくつか例をあげるとスライム族、ゴブリン族、獣族、鳥族、物質族などだ。
今まで私が遭遇した昆虫族のモンスターはポイズンスパイダーとそのビッグなやつだけだが、でもこの先も登場するであろう虫どもには脅威的なスキルだろう。
物理攻撃だけで魔法攻撃に適応されないのがちょっと惜しいところだけど。
「まあ、贅沢は言っていられないか」
すでにフィールドは元の状態に戻っており私の両手には剣と盾はない。
どうやらこの洋館内では街と同じで通常時は戦闘行為は禁止されているらしい。
というかそもそも普段はモンスターが出現しないので戦闘する相手もいないということか。
「さて、んー。このまま街に帰ってもいいけどどうせだしこの洋館の中も見て回っていくか」
私はそれから洋館内の探索を開始した。
まずは今いる大広間から中庭、そして玄関ホールからクエスト内で訪れゴキブリたちと戦闘を繰り広げた部屋を回り色々と調べた。
某有名なRPGよろしくタンスがあれば全部開けて中を見たり、ツボがあれば殴って壊したり。
そして意外なことにそうすると本当に何かが見つかる時があった。
薬草や、50Gなどが見つかったりして私はやっぱりちゃんと調べておいて良かったと思った。
さらに、クエスト内では訪れなかった洋館内の他の部屋も隅々まで調べてみたら結構な収穫になった。
どうでもいいけど壊しちゃったツボとかってちゃんと再生してくれるのだろうか。
もしもそのままということならもしかして弁償とか……いや、それを考えるのはよそう。
そういえば某有名RPGでも、街中にあるようなツボとかって壊したとしても一旦街に出て入りなおせばまた同じ場所に同じツボが復活してるけど、あれってどういう理屈なんだろう。
いや、そこはゲームなのだからそういうものなのだと思うのだけど、でも現実的にはありえないよね。あのツボ復活。
洋館内をすべて調べ終わるのにざっと1時間ほどかかっただろうか。
私はすべての部屋を調べ終わったことを確認するとちょっと休憩しようと思った。
そうして向かった先は書斎。書斎はそれほど広くない部屋だったけれどそれは壁に備え付けられた本棚があるせいでその本棚にはびっしりと本が詰まっていた。
驚くべきはその本棚に入っていた本、なんとちゃんと手に取って中身を見ることが出来た。
いや、どう考えてもおかしいと思った。こんな、普通のプレイヤーならまず訪れないような場所にある本棚に入れられた本まで再現するとか。
リアリティーの追求以前にデータの量が心配になる。この部屋にはざっと見ただけで本が300冊以上あるのに。
「これって……」
なんだろう。そのことがつまり何か重大な意味を持っている気がするのだがどうにもそれがわからない。いや、そのことについて考えようとするとなぜかしら頭が働かないのだ。
どうにも不思議な感覚だがもしかすると脳に大きく負担をかけるような内容でゲームの方が安全対策としてそうさせているのかもしれない。
ただ、ではなぜそうしなければいけないようなことなのかがわからないんだけど。
書斎で私はいくつかの本を手に取って見た。
長年人が使っていない洋館ということで洋館内はほこりっぽかった。
だからこの書斎も例にもれず机やソファ、そしてもちろん本棚や本にもほこりが被っていたのだけど。
「ん、ここだけほこりが積もってない?」
その部屋の一画にある本棚にだけ、なぜかしらほこりが積もっていなかった。
そしてその本棚には1か所だけ、おかしな箇所かあることに私は気づいた。
それは下から4段目、右から6冊目の本。その本だけその段の他の本に比べて一回りだけ小さい。
さらにいうと、なぜかその本棚の本だけは本棚に固定でもされてるのか手に取ることが一切できなかった。
これはまず間違いなくあれだろう。ミステリードラマとかでよくある仕掛け。
「あ、開いた」
私がその一冊だけ違う本に手をかけて手前に引くと、本棚全体が壁の奥に沈み込み、そしてウィーンという音とともに横にスライドして壁の奥に消えていった。そしてその先には金属製の謎の扉が。
うん、まあつまりは隠し扉ってやつだ。私も実物は初めて見たけどこんな感じなんだ。
私は扉を横に引くと扉は簡単に開いた。するとその先の壁には何やら金庫のようなものが埋められていた。金庫にもとくに暗証番号やダイヤル、鍵などはなく取っ手を掴んで手前に引いたら開いた。
その中にはなんと……
「おおおお、お?……え、鍵?」
金庫の中には金色の鍵が1つだけ入っているだけで他に金品宝石の類はなかった。
その鍵を手に入れてアイテム名を確認するとそれは地下室の鍵というアイテムで。
え、ていうかこの洋館って地下室あるの?
「地下室へ続く階段なんてあったっけ?……ああ、それも隠されてるのか」
私はすぐにそれに気づくと急いで書斎を出て階段を駆け下りて1階へ。
地下室への扉、ということはあるとすれば1階のどこかの部屋だろう。
まず1番怪しいのは大広間だけど、あそこはほとんど何もない広間だったしな。
「中庭……も、ないかな。ってなると……」
私は勘で1階にある執務室という部屋に入った。
隠し扉の類って、基本的には自分か近しい間柄の人だけが知って利用するやつだろうからあんまし他の人が利用する可能性のある部屋には作らないと思ったのだ。
もしも入るところ誰かに偶然見られでもしたら意味がないしリスクが高い。
執務室は、いわば仕事部屋であってそこならまず自分しか利用することはないし他人にばれる心配も減る。と、思っての推理だったのだがそれが大当たりだったようで。
執務室の中、不自然に机がずらされたような跡を発見した私。
机をずらして見るとそこには床の上に鉄で出来た大きな扉が。
地下室の鍵をアイテムボックスから取り出して扉の鍵穴に差し込むと鍵は消失し、代わりにガチャリという音が聞こえた。どうやら当たりだったみたい。
扉に手をかけて引いてみると扉はすんなりと開いてその下には地下へと続くと思しき階段が。
「めちゃくちゃ凝ってるな。きっとこの洋館を作った人はそういうミステリーとか好きだったのかも」
ああ、この場合の作った人とはもちろんゲームのこの館の仕掛けを作った人って意味ね。
私は息を飲み込んだ後で地下室へと続く階段を降りて行った。
階段は螺旋状でぐるっと3周くらいさせられたけど人が1人通る分には申し分のない広さがあった。
そしてついに1番下までたどり着くとそこには1枚の木で出来た扉が。
私はその扉に手をかけて引く。すると扉はギィという音とともに開きその奥から光が漏れ出た。
「あれ、明るい?」
扉を完全に引いた後で私がその扉の先にあった部屋を見た時にその原因がわかった。
部屋の中にはいくつもの松明が置いてありそれがパチパチと音を立てて火を灯していた。
長年放置されていたはずの洋館に電気が通ってるはずもないからそうなったんだろう。
長年放置されていたはずなのになぜたいまつの火が消えていないのかという疑問は残るが。
「え?」
ただ、部屋の明かりにも驚いたのだけど私が驚いたのはもっと別のことだった。
なんか、部屋の中央にある台座の上にすごくものものしい箱が置いてあるんですけど。
豪華な作りで明らかにそれは宝箱なんだろうとは思った。だけども。
「あー、どうだろう。普通に考えればここまで謎ときしたプレイヤーへのご褒美だけど。でもあの箱が罠って可能性も……うーん」
だけど、その部屋にはその台座にのった宝箱と松明以外には他に何も見当たらないようだし。
ここはもう罠を覚悟の上で開けるしかないな。
私はそう思って宝箱を開けてみた。その瞬間私はやはりそれが罠であったことを悟った。
箱を開けた瞬間に私の視界は一瞬だけ白に染まった。
と思えば次の瞬間にはまったく別の場所に飛ばされていた。
いや、壁の感じやあちこちにある松明は一緒だったけどまず目の前にあったはずの台座と箱が消えている。
そして部屋の広さが1階のあの大広間くらいに広がっている。
おまけに両手に装備された剣と盾を見て私は悟った。ああ、ここは戦闘フィールドだと。
つまりは宝箱の中に入っている宝を手に入れるための最後の試練。
宝箱を守る番人的なやつと戦うことになるに違いないと思った私の考えは、次の瞬間に打ち消された。
「え、ボスゴキブリ?」
私の目の前に現れたのはなんと。さっき大広間で倒したはずのボスゴキブリだった。
ただ、大広間で戦った時と違う点といえばそれは……
「3体も!?」
そう、私の前方。そして右斜め後ろと左斜め後ろに1体ずつ。合計3体のボスゴキブリとの戦闘だった。(私は戦闘フィールドのほぼ中央にいる。)
ああ、まったく。せっかくこれでゴキブリとはおさらばできると思って喜んでいたのに。
この館は最後までゴキブリと戦わせたいのかよ。
ただ、今回は先ほどと違ってクエスト自体はもう終わっているから戦闘に時間制限もない。だからじっくりと戦うことができるんだけど。
「もうこれで終わりにしてよ。この後でさらに別のゴキブリとか出てきたら私帰るからね」
そう言って私は剣を強く握りしめて前方のゴキブリへと突撃していく。
さて、結果からいうと私はその3体のボスゴキブリをなんとたったの30分で始末することが出来た。
その理由はまず1つ。3体で出た際には残り1体になるまで例の煙幕をボスゴキブリが使用してこなかったということ。
このおかげで先に片づけた方の2体はもう余裕だった。
そしてもう1つの理由が、先ほど私が入手したスキル、昆虫殺し。
このスキルの効果で私は、普通の剣での物理攻撃でもボスゴキブリに一定のダメージを与えることができるようになっていた。
ウィンドステップを使い敏捷を上げて、最初の5分でまず1体のボスゴキブリを倒す。
そしてそこからさらに5分で2体目のボスゴキブリを倒したところで3体目のボスゴキブリが煙幕。
ヤタガラスを再度召喚して小竜巻で煙幕を晴らし今度は即送還。
回復したウィンドステップで特攻し3体目のボスゴキブリを倒した。
今回は魔法で攻撃はせずに基本的に剣だけで倒すことに成功した。
昆虫殺しのスキルもあったし、たまに2段斬りとか交えつつもただひたすら斬り続けた。
私は3体のボスゴキブリを倒したところでまた視界が白く染まり元の部屋へと戻ってきたところでため息をついた。
いや、ほんと良かったよ。この後でもしももっとでかいジャイアントゴキブリとか出てくるようならもう本当に諦めて帰るつもりだったし。
でも、今の戦闘で経験値が840、さらにお金も2250Gももらえたので良しとするか。
さすがに今回は新しいスキルはもらえなかったけれどね。
「それで宝箱の中身は、と」
私は戻ってきた地下室、先ほど開けた宝箱の中を確認したら中にはすごいものが入っていた。
「うわ、装備品一式で入ってるじゃん。しかも装飾品まで」
まずは装備品について。
白金の兜、白金の鎧、白金の靴。そしてさらに白金の剣に白金の盾。
白金というシリーズの装備が一式で入っていた。
白金といえばプラチナのことで、黄金よりも効果で価値のあるとされている金属だ。
特殊効果のついているものはなかったが装備補正は今私がつけている装備よりも数段上の品。
そして装飾品だが、これもすごい代物だった。
〇賢さの指輪
ING+10
「おお。あの守りの指輪の賢さバージョンね。すごいじゃん」
そしてさらになんと。その宝箱にはもう1つあるものが入っていた。
それは巻物だった。そう、読むだけで魔法を覚えられるやつね。
〇ガードアップの巻物
魔法『ガードアップ』を習得することが出来る巻物
さっそく私はその巻物を読んでその魔法を覚えてみた。
〇ガードアップ
盾を装備している時に発動可能。盾でのガード率を20%アップさせる。
効果時間は5分。戦闘終了後効果は消失する。
消費MP:6 再使用可能までの時間:10分
「んー、20%か。でも、使っておいて損はない、かな?」
ガードとは、普通に盾で攻撃を受けた時よりも大幅に受けるダメージを減らせる現象のことでガード率とはそれが起こる確率だ。
ちなみに武器攻撃や魔法攻撃で、いつもよりも大きなダメージを与えられる現象をクリティカルといって、それが起こる確率をクリティカル率という。
ガード率とクリティカル率は、プレイヤーのスターテスの運の値で決定するというがこれがなかなか低いものだ。
これまでだって私はモンスターとの戦闘中に何度かガードやクリティカルを経験したことはあったが、まず狙って出せるようなものでもないし。
ガード率が20%上がるということは攻撃を盾で受け止めれば5分の1の確率でダメージを大幅に減らせるということ。
この確率が実際の戦闘でどこまで役に立つのかはわかなかいけども強敵、ボスとの戦いでは役立ちそうな魔法であることに違いはない。
「ていうか。装備品の方の剣と盾。これ私だから装備できるけど、もしもこれが槍とか大剣だったら私、装備できなかったんじゃね?」
ということに私は気づいたが、あるいはそこはゲームシステム的に調整されるのかも。
つまりは初期武器で槍を選んだプレイヤーだったとしたら宝箱の中身は白金の槍とか、それに類する装備品になっていたのかも。
私が初期武器に片手剣を選んだから、白金の剣が入ってたと。
「いや、それはないか。剣と盾が入ってたのはそういう仕様だろう」
だって先ほどのボスゴキブリとの戦闘。私は1人で戦って勝っちゃったけど普通は複数人でパーティを組んで倒すやつだろうし。
そうなった時に宝箱の中にパーティメンバー全員分の装備一式が入っていたとしたらそれはあまりにも都合が良すぎるし不自然だ。
宝箱は最初から部屋の中にあって1つだけだったしね。
だからまあ、箱の中身に剣と盾が入っていたのはたまたま、偶然だろう。
もしも剣以外を初期武器に選んだプレイヤーが入手したなら、他人にあげるか店で売って金にでも変えるか、剣を装備できるようになるまで取っておくことになったに違いない。
「ラッキーだったな」
私はさっそく装備を変更した。
ただ、頭と盾だけは変えなかった。理由は前回の装備変更の時と同じで全部この白金シリーズで固めて装備すると私は西洋甲冑になってしまうので。
いや、別にそれでもいいとかむしろそういうのがいいとかいうプレイヤーならいいんだろうけど。
でも私は少なくとも、全身フルで甲冑になるのは御免だ。
たとえそっちの方が強い装備だとしてもこれだけは譲れない。やっぱり見た目も大事。
これが普通のゲーム機でピコピコと操作するだけのゲームだったら私もキャラを甲冑にしてただろうけど。こういうフルダイブ型のゲームの中で自分が着るってなったらちょっと抵抗あるんだよね。
というわけで私の今の装備はこんな感じになった。
頭:羽根付き帽子
体:白金の鎧
右手:白金の剣
左手:丸い盾
足:白金の靴
装飾品1:ウサギのお守り
装飾品2:カラスの指輪
装飾品3:守りの指輪
ただ、盾ももうそろそろ丸い盾を卒業してもいいかなとは思う。
でも丸い盾には特殊効果で盾ガード率が3%アップする効果があるのでこれを使っている。
あとまあ、単純にデザインが可愛いなって思うのもあるけど。
ああ、さっきの宝箱に入ってた賢さの指輪は装備しなかった。
これもウサギのお守りを外してもいいかなと思ったのだけどそれだと装飾品が全部指輪になってしまう。
いや、別にそれはいいのかもしれないけど正直ちょっとね。
あんまり指輪って手にたくさんつけるものじゃない気がして。
ちなみに指輪アイテムは、アイテム欄でどちらの手のどの指に装備するかまで決めることが出来る。
私は右手の中指にカラスの指輪。左手の中指に守りの指輪を、今は装備してる。
中指に装備してるのは特に理由もないけど、他の指だとなんか邪魔臭そうで。
小指とか親指ってなんか戦闘中にはずみですっぽ抜けて行きそうだから。
……もちろんそんなことはないんだけどね、絶対に。
「こういうのは気持ちが大事なんだよ。よし、うん。まあざっと見た感じこんなところか」
白金の装備は当然それまでの銀の装備とは違うデザインだったが大きくは変わってない。
表面がただの銀色からちょっとだけ白っぽくなり光沢がでてる点と、あとは白金の剣は持ち手のところの意匠がちょっと違うけど剣の形状と長さは銀の剣と同じようだし。
これなら次回以降の戦闘でも問題はなさそうだ。
「でも、なんで洋館の地下にある部屋の宝箱に、こんなものが入っているのやら」
私はそれだけが意味不明だと思いつつも地下室を後にした。
階段を上り地下室への入口の鉄扉を閉めると念のために机の仕掛けももとに戻しておいた。
書斎の方の本棚の壁も自動で戻っていてくれるといいんだけど。
私は執務室を出るとそのまま玄関ホールへと向かい玄関扉を開けて洋館から出た。
「意外と盛りだくさんのクエストだったな。いや、クエスト自体は大広間で終わってたし、後のはおまけ的なやつか。気づいた人がいたら挑戦だ、みたいな?」
私はそんなことをいいながら洋館からまた森林へと戻り、帰り道もモンスターを倒し薬草などを拾いながら始まりの街へと戻ってきた。
それでまずは報告にと訪れた老婦人の家。
私は老婦人からお礼を言われた後でクエストの報酬として3000Gを貰った。
あとはギルドにいって依頼達成書を提出すればいいだけなのだが。
「本当に、ありがとうございました」
「いえいえ。あ、そうだ。最後にちょっと聞いてもいいですか?」」
「はい、何でしょう?」
老婦人の家のリビング、私は出された紅茶を飲み干すと最後に老婦人に聞いた。
「なくなられたご主人って、実は昔冒険者だったなんてこと、あります?」
私がその質問をすると老婦人は一瞬だけ驚いた顔をした後で微笑みながら頷くとこう答えた。
「ええ、そうですよ。昔はあの人も冒険者だったと。それはすごい剣の使い手で私もよく昔の武勇伝を聞かされました。実は、私があの人と出会ったのも私が森でモンスターに襲われてるところをあの人が助けてくれたからで」
おっと、それはもしかしてのろけ話か?
「ふふふ。でも不思議ね。私と結婚してからはあの人、それまで使っていた自分の剣とか全部処分して。これからは君だけのために頑張るからなんて言ってたのに。どうしてわかったのかしら。もしかしてあの館には何か?」
ああ、それならきっとご主人はその愛用してた剣や装備品を処分はしてなかったのだろう。
きっと少しは未練というか、あるいはそれまで使っていた自分の装備に愛着があったからどうしても捨てられなかっただけかもしれないけど。
でもまあ、これは伝えない方が良さそうだな。
「いえ、何もありませんでした。ただモンスターだけがいたんで倒しただけです」
「……そう。でも、これも何かの縁なのかしらね」
老婦人は私の遠い目をしながらそう言ったのを聞いて聞き返した。
「何がですか?」
「だって、今のお嬢さんの恰好。私を助けてくれた時のあの人が着てたものとそっくりなんですもの。あの人は頭に兜も被ってたけどね」
「……ああ。そうですか」
そりゃそうでしょうよ。だって今私が装備してるのっておそらく同じものですもの。
ご主人がまさに昔着ていたっていう。あれ、ちょっと待てよ。だけども、ということは今着てるのって中古の、しかも男物ってことなんじゃね?
「あ、あぁ~~~~!!」
もちろん、ゲーム内ではそんなことなど関係ないただの装備アイテムであり、仮に裏の設定的に昔誰かが使ってた中古品であったとしても装備品の能力が落ちてるとかはないはずで。
それにこのゲームの装備品って基本的に全部男女の区別なく装備できるらしいし。
男でもワンピースとかスカートがはけるらしい。実際にはいてる人はまだ見たことないけど。
だから鎧なども男性用とか女性用とかはない。ないんだけど、私はついつい叫んでしまった。
…………こういうものは気持ちが大事なんだよ。
<攻撃について>
ゴッドワールド・オンラインでの戦闘における攻撃行動は3つの種類がある。
まずは物理攻撃。これは素手や武器などによる攻撃で弓矢や銃なども含まれる。
2つ目は魔法攻撃で、こちらは文字通り魔法による攻撃。
基本的に攻撃の多くはこの物理攻撃か魔法攻撃に分類される。
ただしその他にもう1つだけ特殊攻撃というものがあって魔法でも物理でもないような攻撃。
その他の攻撃全般を指していうのだが具体的にどのようなものがあるのかは不明な点が多い。
なのでプレイヤーはだいたいの場合、物理攻撃と魔法攻撃をメインに戦闘を進めていく。
それに火、水、風、雷、土、氷、光、闇、無の9属性を合わせて全部で攻撃は18通りあるということになる。(特殊攻撃を除けば)
玲愛の持つスキルの中でも、たとえば水魔法無効のスキルは、水属性の魔法攻撃によるダメージは0にしてくれるが水属性の物理攻撃には適応されない。
たまに勘違いしている人もいるので伝えておきました。今回はここまで。




