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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第1階層―始まりの街―
30/171

ニートな女神と初めてのゴーレム

玲愛はまったくの無自覚でどんどん強くなっていってしまう。

 私は酒場を出るとそのまま街の北門までやってきた。

 北門の先には岩場フィールドが広がっていてその先には階層唯一の迷宮ダンジョンが待ち受ける。

 そして迷宮ダンジョンの奥にいるボスを倒せば晴れてこの階層はクリアとなる。

 私は深呼吸をして北門から今一歩を踏み出した。


<第1階層:岩場>


 というわけでやってきた岩場だったが、文字通りそれまでのフィールドとはうってかわって地面は岩ばっかり。いや岩場っていうくらいだしそれは当たり前なんだけどね。

 ところどころ草が生えていたりもするが基本的には岩以外何もない場所だ。

 ただし、あちこちに大きな岩があって物陰にモンスターが潜んでいることもあるから注意が必要とのことだった。


 しばらく歩いていくと本日初めての戦闘が始まった。

 敵は4体、ウルフが2体にゴブリンが2体。ただし油断は禁物だ。

 ここのフィールドはこの階層でもっとも難しく、故にモンスターのレベルが高い。


 モンスターにももちろんレベルが存在している。でもたとえ同じモンスターであっても出現するフィールドによって個体値も違うようだ。

 だけどレベルが高い個体でも経験値やお金、ドロップアイテムや攻撃方法などは特に変化がないという話で、ただレベルが高いと能力値も高いというだけなので、対処は楽だった。


 ウルフに関してはなんの問題もなく倒すことができる。

 多少レベルが上がっていても私のほうがいくつもレベルが上なのだからそれも当然だと思っていたが、やはりそこまで甘くはなかったか。


「いて!」


 私はウルフを倒したところで頭に衝撃とダメージを受けた。

 見るとゴブリンが、なんとそのへんに落ちている小石を拾って投げつけてきていた。

 モンスター名はただのゴブリンなのだが、いやむしろ本来はゴブリンはこういう戦い方をするモンスターだったのかもしれない。

 今までのフィールドでは、道端に小石が落ちていることもあるにはあったのだが、ゴブリンがたまたまそれを見つけて投げつけてくることなんてなかったし。


「面倒だな、でも」


 しかし、いくら小石をなげてくるからといってもやはりゴブリンはゴブリンだ。

 今の私とのレベル差を考えたら簡単に倒すことが出来るザコモンスターなのだ。

 私は飛んでくる小石をかわしながら近づいて2体のゴブリンを片付けた。

 そして落とした銅貨袋を拾っているところで再び別のモンスターが出現し戦闘になった。


 さすが最も難しいフィールドだ。戦闘と戦闘の間のスパンが短いな。

 もっとも簡単な平原ではかなり歩いているのにモンスターと遭遇しないなんてザラにあったから。


 新しく現れたモンスターは5体。

 ゴブリンメイスが2体、ゴブリンアーチャーが2体、そしてこのフィールドで初めて登場するモンスターの1体、ゴブリンソードだ。

 ゴブリンソードは、もう説明の必要もないだろうけど剣を持ったゴブリンだ。

 その剣も鉄でできているわけではなく木製の剣であって倒した時に落としたのも木の剣というアイテムだった。装備としての能力値は最低レベルで完全に店に売り払う用のアイテムだった。


 5体のモンスターを1人で相手取ることは、普通なら難しいだろうけど、でもこれもレベル差がなせる技というべきか、私はたやすくゴブリンたちを葬り去った。


 この岩場に出現するモンスターは昼間で8種類と、とても多い。

 しかしそのうち4体は既存のフィールドでも見かけたモンスターである。

 ウルフ、ゴブリン、ゴブリンメイス、ゴブリンアーチャーの4体。


 そしてこのフィールドで新たに登場するのが今の戦闘で出てきたゴブリンソード。

 そして残り3体の新モンスターのうち2体は次の戦闘で出くわした。


「お、あれだな」


 私が道の先で見つけたのは灰色の石で出来た身長2メートルほどの人であった。

 それはストーンマンというモンスターで文字通りだった。

 すなわち石で出来た人間、石で出来ているため敏捷は低いがその分耐久は高い。

 だから剣や槍などの物理攻撃ではダメージが低い。

 さらに火属性に耐性を持っていてファイアーボールもいまいち効果が低い。

 だが私はすでにストーンマンの弱点をアイリッシュから教えられていた。


「ウィンドボール!」


 まず、ストーンマンは土属性であるから弱点となる風属性の魔法。

 それともう1つ、水属性の魔法も弱点だという話だった。


「ウォーターボール!」


 私の風と水の属性の魔法攻撃でストーンマンの体力は消し飛んで、倒れた。

 ただ、体力が高かったために1発で倒せるほどでもなかったけど。

 幸いにも今回は向こうが私に気づく前に先制攻撃できたからよしとするか。


 と、私が思っていた時だった。

 突然私に向かって黒い球が飛んできた。


「うわ!?」


 それをもろにくらってしまった私はダメージを受けたと同時にすぐに新たなモンスターの登場に気づいた。それは、なんとカラスだった。

 そう、話に聞いていたけれどまさか本当にまた戦うことになろうとは思わなかった。

 いや、むしろあのゴミ山クエストを受けていない多くのプレイヤーはこちらの方が初見になるのだろうけども。


「クロウが、3体」


 モンスター名はクロウ、クロウとは英語でカラスのことなのだがあのクエストで登場したモンスターとはまた別のモンスター扱いだった。

 こちらは倒せば経験値もお金も手に入るし何より強い。

 ただ、見た目はあのクエストで登場したカラスのままなのだ。あくまで違うモンスターだと言い張るつもりなら少しかデザインを変えればいいのにと私は思った。


「また飛んできた!」


 そしてこのクロウというモンスター、攻撃方法がなんとダークボールなのだ。

 しかも賢さの値が高いようで1発のダメージもなかなかだった。

 ゴミ山のクエストで出てきたカラスは体当たりとつつき攻撃だけしかしてこなかったけど、ある意味この部分がカラスとクロウが違うモンスターだと言える部分なのか。


 ただ、クロウはカラスと共通している点もあった。

 HPが低いこと、そして他のモンスターよりも耐久が極端に低いこと。

 敏捷と賢さは高いものの力はそれほどでもないこと。

 なので体当たり攻撃と、くちばしでつついてくる攻撃はむしろ向こうから近づいてくるので返り討ちのチャンスなのだが、遠くから飛ばしてくるダークボールがうざい。


「くそ、この!」


 私は2体のクロウを斬り捨てると残った1体に向かっていく。

 クロウはまさに今体の前にダークボールを生み出して発射しようとしているところだった。


「ライトボール!」


 面白いことにその発射される直前くらいのダークボールにライトボールをぶつけるとヤタガラス戦の時のように爆発して相殺され、クロウはその爆発のダメージで倒れることとなった。

 やっぱり魔法に魔法をぶつけて相殺できるのはいいな。


「おお、意外と簡単に倒せるじゃないか」


 ダークボールをうってきそうだなって時は先手でライトボールをぶつければそれで勝てるわけだ。

 むしろその方が簡単に倒せる分楽かもしれない。


<倒したモンスター>

 ストーンマン×1

 クロウ×3


 獲得経験値:56ポイント 獲得ゴールド:50G

 次のレベルまで残り1747ポイント


 モンスターとの戦闘が今のように間をおかずに連戦となった場合、リザルト画面はすべての戦闘が終わった数秒後に表示される。


 そしてドロップアイテムについてだが、クロウからはブラックフェザーというアイテムがドロップ。

 黒い羽根という意味のアイテムだがそれはまんまカラスの羽根であった。

 あ、そういやゴミ山クエストの報酬で似たようなアイテムをもらったな。

 たしかあっちはカラスの羽っていうアイテムだったか。

 そういやそのアイテム、持ってるだけで街中のカラスと会話できるようになるって話だったけどまだ1度も試してないな。でも別にカラスと話したいこともないしな。


 ああ、ブラックフェザーの方はただの素材アイテムだったよ。

 おそらく洋服作りの材料にでもなるんじゃないだろうか。わからんけども。


 ストーンマンの方からは命の石というアイテムがもらえた。

 このアイテムも素材アイテムのようだったけど使い道は今のところ不明だった。

 でもまあ拾っておくよ。落ちてるものはなんでも拾うからね、私。


<新しいスキルを入手しました>

 魔法:ストーンバレット


 〇ストーンバレット

 土属性の初級攻撃魔法。石のつぶてを生み出し弾丸のように射出する。

 消費MP:4 再使用可能までの時間:1秒


「おっと、これは間違いなくストーンマンからもらったな。でも、これだけってことはクロウの方からは特にスキルは得られなかったのね」


 そういえばゴブリン系統やマッドプラントからも倒しても特にスキルはもらえなかった。

 いやでも、もしかしたらクロウって本当は倒したらダークボールの魔法がもらえたのではないだろうか。

 私は始まりの街の魔法屋さんで先にダークボールの魔法が覚えられる巻物を買って、それを使い覚えていたわけだけど。そうでなかったらクロウを倒した時に入手していた可能性も……


「あの巻物、1500Gもしたんだけど。でも、まあ今となってはわかんないか」


 もうすでに覚えてしまっている以上真相は定かではないが、別にそこまで気にすることでもないか。


「ストーンバレット!、おお、ほんとに石の弾丸だ」


 私は何もない空間に向けて今覚えたばかりの魔法、ストーンバレットを発動させた。

 すると私の剣先から小さな石が弾丸のように飛んで行った。

 弾丸であるためか飛距離も申し分なくなおかつ速い。しかも再使用まで1秒ですむのでほとんど連射することもできるだろう。

 ただ、1発でMPを4ももっていかれるので連射はしないけど。


「でも、今までの魔法より遠い距離まで飛ぶのがいい。遠くの敵にも攻撃できるし」


 ストーンバレットはこれからも使う機会がありそうだ。


 さて、ここまでで紹介したモンスターはこれで7体。

 残る1体についてだがそれはもちろんエリアボスである。

 ただ、この岩場エリアのエリアボスは今までと違い、昼でも夜でも時間に関係なく出現する。

 ただし、こちらからまず攻撃をしかけてダメージを与えるまでは、向こうからプレイヤーを襲ってくることはないのだという。

 なので倒す自信のないプレイヤーは普通に横を素通りしていくらしいのだけど。


「あれだな、絶対に」


 岩場に来てから30分、いくどめかの戦闘を終えた私ははるか前方にそのモンスターの姿を見つけた。

 そのモンスターは体長が8メートルもあるため遠くからでもはっきり姿を確認できる。

 そのモンスターの、名前だけならきっとご存知の方もいるのではないだろうか。

 RPGではスライム、ゴブリンなどと並んで有名な石の巨人モンスター。


「……ストーンゴーレム」


 この岩場のエリアボスにしてこの階層のフィールド最強モンスター。ストーンゴーレムは、同じ石で出来たモンスターであるストーンマンとは大きく違う。

 まず、ストーンマンの方が小さな灰色の小石が人型になるように寄せ集まっているのに対し、ストーンゴーレムの方は大きい石の塊だった。

 両足と両腕、胴体と頭部がそれぞれ大きな灰色の石の塊で、頭部の中が空洞になっているのかそこに穴が2つあいていて赤い光が輝いていた。

 まあ、つまりそれはゴーレムの目なんだろうけど他にも一応鼻や口っぽい感じのデコボコが頭部にはあって、しかも両腕の先にはそれぞれ人間と同じように5本ずつ指もある。

 だけど足には指はなくただの石柱のようだったけれど。


 ストーンゴーレムの弱点はストーンマンと同じで風属性と水属性の攻撃。

 耐性は火属性と、さらに雷属性も加えられているらしいとのことだった。


 先にも言ったが、ストーンゴーレムはこちらから手出ししない限り襲い掛かってはこないので、わざわざ戦って倒す必要は本来はない。あくまで腕に自信のあるプレイヤーたちが腕試しで挑むレベルのモンスターだということ。

 ただ、1度でも攻撃を加えるとものすごいぶちぎれて果敢に攻撃してくるらしいのでもしも戦いを挑むのであれば覚悟が必要であるとも。


「でも、私は攻撃するよ。だって戦ってみたいし、それに絶対スキルもらえるだろうしね」


 ストーンゴーレムのHPは高く、ちょうどビッグポイズンスパイダーやヤタガラスの2本あった長いHPケージの1本分くらいあった。

 ストーンマンと同じで耐久が高いのだが、戦闘になると攻撃力も高いし、そして割と速い。

 だから間違って攻撃したのを最後に死ぬプレイヤーが続出したという話だったけど。

 つまりはそれくらいには強いモンスターということか。


 私は最大限近づくとズシンズシンと今もゆっくりと歩いているストーンゴーレムの頭部に狙いを定めて、魔法攻撃をしてみた。


「ウィンドボール!」


 アイリッシュから聞いた話だと、特にストーンゴーレムは頭部が弱点でダメージを与えやすいという話だ。体の大きいモンスターだと体の部位ごとにダメージを与えやすい弱点となる部分があることが多いとい。ヤタガラス戦でも、李ちゃんが投げた槍がヤタガラスの目に命中した時にそれまでよりも大きなダメージを与えていたっけ。

 私の放ったウィンドボールがゴーレムの頭部に命中すると体力が一気に2割も削ることができた。単純計算であと4発かな。


「うぉ、戦闘モードに切り替わった」


 そして攻撃されダメージを受けたストーンゴーレムはそれまでのゆっくりとした動きから急変、赤い目がキラリと一瞬輝いたと思えば次の瞬間頭上から巨大な石が降ってきた。

 それはまあ、ストーンゴーレムの両腕だったわけだけど私はそれをなんとか回避した。

 ただ私が回避したことでその両腕振り下ろし攻撃は地面に直撃したのだが、まず音がすごかった。

 もうね、ドゴーンとかそういう音がしたんだよ。

 さらに攻撃後に地面に大きなくぼみができてて、ああ、あれくらったら一撃で死ぬわって思った。


「でも、いくら巨体でも動きは遅いし、距離さえ取れば……うそぉ!?」


 ストーンゴーレムは、戦闘モードだと走るというか、それでもズシーンズシーンと歩くよりほんのちょっと速いだけなので後ろに回り込んだり距離を取るのも簡単なのだが、今回はそれが裏目に出た。

 何が起きたのか、それは簡単に言っちゃうとあれだ。


 ロケットパ~ンチ!!


「腕が離れるなんて聞いてないよ。アイリッシュのやつめ」


 つまりは1度距離を置こうと思った私に対して、ストーンゴーレムは両腕を胴体から分離させてこちらに向けて飛ばしてきたのだ。いや、この場合発射と言った方がいいか。

 私はそれを地面をスライディングすることでギリギリよけたが、ロケットパンチはすごく速かった。

 ただ、私が驚いたのはその後だった。


「あれ、腕が戻ってかないでそのまま地面に落ちちゃった」


 そう、飛ばした腕はなぜかそのまま地面へと撃墜してそのままになった。

 そしてなぜか、本体のストーンゴーレムがものすごく焦った感じでこちらに向かって走ってきているような気がするのは私の気のせいだろうか?


「ははーん。つまり飛ばすことはできるけどもう1度くっつけるには直接やってきてくっつけなきゃいけないわけね。……なるほど……これ、勝てるな」


 その時私の中でゴーレムの倒し方が出来上がった。

 でもまずはこちらに向かってくるゴーレムに魔法をお見舞いしてやるか。


「ウィンドボール!、ウォーターボール!」


 その2発は顔面に直撃し、これでゴーレムの残り体力はあと4割。

 そして私はすぐさまその場所を離れるとそこでウィンドステップの魔法を使った。

 ゴーレムが落ちた腕の場所に到着すると、腕は自然と持ち上がってまたゴーレム本体にくっついた。

 しかし私はまたその本体から離れた位置にいるので、ゴーレムは再びロケットパンチで腕を分離。

 だが私はウィンドステップで敏捷が上がっているのでそれを余裕でかわす。

 最後に、また飛ばした腕を回収にきたゴーレムに今と同じ魔法を2発ぶちかます。

 腕が本体についている時であれば、きっと頭部に狙いをさだめても手で顔をガードするなりしてしまうだろうけど、腕がなければ頭部は丸裸も同然だった。

 ロケットパンチさえ回避できればこれほど簡単に倒せるエリアボスはいないだろう。


 他のプレイヤーは、離れていてもパンチが飛んでい来ることがわかると近づいて戦おうとするのだろうけどそれよりもこっちの戦い方の方が安全だし何より確実だ。

 1度の戦闘でMPを20近く使ってしまうけどでも聖水を飲めばいい話だしね。

 いっさい剣を使わず魔法だけで倒したエリアボスは、これが初めてかもしれない。


<倒したモンスター>

 ストーンゴーレム×1


 獲得経験値:100ポイント 獲得ゴールド:100G

 次のレベルまで残り1285ポイント


「わお、しかもたった1体で結構もらえるじゃん」


 そしてそのストーンゴーレムから当然のごとく新しいスキルをいただいた。

 それを見た私は、絶対にストーンゴーレム狩りをやろうと決めるほどのスキルだった。


<新しいスキルを入手しました>

 スキル:頑丈Ⅰ


 〇頑丈Ⅰ

 VITが5%アップする。


 ようはウルフを倒した時に手に入った俊敏のスキルのVIT版。

 俊敏のスキルもスキル名の後にローマ数字があって、それは最大で10まで上がることを私は知っている。

 そして数字が1つあがってスキルが成長するごとにスキルの効果であがる能力値が5%ずつ上がっていくのだということも。


 すでにスキルが最大のⅩになっている俊敏は、AGIが50%アップという効果になっている。

 なので今回の頑丈というスキルも頑張ってⅩまで上げれば……ふふふ、最強だ。


「おっと、ドロップアイテムもちゃんと回収しておかないと」


 今までのエリアボスは、倒したら何か装飾品、いわゆるレアアイテムを落としていた。

 そして今回のストーンゴーレムも、たぶんにもれずレアアイテムを落とした。


 〇守りの指輪

 VIT+10


 特に変わった効果もない代わりにそれはすごいアイテムだった。

 今までのは、+5%とか、+10%とか割合で能力が上昇してたけど、今回のこれはつけただけで確実にVITが10上昇するらしいからね。


 私は、でもそれを装備することはなくアイテムボックスにしまった。

 もう装飾品枠は2つとも埋まってるし、今のところそこまでVIT、耐久が足りてないなと思ったこともなかったのだ。


 ああ、そうそう。もちろんストーンゴーレムはそれ以外にもアイテムをドロップしていた。

 ストーンゴーレムの心臓という名前の素材アイテムで、それは見た目ただの大きめの石っぽいけど取り出してみたらなんか脈動してるのを感じるという気味の悪いアイテムだった。

 でも、これも何かに使える機会があるのかなと思いとっておく。

 どうせこの後も大量に手に入るものなんだし。


「んーーー!!、さて、またやりますか。スキル成長のための狩りを」


 狙うはもちろん頑丈というスキルをくれたエリアボス、ストーンゴーレムだ。


 ――それから6時間後――


 気がつけばもう空も夕暮れになってしまっていた。

 いや、もう本当に夢中になって倒しまくっていたらこんな時間になってたよ。


 私はあれから道中の他のモンスターを蹴散らしながらもストーンゴーレムを探し回った。

 そして見つけては倒すを繰り返していったのだが途中でMPが底をつき、さらに聖水もすべて使ってしまっていたのでいったん街まで戻って薬屋で聖水を買い足した。

 薬屋の店員のお兄さんも驚いてたよ、だって今朝私聖水を30個も買っていったはずなのにもう全部使い切ったって言ったから。

 今度は50個買っておいたけど、ああ、早く調合で聖水も作れるようにならないだろうか。


 そしてさらに、私は薬屋を出た後で冒険者ギルドに向かった。

 そこで岩場で受けられるギルドクエストを5つ受けておいた。

 もちろん受けたその5つのクエストはすでにクリア済みなので後は戻って報告するだけでいいのだが。


 そして肝心の頑丈のスキルだったがストーンゴーレムを30体倒したところで終了した。

 終了と言うのはつまり頑丈というスキルが最大のⅩにまで成長したということで効果も予想通り。


 〇頑丈Ⅹ

 VITが50%上昇する


 これで私の防御力も安心である。もう大体の攻撃をノーダメージに出来そうなくらいだ。


 ただ、私はこの頑丈や、もっというとウルフからもらった俊敏などのスキルについてちょっとだけ思うことがあった。それはスキルレベルの上がり方だ。


 ストーンゴーレムを1体倒す→頑丈Ⅰのスキル入手

 ストーンゴーレムを3体倒す→頑丈のスキルレベルがⅠからⅡへ上がった。

 ストーンゴーレムを6体倒す→頑丈のスキルレベルがⅡからⅢへ上がった。


 ここからレベルⅨまでは3体倒すごとにレベルが上がって行く。


 ストーンゴーレムを24体倒す→頑丈のスキルレベルがⅧからⅨに上がった。


 そしてⅨからⅩにスキルレベルが上がったのはストーンゴーレムを30体倒した時。

 そう、最後だけなぜか3体ではなく倍の6体倒した時にレベルが上がったのだ。

 ウルフの時は数字をそれぞれ10倍した合計300体倒した時に俊敏のスキルレベルが最高のⅩまで上がったのだけど。まあ最後だから倒さなきゃいけない数が増えたんだろうと今までは思っていたけど。


「うーん、それなら頑丈Ⅰのスキルがもらえるのをストーンゴーレムを3体倒した時にすれば、そこから3体ずつ倒すごとにレベルが上がっていってわかりやすかったんだけどな」


 あるいは3体倒すごとにレベルが上がるのならレベルがⅩに上がるのは27体倒した時でも良かったんじゃないだろうか。それともやっぱり30というキリのいい数字にこだわったのだろうか。

 でも、最初の1体を倒した後で頑丈Ⅰのスキルがもらえてなかったら私はストーンゴーレムからもスキルや魔法は特にもらえないのだと考えてここまで狩ろうとは思わなかったはずだ。


 だけど、そもそも論としてモンスターを倒してこんな風にスキルや魔法を手に入れたり成長させたりとかできるのってたぶんこの階層じゃ私だけなんだろうしな。


「うーん、まあいいかもうそこは。一旦街に戻ろう。ギルドで依頼書の精算をしてからだな」


 私はふうと息を1つ吐いた後で岩場を後にして始まりの街まで戻ってきた。

 でも、それにしても今日はすごく速かったな。なんか途中の戦闘の記憶とかほとんどないぞ。

 それだけ夢中でストーンゴーレムを倒していたんだろうけど、ゴーレムたちからしたら私の姿は悪魔にでも映っていたに違いない。

 ……いや、それは今まで倒してきたすべてのモンスターに言えることかもな、なんてね。



<モンスター辞典>

〇ゴブリンソード

ゴブリン族。剣を持ったゴブリンだが、持っているのは剣だけでありしかも木製。

攻撃も剣術のけの字もないほどのものでありただ剣をふりまわすだけである。

たまに手から剣がすっぽぬけて飛んでいってしまうが、プレイヤーの中には実はこれはわざとそうすることでこちらを油断させようとしているのだと主張する者もいるとかいないとか。

ドロップ:木の剣


〇ストーンマン

物質族。体が小石のよせあつめて人型を形どったモンスターで土属性。

ゲーム内で初めて登場する物質族のモンスターであるが意外と強かったりする。

体力と耐久に優れていて力も高めだが敏捷は低い。

魔法、ストーンバレットで両腕から石のつぶてを弾丸のように飛ばしてくる攻撃の他、近づくと殴りかかってくる。弱点は風属性と水属性。火属性には耐性がある。

ゴーレムと違いこちらには頭部はあるものの目などがない。なのにプレイヤーの位置を把握できているのは実は頭部部分にセンサーのようなものがあるかららしい。ドロップする素材アイテム、命の石こそがこのセンサーなのではないかとプレイヤーたちの間では囁かれているが真偽は不明。

ドロップ:命の石


〇クロウ

鳥族。見た目は「カラスの群れとゴミの山」クエストに登場するカラスのままである。

ゲームの開発チームが名前的には同じだからという理由でデザインをそのまま流用した。

特徴はカラスと同じで体力と耐久が低く賢さと敏捷が高い。

クロウは、フィールドで初めて魔法攻撃をしてくるザコモンスターでもあるため実は苦戦したというプレイヤーも一定数いたりするのだが、ライトボールの魔法を覚えていれば簡単に倒せる。(本編参照)

ダークボールによる魔法攻撃、体当たり、くちばしつつき攻撃をしてくるが、ダークボール以外はそこまで警戒する必要はない。弱点は光属性。

ドロップ:ブラックフェザー


※ストーンゴーレムについては次回紹介。

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