ニートな女神と初めての読書
毎回タイトルをつける時に、話のタイトルを初めての〇〇と書くにあたって。
本編を書き終えてからからそういえば今回の話で玲愛が初めてしたこと、遭遇したものってなんだろうと探している自分がいます。
いつかくるであろうタイトルにつける言葉のネタ切れに怯える日々を送っている今日この頃。
私は初めて商品を買ってくれた女の子に話しかけてみた。
「えっと、君は見た感じ魔法使い、かな?」
「え?……はい、そうですけど。あれ、もしかしてお姉さんってプレイヤー?」
おっと、そうか。
今の私は普通の洋服を着てるしこの階層には他にこうやって街中でアイテムを売っているプレイヤーはいないだろうからパッと見じゃわからないという人がいるのか。
一応プレイヤーとそうでない街の住人(いわゆるNPC)とでは、頭の上にそれを区別できる表示があるんだけども、女の子はまだそのことを知らないのかな。
「うん、そうだよ。私は、今はここで野菜ジュース売ってるけどね」
「ふうん、どうして野菜ジュースを売ってるの?」
「えっと、まあ。ちょっと作りすぎちゃったんで、自分で売ってみようかなと思って。趣味みたいな感じ」
「え、この野菜ジュースってお姉さんが自分で作ったの?」
「うん、調合っていうスキルがあってね。それでこの野菜ジュースのレシピをもらったから作ってみたんだ」
私がそう言うと女の子はますます興味が出てきたようで話に食いついてきた。
「それってもしかしてお姉さんの神様の恩恵の効果?」
「ううん、違うよ。ああ、調合スキルなら誰でも手に入るよ。この街のギルドで薬屋さんのクエストをクリアしたらもらえるの。調合は便利だよ。材料さえあれば自分でポーションとか毒消し薬とか作れるから」
「え、そうなの?」
「うん。それにあんまり調合スキルって人気がないというか、ゲーム内で持ってる人も少ないらしいから」
「どうして?」
「ああ、理由については……あれ、なんだったっけ?、忘れちゃったけど街の薬屋さんに聞けばわかるよ」
たしか私も聞かされたと思ったんだけどなんだったかな。
たしか、自分で作るよりも店で買った方が早いから、だったかな?
あと作るってなったら材料集めが大変だったとも、言ってただろうか。
「それよりも、どう。野菜ジュース、もう1本買っていかない?」
「えー、今日はもういいよ」
「別に今というか、今日飲むんじゃなくてもいいんだ。いや、私もいつもここでお店開いてるわけじゃないからさ。買うなら今だけっていうか……まあ実を言うともう店をたたもうかなって思ってて」
「え、このお店今日でやめちゃうの?」
「今日でやめるっていうか、まあ毎日開いてるわけじゃないからね」
1時間も待ってようやく1人に売れたという時点で売り場所は変えようと思っていた。
でも、私も自分の冒険を進めたいから今日みたいに店を開くのはたまに、調合レシピが増えた時とか、あとは材料が大量に余ったんでアイテムをたくさん作れた時とかだけにしようとは考えてる。
「でも、今あんまりお金に余裕がないから」
「あ、じゃあただでも……いや、ただはさすがにまずいかな。うーん、じゃあ料金は後払いでもいいよ」
「え?」
「どうせ1個80Gの物だし、なんなら10個くらいまとめて買ってよ。それで後日お金がある時にでも代金を払ってくれればいいよ。もしも後でやっぱりいらないってなったら返品も受け付けるから」
「でも、えっとそれでお姉さんはいいの?」
「うん、もちろん。私は別にお金儲けがしたかったわけじゃないし、ただ野菜ジュースがたくさん作れたから売りに出してただけだしいいよ。本当はただで売ってもいいんだけどそれだとお店出した意味なくなっちゃうからね」
私の言葉を聞いて女の子はクスリとだが笑ってくれた。
そしてそういうことならということでとりあえず10個だけ売ることに成功した。
値段を0にしてまずアイテムを売り、後で女の子から代金を渡してもらう。ただ、この場合だと後からの支払いに強制力はないから女の子が逃げたらそれまでなんだけども。
「あ、でもお姉さん。後日お金って言ったけどどうやって払えば?」
「ああ、そっか。うーん……それなら私とフレンド登録してもらってもいい?」
フレンド登録したプレイヤー同士であれば、ログイン状況やログイン中であればどこにいるのかとか確認できるから、女の子がお金のある時に私が近くにいれば、その時にお金を払ってもらえばそれでいいと私が言うと、女の子の方もそれで了承してくれたので私たちはフレンド登録をした。
この子は良い子そうだから買ったアイテムの代金を踏み倒したりなんてしないだろう。
フレンドリストで確認してみるとプレイヤー名はマロンっていうみたい。マロン……栗かな?
「お姉さんの名前は、玲愛さんでいいの?」
「うん、そうだよ。君はマロンちゃんっていうんだ。えと、マロンちゃんって栗が好きなの?」
「ううん、なんとなく響きが可愛いかなって思って。あとリアルで苗字に入ってるから」
「そうなんだ」
「お姉さんの名前は本名?」
「ああ……うん、似たようなものかな」
アストレア=玲愛と結び付けられるやつなんかいないから大丈夫だろうか。
いや、でもこういうのは軽い気持ちで言っていつの間にか情報が漏れてリアル割れしたりするっていうから気をつけるにこしたことはないな。
「えっと、10個買ったから800Gか。いつまでに払えばいいかな?」
「いつでもいいよ。お金があるときに私がログインしてたら呼んでくれればこっちから行くし」
「わかった。じゃあまたねお姉さん。この野菜ジュースはきっともっと売れると思うよ」
「そうかな……うん、ならもうちょっとだけお店続けてみるよ」
「うん、じゃあね」
マロンちゃんはそう言うと歩き去って行った。
あ、野菜ジュースの効果教えるの忘れてた。まあでもいっか、後で自分で確認してくれるだろう。
それにしても疲れた。たった1人相手にしただけなのになんだろうこの疲労感は。
うーん、でもマロンちゃんにああ言った手前、もうしばらくはここで店を出してるか。
そしてそれから1時間、同じ場所で店を開いていたもののついぞ他の誰かが商品を買ってくれることはなかった。というかまずプレイヤーが私に目をとめることがなかった。
……マロンちゃんの嘘つき、とは言えないかな。やっぱり場所を変えるべきだったか。
私はシートの上に置いた野菜ジュースをしまうとブルーシートと看板も片付けた。
時刻は午後4時過ぎ。今日も1日ログアウトせずにこのままゲームを続けようかな。
<第1階層:始まりの街:冒険者ギルド>
と、いうことで私はまた冒険者ギルドへとやってきたのだけど。
「んー、住人からの依頼の方はまた明日以降でもいいかな。今度はギルド掲示板の方から選んでみよう」
私がギルド掲示板の方を見に来ると私の他にも何人かプレイヤーが掲示板の前に集まっていた。
ああ、きっと中学生から高校生かな。今の時間帯なら学校から帰ってきて夕飯の前だろうからログイン率は高くなるんだよね。
逆に夜とかは大人のプレイヤーの姿を多く見かけるようになる。
プレイヤーの見た目から判断してるだけなので断言もできないけど。
でも、本来の自分と違う性別のキャラを作ったり、あとは身長などを変えて大人や子供のふりをしたりしてる人っているにはいるんだけろうけどこういうゲームの中じゃ少数派だろうか。
普通にゲーム画面を見ながら現実でピコピコ動かすのと違ってフルダイブ型のゲームってようは自分がキャラを直接動かすわけだから。
多くの人は現実の自分と同じくらいの身長、体重にすると思うし性別もそのままだろう。
そうしないといざゲームをスタートした時に体の感覚がうまくつかめずに転んだりだとか、逆に現実に戻った時もゲームの中の感覚が残っていたせいで問題があるかもしれないし。
まあ、そこらへんは自己責任ってやつなんだろうけどもリスクは大きそうだな。
だから東也やマロンちゃんも、少なくとも見た目と中身が大きく違うってことはないと思うし。
ただし顔のパーツうんぬんについてはむしろ現実とは変える人が多いだろうけど。なぜってリアル割れする危険があるからね。私のキャラの顔はおまかせで作ってできたのをそのままだからリアルの私とは全然似てないんだけど普通はそれでいいのだろう。
「うーん。面倒だから001から順にやってくか」
私はギルド掲示板から内容も確認せずにそれぞれのクエストに振られた番号が若い順から5つ選んで依頼書を取ると、それを受付まで持って行ってまとめて受理してもらった。
この階層ではギルド掲示板に張られているクエストは全部で40種類あるらしいから1度に5個ずつ受けて行ったとして8回は往復する必要があるか。
でも私はまだ北のフィールドエリアである岩場の方には行ったことないからそこで受けられるクエストは今は受けないようにしておこう。
「えっと、それでクエスト001から005をまとめると」
私は5枚の依頼書を改めて確認した。
クエストを受注している最中はこの依頼書がアイテムとなって自分のアイテムボックスに入れられる。
依頼書には依頼内容と、あとは長丁場のクエストならいま全体のどれくらいまで進めているのかということも確認できるそうだけど。
クエストをクリアしたらこの依頼書が依頼達成書というアイテムに変化する。
そしてこの依頼達成書をギルドの受付に渡すと初めて依頼達成、クエストクリアとなるわけだ。
クエストによってはクエストクリアが別のところで判定されたりするものもあるので一概にそうだとは言えないのだけど少なくともギルドクエストの方のはすべてギルドに報告を済ませた時にクエストのクリア判定が出る。
途中でクリア判定が出た場合であっても、依頼達成書はギルドに出さなければいけず、もしもクエストはクリアしたのに依頼達成書を長時間ギルドに出さなかった場合はクリアが取り消される場合もあるそうなので、とにかくクエストが終わったら必ずギルドに報告する必要があるわけだ。
それでだ、私が選んだ5枚の依頼書の内容をすべてまとめると以下のようになった。
〇ブルースライムを10体倒す。
〇ウルフを5体倒す。
〇ゴブリンを5体倒す。
〇スライムの雫(青)を3つ手に入れる。
〇獣の爪を5つ手に入れる。
4番目と5番目のものに関しては、その依頼を受けた時点ですでにそのアイテムを持っていたとしても、クエストを受けてから新たに手に入れる必要がある。
住人クエストの方は、たとえば調合スキルをもらえたあの薬屋のクエストで、プレイヤーは最初に薬草を30個店員さんに渡す必要があったけど私は元々持っていたものを渡したらそれで大丈夫だったようだから違うんだろうけど。
モンスター討伐系の依頼は、もちろんその依頼を受けてから指定されたモンスターを指定された数倒さなければいけない。
だけど私の場合、上の2つをクリアしたら下の2つもクリアされるよな。ほぼ自動で。
なぜなら下の2つの依頼で必要となっているアイテムは、上の依頼のモンスターを倒せば100%手に入るからね、私の場合は。
「楽勝過ぎて話にならないけど、まあ所詮ひまつぶしだしね」
私はギルドを出てから平原フィールドへと向かった。
そして結果として、わずか10分足らずで最初の5つのクエストは達成された。
よし、次は006から010までの5つをやってみよう。
ここまで軽い感じでクエストを淡々とこなしていくやつは少ないと思うけどね。
――約2時間後――
私は27件のギルドクエストをクリアしていた。
「クエスト031から040までの10個が岩場よりも先っぽいな。それで残ったのがこの3つか」
今、私の手元には3枚の依頼書がある。
それぞれの依頼書の内容をまとめるとこんな感じだ。
〇レッドウルフを1体倒す。
〇ビッグホーンラビットを1体倒す。
〇ビッグポイズンスパイダーを1体倒す。
うん、これを見た時に私は思ったね。
だったら先にギルドに来ておけば良かったって。2度手間もいいところだよ。
特にビッグポイズンスパイダーとか、倒すのちょっと面倒だからさ。
でもさすがエリアボスの討伐依頼だけあって依頼書に書かれてる報酬のは豪華だった。
だから私は受けることにしたのだけど、先の2体は夜にならないと出てこないんだよな。
ちょっとだけ待って夜になったらレッドウルフとビッグホーンラビットを倒しに行くことにしてでっかい毒クモの方はまた明日にしようか。幸い、ギルドクエストの方はどれも時間制限とかないから受注さえすればクエスト自体はいつやっても問題はないし。
ちなみにこのゲーム内の昼夜については階層ごとに日没と日の出の時間は違うらしい。
第1階層の日没は午後7時、日の出は午前6時となっておりこの階層は昼の方が2時間長い。
だけどこの先夜の方が長いという階層もあるだろうし、もしかすると夜がおとずれず1日中昼間というような階層なんかもあるかもしれないな。リアルでの時間感覚おかしくなりそうだけど。
それで現在時刻は午後6時30分前。あと30分ちょっとで夜になるから私はそれまで待つことにした。
始まりの街の冒険者ギルドは2階建てであり、1階にはギルドの受付と銀行、そして依頼が張り出されている掲示板がある。そして2階には椅子やらテーブルやらが置いてあってプレイヤーたちの交流の場となっている。聞くところによるとこれは他の階層にある冒険者ギルドも同じ構造になっているそうなんだけども。私は階段を上って2階へ行ってみた。
2階ではいくつかのテーブルでは数人のプレイヤーが集まって何やら話し合いをしていた。
たぶんこれからか、あるいは後日みんなで行く冒険の打ち合わせでもしているんだろう。
そして私はそこでとあるテーブルを囲んで話し合っていたプレイヤーたちの中に見知った顔を見つけた。さっき私の開いていたお店で野菜ジュースを買ってくれた女の子、マロンちゃんだ。
マロンちゃんはどうやら女子だけの4人パーティに入っているらしい。
向こうは話し合いに夢中で私の方には気づいてなかったようだけど、そういや私もさっきと違って戦闘用の装備を着ているから会っても気づかれないかも。
でも私は一応念のためにマロンちゃんたちが座っているテーブルとは離れた場所にある席に座った。
「んー、することないや。お、本があるじゃん」
どうやらギルドの2階は資料室も兼ねているようで壁には本棚があった。
本棚の中に入ってる本はちゃんと開いて中身を閲覧することが出来るようで、私は時間つぶしにはちょうどいいかと思い1冊手に取ってみた。
その本は表紙には何も書かれておらずタイトルはなかったものの、中身をめくってみたらどうやら物語のようだった。私はその本を持ってまた席に戻るとさっそくその本を読み始めた。
本の内容は、まあどこにでもあるようなありきたりなものだったよ。
城、勇者、可愛いお姫様、悪いドラゴン、数々の試練を乗り越えた先のハッピーエンド。
だけど王道のストーリー展開のはずなのになぜか私はその物語から目が離せなくなっていた。
とくに最後、ドラゴンを退治して囚われのお姫様を助けだした後の勇者の最後のセリフ。
『私がいる限りこの世に悪は栄えないだろう。正義は必ず勝つのだから』
私は本を読み終えてパタンと閉じると時間を確認した。するとちょうど午後7時になったところで。
私は本を元の本棚に戻すと階段を下って1階へ降りてそのままギルドの外に出た。
そしてまずはレッドウルフを討伐しに行こうと平原へと繋がる門を目指して歩き出したのだけど。
歩いている最中も私はさっき見た本について考えていた。
「正義は必ず勝つ……か。じゃあ負けた方は悪なのか。いや、違うか。正義が勝つんじゃなくて勝った方が正義。いや、勝った方が正義ということになるんだよな、きっと」
私は独り言をつぶやきながら街中を歩いていく。
そしてふいに立ち止まり空を見上げて言った。
「それじゃあ正義っていったいなんなんだよ。誰にも負けない強さを持っていればいいってこと?」
もしも私がその答えを知っていたなら、私は今このゲームをやってはいないのだろう。
だけども改めて考えるにはいい機会だった。正義とはいったいなんなのか。
それさえわかれば私だって、もっとちゃんと生きていけるはずなんだ。
それさえわかれば、きっと。
私は視線を下ろし今度は自分の足元を見た。そこで1つだけため息をつく。
いやいや、それがわかればこんなに苦労してないって!
――1時間後――
私は平原と草原でそれぞれレッドウルフとビッグホーンラビットを倒すとギルドへと戻ってきた。
意外と時間がかかったのは私がのんびりしていたということと、その2体はそもそも出現率が低いモンスターであったことが理由っちゃ理由だけど。
そして2枚の依頼達成書を受理してもらうと報酬をもらった。
レッドウルフの方の依頼報酬は200Gと初回限定で力の種。
ビッグホーンラビットのの方の依頼報酬は300Gと初回限定で素早さの種。
この力の種と素早さの種というアイテムがなかなかに良いアイテムだった。
〇力の種
STR+2
〇素早さの種
AGI+2
そう、ようするに食べ物アイテムの一種なのだが食べるだけで該当する能力値がアップする。
ただし種のアイテムは累計で100個までしか食べられないのだとか。
たとえば力の種を100個食べたら、それ以上はもう種アイテムは食べられない。力だけでなく他の種類の種も含めて全部である。
だからこれはスキルポイントと一緒でどの能力値を上げるのかはプレイヤーの判断にゆだねられるのだ。もちろん私は手に入れた種はまだ使わずにとっておくことにした。
スキルポイントと一緒で、使っちゃった後から後悔とかしたくないからね。
「……ふう。今日はこのくらいかな。続きはまた明日にしよう」
本当はもう少しやってもいいんだけど今日はやめておく。なにより疲れたし。
私はメニュー画面を開くとそこでログアウトのボタンを押した。
――神界の私の部屋――
私はゲーム機を頭から取り外すとそれをテーブルの上に置いた。
ベッドから起き上がり台所で1杯の水をコップで飲むと息をつく。
そうだ、汗かいたからシャワーでも浴びるか。ああ、そろそろ洗濯物も回さなきゃな。
と考えながら浴室へと行くと服を脱いでシャワーを浴びた。
いちおうバスタブもあるけど水道代がもったいないので基本はシャワーだけで済ませる。
そして髪と体をせっせと洗うと体についた泡を流す。
風呂上がり、バスタオルで髪と体を拭き終わり乾かすと、寝巻に着替えてベッドの方へ。
ベッドの中に入り込むとお風呂上がり独特のあの眠気が襲ってきた。
あ、夕飯食べてないや……いいか、もう。別にそんなにお腹すいてないし。
あ、浴室の換気扇のスイッチ消したっけ?……いいか、確認するの面倒だしたぶん消したはずだ。
あ、……いやもう特にないかな。よし、寝よう。
明日はまた森へ行ってもう1回ビッグポイズンスパイダーを倒した後で、ギルドで残りの住民クエストをいくつかやってから岩場へ行こう。
それで岩場を攻略したらついに最後のダンジョンだ。それを突破したら晴れて第1階層はクリア。
ああでも、その前にギルドのクエストは完全制覇しておきたいな、なんて。
先はまだまだ長そうだけどとりあえず今はこのゲームくらいしかやることないから。
「ゲームに飽きるのが先か、それとも私が忙しくなるのが先か、だな」
もちろん神様としては忙しい方がいいに決まっている。
あんまり忙しすぎても嫌だけど少なくとも退屈過ぎるよりはずっといいに違いない。
それもこれも私次第ということなのは重々承知の上だ。
「早いところ、正義とは何かについて知らなきゃいけないな……」
最後にそれだけ言うと私の意識は完全に眠りの中へと落ちて行った。
ゲームだろうがなんだろうがなんでもいい。
やりたいことが、やるべきことがあるというのはそれだけで幸せなことだと私は思う。
それは生きる上での目標でもあり、そして生きている意味そのものでもあるのだから。
神様も人間も、それは一緒だよ………………たぶんね。
<メニュー画面について>
本編の中でたびたび玲愛が開いているメニュー画面について補足説明を。
ゴッドワールドオンラインの世界では、システム的に五感はすべてリンクされています。
(ただし脳や精神に多大なダメージを与えない範囲で。特に痛覚や温度感覚などに関して)
そして通常、プレイヤーの視界には現実と同じ視界で景色が見えているのですが、この時に心の中でメニュー画面を呼び出すことを強くイメージすると視界の端にメニュー画面のアイコンが現れます。
そして手でそのメニューアイコン(ボタン)を触れることでメニュー画面が開かれます。
<メニュー>
〇ステータス確認(プレイヤーの現在のレベル、能力値などの情報から、使用可能なスキルや魔法、その効果の確認なども出来る。)
〇装備変更(戦闘用装備パッドと日常用装備パッドの2つに分かれていて、装備品の付け替えが出来る。)
〇マップ(自分の現在地点の名前とどこにいるのかということの確認。)
〇アイテムボックス(アイテムは自分の好きなように項目分けして表示させることも出来る。)
〇図鑑(モンスター図鑑、装備品図鑑、クエスト図鑑などこれまでの記録を見ることが出来る。)
〇フレンドリスト(フレンド登録したプレイヤーの確認、チャット、通話などが出来る。)
〇ヘルプ(困ったときの知恵袋♪)
〇設定(言語の変更や、メニューボタン等の視界に現れるものの位置の変更、表示の有無。プレイヤーの耳に聞こえるBGMや効果音の音量の調節など、ゲーム内での様々な設定の変更が出来る。)
〇ログアウト(現実世界への帰還)
なお、この情報は本来もっと早い段階で本編内で説明する必要があったこと、並びにその説明の描写を欠いたために本編内でいきなり意味がわからなくなったという事態を招いてしまったことについて深くお詫びを申し上げると共に、今後はこのような不備がないように精進していきたいと考えておりますことをここでお伝えします。
メニュー画面の各項目の詳細につきましては、今後本編内でも説明する機会があると……いいな。
というわけで、以上でメニュー画面についての補足説明を終わります……ごめんなさい。




