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史上最高の贅沢  作者: 諏訪貴信


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贅沢をするには金がいる

 日本一の大富豪、岡根タマルがついに亡くなった。享年94歳。遺書にはこうあった。


「三か月以内に、史上最高の贅沢の贅沢をした者に、全財産を相続させる」


会場が静まり返る。


長男が手を挙げた。


「質問です。」


「はい。」


「贅沢って何ですか?」


「知りません。」


「え?」


「遺書に書いてありません。」


「ええぇぇぇ!?」


ざわつく会場。


その瞬間、棺桶が「ウィーン」と開いた。


「キャーーー!」


中からホログラムの岡根タマルが立ち上がる。


「驚いた?」


「死んでる人が『驚いた?』じゃないんですよ!」


孫がツッコむ。


岡根は得意げだ。


「安心したまえ。私はAIになった。」


「安心できません!」


「三か月だけ生き返る。」


「期間限定なんですか!?」


「サブスクみたいなものだ。」


「死後サブスク!」


会場中が総ツッコミになる。


「ではルール説明。」


岡根がスクリーンを操作する。


ドン!


【史上最高の贅沢選手権】


ピロリン♪


「ポイント制ではありません。」


「ですよね。」


「一発合格です。」


「雑っ!」


「なお犯罪は禁止。」


「そこだけ妙にしっかり!」


「あと税金は払ってね。」


「急に現実!」


ニュースは世界中へ。


翌日。


挑戦者その一。


世界一の石油王。


「月を貸し切った。」


岡根


「ふーん。」


「以上!?」


挑戦者その二。


IT王。


「無人島を買って国を作りました。」


岡根


「住民いる?」


「いません。」


「じゃあ土地持ってるだけ。」


「ぐっ…。」


挑戦者その三。


人気アイドル。


「日本中のプリンを全部買いました♡」


岡根


「物流止まってる。」


「炎上しました!」


「失格。」


挑戦者その四。


YouTuber。


「一億円で巨大プリンを作りました!」


岡根


「食べ物で遊ぶな。」


「コメント欄も同じこと言ってました。」


「でしょうね。」


数日後。


応募は十万件を突破。


スタッフが泣く。


「全部見るんですか?」


岡根


「もちろん。」


「無理ですよ!」


「二倍速で見る。」


「YouTube感覚!」


その頃。


岡根財団には一人の青年が現れる。


「応募したいです。」


受付嬢が聞く。


「どんな贅沢を?」


青年は真顔で答えた。


「三か月、有給を全部使って寝ます。」


受付嬢は爆笑した。


「帰ってください。」


青年も笑った。


「ですよね。」


その様子をAI岡根がモニター越しに見ていた。


「……待て。」


スタッフが振り返る。


「どうしました?」


岡根はニヤリと笑う。


「ちょっと面白そうだ。」


青年はまだ知らない。


「史上最高の贅沢選手権」が、常識人ほど巻き込まれるコメディになることを。


第2話へ続く。

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