絶望
兵たちが血を流し倒れていく。
目の前で倒れた兵を見下ろしながら、考える。
どれだけ作戦を考えても覆らない。
自陣数十人に対し、敵騎馬隊が百以上。
さらに敵の騎馬隊は橋を越え、自陣に入り込んでいる。ユーリとフィオナはウォルターを相手にしているため、遊撃を失っている状況で敵兵の勢いは増すばかり。
(守りきれるか……?)
血溜まりに倒れた兵を見ながら、
(いや、絶望的だ。だが……)
それでも、クロードは剣を振るう。
無数に迫る騎馬を巧みに交わしながら、馬上の兵の足を斬り落とし、胴を突き、自陣への指示も出しながら確実に敵兵を斬り伏せていく。
眼前の敵を斬り伏せて、視界が広がる。
だが、すぐに雪崩れ込んでくる敵の騎馬隊で視界がまた塞がっていく。
「盾を持ち、矢を放て!」
クロードは敵騎馬隊に応戦しながら自陣に指示を飛ばす。
クロードの指示に応じて兵たちは盾を構え、盾の隙間から槍を突き、後方から矢を放つ。
「がはっ!……く、進めぇ!」
「怯むな!突撃!!」
それでも敵騎馬の勢いは止まらない。
次第に、学生達の顔色に疲れと動揺が見え始める。
「クソ、もう腕が上がらねえ」
「こんなの……勝ち目あるのかよ……?」
実地訓練を何度も経験してる二年生達とはいえ、ここまで激しい戦場は初めて。さらに、敵国との交戦なども経験がなかった。
「お前たちは矢を放て!前衛は俺たちがやる!警備隊!学生たちばかりに任せるな!」
「「「おう!」」」
統率の取れた動きで警備隊が盾を構えて、学生たちを援護に回らせる。
学生たちとは違い、皆動揺や疲れは出さない。
「そうだ……!一年も踏ん張ってんだぞ!しっかりしろ!」
「それに倒さなくてもいい!耐えればいいんだ!持ち堪えるぞ!」
二年生たちも警備隊に呼応するように立ち直っていく。
簡単には折れない。
目の前で討ち死にしていく仲間がいながらそれでも必死に応戦する。
士気はまだ保てている。
クロードがそう思った瞬間、それは起きた。
大きな塊が盾兵達の頭上に落ちた。
石だった。
声を上げる間もなく潰されて、石の下から赤い液体が広がる。
さらに石は降り続ける。
「がっ!」
「がぁぁ!足が!」
前衛に立っていた警備兵たちが次々に石の下敷きになっていく。
目の前の惨劇に学生たちは
「じ、自軍の騎馬隊も巻き込んで!?」
「クソっ!クソっ!こんなのどうすりゃいいんだよ!」
騎馬隊も落石に巻き込まれながら、それでも騎馬は進み続ける。自軍が巻き込まれながらも突破を図る作戦。
(まずい!突破される!)
自身の足では間に合わない。
そう判断するとクロードは自陣に攻め込む敵騎馬隊の胴をレイピアで刺し、馬上から落として馬に飛び乗り、自陣へ全速力で駆け出す。
「はっ!」
その勢いのまま、まさに門に届かんとしていた二騎の騎馬隊を斬り伏せ、刺し穿つ。
「がっ!」
「クソぉ……!」
クロードが振り返り自軍を見渡すと投石により、前線にいた警備隊は大打撃。残りの警備隊も負傷しながらなんとか応戦しているが……。
「ぐ!クソ!」
「学生たちは……いや、いい!俺たちで守るぞ!」
振り返り学生たちを一目見て判断した。
彼らはもう戦えない。
武器を手放し、放心する者。
地面にうずくまり、「もうダメだ……死ぬんだ……」と戦意を無くす者。
だが、戦場は待ってはくれない。
落石により敵騎馬隊も減り、勢いも多少は落ち着いたものの、新たな騎馬隊が橋を駆けて進軍してきている。
生き残った警備隊がなんとか騎馬隊を抑えているものの、学生たちはもはや立ち上がることすらままならない。もはや闘志はない。
クロードは
「全員、立ち上がれ!!」
学生たちは顔に絶望を浮かべたままゆっくりクロードの方へ顔を向ける。
「……そんな事言ったって、もう……!」
投石により片腕がなくなった学生が腕を抑えながらそう言うと
「まだ片腕がある」
「……なっ!」
「その腕が落ちれば足で戦う。足もなくなれば口に剣を咥えてでも戦う。そして命尽きる時は、肉壁となって門を塞ぐ。このくらいの覚悟がなくて騎士など目指す気か」
クロードの言葉に学生たちは驚愕の表情を浮かべる。
「でも……もうかなり死んだし……」
「あんな数無理だ……気持ちだけじゃ救えねえよ……」
学生たちの闘志は消えかかっている。
だがクロードは構わず続ける。
「……例えば、この門のすぐ近くに自身の家族がいれば諦めるのか」
「「!?」」
「ここを突破されても、すぐに国が落ちることはない。王国に辿り着く前に、騎士達が討つ。だが国境付近にいる者たちは?恐らく助からない。その者たちを見捨てると?確かにその者達は皆の家族ではないかもしれない。ただの一市民かもしれない。だが、我々はその一市民のために命をかけて戦う者たちだ」
「……!」
「……そうだ……!」
腕を抑えていた手に剣が握られる。
「そして前線でボロボロになりながら、投石にも怯まず死ぬ最後まで騎馬を抑え、散っていった勇士達を横目に諦めるつもりか!」
「……いいや!」
「……やらないと!」
絶望の顔色から闘志がみなぎる顔つきになり、立ち上がり、力強く大地を踏み締める。
「立ち上がれ!勇士達よ!!全てをかけて門を守り抜け!」
「「おおおおお!!」」
もう一度闘志に火がついた学生たちは盾を持ち、槍を持ち、弓を構えて狙い撃つ。
相変わらず騎馬に押され気味だがそれでも闘志は消えない。
「お前ら!気合い入れろぉぉ!!」
「一騎たりとも通すな!」
クロードは騎馬隊に突撃していく。
両側から槍を突かれると馬から飛び上がりながら攻撃をかわして、両側の騎兵の首元に一閃。
血しぶきが舞った。
一回転の着地と同時にそのまま馬に跨り直してまた騎馬に駆けていく。
敵陣を見れば投石機の腕が上がっている。
(まずい……!)
「投石機だ!門のすぐ近くまで下がれ!」
クロードが馬に跨りながら自陣に指示を出す。
盾兵たちは騎馬を抑えながら、なんとか後ろに下がり、備えた。
……だが、衝撃が来ない。
クロードが敵陣を見ると
バキイイイ!と音を立てて石を投げようとしていた腕をルシエラが打ち壊していた。
二機目の投石機が壊された。
「う、うおおお!助かったぞ!」
「よし!騎馬隊を抑えろ!!」
「「おお!」」
(なんとか間に合ったか……)
クロードは騎馬に応戦しながら、自陣を見渡す。
石は飛んでこなかったものの、少しずつではあるが、兵は減っている。
(時間がない。この状況でまた石が降ってきたら……)
いよいよ守りきれないだろう。
(指揮を任せて、自身も投石機の破壊に向かうか……時間の勝負ならその方が……)
だが失敗すれば突破を許すかもしれない。
リスクを犯すべきか、考えていると
「クロードさん!お待たせしました」
声の方を見るとジュール、ミハイルを先頭に避難誘導にあたっていた学生たちが合流した。
「来たか!」
「ええ。……ひどい惨状ですね。状況は?」
クロードは簡潔に避難誘導組の生徒たちに状況を説明する。
状況を聞くなり弓を持ち構えるもの、盾と槍を持って前線に行くものなど二年生の行動は早かったが
「マジかよ……」
「お、俺らも戦うのか……?」
初めての戦場に一年生たちの顔色は青くなる。
「怯えるのも無理はない。だが、今は一人でも多く兵が必要だ。戦ってもらう」
「……お、おう……」
「わ、わかった……!」
クロードに言われて一年生たちは声を上擦らせて、ジュールの指示で配置につく。
クロードは傍のミハイルに
「指揮を頼めるか?」
「ええ!お任せください。というかあの投石機をなんとかしないとどうせ全滅します」
「ああ。そっちは任せろ」
そう言って、クロードは騎馬に跨り、全速力で駆け出す。
「こいつを抑えろ!」
「囲め!」
クロードを止めようと、十騎以上の騎馬がクロードを取り囲む。
「っ!」
クロードは構わず、正面の騎馬に突撃した。
騎馬の馬上の兵たちから槍の突きが放たれる。
迫る三本の槍が交差する瞬間をクロードは見逃さない。
レイピアを一振りし、三本の槍による突きをいっきに受け流し、騎馬の間に走り込んで、両翼にいる馬上の兵の胴をレイピアで突いていく。
「うぐっ!」
「ぐおっ!」
兵たちが馬から倒れ落ち、クロードが開いた馬上に跨る。
「はっ!」
手綱を強く握りながら馬の横腹を蹴り、クロードは馬を走らせて敵の騎馬隊の集団に突撃し、レイピアを振るう。
「がっ!」
「ああああ!」
騎馬同士が交差すると同時に血飛沫が上がっていく。
さらに横から兵が槍を突く。
槍の突きと同時に、クロードのレイピアの突きが放たれた。
次の瞬間、槍を持つ指が数本宙に舞っていた。
兵が目を見開く。
「……は?」
その動揺を見せたが最後、一閃。
ゴトッと落ちた首に目も向けず、クロードは敵陣へ向かって駆け出した。
クロードを見渡しながら、ミハイルは指示を出す。
「避難誘導組の皆さん!まずは前線で抑えてる盾兵の後ろに一列に並んでください」
ミハイルの指示に二年をはじめとする学生たちが間に入る。
「皆さんは前の盾兵を支えてください。二人で盾を持って動きを止めるのです。槍兵の皆さんはその後ろに。そして、動きが止まった隙に弓を射ちます。ああ、弓兵は兵ではなく馬を狙うこと。では始めましょうか!」
ミハイルの指示に警備隊と二年生たちは陣形を作る。一年生たちのタジタジの動きを見てミハイルが細かく配置を調整し、指示を飛ばす。
盾兵で抑えたところを矢が馬を射る。
すると、馬上の兵が落馬して、その後ろから迫る騎馬に撥ねられて行く。
「敵騎馬隊の進軍を利用した作戦か!」
「なるほど!」
警備隊から感嘆の声が上がる。
さらに盾兵の前に馬や人の死骸が重なっている事で、騎馬の勢いが落ちる。
「けど、これ飛び越えられるんじゃ!」
「ええ。ですがーー」
騎馬が盾兵たちを飛び越えると
「今です!突き上げてください!」
ミハイルの指示で飛び越えようとした馬の腹に槍が刺さった。
「おお!なるほど!」
「すげえ!」
指揮が上がっていく。
ミハイルがふと弓兵の方を見ると、一年の数人が震え、顔を青くしている。なかには膝をついているものすらいた。
(一体何故……そうか!)
攻撃を受けたのではない。
「……あ、こ、殺しちゃった……!」
「はぁ、はぁ!」
一年生は初めて人を殺す者も多い。
馬を射損ねて、兵に当たってしまったのだろう。
動揺した弓兵は危ない。誤って味方を射てしまえばさらに動揺してしまう。
「そこの皆さん、下がってください」
ミハイルは震えて、弓を射る事が恐怖であろう一年に声をかけるが
「だ、大丈夫だ!や、やれる!」
「へ、平気よ!」
冷静な判断をできない状態なのか、一年生たちは指示を突っぱねる。
するとミハイルは一年の方へ歩いて行き
「いいえ。はっきり言って邪魔です。戦力にならない」
「……あっ!」
そう言って、一人の一年生から弓を奪い取る。
「下がっていてください。邪魔です」
言われて、一年生たち数人が下を向き、門をくぐる。
そんな集団の中、一人見覚えのある一年が表情を変えず、弓を射ていた。
(ユーリさんと同じクラスの……)
「リズさん……ですっけ?大丈夫ですか?」
「ふっ!……なんでだろう、確かに狙いを外して敵兵を殺したのに何も感じないの」
ミハイルの方を見ずに矢を放ち続ける。
「私……おかしいのかな」
悲しみを含んだ笑顔を浮かべ、矢を放つ。
「……どうでしょうね。まあ、今問題ないなら続けてください。ですが手が震えたらすぐに弓を置いて引いてください。貴方の為ではなく、貴方のミスで味方が死なないためです。いいですね?」
「うん、わかった」
ミハイルは盾兵の方へ視線を戻す。
やや押され気味ではあるが被害はほぼない。
「左翼から騎馬が集中してます。弓兵、左翼に集中して放ってください。……槍兵、今です!突き上げて下さい!」
ミハイルの指示に馬が貫かれて、兵が馬から落ちる。
「殺せえ!」
「「おお!」」
槍を持った二年生の号令に皆が敵兵を刺し殺す。
槍兵の中にいたアルノーとノアも刺し殺していく。
「……ふ、あ……」
「おい、大丈夫か?」
上擦った声を上げ、震えるノアにアルノーが声をかける。
「……平気……やらなきゃ……大丈夫……」
「おう……」
「……アルノーは怖くないの……?」
「やるしかないって思ったら案外な……」
「……そう……」
(動揺して槍で味方を刺す可能性は低い。とはいえ、あれ以上動揺するなら下がってもらいましょう)
これなら騎馬隊は抑えられるかもしれない。
(ですが、やはり長くは持ちませんよ)
ミハイルは敵陣地の投石機を見据える。
投石機の腕が上がり始めていた。
(あれが無くならないと形成は逆転しますよ)
ルシエラは敵兵の集団を大剣を振るい制圧しながら、背後のガルドに
「ガルド!行け!」
「しゃあっ!」
敵の集団に一筋の道を掻き分け、ガルドが奥の投石機目掛けて駆け、そのまま敵兵を踏み越えて大きく跳躍する。
「先輩!これ!」
下にいたフレイヤが自身の持っていた二本の戦斧を空中のガルドに投げ渡し、
「はっ!悪くねえ!ぶっ壊れろ!」
バキイイイ!!
上がりかけていた投石機の腕がひしゃげて壊れる。
「っとぉ!助かったぜ。ほらよ」
ガルドが着地すると同時にフレイヤに借りた二本の戦斧を投げ渡す。
「よっと。ナイス!」
「よし。あと一つ、急ぐぞ!」
フレイヤが受け取るのを見てルシエラがそう言うと、三人は次の投石機へ駆け出す。
残り一つ。
だが、全ての兵がその残り一つの投石機の前に守りを固めていた。
(倒して通る時間はない)
「……フレイヤ、私が大剣でお前を投石機まで一気に飛ばす。そのまま破壊だ。できるか?」
「了解!まっかせて!」
「よし。ガルド、フレイヤの着地までに投石機までの道を開けるぞ」
「おう!」
敵兵がこちらに突撃してくるのをガルドが受け止め、蹴散らして行く。その隙に
「来い!」
「うん!」
フレイヤがルシエラに向かって走り、下に構えていた大剣を踏むと同時に大きく大剣を振り上げる。
大剣が足から離れる寸前、大剣を蹴り、振り上げられた勢いと共に、投石機の頭上に上がる。
フレイヤが上がったのを見てルシエラは
「行くぞ!」
「うぉりゃぁ!」
ガルドに声をかけて軍勢の中を強引に突破していく。
「がぁっ!」
「と、止まらねぇ!」
二人が突破すると同時に
「はああああ!!」
バキイイイイ!!
投石機の腕が激しく折れる。
四機目。
「よし。よくやった」
「ふぅ!今の楽しかったー!」
全ての投石機が破壊され、三人に笑みが浮かぶ。
だが、敵兵三百人程に囲まれている。
三人はすぐに背中合わせになり、表情を引き締める。
「はっ!後は雑魚蹴散らして終わりだ。こいや!」
「くっ!お、お前ら!たった三人だ!ぶっ殺せ!!」
「「「おおおお!!!」」」
一斉に襲いかかる軍勢に三人はそれぞれ正面に駆け出していく。
ルシエラは大きく大剣を振るう。
「「「がっ!」」」
すると一気に敵三人の首が飛び、後列の敵兵が足を止める。ルシエラはさらに横薙ぎに振るい、次々と敵兵を斬り伏せていく。
ガルドは片手で敵の頭を掴み、振り回して軍団に向かって投げる。さらに突撃してくる敵兵の足の間に頭を入れて風車の要領で持ち上げてから目一杯地面に叩きつける。そのまま突進して敵兵の腰に下げている剣を抜き奪って振り回す。
「ぐはっ!」
「ぎゃああ!!」
軍勢の中心から大量の血飛沫が上がった。
フレイヤは空中に大きく跳躍して、敵兵の頭を足で踏み抜きながら撹乱して斬りつけていく。
「がああぁ!!」
「クソ!こいつら止まらねぇ!」
三者三様に戦っているところに、クロードが到着する。
レイピアを抜き、軍勢が三人に夢中になり、囲み殺そうとしていたグランゼルト兵達を背後から斬りつけていく。
「な!う、後ろからも来てるぞ!」
「クソ!どうしろってんだ!」
「大人しく死ぬかいい」
クロードの正確無比な剣術の前になす術なくグランゼルト兵達は後退する。だがその後ろから、つまり中心からはフレイヤが迫っている。
「な、おい!退がるな!やべ、ぎゃああ!!」
「押すな!ぐわっ!」
次第にグランゼルト兵の統率も勢いも消えていく。
「オラオラ!どうした!もっとこいや!」
「ハァッ!」
反対側ではそれぞれルシエラやガルドが応戦、もとい蹂躙に近い形で圧倒している。やがて数十人、数人、そしてついにグランゼルト兵は全滅した。
「ふう。こんなもんだな!よし、終わりか」
「ああ。よくやった。皆よくたたかっーー」
パチパチパチパチ
ルシエラが言い切る前に、拍手とともに人影が一つ現れる。
深めに被ったフードからは長い銀髪が首の横から流れている。端正な顔立ちにモノクルを掛けた長身の男だった。男は地面に突き刺した禍々しい槍を抜き取って肩に携えながらこちらへゆっくり向かいながら、
「いやぁ、本当に強い。まさかうちの兵を全滅させるとは。こんだけ数いれば余裕だと思ったんだけど……。しかし、皆強いねぇ。特に黒髪のお嬢ちゃん、ウォルターちゃんとやり合ったんだって?確かにウォルターちゃんが倒しきれなかったのも納得だわ」
「っ!!全員!構えろ!!」
ルシエラの声に全員が構える。
だが、
ぞわりと、本能で四人は感じ取った。
四人がかりでも、この化け物には勝てないのでは……?
「いやあ、才能は認めるよ?けど今の君らじゃ無理だよ」
「……お前は……何者だ!?」
「ふむ、では君らに敬意を表して名乗ろう。
俺はレオナルド・グレイ。グランゼルト公国の大将さ」
「大将……だと!?」
「上から二番目の階級か!」
「おお、よく勉強してるねぇ」
「一つ聞かせろ。何故侵略する?グランゼルト公国の目的はなんだ?」
「なんて言ってたっけな……ああ!うちの陛下がヴァルディアの国旗の青が気に入らんって言ってたわ。この前占い師に青は凶兆って言われたんだってさ」
「なに……?それだけか……?」
「それだけだよ」
「そのために侵略し、戦争を起こすだと!?いかれている!」
「ん〜まあね〜。けど、王様の機嫌一つで戦争になるなんてよくある事だよ?……さて、もう質問はいいかな?なら、ここで死んでね」
「!来るぞ!」
ルシエラがそう言うと同時に男の槍による突きがガルド目掛けて放たれた。
「ぐっ!!」
かろうじて持っていた剣で直撃は防いだものの、剣が砕かれ肩口を裂いて後ろに大きく蹴飛ばされる。
「がはっ!!」
ドゴォオオン!!
木を倒しながら吹っ飛んだガルドはなんとか立ちあがろうとするも、体が言うことを聞かない。
「いやぁ!よく防いだねぇ!心臓に一撃入れようと思ったんだけどねぇ!」
「おおお!」
「ふっ!」
「はああ!!」
男が言うと同時に三人が三方向から攻撃を仕掛ける。だが、
「おっとっと」
槍を振るい、軽く受け流すと勢いよく槍を旋回させて三人を吹き飛ばした。
「威勢がいいねぇ!今の見てまだ戦うなんて肝が座ってるね。うちの兵にも見習ってほしい、よっ!」
言い切ると同時にフレイヤの心臓目掛けて槍の突きが放たれる。
「ぐっ!?あああっっ!!」
戦斧で受け流そうとするも間に合わない。
肩に深々と刺さり貫通する。
「あ……!!ぐぅ……!!」
「いやぁ、言わんこっちゃない。だから抵抗しない方が楽って言ったのに」
「クソォ!!」
フレイヤは肩に槍が刺さったまま、片方の腕で戦斧を男の頭目掛けて振る。
だが、
「ガッツがあってよろしい!けど残念!」
その攻撃を読んでたのか、振るわれた腕を掴み、槍を抜き、掴んだフレイヤの手首をそのまま持ち上げ、地面に勢いよく叩きつける。
「がっ!!」
ガクッ!と
頭から叩きつけられたフレイヤが意識を手放す。
「一人目ぇ……!」
「ハァッ!」
男がフレイヤの心臓に槍を突き刺そうとしたところに、ルシエラが大剣を振るって間一髪。
男が大きく飛び距離を取る。
「はっは。いやぁ、後数年もすれば君たちは本当に危険な存在になる。やっぱり、何があっても殺さないとなぁ」
男が槍を旋回させて構え直す。
二人の驚愕をよそにレオナルドは槍を片手でクルクル回しながら交互にみて、指を指す。
「どーちーらーにーしーよーうーかーなー……こっち……ははは!なんてね〜」
まるで楽しむように、自分たちの命を握っている。
ルシエラは初めて手が震えていた。
(援軍まで、本当にもつのか……!?)
援軍到着まで、後十五分。




