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ヴァルディア戦記  作者: ユユ
1/17

騎士学校へ

ユグリア大陸 


八カ国からなるこの大陸は国々の思惑、思想などから常に冷戦状態だった。そんな大陸の西部に位置する国ヴァルディア王国。

騎士国家であるこの国に一人の少年が騎士を志し、騎士学校へと向かっていた。

馬車に揺られ、草原を駆ける。

「坊主、もうそろそろだぞ〜」

馬車引きが声をかける。

「ん〜。……でかぁ」

前方の騎士学校を見ながら顔だけを覗かせて、長めの黒髪を風に靡かせた少年、ユーリが言う。

田舎育ちのユーリからしたら、初めて見る石でできた巨大な建物だった。

「だろう?このユグリアでもヴァルディアの騎士学校は最大の規模を誇るからな。坊主も立派な騎士になれよ〜」

「はーい」

気の抜けた返事に馬車引きが笑う。


草原から石畳の道に変わっていた。

ヴァルディア騎士学校

門の前には門番の騎士が二人、そして、数十人程度の新入生がいた。

「よし、ついたぞ」

「うん。ありがとう。」

馬車から降りてユーリが馬車引きに銀貨を一枚渡す。


広大な門をくぐると、自分と同じ新入生となる者たちが

緊張や不安の表情、楽しそうにするものなど、様々な表情を浮かべていた。


正面の受付へ進む。

騎士学校の入学手続きは簡素なものだった。


手続きの際に貰った腕章を付けながら、中央の広場に向かうと、すでに百人以上の新入生が並んでいた。

すると、隣にいた大柄の男が、

「よう、俺はアルノー・ベルク。王都ヴァロワの出身だ。よろしくな。」

ブロンドのオールバックの大男、アルノーは手を差し出しながら話しかけてきた。

「うん。俺はユーリ・ヴァレン。よろしく〜」

ユーリは握手に応じながら返事をした。

「今年の新入生はすげえ奴らが揃ってるぜ?」

「へ〜、例えば?」

「まず、あの前にいる白銀の髪の男、クロード・アークライト。貴族。俺らと同い年ながらすでに特例で、いくつかの戦場に出陣してる。

剣術、戦術どっちも化け物らしい。あいつがこの世代最強だろうな。」

「へ〜、すごいね〜」

アルノーは構わず続ける

「それに、今年は他国からの留学生が多い。有名なやつは…例えばあいつ、あの赤い髪の女。隣国の北方国家ノルディア出身のフレイヤ・ルーン。ヴァルディアでもちょっとした有名人だ。」

「他国からも来るんだね〜」

「ああ。このヴァルディアは他国からの留学生も受け入れる。ユグリアでも有数の騎士学校だからな。毎年、数人いるぞ。」

「へ〜。ん、ねぇ、あいつは?」

ユーリが左前方の青みがかかった髪の男を指差すと

「あー、あいつもいたな。やつはミハイル・レヴァイン。東側の国、アルゼリア帝国の留学生だ。不気味なやつでな。何でも知略に秀でてるらしい。」

アルノーが説明していくとユーリが

「めっちゃ詳しいね。オタク〜?」

「いや、こいつらめっちゃ有名人だぞ?逆になんで知らねえんだよ……。あと、この学校は訓練で死ぬ奴もいるらしいぜ」

「そうなんだ〜こわ〜い」

「お前本当に思ってるか?」


二人が話していると、広場の前の壇上に一人の男が立った。

「諸君、時間である。私語をやめろ!」

その声はユーリたちのいる後方まで広がった。

男の声に、全員がその男に注目する。

長い金髪に威厳のある顔立ちをした大柄の男がいた。

「私は、この学園の副学園長、ローラン・ヴェルディエだ。諸君らは本日より、騎士候補生となる。

騎士とはこの国に絶対の忠誠を誓い、その命をこの国のために使う者たちだ。隣にいる友人が、明日には死んでいる事など当然のようにおこる。

……そして、それはこの学園でもだ。」

教師、ローランの言葉に新入生達がざわつく

息を呑む者、顔が青ざめる者

だがローランは気にした様子もない。

「この学園の訓練では年間、死人が出る。

諸君、気を抜くな。ここはただの学園ではない。ヴァルディア王国が誇るユグリアでも最大級の騎士学校だ。本日より、騎士として生きる覚悟を持て。

覚悟のできない者はいつ辞めても構わない。」


広場が静まり返った。

だが、ローランは続ける


「では、最初の試験を始める。」

静まり返っていた広場がまたざわつく

「いきなりすぎだろ!」

新入生たちの動揺の声が上がる。

そんな様子の新入生にローランは

「先ほど言ったはずだ、本日より騎士としての覚悟を持てと。そして、出来なければ帰れともだ。」

広場はまた静まり返り、ローランは続ける

「…では、始めるぞ、試験官前へ。」

前へ出てきたのは四人の騎士だった。

「彼らは現役騎士だ。今から、彼らと一対一の試合をしてもらう。安心しろ、使用する武器は木製の物のみ。そして、勝ち負けで合否が決まるわけではない。結果はその場で試験官である騎士が判断する。」

新入生たちのざわつく声が広がる。

そんなざわつきを無視してローランは続ける。

「武器の種類は、剣か槍だ。では、名前を呼ばれたものから前は出ろ。」

名前を呼ばれたものたちが前へ出る。

「では、始め!」

ローランの声で試験は始まった。

新入生たちの反応はさまざまだった。

恐怖で足が震えるもの、即負けるもの。

現役騎士に勝てるものはなかなかいなかった。

そんな生徒たちに、現役の騎士たちが「不合格!」

「合格!」などさまざまな評価が下されていき、脱落して退出する者も少なくなかった。

そして、「次、クロード・アークライト!前へ」

クロードの名前が呼ばれる。

新入生たちもざわつく

「おお、あのクロードだぞ。」などさまざまな声が出る。


アルノーが、

「おい、来たぞ。いよいよクロードの番だ。」

「お〜、お手並み拝見〜」


クロードが構えると、雰囲気が変わった。

試験官である現役騎士が構える。

だが、


ーー勝負は一瞬だった。


現役騎士が剣で防ぐ前にクロードの剣による突きが騎士の胸を鋭くとらえる。

勢いよく壁まで飛ばされた、試験官の騎士は意識を手放した。


この試験で、試験官に初めて勝ったものが現れた。


広場が歓声に包まれる!

「おおー!すげー!」

「噂通りつええ!」

アルノーが顔を引き攣らせて

「まじかよ、見えなかったぜ…。」

「……うん。あれはやばいね。」

そう言ったユーリの顔はどこか楽しそうな笑顔を浮かべていた。


倒れた騎士の代わりに、ローランが「クロード・アークライト、合格!」

判定を下す。

クロードは興味なさそうに列に戻る。


「次、フレイヤ・ルーン!」

呼ばれると、はい!と言いながら、快活に歩いていく。

すると武器の置き場を通り過ぎてフレイヤがローランに聞く。

「武器は使わなくてもいいの?」

「かまわない」

そう言われて、フレイヤは騎士の前に行き構えをとる。

新入生がざわつく

「おい、あいつ素手でやるのか?」

「大丈夫かよ」

騎士が木剣を構える。

「来い!」

「じゃあ、いくよ!」

フレイヤが地面を蹴る。

次の瞬間、鋭い蹴りが放たれる。

「ぐっ!……なっ!」

騎士はギリギリ持っていた木剣で防ぐ。

だが、木剣が折れる。

騎士が体制を崩した瞬間を逃さず、

「はあ!」

フレイヤが背負い投げの要領で騎士を制圧した。


倒された騎士が咳き込みながら

「が!ぐ、ゴホゴホッ!……ご、合格!」


そして新入生たちがまたざわつく

「すげー!素手で勝ちやがった!」

「木剣が粉々だぜ!」



フレイヤが列に戻り試験はつづく。

そして,

「次、ミハイル・レヴァイン!前へ。」

「はーい」


小柄な少年が木剣をもって前に出る。

そのまま、騎士相手に構える。

試験官の騎士が

「来い!」

そう言うとミハイルはゆっくり歩いて近づく。

騎士は警戒しながらも木の槍でミハイルを突く。

だが、ミハイルの姿は消えていた。

「なっ!」

騎士が動揺すると背後から

「えい!」

次の瞬間、ひざの裏に衝撃が加えられる。

「うっ!」

騎士が前のめりに倒れかける。

俗に言う、膝カックンの要領で騎士を転かしたのだ。

「あっはっはっは!さぁ、まだできますか?」

「〜〜!!っ!!!」

騎士が立ち上がり木の槍を拾い、ミハイルを突く。

それを後ろに下がりながらかわしていき、

「あっはっはー!こっちですよー?」

ミハイルは後ろに下がりながら槍の猛攻をかわしていく。

すると、

また姿が消えて今度は横にミハイルがいた。

足をかけられ、騎士が前に倒れる。

倒れた騎士の喉元に木剣を突きつけながら

「あっはっはー。まだまだ、できますよね?」

「くそ!きさま……!」

騎士が立ち上がろうとした時、

「もういい。ミハイル・レヴァイン、合格だ。」

ローランが判定を下した。

「ええ?もう終わりですか?もっと遊べたのに。」

そう言って木剣を置いて笑顔で列に戻っていく。

新入生がざわつく

「性格悪すぎだろ」

「でもあの動きなんだ?」


アルノーが

「感じの悪いやつだな。いけすかねえな。」

「……ちょっと面白かったけどね。」


そして、「次、ユーリ・ヴァレン!前へ!」

「はいは〜い!……じゃ、行ってくる。」

「おう!頑張れよ!」


鼻歌まじりに木剣をとって片手で回しながら立つ。

「なんか、軽いなあいつ」

新入生たちが怪訝そうな顔で見る。


騎士が木剣を構えながら

「こい!」


「いくよ〜。……!」

ユーリが正面から斬りかかる。

騎士は木剣で受け止める。

だが、

切りかかったと同時に前蹴りを放っていた。

「ぐっ!」

騎士が倒れる。が、すぐに起き上がり構えなおす。

「さぁ、楽しませてね〜」

ユーリが楽しそうに笑いながら、手をクイクイと騎士の攻撃を誘うと騎士が木剣で斬りかかる。

これをユーリはまるで舞うかのようにひらりひらりとかわしていく。

そして、騎士が両手で切りかかった瞬間、まるで舞踏のように騎士の背後に回り、背中に一閃。

騎士は倒れながら、

「ぐっ!……合格!」


そして広場に歓声が上がる

「すげええ!誰だあいつ!あの動きはなんだ!?」


ユーリは笑顔のまま列に戻りアルノーの隣に戻る。

アルノーが驚いた顔で

「お前、何もんだ……?」

「え〜?天才〜?」

ユーリは笑顔で答える。

すると、

「次!アルノー・ベルク!前へ!」

「おっと、俺の番か。」

「頑張ってね〜」

「おう。行ってくる」


アルノーが木の槍をとり、構える。

騎士が木の槍を構えながら

「来い!」

そう言うと、アルノーが木の槍を突く

だが、騎士は全てを弾く。

アルノーの攻撃は当たらない。

そしてアルノーの突きが前のめりになった瞬間を

騎士は見逃さなかった。

「はあっ!」

騎士の突きがアルノーの手元に当たり、武器を落としてしまう。

すぐに木の槍を拾い上げようとするが、喉元に騎士の木の槍が突きつけられ、

「動くな!」

アルノーは制圧された。

「くそっ!」

「合格!」

騎士から判定が下される。

アルノーは悔しそうに顔をしかめながらユーリの隣に戻る。


ユーリが

「どんまい」

「ま、流石に勝てねぇか……。お前が恐ろしいよ。」

「ふふ、でしょ〜?」

その後、数人が順番に呼ばれ全員の試験が終わった。

「試験はここまで!」

新入生たちがローランの方へ向く

新入生二百人中、残ったのは百五十人。

その中で、試験管に勝ったのは四人。


クロード・アークライト。


フレイヤ・ルーン。


ミハイル・レヴァイン。


そしてー


ユーリ・ヴァレン。


ローランは彼らを一瞥し、何事もなかったかのように

「これより班をわける!この学園での三年間、同じクラスとなる戦友だ。クラスは四クラス。名前を呼ばれたものは前へ出ろ!

第一班、クロード・アークライト!

第二班、フレイヤ・ルーン!

第三班、ミハイル・レヴァイン!

第四班、ユーリ・ヴァレン!」


呼ばれた四人が教壇の横に並び立つ。


ローランが

「この四人をクラスの班長とし、編成を行う!」


新入生たちがざわつく

「な、留学生が二人もいるぞ! 貴族は一人だけだ!」


するとローランが

「静粛に!この国も学園も実力主義の国家であり学園だ。身分、出身などは問わん。いいか、ここは貴族の遊び場ではない。気に入らないならば……わかるな?」

ローランの言葉に新入生たちは何も言い返せない。


「それでは、第一班から……」


その後四つの班に分けられた。


すでに班ごとに特徴が現れていた。



第一班は貴族のみで構成された班。


第二班は大柄なものや武闘派のもの達で構成された班


第三班は知性的な雰囲気の者達で構成された班


そして、


第四班はまとまりがない。


個性的、


異端児、


寄せ集め


そんな班だった。


「よう、ユーリ。一緒のクラスだな。」

アルノーは四班だった。

「おー、よろしく〜。」



「各自、班に分かれて教室に案内する!では、第一班から!」


ローランがそう言うとすらっとした、どこか気品を感じる雰囲気の男が第一班の前に立つ。

「私はルシアン・ベルフォール。君たちの班を担当する。では、着いてきたまえ。」

第一班が案内され移動する。


「次!第二班!」


そう言うと顔に大きな傷のある、大柄な体格の男が前へ出る。

「よう!俺はバルタス・グラン!お前ら、ついて来い!」


第二班が移動する


「第三班!」

すると

銀髪の眼鏡をかけた理知的な女性が前へ出る。


「初めまして、私はエレノア・ルグラン。着いてきてください。」


そして第三班も移動する。


そして

「第四班!」

すると

黒髪の長身、どこかくたびれたような風貌の男が前へ出る

「……私は、カイン・アーヴェル。……着いてきてください。」


そして第四班も移動した。


第四班の教室の扉が開く。

教室に入ると皆それぞれ自由に座っていく。


そして、教卓に立ったカインが教室の生徒を見渡す。

「……ふむ。……では、授業を始めようか。」

すると一人の活発そうな見た目の女子生徒が

「え!いきなりですか!自己紹介とかしないんですか!?」

そう言うと数人が

「そうですよ! うんやろうやろう」など、声が上がる。

だが、カインは

「……必要ありません。……どうせ、大半は死にます。やりたければ、休憩時間にでもどうぞ。」

教室が凍りついた。

そんな中、

「……っぷ!く、はははは!はっきり言うじゃん!」

ユーリが一人楽しそうに笑い出した。

隣の席に座ったアルノーが小声で

「お、おい、ユーリ……」

ユーリが空気を読まず爆笑するとアルノーは軽く引いていた。


するとカインが

「……当然です。……事実ですから。」


「……ここは、ただの学園ではないと初めに説明されたはずです。

……それに、この中で騎士として見込みがあるのは……班長のユーリ・ヴァレン君、君くらいです。

……他は試験官の騎士一人も倒せない。……そんなことでは貢献するどころか、戦場で犬死にするだけです。……さあ、机に置かれている、資料を開いてください。……必要であればノートも取ってくだい。」


「……改めて、授業を始めます。」


こうして、


ユーリ・ヴァレンの学園生活が幕を開けた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!


王道寄りの戦記ファンタジーを目指して書いてます!

感想、評価など頂けると嬉しいです!!

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