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ぼっち令嬢と元竜王  作者: ゆるゆる堂


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第11話 ジェイク・カルタールとリーア・ギムソン

「ねえ、やっぱりよくわからないのだけど」

「父も同じ気持ちだよ、リーア」


 前世の事をすべて思いだした私は、「竜王にまた会えてとても嬉しかった」という前世の私の気持ちを、前世が竜王であるジェイク様に伝えなきゃいけないと思って、お父様に面会を申し込んでもらった。

 王族への面会には沢山の手続きがいるので、内容の緊急度にもよるけれど申し込んでから実際に会えるまで大体1ヶ月、長いと半年近くかかるものだ。申し込みの返事だって、最低でも1週間以上かかる。

 しかし、返事が来たのはなんと2日後。会える日の指定日は1週間後。

 そしてそれは、面会の許可だけでなく、私リーア・ギムソンへの、第二王子妃候補への誘いでもあった。

 ジェイク様は勘で私に会いにきたと言った。

 その素晴らしい勘で私がユキコさんだと気づいたとか、そういうことだろうか。

 なんにせよ、通った面会権を辞退することも、また婚約の候補者としての誘いを無下にすることもできるはずもない。

 相手は王族だ。

 なので、私たちは相手が指定した日時に合わせて、馬車で王城へと向かっている。馬車の中には私とお父様しかいないので、口調も、話している内容もだいぶ砕けていた。


「お父様、私、王子妃にはあまり向いていないと思うんだけど…」

「父もリーアが王子妃に向いているかと言われると、正直向いていないと思う。社交会嫌いだろう?」

「嫌いじゃないわ苦手なだけよ」

「そうか。まあしかし、我々の立場からいくと、適齢期のお前が王子妃候補になるというのは、それほどおかしいことでもない」

「それも、そうなのだけど」

「すこし学園で浮いているというだけで、態度も成績も申し分ないしなあ」

「お父様、それはちょっと一言余計だと思うわ。酷いこと言われたとお母様に告げ口しておくわね」

「可愛い娘を思う父の気持ちだ。…内緒にしておいて」


 そんな会話をしつつ、改めて考える。

 この国には4大貴族といわれる大きな領地を治める4つの貴族がいる。ひとつが私たちギムソン家。

 ギムソン領の基本資源は観光。海と山、どちらも領内にあり、領地としてはこの国最大規模のものだ。

 そしてついで大きな領地を治めるジェミニア家。すこし厳しい気候の領地で、基本資源は魔道具などに使う特殊な鉱物の採掘。

 そして農業を基本資源にしている、多種族を多く受け入れている領地を治めるヴィヴィ家、様々な職人の受け入れを行い加工物を基本資源にしているタイマン家。

 得意分野がそれぞれ違う4大貴族は協定関係を結んでいることもあり、家同士や当主同士は割と仲がいい。

 ジェミニア家には子どもは男性しかいないし、ヴィヴィ家は女性当主で確か未婚の女性は4歳のシリィ嬢だけのはず。

 タイマン家の男児の跡取りがおらず、長女は第1王子の婚約者で、次女は婿養子を取ることに決まっていたはずだ。

 別に第2王子の婚約者が4大貴族のだれかである必要はないのだが、候補から外される理由もない。

 今回おかしいのは、タイミングと、申し込みがあまりに急だったからだ。

 兎にも角にも、ジェイク様にあってみないと、真意はわからない。

 私とお父様は、はあ、とため息を吐いてとりあえず、会わないことにはいくら2人で話したところでらちがあかないと王城を目指した。

 そして、客間に入った瞬間に私たちを出迎えたのは、


「申し訳ない」


というジェイク様の謝罪だった。




***




「ジェイク様、お顔をあげてくださいませ。第2王子がそのような姿を我々に見せるのはいかがなものかと思います」


 ジェイク様は、お父様の言葉に頭をあげて、ひとつ深く呼吸をしてから、私たちを座るように促した。


「それで、今回の婚約者候補について、なんだが…」


 話を切り出したのはジェイク様のほうだ。

 私はてっきりユキコさんの話が先にくるかと思っていたし、なにより、先ほどの謝罪の意味が全然わからないので、ジェイク様の言葉の続きを待つ。


「本当にすまない。父上と母上と…、その、兄上が暴走して…」

「…ええと?」

「いや、本当に、申し訳なかったと思っているんだ」


 ジェイク様の話をまとめると、こういうことだった。

 この国の王族は遅くとも18前後に婚約者を決めるのが常だが、ジェイク様は21。

 適齢期を大分過ぎている。

 しかし本人が求める人がいないかぎりは無理矢理に婚約相手を決めたり、婚約を結んだりすることは無い国風なことと、第一王子の婚約が成立しているために無理強いもされなかったからか、未だジェイク様には候補者の1人もいない。

 ジェイク様は女性への興味がないかのように、どの女性に対しても対応が変わらないので、同性愛者なのではないかという噂が流れたこともあったなぁ、とふと思い出した。第1王子に婚約者もいるし別にいいじゃない?と思ったことも続けて思い出した。

 とにかく、そうこともあり、国王様や王妃様もいい加減気を揉んでいたらしい。

 そんな状況のなかで、第2王子が無理を押してギムソン家の1人娘、リーアの誕生日会に出席した。

 いままでそんなそぶりも見せなかったけれど、きっとリーアと内密に親交を深めていたに違いない。ギムソン家ならば家柄も申し分ないし、正式な面会申し込みもきたぞ!よし、これはもう婚約だ!と国王様と王妃様、そして彼の兄である第1王子も一気に盛り上がってしまったらしい。


「ということは、この婚約の申し込みに関しては、ジェイク様の意図するところでは無く、白紙、ということでよろしいのでしょうか?」


 お父様の問いに、あ、ええと、と第2王子は口ごもる。


「できれば、その…、婚約を結んでもらえると、ありがたい、…です」

「ジェイク様、我々に丁寧語を使う必要はありませんわ」


 ジェイク様の申し出に驚いてしまって、思わずとんちんかんな突っ込みをしてしまった。

 ジェイク様は、あ、いや、そうなんだが…ともごもごと視線をそらす。

 ううん、意味がわからない。


「理由を、お聞きしても?」

「・・・・・・・・・・」

「ジェイク様?」


 お父様の促すような呼びかけに、ジェイク様は言いにくそうに、「リーア嬢に、一目惚れをしたんだ」と言った。


「信じてもらえないと思うのだが…。いや、正確に言うと2目ぼれ、になるのかもしれないな…?」

「ええと…?」


 思いもよらない回答に、父子ともに固まる。

 これは、王子の勘の結果、だろうか?

 そう思って聞いてみた。


「え、あの、それは、私が、ユキコさん、だからですか?」

「え?!」

「え??」

「…え?」

「え、いや、だから、私が」

「貴方が、ユキ、だったのか?」


 王子の反応に3人でさらに固まる。

 しばらくして、お父様が静かに言った。


「リーア、ジェイク様とゆっくり話しなさい」


 まだ呆然としているジェイク様と私に形ばかりの許可をとって、お父様は退出した。




***




 残された私たちは、しばらく無言。

 一目惚れだといわれて、それはユキコさんのせいだったかと思えば、それは違っていて、…さて、どうしたものだろうか。

 しばらく考えてから、とりあえず面会を申込んだ当初の目的を果たそうと、私は口を開いた。


「あの、…わたくしが、ジェイク様とあった後しばらく眠っていた話はご存知でしょうか?」

「ああ。俺のせいで何か盛られたのではないかと暫く生きた心地がしなかった」

「何も盛られていませんわ。ただ、眠っていただけです」

「ああ。きちんと報告を受けて、安心した。体はもう平気なのか?」

「ええ。眠っていただけですから。それで、眠っていた間に、わたくし、夢で全てを思い出したのです。自分の前世がオオイズミユキコという名前の女性で、前世のジェイク様、竜王と儀式を行って新しい王を生んで死んだことまで、全て」


 私の話を、ジェイク様は真剣な顔で聞いている。


「その夢を見た後、ユキコさんに会いました。そして、ユキコさんは言いました。竜王にもう一度会えて、とても嬉しかったと」


 ジェイク様は一瞬目を見開いて、そうか、といった。

 声が、震えている。


「そのことを、ジェイク様…、竜王に伝えなくてはいけないと思い、わたくしは面会を申し込みました」


 ゆっくりと頭を下げてからジェイク様をみると、ジェイク様は静かに、涙を一筋流していた。

 その姿が美しすぎて、まるで、絵物語のようだな。と思う。

 ジェイク様は涙を拭うと、微笑んで、

「ユキは、…ユキももう一度会いたいと、思ってくれていたんだな。…それだけで、それだけで、俺は、…竜王は満足だ」


といった。


「では、婚約は白紙でよろしいのでしょうか?」

「なんでそうなるんだ」

「え?」


 ジェイク様は困ったように首を傾げた。


「俺は、リーア・ギムソンに一目惚れをした。確かに申し込みに関しては父上たちの暴走とも言えるが、俺の意思にまるきり反したものでもない。そして、俺が竜王で、あなたがユキだから、でもない」


 真剣な眼差しを向けられて、柄にも無く頰が熱くなる。

 私は少し考える。


「貴方が嫌でなければ、俺は婚約を、改めて申し込みたい」


 少し考える。

 私自身の面倒臭さ、というのを省けば、家にとっても、政治的にも、この婚約は悪くない。

 そして、ジェイク様は、誠実に私を求めてくれている。

 前世は関係ないというその言葉を、信じられる気がした。


「お父様にも相談はいたしますが、…慎んで、お受けいたしますわ。ジェイク様」


 私の即答とも言える回答にジェイク様は少し驚いた顔をした。


「それは、俺が竜王で貴方がユキだからか?」

「いいえ、わたくしが貴族で、リーア・ギムソンだからですわ」

「そうか」


 ジェイク様は少し考えて、ふっと笑った。

 どんな表情をしていても、本当に絵になる人だ。


「貴方は俺に、恋愛感情は今抱いていないな?」

「え?あ、はい…」


 唐突の質問に思わず本心で返してしまう。

 すると、楽しそうに笑いながら、ジェイク様はこう続けた。


「だから、俺はこれからジェイク・カルタールとして、リーア・ギムソンを口説くことにしよう」

読んで下さってありがとうございます!

次の話から王子が砂糖のように甘くなります(笑)

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