武闘大会へ
「ん〜、、、、っん。」
身体を起こしてカーテンを開けると朝日が眩しい。太陽に目を細めながら暖かい光を浴びるのがここ数日の幸せで今日が武闘大会というのになんだか落ち着いていた。
ーコンコンッ
「おはようございます!シェリルです。ダリア様、お目覚めですか?」
「はい。どうぞ。」
「今日もお早いお目覚めですね!たまにはメイドの仕事もさせて頂きたいですわ。」
「ええっと、好きで起きているので、、、」
「わかってますよ。いつかはダリア様の寝顔を見たいだけです!きっと美しい寝顔を!!」
「それはちょっと、、、恥ずかしいです。」
「いつか拝見しますわ!まぁ冗談はこのくらいで、今日の予定をお伝えしますね。朝の食事が終わり次第、馬車で武闘大会の会場へ移動になります。あちらにはすでにジェラート皇子が準備していますので到着したら皇子の指示通りにということです。その間バラバラ国から同行したリリー様が大会中、会場内を同行するそうです。」
「わかりました。ありがとうございます。」
リリーさんに会えるなんて!数日会っていないだけで随分と会っていない気持ちだったから嬉しかった。
「ダリア様?私も同行をお願いしたのですが却下されまして、、、シェリルは心配です。ジェラード皇子に今からでも・・・」
「シェリルさん大丈夫です。これは私が自分で決めた事なので心配しないで下さい。それに初めて自分で決めた事なんです。ジェラード皇子の為にって。だから大丈夫です。」
上手く伝わっているかわからないけど、涙目になっているシェリルさんは無言で頷いてくれた。
大丈夫。ジェラード様の為に私はこの大会で優勝を目指す。彼を守るために。私のここでの意味を持つために。
朝の食事が終わると、既に馬車が用意されていて急いで乗った。その時にシェリルさんが「私は同行出来ませんのでせめてこれを。絶対に無茶な事だけはしないと約束して下さいね。」そう言って刺繍の入ったハンカチを渡してくれた。
返事をする間もなく、馬車が出発してしまいなにも言えなかったがハンカチを見て涙が溢れてしまった。刺繍の文字はわからないがとても綺麗だった。
ハンカチを握りしめたまま外の景色を眺めていると、どうやら到着したらしく。外側から扉を開けられた。
ーガチャッと扉が開くとそこにリリーさんが立っていて思わず顔が緩んでしまった。
「少しだけお久しぶりですね。ダリア様。大会中は私が常に同行させて頂きますのでご安心下さい!!」
そう言って馬車から私の手を引いて外へ出してくれたリリーさんは今日も綺麗な金髪がよく似合っていた。
「時間がないので歩きながら話ましょう。まずはジェラード皇子の所へ。その後に防具と武器をつけて初戦になります。」
「は、はい!!」
リリーさんの早歩きについていきながら必死に話についていく。
「それにしても帝国王に直談判したと聞いて、私は心臓が止まるかと思いました!」
「そ、それは、、、、」
「私はカッコいいと思いましたよ。まぁ、無理だけはしないで下さいね。ジェラード皇子の為にも。」
少し歩くと立派な扉の前に着いた。
ーーコンコンッ
「アリーチェ・リリーです。ダリア様をお連れしました。」
「入れ。」
リリーさんに続いて部屋に入ると騎士の格好をしたジェラード様がキルさんと居た。
「朝、屋敷で会えなくてすまなかったな。こちらでの仕事がバタバタしていてな。武器と防具は用意してあるからリリーに案内してもらってくれ。くれぐれも無理だけはするなよ。」
「もう、ジェラードったらぶっきら棒な、、、もっと優しく言いなよ〜。ねぇ?ダリアちゃん?」
「えっ、?あ、いえ!!私は大丈夫です。ありがとうございます。」
「もう、ダリアちゃんまで〜。おっとジェラードそろそろ行かないと!」
「あぁ、わかった。ダリア、怪我だけはしないでくれ。これは命令だ。」
そう言って急いで2人が出て行ってしまった。
「来いって言っておいてあんなに忙しいなんて。最近、ジェラード皇子の意外な所をよく見るわ〜。さぁ、私達も向かいましょうか。」
リリーさんの言葉で部屋を後にする。ジェラード皇子との会話があっという間だったけれど、嬉しい時間だった。
これから起こる長い1日を私は駆け抜ける。