第94話 万事休す
「くそっ! どこまでもしつこい連中だな」
ソド達の前に、再び黒装束の姿の集団が立ちはだかった。直ぐに、ソフィナの護衛が前にでる。
「追いかけっこは終わりだ」
1人の黒装束がそう言う。
「追いかけっこが終わりなら、今度は俺の相手をする番だ」
ソドはそう叫ぶように言うと、剣を鞘から抜いた。
もはや、逃げられないと悟ったからである。
「小僧、あまり調子に乗るなよ? 」
黒装束の集団は、ソド達に圧をかける。
しかし、ソドは臆することなく動かなかった。黒装束の集団もソフィナの護衛がいる手前、迂闊に仕掛けることは無い。
「何が調子に乗るなだよ! グダグダ言ってないで、かかってこいや! 」
再び、大声でソドは言う。すると、どうだろうか……。
大きな飛行体が現れたのである。ドラゴンだった。ちょうど、ソド達と黒装束姿の集団の間に入り込むようにして、ドラゴンが着地する。
「と、とりあえず逃げるぞ。先導を頼む」
ソドは、ソフィナの護衛にそう小声で言う。そして、ソフィナの護衛を先頭に逃走を再開したのであった。
「流石は、ソドさん。リーダーっぽくなってきましたね」
と、ソフィナが少し茶化したように感じで言った。
一方で、黒装束姿の集団もこの状況で動かないわけがない。
「なるほど。大声で叫んで、ドラゴンを誘き出したってことか。なかなか知恵の回る小僧のようだ。しかし、ドラゴンごとき我々の敵ではない」
ドラゴンはあっと言う間に、木っ端みじんと化した。さらに付近を飛んでいたドラゴン数体も、バラバラになる。
「……おいおい」
その様子を逃げながら見ていたソドは、敵の想定外過ぎる戦闘力に処理が追いつかなかった。
「やっぱり、イカれた連中だったようだね」
アンナも同様だ。
「あの馬鹿、何やってるんだよ」
「イゴルさんも、今大変な状況なのだと思います。ですから、ここは何としても踏ん張りましょう」
不意に、2人の姿が見えた。男女のコンビだ。
「誰だ!? 」
と、2人にソドが問う。
「あ、いや、俺たちは冒険者ギルドの者なんだが……」
「えっ……何この状況」
すると、アンナが反応した。見覚えのある顔だったからである。
「ユウとミヤビのコンビじゃん。……とりあえず、2人も一緒に来て」
アンナがそう言うと、ユウとミヤビの2人も走り出した。訳のわからない状況ではあったが、きな臭い状況を察してのことである。
「アンナは知ってる奴なのか」
「イゴルと仲良かった2人だよ。たまに一緒に行動してたよね」
「なるほど」
ソド達の付近には、多くのドラゴンが終結していた。先ほどの騒ぎで、さらに集まってきたのだ。
「ドラゴン集まりすぎだろ……。これじゃあ、市民の救助もできない」
ユウがそう呟く。
ユウとミヤビの2人も、ドラゴンの攻撃をかわしながら逃げ遅れた人たちの救助をしていたのだ。
「しかも、あの黒い人たちって何? 」
と、事情を知らないミヤビがアンナに問う。
「この状況に便乗して、人攫いをしてるのよ。とんでもない連中だよね」
アンナがそう答えた。
「最低な人たちみたいだね」
尚も、一行は走る。
気づけば、黒装束の集団の姿は無かった。ドラゴンも付近にはいない。むしろ、さっきソド達が通ってきた場所に終結しているのだ。
「まさか、ドラゴンは黒装束姿の集団をターゲットにしているのか? 」
と、ソドが推測する。
その直後に、また数体のドラゴンがバラバラになる。
「その可能性は、充分あるでしょう。事情を知っている者なら、是が非でも黒装束姿の集団を壊滅させたいですから」
ソフィナが言う。
「だが、襲っているのはドラゴンだろ? 」
「恐らく、ドラゴンは操られているのだと思います。ミズロン村を襲撃したドラゴンもそうだったのでしょう」
ソフィナの発言に、ソドとアンナは驚きの表情を浮かべる。
ユウやミヤビも同様だった。
「そ、そんなまさか……」
ソドがそう反応を返すが、理解が追いつけていけなかった。だから、改めて今すべきことに集中すべく、頭を切り替えるきっかけになったのである。
「とりあえず、今はとことん逃げるぞ! 」




