第95話 敵の動き
多くのドラゴンが、特定の場所……その1カ所に集まってるようだ。
もちろん、少なからず空を飛び回っている個体もいるが、ここにきてドラゴンに動きがあるとはな。
その場所から、数人が逃げていく気配も感じる。誰かまでは判らないが……。
普段以上に、俺は意識する範囲を広げている。長時間続けていれば、俺は疲労によって倒れてしまうだろう。
そして、妙な状況だった。
「気配が、消えていく!? 」
特定の場所には、とんでもない手練れがいるのかもしれない。ドラゴンを次々と倒せるとしたら、思いつくのは黒装束姿の連中か、或いは紫色の装束姿の連中だ。
「どうした? 」
ギーナがそう訊ねてくる。
「ドラゴンの動向を察知した。どうやら、特定の場所に戦力を集中しているようだ。しかし、その場所に集まっているドラゴンの気配が次々に消えている」
「……つまり、倒されていると? 」
「恐らくな」
「要するに、連中を見つけたってことだろう」
と、ジェロームが言う。
「連中とは何だ? 」
「≪影の兵団≫だよ。あんたもさっきやりあっただろう? 」
≪影の兵団≫……。
さっき、ガゴル団の連中が言っていたが……なるほど。それが連中に対する呼び名だったというわけか。
「黒装束姿の連中か? 」
「ああ。まさか、あんた≪影の兵団≫だとは知らずに、戦っていたのか? 」
ハンターと呼ばれている集団なら、あの黒装束姿の連中を知っていてもおかしくはない。
「まあな」
「皮肉な話だな? 」
何が、皮肉なのか。
「やはりそうだったか。なんとなく、お前は黒装束姿の連中の正体までは掴んでいないと思っていた。だから、私はなるべく呼び名を伏せていたわけだ」
今度は、ギーナがそう言った。やはり、ゾラン公国の暗部では共有されている情報だったわけだな。
「教えてくれても良いじゃないか」
「いや、それよりも今は事態の収拾に全力を注ぐぞ」
はぐらかされたようだ。
俺に、黒装束姿の連中について詳細を伝えなかったことに、何か深い理由があるのかもしれない。
「そうだな。なら早速、ドラゴンが終結している地点にでも行くとしよう」
せっかく黒装束姿の連中から逃れてきたわけだが、現状で事件の真相に繋がるかもしれないのは、そこしかない。
早速俺たちは移動を始めたが、秒単位でドラゴンらしき気配が消えていく。急ぐ必要がありそうだ。
※
廃墟と化したボワド市内の某所。
「やはり、いくらドラゴンを投入してもレゲムークの最凶集団には通用しないようだ。オークの異常繁殖を、まさかあんな手で潰すくらいだし、判っていたが……」
と、星形のバッチを5つ付けた男が言う。既に、ボワド市内を荒らしまくった中、仇敵の居場所を掴んだ彼は、ドラゴンを一気に投入することにしたのである。
彼が、≪影の兵団≫であると確信したのは、ついさっきのことだ。
当初から、動き方や人数などからマークしていたのだが、ソドがドラゴンを誘き出したことで、結果的に集団の戦闘力が判ったからである。
さて、その男の周りには、数十人もの構成員が集まっており、中には負傷した者もいる。
そして、ここに集まっている者たちは、最低でも1つ又は2つ以上のバッチを付けている。つまり精鋭揃いということだ。
「総帥閣下。今こそ総攻撃を致しましょう! ドラゴンとの戦闘で、いかに≪影の兵団≫も疲弊しているはずです」
星型のバッチを4つ付けた男が、そう提案する。
「いや、革命派の切り札もいるだろう。奴らしき気配が、連中と接触すべく動いているようだ」
と、バッチ5つの男が言う。
「気配察知ですか」
「私の気配察知は、その辺のポンコツどもが使うものと違う。魔王陛下から直々に叩きこまれたものだ。どのような妨害であっても私の気配察知をかき消すことはできん」
つまり、イゴルが感じ察知できない者たちであっても、バッチ5つの男は察知できるわけである。
「敵の動きを完全に読み取れる以上、こちらが優位のようですね」
「ああ。そして革命派の切り札と、最凶集団。共に疲弊したところを叩けば、良いだけの話だ」
「なるほど。どちらも、我々の仇敵。共に潰せるなら、これ以上の満足はありません」
「この際、全てのドラゴンを≪影の兵団≫の主力に差し向けよう。何としても、互いに接触して欲しいからな。そう術者に伝えよ」
「畏まりました」
そう言って、バッチ4つは指示どおり動き出すのだった。




