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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第2章 遊撃騎士団ドラゴン討伐隊 爆誕! ~ そしてハンターの影
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第92話 敵の集団


 俺たちは、ようやくボワド市に到着した。

 ボワド市に近づくにつれ市民の数が減ってきていたため移動が楽になっていたが、今度は市内のあちこちで瓦礫が散乱していた。これでは市内の移動も、かなり面倒になるだろう。


 さて、今俺が居る近くでは気配が感じられない。この付近で逃げ遅れた市民はいないと判断して良いだろう。

 だが気配からして、まだ多くの市民が市内に残っているようだ。


「滅茶苦茶にしやがって……」


 実際、この目で今の惨状を見ると怒りが湧いてくる。数時間前、わずかに滞在していた時のボワド市との差を思い出すと猶更だ。


「私は、絶対に許さない。この事件を引き起こした者たちを、私の手で断罪する。1人残らず! 」


 ギーナは拳を強く握りしめて、そう言う。

 その眼から、水滴が落ちる。


 彼女から、かなりの怒りを感じるが、レゲムーク王国内で起こった事件である以上、ギーナが断罪することはあってならない。

 

「とりあえず、俺についてきてくれ」


 本来なら、憲兵隊のボワド地方局へ行き、状況を確かめたいところだが、同じ市内であってもここからはかなり離れている。また、ソド達の安否も気になるが、仮に無事なら独自に行動しているかもしれない。


 ここは気配を頼りに、行動することにしよう。

 そこに気配がある以上、俺たちがすべきことがあるからだ。


 


「わかった」

「ああ」


 ギーナとジェロームがそれぞれ同意を示したので、早速先行して移動を開始した。

 

 あちこちに死体がある。その殆どは焼死体であったが、中には人の手で殺された疑いのあるものもあった。


 どさくさに紛れて、人殺しに走った者もいたということだろう。

 ボワド市内の今の状況は、人を殺す事に対する心理的ハードルを下げる効果があることに間違いない。そして、金品の強奪や怨恨の類など、理由なんてものはいくらでもある。起こるべくして起こったわけだ。



 とりあえず、気配のある方向へと進んでいると、数体のドラゴンがこちらへ向かってきた。

 もちろん、ドラゴンの気配もきちんと把握しているので特に驚くことはない。


「ドラゴン3体。こちらへ急降下してくるぞ! 」


「任せろ」


 そう言ってギーナは、直ぐに魔法陣を浮かべる。ジェロームも剣を取り出し、臨戦態勢

を整えた。

 

 そして、光線が放たれる。

 3体のドラゴンは呆気なく消滅した。もはや、ドラゴンが道中の雑魚モンスター狩りの扱いになっている。


「ギーナ。魔力は大丈夫なのか? 」


 とても重大な局面で、ギーナが魔力切れになっていると困るわけだ。しかしながら、仮に、現時点で魔力が消耗しているのなら、今それを知っておくか否かで、だいぶ変わってくる。


「心配するな。まだ充分に魔力はある」


 それなら安心だ。


「なら、問題ないな」


「そういうボルスト捜査官こそ、魔力を盛大に使い込んでいるだろ」 


「俺も問題ない。さっきも言ったと思うが、魔力には絶対的な自信がある……んっ!? 」


 不意に、複数の足音が聞こえきたのだ。

 こちらに向かって来ている。しかし、気配は感じられなかったため、対応に遅れてしまった。


 俺たちはあっという間に、包囲される。黒装束姿ではないようだ。


「悪いが、死んでもらうぞ」

 

 集団の1人、星型のバッチ2つを付けた男がそう言うと、複数人が一斉に襲い掛かってきたのである。

 急すぎる事態に陥ったわけだが、俺は波動魔法を放った。


「……っ! 」


 どうやら波動魔法は効いたようで、向かってきた連中は呆気なく吹っ飛ぶ。数名が建物の外壁に後頭部をぶつけ、意識を失った。

 しかし、無事だった者たちは直ぐに起き上がり、態勢を整える。


「ギーナとジェロームは、周囲の警戒を頼む。俺は、あの連中を制圧する」


 そう言って、俺は吹っ飛んだ連中のもとへと駆け寄る。


「……≪影の兵団≫ではないようだが、こいつは厄介だ。応援を呼ぶぞ」


 バッチ2つの男がそう言うと、空に向かって魔法陣を展開した。合図になる何かをしようとしているのだろう。


「させるか! 」


 俺は敵の増援を防ぐべく、再び波動魔法放った。

 波動魔法が有効な相手なら、比較的優位に戦えるので楽だ。とはいえ、一瞬の油断が命取りになることは忘れてはならない。


「俺は国家憲兵隊捜査局の者だ。色々と罪状はあるだろうが、とりあえず殺人未遂の容疑で逮捕する」


 俺は、そう言ってバッチ2つ男に近づいた。とりあえず、こいつだけは拘束することにしたわけである。

 そして、手錠をかけた。


 手錠さえかければ、特殊効果により例え相手が魔族だとしても魔力を使った一切の技が使えなくなる。しかしながら、今の状況じゃ1人しか拘束できない。


 ここに留まるつもりもないので、残りは野放しになってしまうのは我慢するしかないだろう。


「おっと、迂闊なことはするなよ? 手が滑ってうっかり殺してしまうかもしれないからな」


 俺は、残りの者たちに行動させないよう圧をかけた。


「馬鹿なやつだ……。全員、この場は散開し、失神者を適宜の場所に運び、総帥閣下の指揮下に入れ」


 手錠をかけられても、尚バッチ2つの男がそう言うと、動ける者たちは直ぐに行動し、あっと言う間に散り散りになった。

 その間に、複数いた失神者も手際よく担がれている。最後の最後まで、適切に指示を出すをするあたり、やはりこいつがリーダー格なのだろう。


「だが、お前は拘束した……っつ! 」


 口から血を流していた。

 かなりの量の出血だ。


 俺の脳裏に服毒自殺が浮かんだが、舌を噛んで自殺を図ろと考えた可能性もある。

 すぐに、男の口の中に指を突っ込んだ。


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