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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第2章 遊撃騎士団ドラゴン討伐隊 爆誕! ~ そしてハンターの影
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第84話 離脱

第83話をずっと第84話として、表示しておりました。

申し訳ございません!


「うるせぇ。アタシもちょっと余裕が無いんだよ」

「私も、防御で精一杯だ」


 どうやら、流石の2人でも黒装束姿の連中を相手にすると無双はできないらしい。そうなると事態を打開する決定打は、こちら側に無いことになる。


 ジリ貧だ。


 そして、俺も素早い黒装束姿の攻撃を防ぐことで手一杯だった。今俺が相手しているのは3人であり、3人ともかなりの戦闘力だ。その内1人は別格であり、顔こそ判らないが以前数回に渡り会話を交わした奴かもしれない。


 相次いで放たれる攻撃魔法に、俺は相対する攻撃魔法を放つ。

 炎系なら水系、水系なら氷系、氷系なら炎系と。


 時折、急接近し短剣を突き刺そうとしてくるので、それがさらに厄介である。

 このままでは、俺の持久力が危ない。魔力は依然余裕の域だが、かなりの疲労感を覚えているのだ。


「ハンターの件から手を引けと言ったはずだが、どうしてボルスト捜査官がここにいるのだ? 」


「成り行きでこうなったんだよ。俺は、あくまでも魔族を追っていたはずなんだがな? 」


「そういうことなら、許してやろう。だから直ぐに、引き返せ」


 随分とあっさりしているが、あくまでも目的はジェロームなのだろう。殺すのか攫うのかは判らないが、俺が大人しく引き返す分には良いようだ。


 だからと言って、引けるわけでもない。


 今までは、相手の攻撃を防ぐために魔法を発動していたが、俺も攻撃に転じよう。


「申し訳ないが、魔族が絡んでいる以上、大人しく引き返すわけにはいかないんだよ」


 俺は、そう言って火炎を放射した。すると3人の内、2人が素早く距離を取ったが、残る1人は真正面に立ったまま動かない。何故動かないのかは、判っている。

 

 予想どおり、火炎放射をかき消した。

 前回と同じだ。だが、1つ判ったのは、黒装束姿の連中全員が火炎放射を防げるわけでは無いようだ。


「気が済んだか? 」


 黒装束姿が、近づいてくる。

 背後からも、先ほどの2人が立っていた。


「オラオラァ! お前も素早く動けよ。それでも国家憲兵隊か! 」


 そう大声を出しながらカミラがやって来ると、直ぐに俺の背後に回った。2人と対峙しているのだろう。

 余裕が出てきたようで、助かった。


「総員、撤収だ」


 と、俺の正面にいた黒装束姿が、周囲に聞こえる声でそう告げた。大きな声だが、淡々としている。

 

「逃がすかッ! 」


 カミラが追いかけようとするものの、黒装束姿の連中は皆が素早い。

 あっという間に、居なくなったのである。


「ユウムさん。ご無事ですか? 」


 俺は直ぐに、ジェロームのところへ駆け寄った。気配はきちんと感じられるので大丈夫だろうが、確認せずにはいられない。


 そして、ジェロームの顔を確認する。


「……あの中に、最も警戒すべき奴がいた」


 と、ジェロームが言う。

 ひとまず、生きていたようで安心だ。貴重な情報源が保全できた。


「最も警戒すべき奴ですか? 」


「ああ。お前が相手にしてた奴だよ。奴は、他の連中に比べて圧倒的な戦闘力を有している。そんな相手に、あれだけ保っていたお前も大したもんだ。流石は革命派の切り札と言われるだけはある」


「そうですか」


 俺は、革命派の切り札と呼ばれているのか。

 もしかして、俺はゾラン公国内で有名なのだろうか。ギーナが言うには、ソフィナは以前から俺のことを知っていたらしいし、可能性はありそうだ。


「ったく、とんでもない連中なのは間違いなかったようだな」

「ああ。帝国もレゲムーク王国の潜在的能力を見くびらん方が良いだろう」


 カミラとギーナもやって来た。


「2人ともお疲れ。とりあえずジェロームは無事だ」


「それは良かった」


 と、ギーナが安堵した様子を見せる。

 

「それにしても、随分とあっさり引いて行ったな? 」


 一方、カミラは未だ警戒し続けていた。確かに、あれだけの戦闘能力を誇る集団にしては、あっさりと撤退したように感じられる。


 単に戦力保持を優先したか、或いは他に策があるのか……。


 油断ならぬ集団である以上、後者の可能性を前提に行動した方が良いだろう。


「ところで、ユウムさん。ここはどこの国の領土なのです? 」


「ここは、セナ魔王国領内の離島だ。一応、あっちの方角に小さな漁村が1つだけある」


「……セナ魔王国領内ですか」


 どうやら、ここは魔族諸国の領土だったようだ。

 ここが魔族諸国領内かもしれないと思ってはいたが、よりにもよって離島だとは思わなかった。


「セナ魔王国か。アタシも一度、来たことがあったよ。で、ここは本土に近いのか? 」


 カミラとしては、やはりその点が気になるのだろう。


「一応、近いと言えるだろう。不定期ながら、本土の港町から船が出てるからな」


「なるほど……。ボルスト捜査官、悪いがアタシはここに残ることにした。これから漁村に行く用事が出来たんでな」


「カミラ、お前まさか」


 カミラが一体何を考えているのか、察しがつく。


「悪いな。帝国にとっては是が非でもない状況なんだよ。ジェロームの野郎はくれてやるから、ギーナと話し合って決めてくれ」


 カミラはそう言うと、足早く漁村があるという方角へ走り出した。まだ、黒装束姿の連中の脅威が去ったとは言えない状況だというのに……。


「言ってしまったな……」


 と、ギーナも茫然と立ちすくんでいる。


「ああ。……まあカミラが帝国人である以上、理解できないわけでもない」


 恐らくカミラは、セナ魔王国本土に渡るに違いない。

 そして、本土に潜伏しゲリラ活動をするか、或いは何かしらの標的を定めて一気に終わらせようとするだろう。


 今日会ったばかりの仲だが、どうか無事で生きててくれることを願うばかりだ。


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