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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第2章 遊撃騎士団ドラゴン討伐隊 爆誕! ~ そしてハンターの影
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第71話 単独行動


 馬車の行先は、ボワド市近郊にある山岳地帯付近の馬車駅だ。

 この時間でも俺以外に乗客はいた。俺含めて3人である。まあ、馬車駅自体は主要な街道沿いにあるからだろう。


 つまり、そこから先は徒歩で進まなければならない。

 

「兄ちゃんも帝国へ行くのか? 」


 と、乗客1人に絡まれた。ガラの悪そうな女で、大きなダイヤモンドらしき宝石ををネックレスにしてぶら下げている。


 もう1人の乗客は中年男性だが、如何にも商人風だ。絡むとしたら、比較的若い俺なのかもしれない。


「いえ、隣町へ行きたいだけです」


 この街道をずっと進めば、いずれ大カリネア帝国にまで到達する。


「こんな夜遅くに出発して隣町ね。……もしかして、これか? 」


 ガラの悪い女は、そう言いながらイヤらしいジェスチャーをする。全く、面倒な輩に絡まれたものだ。

 

「仕事で急用ができたんです。疲れているんで、話しかけないでもらえますか? 」


「あっそ。わかったよ」


 それからガラの悪い女が絡んでくることは無かった。

 

 馬車駅に到着し、俺は直ぐに山岳地帯を目指して移動する。

 駆け足だ。明日の朝7時には宿屋の食堂に居なければならない。ただ行って帰るだけなら、わざわざ急ぐ必要もないが、俺はこれから調査をするために向かうのである。


 調査する時間は長い方が良い。


「隣町まで行くなら、普通は1つ先の馬車駅まで行くんだけどな? 」


 気配からして、判っていた。

 ずっと、俺の後ろを付けて来ているのだ。


「……」


 面倒なので、無視することにした。幸い気配を感じられるので、不審な動きをした時だけ対処すれば良いだろう。

 ただ、例えばハンターの関係者の可能性もあるので、奴の言動は注意深くして聞くとしよう。


「この道って、山に向かっているじゃん。こんな遅い時間に山登りか? 」


「……」


 さらに無視していると、急に迫ってきた。

 俺は気配を頼りに、避ける。


「っち……。勘は良いみたいだし、只者ではないようだね? 」


 それはこっちのセリフだ。

 動きからして、少なからず戦闘経験があるに違いない。昨日に続いて、今日も厄介な者に絡まれるとはな。

 

 声からして判っていたが、さっき馬車で俺に絡んできたガラの悪い女がそこに立っていた。相変わらず、ダイヤモンドらしき宝石が目につく。


「急いでいるんだ」


「その訳を聞いているんだよ。なぁ、答えてくれないか? 」


「お前こそ、俺を追いかけて何がしたいんだ? 」


「お前がわざわざ山へ向かう理由を聞きてぇから、つけてんだよ。良い加減に答えろや」


「なら、軽く自己紹介をしてくれよ。俺も迂闊に話せる身では無いんでね」


 そう言って、俺はピストルを手にした。

 半ば、俺の自己紹介にはなるからだ。


「なるほどね」


 ピストルに目を向けた女はそう言った。

 ある程度は理解したのだろう。


「……」


 ただピストルを女に向け、言葉は発さない。


「ボワド市の外だし、この辺を管轄する保安官か保安官補ってところか? だが生憎田舎の連中が出る幕じゃないんだよ」


「それは心外だな」


「悪いことは言わねぇから、今直ぐ帰れ」


「ガラの悪い女に絡まれたから帰りましたって、そう上司に報告しろってことか? 」


「ったく。なら自己紹介してやるよ」


 ガラの悪い女はそう言うと、身分証らしき物を取り出して見せてきた。

 暗くて判らなかったが、女は魔法でそれを照らす。


「なるほど……」


 これは大変だ。

 本当に。


「大カナリア帝国騎士団の特務総隊に所属している。ここでお前を消すことも出来るぞ? 」


 よりにもよって、帝国の人間だったとはな。

 レゲムーク王国とは同盟国である手前、ここで拘束して担当官庁に引き渡すことも難しい。


 名は、カミラ・ゾームというのか。まあ、偽名かもしれないが。


 さて、こうなった以上は、俺もアピールしないといけないな。


「特務総隊の割には、馬鹿なんだな? 」


 俺はそう言って、身分証を見せる。


「っち」


 女は、理解したのか舌打ちだけした。


「それで、帝国の騎士団が何の用なんだ? 」


「テメェもその立場なら知ってんだろ。オークの異常繁殖は、魔族の仕業ってことで調べてんだよ」


 今、大カナリア帝国は魔族諸国と戦争状態にある。決して形式的なものではなく、実際に、戦地にて帝国の大軍勢と魔族諸国の大軍勢がぶつかり合っている最中なのだ。


 魔族に対して、敏感になるのは判る。


 だが、俺が聞いた話では、ハンターが絡んでいるということだった。


「魔族だと? 」


「とぼけんな。お前も、それで調べにきたんだろ? 」


「いや? ただ、とあるテロ集団が関与しているとしか聞いてないな」


「あくまで、そういう建前ってことか。だが十中八九、魔族が関与している。いや、絶対にと言い直しても良いくらいだな」


 勝手に話が進められているが、どうやら帝国はオークの異常繁殖について、それなりの根拠があって魔族が関与していると考えているのだろう。


 上司は何か知っているだろうか?

 魔族絡みなら、既に何か掴んでいそうだが……。


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