第69話 結束しつつあるチーム
翌朝。
特に、不調はなく目を覚ました。むしろ気持ちの良い目覚めである。夜遅くに散歩していたとはいえ、酒もあまり飲まなかったし、7時間くらいは寝たからだろう。
食堂にやって来るとソドがコーヒーを飲みながら、のんびりしていた。
「おはよう」
俺は、そう言ってソドの脇に座った。
「おはよう」
ソドもそう返す。
「朝は早いようだな? 」
「あのさ。昨日、俺言ったよな? 」
と、ソドは少し機嫌悪そうに言う。
「何をだ? 」
「ロム隊長なら、とっくに俺たちを叩き起こしてるって言ったろ」
そう言えば昨日の朝、確かに言っていたな。
要するに、早起きするのが習慣になっているということだ。
「すまん」
「てか、お前はどうなんだよ? 」
「早起きするかは、必要に応じてだな。まあ、後は場所にもよる」
戦地に居た頃、睡眠時間は嫌でも短かった。特に、最前線では敵の夜襲も多く、その度に叩き起こされて応戦しなければならない。
「なるほど」
それから、新聞を読んで時間を潰していると、アンナたちもやって来た。
「おはよ」
「おはようございます」
既に時刻は7時を過ぎていた。
「遅すぎるぞ」
そんな2人に対して、ソドが文句を言う。
「はぁ? 」
アンナが眠そうな表情を浮かべつつ、同時に不機嫌そうな表情を見せる。
まあ、突然「遅い」などと言われたら、頭にくるだろうな。それに、明確に集合時間も決めてはいなかったわけだし。
この点は、確かに俺の職務怠慢がすぎる。一応は隊長なわけだし、取り決めをしておくべきだった。そんなものだから、昨日も今日も皆テキトウな時間に起きているわけだ。
「すまん。俺のせいだ。集合時間は決めておくべきだったな」
そう言って、俺は頭を下げた。
「何でイゴルが謝るの? 出発は8時半って聞いてたし全然問題ないじゃん」
と、アンナが言った。まあ、1時間以上もあるわけだから余裕はあるわけだし、特に間違ってはいない。
「……」
ソドは何かを言おうとするものの、言葉が出ないようだ。あくまでも自身の習慣である早起きを、皆に押し付けてはいけないと思ったのかもしれない。
「てか、ソドっていつも何時に起きてるの? 」
「5時半だ」
「へぇ。凄いね。私なんて、早くても6時だよ」
その差にしてわずか30分だが、朝特有の時間間隔からすれば大きく異なるだろう。特に朝に弱い者からすれば、もってのほかだ。
「まあな。ロム隊に居た頃、いつも5時に叩き起こされたもんだよ」
と、言いながらソドはポリポリと頭を掻く。
全く、アンナも巧みな奴だ。
それから、朝食を済ませた俺たちは各々準備を済ませ、馬車駅へと向かった。妙な気配も感じられない。
最近は、気配を感じさせない連中も増えてきたので、安心はできない。
それよりも、俺には目下の問題があった。
「俺が口出すのも趣旨違いかもしれないが、特急馬車を使わないか? 」
本当なら、ソドたち3人で話し合って決めていく方向へ持って行きたいのだが、流石に馬車での長旅は堪える。
その退屈さに、俺の心は折れそうだ。
「……でも経費で落ちないしな」
やはり、わざわざ鈍行を選んだ理由は、手当てが付くか否かだったようだな。
「なら、出してやるよ」
昨日に続いて、また奢ることになってしまったが、致し方ない。ソドにだけ奢るわけにはいかないので俺を含めて、4人分を出すことになる。
「アタシは自分で払うよ。特急馬車で移動するのは賛成だしね」
「私もとりあえず、お金には苦労していないので、大丈夫です」
アンナとソフィナは、自腹で済ますようだ。
とても助かる。
「……わかったよ! 俺も自分で出す。特急馬車で行こう」
女性2人が自分で出すと言った手前、気まずくなったのだろうかソドもそう宣言し、話はまとまった。
この調子でやっていってくれれば、俺がいなくなっても問題ないだろう。
少しの間だけ、見守っていれば良いだけだ。
さて、無事に特急馬車でシェヌロカの町を出たわけだが、退屈な時間であることには変わりない。
当然、買ってきた。
まずは、新聞だ。普段読んでいる新聞だけでなく、色々な新聞を買った。その中には国中には回らない、ローカル紙もある。単なる暇つぶしだけでなく、多少の新鮮さも感じられるだろう。
次に、週刊誌のような類の雑誌だ。
新聞ほどの信憑性は無いが、少なくとも暇つぶしにはなる。
そして、1人旅では決して意識することも無かったゲーム用のカードを買った。ソドたちの気が向いたら、早速やってみるとしよう。
以上、盤石な体制を整えた俺は、難敵である馬車の旅に挑むのであった。




