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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第46話 イルザたちの覚悟

 俺は、探偵事務所を後にして赴くままに市内をぶらついていた。結局、今夜の対応はどうするか……その道筋を決めることは出来なかったわけである。


 探偵のおかげで新たな情報を得られたのは、俺としてはとても嬉しい。

 とはいえ、やはり今夜が1つの大きな勝負になるというのに、何も出来ない。このままでは、精々下っ端を捕らえて終わりだ。


 何も起きない可能性もあるが、それはどうでも良い。

 問題なのは、何か起こった時にどう対応するのかである。


 上司と今夜の対応をするにも、彼は不在だ。


「……仕方ない。やっぱりあいつらに手伝ってもらうしかないか」


 俺は、ひとまず行き先を決めた。

 明確な根拠もないが、仕方ない。向かっている途中で何か閃いたら、その時に目的地を変えれば良いだけの話だ。





 イゴルと別れたイルザが向かった先は、冒険者ギルドだった。

 一旦冒険者ギルドを離れて直ぐに戻ってきた形になるのだが、当然彼女は目的があってここに戻って来たわけである。


 イルザは、戻って来るなり周囲を見渡す。

 直ぐにロミーナたちを発見し、彼女たちがいるテーブルまで向かう。


 ロミーナ以外に、イザークとエリンがいた。


「仕事終わりで申し訳ないのだけど、ちょっと良い? 」


 イルザの真剣な眼差しにを見た3人だが、特に反応することは無かった。実際、3人も市警の動きについて話していたからである。

 要するに異常事態が発生している以上、のんびりしている場合ではないわけだ。


「はい。ちょうど今夜のことで、2人と話していたところなんです」


 と、イザークが答える。

 ロミーナとエリンも頷いた。


「そうだったのね。なら、話は早いわ。早速私たちもその対策に努めましょう」


 そして、イルザたちは再び応接室へと移動した。

 当然、周囲に聞かせられるような話でもないからだ。


「それで副団長。我々は一体何をするのです? 」


 イザークがそう訊ねる。

 ロミーナたちと今夜のことについて話していたものの、あくまで雑談だったのだ。決して、何か対策を講じるためのものではなかった。

 

「まず死ぬ覚悟をもつこと。その覚悟がなければ、今夜は乗り切れない」


 それほどに危険な流れになっているのだと、イルザは伝えたいのだ。

 兄イゴルの行動を見ていれば、判ることだった。


 それに、ここにいるメンバーは現に黒装束姿の人物によって、一瞬にして気絶させられている。ハンターに関われば、危険な人物に目を付けられるということを、痛感したばかりだ。


「冒険者なら、当然の話ですが……」


 そうロミーナが呟くように、答える。

 しかし、微妙なニュアンスの違いを感じ取っていた。

 

 冒険者なら、いつ死んでもおかしくはない。それは冒険者になる際に、嫌でも、くどいように念押しされる話である。しかし今夜の場合は、それが明確になっているということだ。

 

 行動したら直ちに死ぬのだと。

 イザークが立ち上がる。


「俺は覚悟を決めています。今夜が戦いなら、俺も戦います。たとえ犬死しようと、動く人間が誰1人いなければ、何も為しえません」


 と、イルザに自身の想いを述べた。

 彼は友人を亡くした身であり、その無念を晴らしたいという気持ちと、さらに『遊撃騎士団』のメンバーとしての強い誇りがあったからだ。


 今の発言は、ただ単に綺麗ごとを言ったわけではない。彼は、自ら進んで目的達成のための駒になることを、志願したのである。


「イザーク……。貴方を慕う人は多いわ。もしかしたら、その多くの人たちを悲しませることになる。それで、良いの? 」


 イルザは、そう返す。


「副団長こそ、そこはどうなのですか? 」


「……もし私が死んだら」


 そこまで言ったイルザの脳裏には、両親、姉、そして兄イゴルの顔が浮かんだ。


「その時は必要な死だったのだと、家族はそう判断してくれるわ」


 と、イルザは言い切った。

 それを聞いて、イザークも答える。


「なら俺も、俺の死で悲しむ人たちが殺されないために、戦います! 」


 そして、イザークの決意を目の前で見せつけられたロミーナも呼応した。


「私も戦わせてください! イザーク隊長……。いえ、イザークの背中は絶対に守ります! 」


 ロミーナは貴族の娘だ。

 冒険者としてだけではなく、貴族の一員としての立場もある。


 しかし、結局は1人の人間でもあるのだ。誰かを慕うこともあるし、好きになることもあるわけである。それは、一定の年月を一緒に過ごした信頼関係が築かれ、そして直感的な部分も多いことだろう。

 

 そこに、身分の差など関係ないのだ。


 大切な人が死を覚悟して戦いに行くなら、傍に立って一緒に戦いたい。それがロミーナの純粋な想いだった。


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