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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第37話 証拠

「副団長! 来てたんですね」


 と、若い女の声がする方を見ると、数人の冒険者たちがこちらに駆け寄って来ていた。男女混合のパーティーで、全員若く見える。10代半ばくらいであろうか。

 

「ロム隊のメンバーね? 」

 

 イルザがそう声をかける。


「はい。少し休憩を取るようロム隊長から指示を受けまして……って引きこもりのイゴル? 」


 若い女冒険者は俺を見ると、そう睨め付けた。

 他のメンバーたちも、俺に厳しい視線を向けてくる。


「ええ。知ってのとおり、私の兄よ。ちょっと訳あって2人で行動しているの」


「……そ、そうなんですね」


 気まずい時間が流れる。


「ところで、ロム隊長は? 」


「ああ……ロム隊長はどこにいるか判りません。隊長のことですから、後でひょっこり現れると思いますよ」


「流石はタフガイね」


 そして、しばしロム隊長とやらの話題で盛り上がった。

 俺は完全に蚊帳の外だ。だがその間に、俺は数体の模型をじっくりと観察する。


 ……。

 …………。


 文字が書いてあった。

 それは、≪ゾラン公国物品製造局≫とある。


 この骸骨の模型はゾラン公国が製造したのか……。そうなると、このスケルトンの異常繁殖の背後にゾラン公国が絡んでいそうにも思えるが、現時点ではまだ判らない。


 ただ思うのは、仮にもし俺がゾラン公国当局の者で、レゲムーク王国内で何か事件を引き起こそうとするなら、ゾラン公国の物品製造局なる文字は絶対に消す。


 しかし文字が消えていないことを鑑みるに、ゾラン公国を敵視させるための誘導か、或いは何かしらの方法で模型を手に入れた連中が、勝手に使っているだけとも考えられる。

 

 それに、今確認した限りだと、≪ゾラン公国物品製造局≫と印字されていない模型もある。全ての模型に印字されているわけでは無いのだ。


 とはいえ、この数だ。

 やはり、国レベルの組織が関わっているとしか言いようがない。


「ところでイゴル……さん」


 不意に、若い女冒険者が声をかけてきた。


「何だ? 」


「討伐されたスケルトンをずっと触ってますけど、もしかして変な趣味でも持っているんですか? 」


 今度は、好奇の眼で俺を見つめる。


「……いや、調べものの一環だよ」


 俺がそう言うとイルザを除き、一同は、怪訝そうな表情を浮かべた。


「に、兄さんは……あの、兄さんは調べものは凄いの」


 イルザは慌てているようだ。一見すると俺の不審な行動を前に、取り繕うので必死なのだろう。


「そうなんですか。そうすると……もしかして、このスケルトンを調べさせるために、イゴルを引っ張って来たのですか? 」


「えっ……ええ。そうよ」


 と、イルザは頑張って辻褄を合わせようとしているようだ。

 功を奏してか、若い女冒険者と数人は納得した様子を見せる。

 

 だが1人だけ、俺に敵意のような視線を向け続ける者が居た。剣を装備し、ひょろっとした体型の青年だった。


 目が合う。


「ッつ」


 青年は舌打ちをして、視線をずらした。それからロム隊のメンバーたちは、再びスケルトン討伐に戻っていった。


「それで兄さん、何か判ったの? 」


「ああ。面白いものを見つけた」


 俺は、ゾラン公国物品製造局と記されている部分を指し示した。

 

「……ゾラン公国物品製造局!? 」


 と、イルザが驚く。


「製造者がゾラン公国というだけで、ゾラン公国が絡んでいるかは現時点ではわからないな」


 だが、これを手掛かりに流通経路を辿れば何か判るかもしれない。

 とはいえ、既に上司たちが動いているはずだ。俺は一応の報告だけ済ませて、この件からは一歩引くとしよう。

 無論、捜査せよとの命令が下ればそれに従うまでだが。


「それにしても、兄さんと一緒にいると毎回とんでもないことに巻き込まれるわね」


「そうなるように、意図的に行動しているからな」


 今回スケルトン討伐の依頼を引き受けたのだって、嫌な予感がしたからだ。それで確認しにやって来たところ、この結果である。


「国家憲兵隊は、動いているのかしら? 」


「ああ。少なくとも、流通経路の捜査はしているだろうな。まあ、俺たちは形だけでも討伐しておくか」


 何体か倒しておけば、依頼の趣旨に反することは無いだろう。


「そうね。ちょっと無双してくるわ」


 そう言って、イルザはレイピアを手にすると、素早い剣さばきで、スケルトン相手に無双を始めた。魔力を使っているためか、レイピアが残像になって見えるほどに早い。


「俺も俺で……」


 イルザの邪魔をしないよう、少し離れたところへ移動して、それから俺は波動魔法を放った。多くのスケルトンが吹っ飛んでいく。付近にいた冒険者たちは、突然のことに驚いている様子だ。


「ちゃ、チャンスなんじゃないか……? 」


 と、俺はワザとらしい発言をして演技をしつつも、吹っ飛んでいったスケルトンを追った。

 少なくとも、こうしたスケルトンにも魔物のコアはあるはずだ。だから、それを回収するわけである。


 吹っ飛んだだけでは、いくら弱いスケルトンでも息の根を止めるには至らない。

 まあ、その一部はぶっ壊れて動けないのもいるかもしれないが、基本的には止めを刺す必要がある。


 俺は、あまり他人から見えないようこっそりとスケルトンを殴り、そしてコアを回収していった。


 傍から見れば、ただコアを回収しているだけにしか見えないだろう。


「あの引きこもり、勝手にコア回収してやがって。とんでもねえ奴だな」

「ったく引きこもりから、コソ泥に転職したってか? 」

 

 付近にいた冒険者たちが、そう文句を垂れる。

 吹っ飛ばして止めを刺しているのは俺なんだし、文句を言われる筋合いはない。


「さて、そろそろ撤退しようか」


 吹っ飛んだスケルトンたちが起き上がり、じわじわと俺に寄って来ていたので、俺は退散することにした。

 


 それから、イルザと合流し帰路についた。

 まだ昼過ぎだが、1日中スケルトンの討伐をするつもりはない。夕方には大事な会議もある。それに、ボブ警部の様子も確認したい。


「面倒事ばかり起こるわね」


「ああ。だが、今はハンターに集中するつもりだ」


 スケルトンの件については、国家憲兵隊も本格的に動いているはずだし、わざわざ俺が動く必要も無いだろう。


「そうね。今できることと言っても討伐くらいでしょうし、他の冒険者たちに任せて、私たちはハンターに関する問題を片付けるとしましょう」

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