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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第18話 接触


 公衆電話で話を終えた俺は席に戻り、飲みかけのコーヒをまた1口飲む。人目のある場所なので詳細までは話していない。後で然るべき場所で、詳細を話すつもりだ。


「ごきげんよう」


 そう言って、女性がやって来た。

 視線を向けると、見覚えのある人物が立っている。驚くことに、その人物は俺を尾行していた女だった。


 相手も俺に視線を向けている。やはり、俺に用があるようだ。

 ついに、直接的な行動を取るようになったのだろうか……。


「どちら様? 」


「『遊撃騎士団』に所属しているロミーナ・アストリーと申します。以後お見知りおきを」


「イゴル・ボルストだ。……アストリーと言うと、もしかしてエリンの親族か? 」


「ええ。エリンは私の妹です。いつもエリンがお世話になっているようですね」


 そんな彼女には、A級冒険者であることを示すプレートが首からかけられていた。かなりの実力を持っているようだ。


 『遊撃騎士団』の所属なら、イルザとも面識があるかもしれないな。


 せっかくなので、彼女のためコーヒーを注文した。

 しかし彼女曰く、コーヒーはあまり飲んだことは無いらしい。つまり紅茶党だと言うことか……。


「それで、この俺にどのような用件があるんだ? 」


「コソコソと動いているようですけど、何をしているのですか? それを聞きに参りました」


「コソコソと? 」


「何度も姿を眩ませたり、探偵事務所へ行ったり、はっきり言って貴方は普通ではない行動を取ってますよね? 」


 まあ、確かに何かアリそうな動きはしていると自覚している。


「まず姿を眩ませたのは、俺自身のプライバシーを保護するためだ」


「本当にそれだけですか? 」


 いや、多くの人は赤の他人に自分自身の生活を見られるのは嫌なはずだ。尾行に気づいているなら誰だって警戒するに違いない。


「貴女の尾行には気づいていたよ」


 俺がそう言うと、ロミーナの表情が固まった。ショックだったのであろうか。


「そ、そうですか……私は下手くそですものね」


 と、ロミーナは少し俯く。


「あと、探偵事務所へ行ったのは調べて欲しいことがあるからだ。以前からの知り合いで腕も確かだし、これまでに何度も仕事を依頼している」


 探偵事務所へ行ったことは、隠す必要もないだろう。それに今後は、積極的な行動を取ることになりそうだし、少々騒がれることになるかもしれない。


 思わぬ形だったが、事態は大きく変わりつつある。


「そうですか。一体、何を調べているのですか? 」


 当然、怪しまれているわけだし、そう訊かれるのも無理はない。

 しかし、ロミーナは『遊撃騎士団』のメンバーでもある。むしろ、こちらから色々とハンターに関することを聞きたいくらいだ。


 本来なら、『遊撃騎士団』と協力するべきかもしれないが、いくら俺の妹が副団長だからと言って彼らを信用しているわけではない。

 協力するかは、彼らの出方次第だな。


「貴女たちなら当然知っているだろうが、ハンターのことについて調べたくてな」


 俺がそう言うと、ロミーナは咄嗟に口を手で隠した。


「は、ハンターですって? どうしてそんなことを調べているのですか!? 」


 どういうわけか、ロミーナは非常に驚いた様子だ。

 しかもこの驚きぶりは、少し異常に感じる。


 まるでハンターに関する重大な事実を知っていて、それがきっかけで何かに怯えているような、そういう感じのものだ。


「さあ、どうしてだろうな? ところで『遊撃騎士団』は、ハンターに関して非公式に調査を行っているようだね」


「なるほど。そこまで調べているのですか……。つまり、先ほどエリンと話していたのは、ハンターのことについてですね? 」


「そのとおりだ」


 エリンは、『遊撃騎士団』が非公式に調査を行っているという事実を、偶然知ったと言ったが、まさか姉のロミーナが教えたのではあるまいな……。


「そして、受付嬢のヒルダさんとの話もハンターのことについてですか? 」


「当然だ」


 ロミーナは深くため息をついた。彼女の立場からして、面倒なことをされたと思っているからだろう。


「既にご存じだと思いますけど、貴方には様々な不正の疑惑がかけられています。例えば、入手困難な物品を不正な手段で手に入れて、そしてそれを冒険者ギルドで売るというものです。もう一度お伺いしますが、ハンターについて調べているのは何故ですか? 」


 俺自身に対する疑惑と、ハンターとやらを結び付けようとしているのだろうか……。


「今は理由を話すつもりない。だが、決して悪事を働く目的でハンターの情報を集めているわけではないことは、ここではっきりと言っておく」


「そうですか……」


 今度は、こちらが質問をする番だ。


「それで、『遊撃騎士団』はどこまでハンターについての情報を得ているのだ? 」


「私は担当ではありませんから、殆ど知りません。しかし貴方の妹さん……イルザ副団長ならある程度知っていてもおかしくはないと思います」


 イルザは『遊撃騎士団』の副団長……№2だ。ロミーナの言うとおり、ある程度の情報を持っていてもおかしくはない。


「キミも、色々と知っているのではないか? 」


「いいえ。……しかし担当チーム数名が、惨殺死体となって発見されております。直接犯行を見たわけではありませんが、ハンターに関わろうとすると、ろくでもないことになるでしょう」


 なるほど。

 それで、さっきはあんなに驚いたのか。


「……俺も気を付けるよ。今日は話せて良かった。今後ともよろしく」


「なら、今後も貴方を見張らせてもらいますね」


「いや、それは勘弁して欲しいな。色々と面倒くさいし」


「支部長からの依頼ですから、仕方ないですよ」


「そうか。そろそろ俺は失礼するよ。コーヒーは奢りだ」


 そう言って、俺は喫茶店を後にした。

 ロミーナが居る手前、裏ルートを使っての移動は出来ないので、正規の入り口から出たのだった。


 さて、これから上司・・に会いに行かなければならない。


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