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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第19話 崩れ始めた栄光


 イゴルが立ち去った後の喫茶店で、ロミーナは1人で思考を巡らせた。


 まず、これからの予定についてだ。


「イゴル・ボルストから色々と話は聞いたけど、念のためエリンとヒルダさんからも話を聞いた方が良さそうね」


 そして、支部長にする報告についてである。


 ロミーナは咄嗟の行動で、尾行をめてイゴルに接触してしまったのだ。

 つまり、与えられた任務に反したことになる。それなりの叱責は、覚悟しなければならないと考えているのだ。


「だけど昨日の時点でバレていたようだし、それにハンターについて調べているという事実も報告しなければならないわね」


 ハンターと呼ばれる存在について、『遊撃騎士団』が非公式で調査を行っているということは、冒険者ギルドにとっては重要な案件であることには違いない。

 ロミーナは、胸騒ぎを覚えた。

 

「とんでもないことに……ならなければ良いけど」



 それからロミーナは喫茶店を出て、冒険者ギルドに戻ってきた。

 イザークと合流し、互いに得た情報を伝えることになった。


「あの3人組だが、『遊撃騎士団』で保護することにした。色々と、とんでもないことを吐いてくれたからな」


 と、イザークが言う。


「それはイゴル・ボルストに関することですか? 」


「いや、奴とはそこまで関係ない話なのだが……。デニスというB級冒険者を知っているか? 」


「確か、副支部長のお気に入りですよね? 腕前もそれなりにあるようですし……」


 B級冒険者デニスの周囲からの評価は、それなりに高い。デニスはそういう環境を隠れ蓑にして、色々と悪事を働いていたのである。

 

「そうだ。デニスは、この支部では周囲から信頼されている冒険者だ。ところが、あの3人組は、自分たちがデニスの下僕だと言ったんだよ。下僕としてやりたくもないことを色々させられたらしい」


「あのデニスが!? 」


「ああ。まだデニス本人に確認は取っていないがな。それで、あの3人組が今日イゴルに絡んだのは、デニスの指示によるものらしい。イゴルを嵌める予定だったとのことだ」


「イゴルを嵌める……? 」


 ロミーナは、デニスがハンターと何らかの関係があるのではないかと思った。

 ハンターに関する情報を得ようと行動しているイゴルを嵌めるとなれば、何だかんだで辻褄が合うからだ。


「まず、イゴルを冒険者ギルドから追放するべく動いているらしい。そして追放後、落ちぶれたイゴルを自身の下僕にする。それがデニスの最終的な目的のようだ」


「下僕に……ですか」


 デニスの闇の一端を知ったロミーナは、気分を悪くした。怒りよりも、生理的な嫌悪感を覚えたのだ。


「ああ。事実なら、とんでもないことになる」


「ところで、私からも伝えたいことがあります」


 ロミーナも、先ほどイゴル本人と話して判ったことをイザークに伝えた。

 主に、ハンターに関する情報を得ようとしていることだ。


 それを聞いたイザークは、非常に驚いた。

 彼にとって、出来れば耳にしたくないことを聞いてしまったからである。


「よりにもよって、ハンターか。しかも探偵にも依頼したとはな。放置しておけば、何人もの死人が出るかもしれない。直ぐに支部長に報告しよう」



 

 喫茶店を後にした俺は、とあるバーに来ていた。

 まだ日は暮れていないため酒は飲んでいないが、大事な話をしに来たわけである。


「ハンターについてだが、とりあえず市長を通して市警に捜査をさせることにした。もちろん、お前も好きに動いてくれて構わない」


 と、上司・・が言う。

 彼は俺の直属の上司であり、絶大な権力を持っている人物だ。お互いに都合の良い存在なため、利用し合っている関係とも言える。


 俺は、彼の命令には忠実に動く。

 そして彼は、俺に融通を利かせてくれるのだ。


「ありがとうございます。早速、馴染みの探偵に調べさせておりますし、私も既に複数の冒険者から話を聞いております。あくまでも私の個人的な勘ですが、何かあるのは間違いありません。今後、色々と情報は入ってくるでしょう」


 根も葉もない噂もたくさんあるだろうが、ハンターに因んだ何かは絶対にある。

 だが、それがオーガスト惨殺事件との関係性を示す情報を得られるかは別だ。今はこれから集まってくるであろう情報に期待するしかない。


「調査結果を期待しているよ。……ところで、市警の担当刑事とは会っておけ。市警もこの時期だし色々と忙しいから、回せる人員が少ないからな。出来ればお前がサポートしてやると良い」


 冒険者大会の時期であるため、人員が足りないのだろう。


「わかりました。帰りに寄っていきます。ところで、先日のドラゴンの件は何か判りましたか? 」


「いや。だが数名からなるチームを複数編成し、活動中だ。いずれ報告があがってくるだろう」


「そうですか。では、そろそろ失礼します」


 俺はそう言って、この場を後にする。


 

 ……彼が元々、ハンターについて知っていたかは、流石に怖くて聞き出せなかった。


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