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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第16話 ついにバカが動き出す


 私立探偵の事務所を後にした俺はそのまま冒険者ギルドへと向かい、精算を行った。今日の報酬額は銀貨15枚だった。

 3キロ程度を採取したようだな。


 銀貨15枚もあれば、安い酒場なら軽く寄ることが出来る程度の金額である。

 しかし、ハンターの件は然るべきところに報告する必要があるだろう。1人で飲んでいる場合ではない。


 それに今ここで、直ぐに出来ることもある。

 ヒルダに対する聞き込みだ。他の受付担当に聞いても良いが、今俺と一番話したがっているのはヒルダだろう。


「ヒルダ。今まで心配させて悪かった。少し話したいことがあるのだが、ちょっと良いか? 」


 俺がそう声をかけると、朝から様子のおかしかったヒルダが、少しばかり表情を変えた。


「……では、応接室でお伺いしますね」


 2人で、応接室へと向かった。

 

 ヒルダは、今何を想定しているだろうか……。恐らくは、『不正についての告白』が為されるものと思っているに違いない。


 そう思いつつ、俺は応接室のソファに座った。


「お話を聞かせてください」


 と、ヒルダが切り出した。


「ちょっと小耳に挟んだのだが、ハンターと呼ばれている正体不明の殺人鬼がいるそうだな? 」


「えっ!? 」


 やはり想定外の話を振られて、とても驚いているようだ。


「冒険者の間では、都市伝説のような類のものとして語られているとか……」


「……イゴルさんのしたかったお話は、ハンターのことについてですか? 真偽のほどは私には判りませんが、でもこれだけは言えます。もしもハンターと呼ばれる者が存在するなら、尚更ソロでの活動は推奨できません」


 エリンも似たようなことを言っていた。要するに、ハンターは強すぎるから単独行動はするなということだろう。


「なんでも……冒険者だけを狙うそうだね? 」


「はい。私もそのように話を聞いております」


「何故、冒険者だけを狙うのだ? 」


「さあ……」


「実際に被害者は居るのか? 」


「それも判りません。冒険者は行方不明者が多いので、その中にハンターに殺された人たちがいるのかもしれませんが……」


「なるほど……」


 まずは、直近数年の行方不明者のリストでも作ってもらうのが良いかもしれないな。そこから一件ずつ地道に調査をすれば、ハンターに絡む何らかの情報が発見出来るかもしれない。


 そして、いずれはオーガスト惨殺事件に繋がってくれれば……。


 さて、ヒルダには申し訳ないが、これで一先ず用は済んだ。


「ありがとう。また話を聞きに来るかもしれない」


 俺はそう言って、応接室を出た。それから冒険者ギルドも後にする。


 



「イゴルさん! 」


 ギルドを出た途端に、声をかけられた。

 昨日、俺に絡んできた3人組がいた。


「何の用だ? 」

 

 俺は3人を威圧するように、そう言った。


「一緒に飲みましょうよ。俺たちが奢りますから」


 しかし、彼らは物怖じとしない。これは完全に舐められているようだな。消極的に対応していると、さらに調子に乗った態度を取るかもしれない。


「俺は用事があるんだよ。じゃあな」


 俺はそう言って立ち去ろうとすると、1人が俺の肩に手を置いた。それなりに力が入っているようだ。


「なあ、そんなことを言わずにさ。ちょっとくらい良いじゃん」


「用事があるんだよ。手を離してくれないか? 」


 しかし、男は手を離さない。

 

「良いじゃん」


 しつこくてイライラするが、ここは立ち去ることに専念しよう。

 俺は、なりふり構わず走りだした。だが、3人は追いかけてくる。これを撒くのは面倒だし、人気ひとけの無い場所にでも行って、やっちまった方が良いかもしれない。


 しかし、1つ懸念すべきことがある。

 面倒だったので、あえて遊んでやったり、放置していた尾行者の存在だ。尾行者は依然として、俺に対する尾行を続けているようなのである。


 それに俺を追ってくるのは4人ではない。3人の男と尾行者、さらに数名が俺を追って来ているようだ。


 ここは、市警のお巡りにでも任せるか。


 俺は大通りに出て、巡回中の警官を探した。冒険者大会が近いのか、巡回中の警官はあちこちに居た。


「すまんが、この追ってくる3人をどうにかしてくれないか? 昨日から妙に絡んで来て迷惑なんだ」


「その3人がですか? 」


「ああ。何とかしてくれよ」


 俺は警官に事情だけ話して、この場を立ち去った。


「ちょ、ちょっと待ってください」


 

 そして変な3人組を撒いた俺は、昨日も立ち寄った小さな喫茶店へとやって来た。尾行者は、確認できる限りで1人のようだ。


「マスター。コーヒーを一杯頼む」


 落ち着くものだ。出されたコーヒーの銘柄がどんなものかは全然知らないが、ちょっとした一息にはなる。


 この喫茶店には公衆電話が置いてある。魔法を応用した仕組みを使っていること以外はサッパリ判らないが、便利な道具には違いない。


 電話をかける用事があったので、銅貨10枚を入れてからダイヤルを回した。


「もしもし。ボルストです。早急にご報告したいことがありまして……」



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