第14話 薬草採取
翌朝。
今日は特に用事はない。何か手ごろな依頼でも引き受けて、夜の酒代にでも稼ごうと考えている。
しかしながら、支部長に目を付けられているわけだ。
今は、討伐系の依頼は引き受けない方が良いのかもしれない。
そう、色々と考えながら、俺は冒険者ギルドにやって来た。
掲示板を見つめる。討伐系の依頼が数多くある中、それらを無視して手ごろな依頼がないかを1つずつ確認していく。
「薬草採取か。良いかもしれないな」
報酬は当然、歩合制。
1キロごとに銀貨5枚。
暇つぶしには、ちょうど良い。
今日も遊んでやるとしよう。尾行している者がどういった者なのか、確定的に判るかもしれないからな。
仮に下手うって襲われることでもあれば、その時は応戦して何とかすれば良い。
俺は薬草採取の依頼票を手に取って、受付カウンターに持って行った。
受付カウンターには、毎度おなじみの人物がいる。今の俺にとっては面倒この上ない者だが、手続きを終らせるには致し方ない。
「この依頼を受けたい。ハンコを押してくれ」
「……はい。どうぞ」
ヒルダはいつもとは違い、ただ単調にハンコを押した。
薬草採取という比較的簡単な依頼だからだろうか。いや、昨日の一件が原因だろうな。
「どうも」
俺は、受理印が押された依頼票を受け取りギルドを後にした。
王都ムーク市内を進む。
俺に対する尾行が始まった。
今日は尾行を撒くつもりは無い。テキトウに尾行させて無駄足を踏ませてやるとしよう。
王都ムーク市を出て、草原地帯にやって来た。薬草は草原地帯で多く生息しているためである。
そして草原地帯であるため、身を隠す場所はさほど多くはない。
俺は、尾行者を挑発するように周囲を見渡した。
周囲には他の冒険者らしき者たちも活動しているため、尾行者がこの草原に居ること自体は不審な行動とは言えない。
「なるほど。尾行していた奴は女だったのか」
遠目からだが、女がこちらを見ていることに気づいた。
俺が視線を向けると、その女が視線を逸らす。それに気配から感じ取れる位置関係からしても、俺を尾行していたのは、あの女で間違いないだろう。
その後、俺は特に行動を起こすことはせずに、薬草採取に勤しんだのであった。
※
「今日、奴は薬草採取に出かけたようだ。場所的にも王都から近いし、夕方には帰って来るだろう。奴が冒険者ギルドで報酬を受け取った後に仕掛けろ」
と、下僕たちに命じるのはB級冒険者のデニスである。
その命令に下僕たちは、ただ返事をする。
「昨日予定していた通り、とにかく酒をたらふく飲ませろ。奴を褒めてやって、良い気持ちにさせるんだ。お前たちは、ただそれだけをしろ」
イゴルが良い気持ちで飲み屋を出たところで、女下僕を使ってハニートラップを仕掛けるという算段だ。昨日は、そこまで持って行けずに失敗している。
「ほら、早くギルド前にでも行ってずっと張り付いていろよ。僕はキミたちとは違って、B級冒険者としての活動があるし忙しいからね」
デニスがそう言うと、男下僕の3人は部屋を出ていった。
残っているのは、デニスと女下僕の2人だけである。デニスは家の窓から男下僕たちが出かけていくのをこの目で確認した後、女下僕の方へ視線を向ける。
その視線は下卑たるものだった。
「最近はご無沙汰だったし、今夜の本番前に練習するか」
と、デニスは言う。
女下僕は特に抵抗する素振りも見せず、デニスにすり寄って来る。そこに、初々しいぎこちなさは無い。慣れもあるが、デニスに対する愛など微塵も無いからだ。
2人は服を脱ぎ、素早くソレを済ませる。それから、風呂で体を洗い服を着る。
「まあ、悪くないよね。でもやっぱマンネリかな」
デニスはそうボヤく。
その言葉を耳にしても、女下僕は特に反応しない。当然、何も心に感じないというわけではない。あくまでも、相対的な力関係によってねじ伏せられているだけなのだ。
女下僕は特に何も発しない。
「まあ、ゲルトの奴に売ることは決まったし、そのカネで高級娼婦を1回くらいは買えるし、キミもそう言う意味では役に立つよな。とりあえず、今日は頼むよ」
デニスは、人の心を踏みにじることを何の躊躇いもなく言い、部屋を出たのであった。




