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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門
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家を建てよう

(さくらの希望。野望?の場面に戻ります。)


河原にはリーザがいた。

「あれリーザ、どうしてココに?」

嬉しいけれど、ちょっと困った。

「あー勝手にバイク乗って出掛けたので、怒ってる?」

リーザは怒ってないように見えるが。

「いーえ、さくらの念話もどきも、トキヒコさんの想いも届きましたよ」

あー良かった。

「でも、許可は出してませんがね」

あー、やっぱ怒ってる。

「嘘ですよ」

そう言ってイタズラっぽく笑い、ギュッと抱きしめられた。

エルフは嘘をつかないし、嘘はつけない(苦手)。

でもリーザは他人の心(思考)に触れたり、相手の表情から考えや気持ちを読み取る事の出来ない人間の私に合わせ、表情豊かで感情も露わにしてずっと接してくれて来た。

申し訳ないぐらいにエルフっぽさから掛け離れた事をさせてしまっている。

彼女本人はそんな自分がすごく楽しいと言ってくれている。

喜怒哀楽も激しく『コレが本当のリーザの自じゃない?』と思わされる事もあるぐらい、人間以上に人間ぽい。


「では、どうしたの?」

リーザは少し困り顔。

「今日の王宮への呼び出しは、結局ユーカナーサリー(女王様)が主催で近隣国の方々とのお茶会ですもの」

まあ、女王様の務めかな。

塩湖の向こうにある里、ダタージュとけん玉対決でもしたのかな?

「さくらからこちらに行く事を聞いていたので、お茶会が退屈に感じました。だからこっちに来ちゃいました」

『来ちゃいました』って!?

「女王様を放っておいて?」

「はい」

と言ってリーザは微笑んだ。

「だって二人でこの森に入るなんて、ズルいじゃないですかっ」

って訴えられてもなぁ

「女王様、リーザが居なくなっておかんむりじゃないの?」

心配だなぁ

「まあちょっと何か言われるかも知れませんね。でもユーカナーサリーをココへ呼んだら喜ぶかも知れませんし」

いや、今ヤバいだろう。それもだが。

「リーザ、ちょっと聞きたいというか言いたい事があるんだけど」

「はい」

我々三人は河原の適当な石に腰掛けた。


「さくらがこの森、山を買ったって今日聞いた。一言相談があっても良かったんじゃないかな」

私が少し怒り口調なのが伝わったみたいで、二人はシュンとした。

「はい、相談も報告もしませんでした。ごめんなさい」

「ごめんなさい」

さくらも続いた。

こんな風に怒ったのも、謝らせたのも初めてかも知れない。私が謝った事は幾度もあるんだがなぁ。

「そういえばさくら、さっきサプライズって言ってたけど、何の?」

二人は顔を見合わせてニコリとした。

「お父さんへのサプライズだよ」

何の?

「人目が無い所でゆっくりしたいって、何時も言ってたじゃない」

まあ、言ったかもな。

「それの答えだよ」

へっ?


『人目が無い所』と思ったのは、リーザが見ず知らずの他人から好奇の目で見られる事を(私の思い込みも含めて)多々感じていたからだ。

それはさくらにも通じるものが有るし。

かと言って、人里離れた何処かの山奥で家族三人ひっそりと暮らす、、、違うと思う。

私は現代社会しか知らないし、さくらもその中で育って来た。

リーザに対しては、故郷を一人で離れ(離れるレベルがマックス級だし)どこかで生き苦しさを感じているのではなかろうか。

先程の言葉は結局、全ては私の心配事の集大成みたいなものだ。

「確かに言ったかも知れないが、コレは大掛かり過ぎだよ。それにおいそれと直ぐに来れる場所でも無いし」

「それなら心配ご無用です。トキヒコさんの許しが出れば、ココとアパートを繋ぎます」

いやリーザの負担になるでしょ。それにあんまりこちらの世界で魔術を使ったら女王様が怒りません?

「ねえお父さん、いずれはココで住もうよ。お父さんの望みの場所と私の希望が叶う、一石二鳥だよ」

そうかも知れない。それでいいのだろうか。

「私の呟きを拾ってくれて、気遣ってくれて、それは嬉しいし本当にありがとう。でもリーザ、さくら、コレが本当に良かった事なのか、我々三人の為になったのかは今は正直分からない」

どこかで迷いが生じている私を察して、リーザが口を開く。


「いいんじゃないですか。今回の事がこれから私達三人にとって『良い事』にして行けばどうでしょうか」

楽天的な解答だが、リーザは明晰で優しい。

そう言われて、自分の心配事がこの土地購入のきっかけの一部となったのかという迷いや悩みは少し薄れた。だが、自分自身で得た場所(土地)では無い事に対する劣等感はやはり消えない。変なプライドなのかなぁ。

「私の考え、思いなんだが」

と前置きをしたが

「家族が暮らす場所、家というものは夫、家長、男が準備するものだと思う」

やっぱプライドだな。

「そう言った考えなんで、今回さくらが購入した土地に住むのに対し正直抵抗がある」

「かと言って、さくらが費やした費用を肩代わり出来る備えは無い」

「反対なの」

さくらが心配そうに聞いてくる。

「うーん、良い悪いでなくて、申し訳ない思いなんだよ」

薄っぺらなプライドで踏み切れない所だ。それによって二人を振り回してしまっている自覚も有る。


リーザが口を開く。

「トキヒコさんは何時も私達二人に無理を言わない、ダメとも言わない。全て聞いてくれて一緒に考えてくれる。それを私達は信頼されている証と思ってます」

「でも今回は私からダメって言います。そんなグチグチ言っているトキヒコさんはダメです。いつも通り『なんとかなるさ』『なんとかしよう』って言わないとダメです」

わ、リーザなんか饒舌。

私は二人を抱き寄せた。

そうだ、時として何事にも前向きな姿勢が必要な場面もある。たぶん有る。きっと有る。有るはず。

「ごめん」

そう、先ずこの状況を受け入れよう。

「よし、さくらが手に入れたこの地に家を建てよう!」

「おー」

二人が声高々に続いた。

でもね、家を建てるなんて安月給の私に可能なのか?

超難題だ。

お金無いよ。







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