エルフ国の王女
奴隷屋を出た俺たちは、レシルさんを連れながらランさんを探しに出ていた。レシルさんにはエルフだから目立つということで目深のフードをかぶってもらっている。
「あ、あの・・・・・・本当にごめんなさい。私のためにこんなことまでさせちゃって・・・・・・」
「気にしないでってば!レシルが困ってるんだったら助けるのは当たり前でしょ?ね、セレン!」
「だな。あなたを買ったのは俺たちの独断ですし、この人探しも俺たちが勝手にやってることなんで気にしないでください」
「そうですか・・・・・・」
レシルさんはそれ以上は何も言わなかった。どうやら受け入れてくれた様だな。さて・・・・・・それなら早いとこランさんを見つけてあげるか。
「レシルさん。そのランさんがどこにいるとか予想がつく様なとこはありますか?」
「ごめんなさい。あの子はあまり他のことにはあまり興味を示さない子だから、見当もつかないわ。いつも私の護衛のことを第一に考える様な子だったから・・・・・・」
「いい人なんだね。大丈夫だって!きっとどっかに居るから!」
「・・・・・・ったく、また適当なことを・・・・・・にしてもまいったな〜。それだとどこを探していいのか検討も・・・・・・・・・・・・ん?なんだ?」
ランさんの捜索が前途多難な状況に頭を悩ませていた俺だったが、ふと近くの広場から騒ぎの様な声が聞こえてきたため、視線をそちらに向ける。その広場はいわば廃品や廃材などが捨てられている廃棄場所で、あまり人が立ち入る様な場所ではないのだが、何故かある一点を屈強な男どもが包囲して、何やら叫んでいた。
「何でしょう?あれは?」
「わかんないが、こんなとこに集まってる時点で不自然ですね・・・・・・ちょっと様子を見て来るからルナは・・・・・・・・・・・・は?」
惚けた声を出す俺。そりゃ当然だ。何せ、今まで隣にいると思っていたルナが、今俺たちが話していた男たちの元にタッタッと駆け出していったからだ。というか既にその男たちのところにいるし・・・・・・。
「ねーねー!何見てるのー?」
「・・・・・・ん?何だこのガキ?」
「しらねぇな?」
男たちも急に現れたルナに戸惑ってるし・・・・・・。あの馬鹿は本当にどこ行っても通常運転だ・・・・・・はぁ〜。
「あの・・・・・・」
「気にしないでください。いつものことなんで。・・・・・・とりあえず俺たちも行きましょう」
ルナのことを気にかけてるのか、どこか心配そうな目で俺を見つめて来るレシルさんに俺は呆れつつも優しく微笑む。そして、レシルさんを連れて俺たちも男たちの元へと向かった。
「あの、あなたたちはここで何やってるんですか?何か面白いものでも見つけたんですか?」
「ああ、面白いも何も、凄い”珍しい種族”を見つけたもんでよ!見ろよ!エルフ族だぜ!!」
「「エルフっ!?」」
俺とルナの声の声がハモる。それと同時に男たちをかき分けてそのエルフがいる場所へと視線を向けてみると・・・・・・。
「っ・・・・・・貴様は・・・・・・」
「・・・・・・やっぱり君だったんだ?安心して?君が探してた人を連れてきたからさ?」
今日の早朝に会ったエルフだった。多分だが、この人がランさんなんだろう。そのランさんは、朝に一悶着あった俺の姿を見て苦い顔を向けてきたけど、俺は気にせず話した。
「っ!それはどう言う・・・・・・」
「ランッ!!」
ランさんが何か言おうとしていたところに、今まで後ろで控えていたレシルさんが飛び出して行った。そして、会いたかったと言わんばかりにランさんへと抱きついた。
「っ!!レティシア様!ご無事だったのですか!?」
「ええ。この方たちが助けてくれたのよ」
「っ!・・・・・・貴様が・・・・・・レティシア様を?」
俺が助けたことが信じられないのか、苦い顔のまま首を傾げるランさん。それもそうだけど、まずは再会を喜んだ方がいいんじゃないかと思うがな・・・・・・。
「うん!さっきまでレシルってば奴隷屋さんにいたんだよ?それだとかわいそうだから私たちがお金を払ってレシルを買い取ったの!」
「奴隷!?・・・・・・やはりあの時に・・・・・・くっ・・・・・・レティシア様、護衛でありながら貴女様をお守りできず、よもやこんなところで人間にやりたいようにされてしまい・・・・・・申し訳ございません・・・・・・」
「そんなこといいわ。貴女もわたしも無事だったのだから・・・・・・」
俺への質問だったのにルナが勝手に答えた事にムッとした俺だったが、目の前の二人が抱きついて感動の再会を果たしたと言う光景を目にして、そんなことはどうでも良いと思えるようになってしまった。ルナも同様で、よかったよかったと満面の笑顔を見せていた。・・・・・・さて、じゃあ俺は後始末でもしよう。俺はくるっと振り向き、後ろの男たちへと視線を向けた。
「このエルフは俺たちの知人なんです。出来ればこの人は俺たちに任せてくれないですか?」
「・・・・・・はっ?いきなりしゃしゃり出てきて何言ってやがんだ?この女はこれから奴隷屋に売り捌きに行くんだからよ!ガキが邪魔すんじゃねーよ!」
「奴隷屋・・・・・・余計にこの人は渡せませんね?お願いですからこれ以上この人に関わらないでください。ことを大きくしたくはないでしょう?」
「はっ!ガキの分際で生意気な!おい野郎ども!ちっとこいつらに痛い目見せてやんな!」
「「「「おうっ!!!」」」」
俺のお願いもとい命令は無惨にも彼らには届かず、男どもは俺たちに向かって襲いかかってきた。・・・・・・やれやれ、仕方ない。
「ちょっと、少しの間気絶してもらいますからね?」
俺は、軽く肩を回すと臨戦態勢に入った・・・・・・。
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「先ほどは私とレティシア様を助けていただき感謝する。私はラン・クリフィス。レティシア様の護衛騎士をしている」
「わたしからもお礼を言わせてください。貴方方がいらっしゃらなければ、私たちは今頃一生奴隷の身となっていたことでしょう。本当にありがとうございました」
先ほどの空き地で俺が男どもを返り討ちにした後、とりあえず食事をさせようと料理店に入った俺たちは、今この二人からさっきのお礼と自己紹介のようなものをされていた。もちろん二人には深めのフードをかぶってもらっている。
「それと・・・・・・今朝は何も聞かずに襲ってすまなかった・・・・・・。あの時は疲労とレティシア様の身を案じる気持ちがあったため、余裕が無かったんだ・・・・・・」
「気にしないでください。二人とも無事だったんだからそれでいいです。・・・・・・それで、”レティシア”と言う名はどう言うことです?説明してくれますよね?”レシル”さん?」
俺がにこりと微笑みながらレシルさんを見ると、レシルさんはびくっと肩を震わせる。・・・・・・まぁ、なんとなくあの時の反応から偽名なんじゃないかって言う疑いは持ってたけどな。
「すいませんでした。あの時は咄嗟に・・・・・・。改めて・・・・・・わたしは”レティシア・クルド・メリズラン”。エルフ国”ハーベント”の第一王女です」
「「王女っ!?」」
また俺とルナの声がハモる。ルナに至っては飲んでる途中だったオレンジジュースを盛大に俺に吹っかけてきた(後で覚えとけよ・・・・・・)。
と言うか、そりゃ驚く。こんなとこにエルフ国の王女がいたら誰だってな・・・・・・。だが、意外とヤバイって言うほどには驚かなかったな。俺の近くに・・・・・・と言うかクラスメイトにもミリアって言う王女がいるが、そいつのせいかな?
「驚かせてすいません。ですが、やはり貴方方には知っていて欲しかったので・・・・・・」
「いえ・・・・・・」
「大丈夫!ちょっと驚いただけだからさ!」
俺が言い淀む中、ルナが即断で言葉を返す。・・・・・・正直今回は助かったな。ルナがどんな奴が相手でももの怯じするやつではないことは分かっていたが、ここでもそれが遺憾なく発揮されていた。王女相手にすごいやつだよお前は・・・・・・。
「で、二人はこの後どうするの?私的には早く国に帰った方がいいと思うんだけど?」
「そうしたいのは山々だが・・・・・・それはできそうにないんだ・・・・・・」
「ええ・・・・・・”これ”があるせいで・・・・・・」
「あ〜・・・・・・」
レティシアさんが見せてきたのは、左肩に刻印されていた奴隷の呪印だった。そうだったな・・・・・・レティシアさんは一度奴隷屋に売られた身。売られた者は逆らったり逃げられないようにするために魔法で呪印を刻み付けることが決まりらしい。今回のレティシアさんもまさにそれで、その呪印はこの国から出ようとすると、レティシアさんを酷く苦痛で苦しめる魔法をかけられている効果を持っているようだった。・・・・・・確かにこれがあっては国の外には出れないな。・・・・・・だが。
「俺ならその呪印を消すことができると思いますよ?」
俺にとって呪印を解除することなど、すでに”教え込まれていたこと”だった。




