5 謎のダイイングメッセージ! 遭遇!漆黒の暗殺者!
ひとしきり涙を流したシュウマイ女。
ギョウザ男を殺害したとは思われないが、参考人として事情聴取の必要がある。
同心に連れられ控室を出る――その去り際。
シュウマイ女があることを思い出す!
「そういえば! オラがギョウザ男さんと別れた後!
黒い風が吹いただべ!
黒の中の黒! 漆黒の風だっただべ!!」
「漆黒の風!?」
越前クラゲノスケがその言葉を聞くのは二度目!
同じく参考人となった地球ファイト実行委員会職員もまた、同様の現象を目撃している!
超一瞬のことだったという……!
「……なるほど、下手人に関係するかもしれぬ。
有益な情報、感謝する!」
宇都宮代表控室に残るは神風トオルと越前クラゲノスケ、数名の同心。
「越前様……下手人の正体、もしや!」
神風トオルが口を開く。
「うむ! その漆黒の風とやらが下手人に間違いあるまい!」
「やはり! ということは……かなりの素早さ!」
「超人による高速移動は一般庶民にとって風のごとし!
つまり……漆黒の衣装に身を包んだ者が下手人!」
「漆黒の衣装! はて……どこかで見かけたような……!」
そう! 神風トオルは見ている!
漆黒の衣装に身を包んだ男を!
それも……つい最近!
だが……いまいち思い出せない!
「あの女の前では言えなかったが……今の我らにできるのは下手人の特定まで!
無念を晴らしてやれぬのが心苦しいわ……!」
シン・巣鴨町奉行所の役目は治安維持。
しかし、地球ファイト開催期間中は特別法により地球ファイターに関する殺傷行為は罪にならないのだ!
口惜し気なクラゲノスケ!
役目を十全に果たせぬ町奉行の心中を察し、視線を落とす神風トオル。
すると――その視線の先!
「あ……あれは!?」
ギョウザ男の頭部近く! 床に書かれし血文字!
神風トオルの悪魔的洞察力が発動!
「ま……まさか!?」
そう! そのまさかである!
「越前様! ほれあすこに!
ダイイングメッセージが!!」
「なんと! これは見落としであった!
なんと達筆な血文字か……!!」
ギョウザ男は字がきれいだったのだ!
「読み上げは私にお任せくだされ! 日本語は得意にございまする!」
神風トオルがダイイングメッセージを読み上げる。
「なになに……こ、これは!!??」
『犯人は 殺人忍者 シャドウ・ウゲンt……!』
ここまで書いて事切れたようである。
「くっ! 途中までではわからん……!
おい! ギョウザ男!!」
神風トオルが死んだギョウザ男に向かって叫ぶ!
「おい! いったい誰に殺されたんだ! おい!!」
「……こ、この声は神風!」
死んだギョウザ男が意識を取り戻す!
「や、奴には気を付けろ……!
俺も決勝トーナメントまで残った地球ファイター!
優勝できる自信はあっただべ!
だが! それでも奴の強さは別格!
気づいた時にはすでに手裏剣を投げられていただべ!
奴に目をつけられたら最後……死亡確定!
全方位に気を配るだべ……!!」
「承知いたした!
して! 下手人は誰であるか!?」
「下手人!
下手人は!
下手人の名は!」
「ああ、下手人の名は!?」
「一度しか言わないからよく聞いてくれ!
下手人の名は!」
「下手人の名は!?」
「下手人の名はあああああああああ!
ズバリいいいいいいいいいいいい!!」
ガクリ!
ギョウザ男は力尽きた!
「ギョウザ男おおおおおおおおおお!!」
涙を流し絶叫する神風トオル!
おお、だがしかし! 神風トオルよ!
今すべきは女々しく泣くことではない!
ギョウザ男の無念を己の糧とし!
卑劣なる下手人を成敗すること!
「安心しろギョウザ男!
栃木県民の意志……この俺が引き継ぐ!!」
感情の高まりに地球パワーが反応!
神風トオルが青く輝く!
「では神風、我らは引き上げるぞ」
「お役目ご苦労様にございます!」
越前クラゲノスケ以下町奉行所一行はギョウザ男の死体とともにその場を後にする。
合掌し見送る神風トオル。
――そして。
これまでに得られた下手人の手がかりを脳内整理。
手裏剣。
漆黒の衣装。
ダイイングメッセージ。
殺人忍者シャドウ・ウゲンt。
中指でトントンと額を叩きながら、名探偵的に部屋をゆっくりと歩き回る。
「んん~~~~!」
思わず絞り出される悩み声!
――そして!
「わからん!」
悪魔的密室殺人事件!
迷宮入りクラスの難事件である!
(とりあえず会場に戻るか……!)
故ギョウザ男の控室を出る神風トオル。
(ギョウザ男は――いつの間にか背後に現れたと言っていたな。
そう簡単に背後を取られるとは思わんが……!)
地球ファイターの控室は地下フロアに設置。
その通路は東西に一直線に伸び、緊急車両がすれ違える程の幅員を有する。
仮に暗殺者が現れようとも――この見通しの良い条件であれば発見が遅れることはない!
――と、その時である!
「ムウッ!?」
背後に気配!
「何奴!?」
悪魔的速度で振り返る神風トオル!
ドロン!
発生する白煙!
そこに現れたのは!
「ニャー!」
猫!
「なんだ……猫か!
その姿! 鳴き声! 猫以外あるまい!!」
ほっと一安心の神風トオル。
猫はニャーニャー鳴きながら逃げるように去っていく。
神風トオルが再び歩みを始める。
――と、その時である!
「ムウッ!?」
またも背後に気配!
「何奴!?」
悪魔的速度で振り返る神風トオル!
ドロン!
発生する白煙!
そこに現れたのは!
「ワンワン!」
犬!
「なんだ……犬か!
その姿! 鳴き声! 犬以外あるまい!!」
ほっと一安心の神風トオル。
犬はワンワン鳴きながら逃げるように去っていく。
神風トオルが再び歩みを始める。
――と、その時である!
「ムウッ!?」
またも背後に気配!
「何奴!?」
超悪魔的速度で振り返る神風トオル!
今度は先ほどの10倍の速さだ!
すると――目の前にいたのは!
「……ッ!」
漆黒の忍者!
何かに変化せんとしていた瞬間であった!
神風トオルの超悪魔的振り返り速度に変化の術が間に合わなかったのである!
「……ニンニン!」
目の前の忍者が鳴く!
「なんだ……忍者か!
その姿! 鳴き声! 忍者以外あるまい!!」
ほっと一安心の神風トオル。
「――忍者だと!?」
「覚悟おおおおおおお!!」
漆黒の忍者が手裏剣を投擲!
「なんのおおおおおお!!」
神風トオルが人差し指と中指で手裏剣を挟み威力を殺す!
そして! その脳みそに悪魔的電流! 哲学者的に閃く!
「この手裏剣……ギョウザ男に刺さっていたものと同じ!
ま、まさか!?」
「くっくっく! そのまさかよ!!」
手裏剣!
漆黒の衣装!
ダイイングメッセージ!
殺人忍者シャドウ・ウゲンt!
全てがつながった!
「……謎は全て解けた!
犯人は……お前だ!!」
ドオオ――――ンッ!!!
神風トオルの青く輝く人差し指が漆黒の忍者――つまり!
殺人犯シャドウ・ウゲンタを指す!
「いかにも!」
神風トオルの超人的名推理にたまらず犯行を認めるウゲンタ!
一般庶民程度の知能では解決できなかったであろう!
事件の迷宮入りは回避された!
「やいやい! 犯行動機はなんだ!?
すっかり白状しろい!!」
「くっくっく!
単純すぎて答える気にもならんわ!」
シャドウ・ウゲンタが答える!
「暗殺は忍者の最も得意とするところ!
衆人の面前で勝敗を決するなど下の下!
戦う相手がわかっていながら試合を待つなど笑止!
常在戦場が我ら忍者の世界よ!!」
ウゲンタの口から聞こえたるは恐ろしき忍者常識!
闇から闇への日々を過ごす彼らにとって……暗殺行為は三度の飯より日常茶飯事!
しかし! そのような無法!
黙って聞いている神風トオルではない!
「だまらっしゃい!!
忍者の常識など知るものか!
ギョウザ男は正々堂々……貴様と戦うために控えていたのだ!
それを不意打ちで殺害するなどと……忍者のごとき悪行!
許すわけにはいかん!!!」
「くっくっく!
この俺の手裏剣を受け止めたのはお前が初めて!
しかし! このまま生かしておかぬ!
ギョウザ男とあの世で餃子でも食べるがよいわ!!」
忍者代表シャドウ・ウゲンタ対地球代表神風トオル!
トーナメント的には二回戦にあたる両者の戦い!
地球ファイト場外マッチの開始である!




