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オリガとタツキ前編

 


「オリガ、準備はいい?」


「なにを心配しているのですか?私はいつでも大丈夫です」


 タツキは刀を抜き、オリガは脇差をの二刀流で持つ。

 彼女を見ていてわかったが、忍びの技を彼女は使っている。

 まあ、歩き方や気配からしてそうは推測していたが、今回戦いを見てはっきり確信した。


「・・・オリガ、兄さんがの目が怖いのだが、心当たりはあるか?」


「なんか、品定めされているようです・・・。これ、もしかして下手をするとここから先つれて行ってもらえないのかもしれません」


 タツキは先のオリガ行ったことをトキヤが思っているのではないかと薄々思っていた。

 言葉には出さなかった・・・いいや、出せなかった。

 トキヤは非常に合理主義で、味方の損失を望まず、私情よりも将来の成長と損失をはかりにかけるような男・・・と思いきや、時に不条理の憤慨し、心に従って動いてみたりと突飛もないことをする。

 しかし、そこには必ず意味があり、のちに誰かの成長の糧となっていた。


「これが倒せないようじゃ、僕は自分から辞退するよ。・・・兄さんの足は引っ張りたくないから」


「・・・そうですか」


 着いてきた自分とは違い、呼ばれて共にこのダンジョンにいる彼のそう言った心持にオリガは少しだけ憧れを抱く。


 ――――彼は、誰かの後ろを歩くだけの人物じゃない。誰かを言い訳にして動くようなせこい人物ではない。・・・うらやましいな。わたしはもう・・・


「うん?何か落ち込んでいるの?・・・励ましの変わりになるかわからないけど、実はね、僕は君に感謝しているんだ」


「え?」


 タツキの意味の分からぬ告白にオリガは驚きを隠せなかった。


「まあ、今回僕も兄さんい呼ばれてきたけど・・・、たぶん君がいるから連れてくることを許してもらえたんだと思う。君と一緒に戦って僕は兄さんや父さんが一瞬で倒す敵を倒すことができる。・・・まあ、その敵も適性ランクC以上ばかり、しかも僕たちは子供だ。倒せるほうがすごいんだけどね」


 タツキはそう言って彼女の頭を撫でる。

 その瞬間、オリガの心がぽぉ~、と温かくなるのを感じた。

 タツキは自分が何をしているのか気づき、顔を赤くして前を向く。

 初めは仲間を瞬殺されておど降りていたキングオーガとコボルトナイトは痺れを切らし、こちらに襲い掛かる。

 二人は動かず、敵が近ずくのをじっとまつなか、オリガはタツキに問いかける。


「・・・タツキ様は、私の素性を知っているのですか?」


「うーん、まあ想像はつくかな?・・・たぶん、僕も君と一緒だから」


 彼は今嘘をついたことにオリガは気づいた。獣人は嘘に敏感だ。しかし―――


「え?」


 オリガは驚いたようにこちらを見ると、タツキはいたずらが成功した子供のように笑っていた。


「兄さんは・・・鑑定を使えるからね」


「・・・そうですね」


 タツキの付け足すような言葉にオリガは生返事を返すしかなかった。


 ―――タツキの着いた嘘は前半部分だけだったからだ。



 ※※※



 オリガは自分が獣人であるがゆえに大人から様々な目で見られてきた。

 さらに言えば生まれた家は貧しく、母は自分を生んですぐにに死んでしまい、3つにして父は酒を買う金が欲しいと自分を売りとばした。

 親がすべてである子供にとってその所業は非常に堪えるものだった。

 その売り飛ばされてたところで彼女は人の裏世界の悲しさを目にする。


「・・・うん?この子は」


 彼女はただ目にしただけだった。

 そう言ったことをされる前にジングウジ家前党首によって見いだされたが、彼女の心にはあの希望も気力もない売りとばされた人の目がいまだに目に焼き付いている。


 ―――私は獣人であるから、力を持つからこうしていられる。・・・恵まれているだけなんだ。もうあんな人は見たくないな・・・


 彼女の心に刺さったとげ。それは、すべてに絶望した人のあの瞳。

 故に自分は恵まれている。私が感じた恵まれる事とは誰かに必要とされていること。

 それから彼女は自分のための行動がとれなくなってしまった。・・・いいや、正確には欲望のほとんどが消えていた。

 食事だって、食べないと必要な時に動けないし、心配されるから食べるだけ。

 睡眠だって、とらないと必要とされたときに動けない、顔に出てしまうから取るだけ。

 恋愛なんて、頭の中に無かった。




 ※※※




「ねえ、オリガ・・・。本当はこの話、今すべきじゃないと思うけど、言っておいた方がいいと思うから・・・言っておくよ」


 モンスターが迫る中、今度はタツキがオリガに話しかける。


「・・・」


「ねえ・・・君に守りたいものはある?」


 彼女の沈黙を是と取り、タツキはそんなことを問いかけた。


「・・・ある」


「今回はその人の為にここに来たの?」


「そうだが・・・?」


 この質問の真意をつかめないオリガは警戒を緩めづタツキの顔を見る。

 彼は落ち着いた表情をしている。


「その人は君にとって大切?」


「もちろん」


 オリガはそれを即答した。


「じゃあ、さ―――」


 足の速いコボルトキングが間合いに入ったので、タツキがまず武器の腕を切落とし、オリガが命を取る。











「君は自己中なんだね」








 その一言にオリガは耳を疑った。


 自分が自己中心的考えの持ち主?あり得ない。私は他者に必要(命令)とされることでしか生きていけない、人形だ。


「わたしは・・・」


「手は止めない!」


 一瞬動きを止めたオリガ。その一瞬を狙い、彼女を襲ったのはキングオーガだった。

 彼女は反応できず目を瞑る。・・・しかし、彼女の予見した痛みは彼女の元に届くことなく弾き飛ばされる。

 目を開くと先ほどまでコボルトと戦っていたタツキはすでに倒し、オリガの加勢に来ていた。


「まったく・・・手がかかりますね、きみは・・・」


 そう言ったタツキの瞳は暖かった。


 ―――トクンっ。


 自分の心が波打つのがわかった。


「なぜ、僕が君のことを自己中と呼ぶか知りたいですか?・・・じゃあ、まずはこの敵を倒しましょうか。背中、任せましたよ。―――オリガ」


 タツキが自分位はなったその言葉にオリガの失った心に光がともり、喜びがあふれてきた。




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