お墓参り
「………」
桐木家と書かれた墓石の前で2人は手を合わせていた。
「…あれから三年か」
「えぇ。」
立ったままポツリと呟いた晃に、しゃがみこんだまま肯定の意を伝える椿。仄かに香る線香の独特な香りが哀愁を誘う。
「…佳奈さん」
京介はそう呟くと華を握る手に無意識に力が込められた。そんな京介に二人は気付き何も言わずに墓石の前を開けた。
「佳奈さん…本当にこの中にいるんだよな」
「ああ」
京介の確認に晃は頷き、それをじっと見つめる椿はぎゅっと両手を握りしめた。
「あんたが」
椿が京介を難じようとしたが、晃が手で
それを制し睨み付ける椿に無言で首を降った。京介はしゃがみこみそっと花束を墓石の前に置いて合掌した。数秒の沈黙の後、ソッと立ち上がり墓石を見下ろしおもむろに口を開いた。
「あれからもう三年ですよ。俺らも佳奈さんと同い年ですよ。二十歳に成ったら酒一緒に飲もうていいましたよね。二十歳に成ったら煙草も一緒に吸おうっていいましたよね。二十歳に成ったら…」
京介はうつむき震えながら言葉を詰まらせた。嗚咽が混じり目からは涙がポロポロとこぼれ落ちる。
「二十歳成ったら結婚してくれるっていいましたよね!!!」
「俺、この三年頑張ったんですよ!誰も大切な仲間に手を出せないよう守れるように強く強く強くなって、助けられる人には手を差しのべて、道を踏み外したヤツを嫌われてでも引きずり戻して。全部あんたが、あんたがやってきたことを。少しでも追い付けるように少しでも認めてもらいたくて。バイクだってうまくなったんですよ。酒も煙草もいくら進められても二十歳まで我慢して、自衛隊行って箔つけて。…全部、全部あんたの為に、あんたと釣り合うように。隣に並べるように。なのに!なのになんで」
「あんたがここにいねーんだよ!!!」
京介は人目も気にせず大声で泣いた。そしてバッと顔を上げ懇願するような顔で
「俺はこれから何のために生きたらいい?何をめざせばいい??教えてくださいよ。佳奈さんのいない世界で行き続ける意味があるのかよ。ここに来れば前に進める。今の自分にケリ付けて新しく歩めると思ってたけど、無理みたいだ。どんなに頑張ってもどんなに強くなってもあんたに笑ってもらわないと意味がないんだ。なぁ、笑ってくれよ。俺が大好きだった最高の笑顔でさ。わらって……くれよ」
膝を崩しうつむきながら弱々しく言い放った京介を椿と晃は無言で見つめていたが
「いっそ。死んだほ」
京介の言葉が最後まで放たれる前に椿の平手が頬を打った。
「あんたまさかそれ本気で言うつもり?」
「京介。それだけは言っちゃなんねー。それを言い放っちまえば、もう戻れなくなるぞ」
椿と晃は京介にそう言い放ち、京介は打たれた頬に片手を沿えながら呟いた。
「じゃぁ、俺はどーしたら……」
静寂が辺りを包み込みしばらくの間時間が止まったかのように無言で固まる3人に透き通るような柔らかい声が掛けられた。
「京介くん??」
此処まで読んでくれてありがとうございます。今回もシリアス展開です。京介の想い人への想いを書いてみました。次話は少し間断を、挟んで過去の佳奈さんについて書いてみようと思います。シリアス続きでなのでコメディ満載で御送りしますね。よろしくお願いします。