過去との会合
「京介くんよね?お久しぶり。なんだかずいぶんと大人になったじゃない」
佳奈さんの墓参り中、取り乱していた俺に和服姿の女性が柔らかな声色で声を掛けた。
「…奈美さん?」
セミロングのウェーブが掛かった黒髪の大和撫子な女性。数年前から全く年を感じられないそのままの姿の佳奈さんの母親が立っていた。
「きっと今日は来てくれると信じていたはあの日からね。…佳奈もきっと喜んでいるはずよ」
そう言いながら、墓石の前に歩み寄った奈美さんは、墓石に水を掛け和服に皺が付かないようにしゃがみこみ線香を立ててから花束をソッと飾り、手を合わせ黙祷した。
「ここじゃぁ、他の人たちにも迷惑になるから、ウチにいらっしゃい。椿ちゃんもこの後ウチに来る予定だったからちょうどいいわ。晃くん、京介くんをお願いね」
奈美さんは、そう言い放ちニコッと微笑んでから踵を返し帰路にたった。
「さぁ、私達も行くわよ。晃には聞きたいこともあるし、奈美さんも知ってるみたいな感じじゃない。向こうでちゃんと説明しなさいよ」
そう言い放ち、椿は駐車場へと歩き出した。
「さぁ、俺達もいくぞ」
「あぁ」
晃と俺も車へと歩き出し、駐車場へとたどり着いた。
「椿ちゃん。貴女の方が着くのが早いでしょうから、準備頼めるかしら?仲居さんたちには連絡しておくわ」
「はい。奈美さん。それじゃぁ、お先に失礼しますね」
椿は奈美さんとの話が終わると、フルフェイスを被りバイクに跨がった。
「漆黒のゼファー」
京介はポツリと呟いた。kawasakiのZ系ネイキッドバイグ“ゼファー”の白色の本体に黒のラインが入った火の玉カラーZ2仕様。京介のバイクは黒色の本体に白色のラインが入った火の玉カラーZ2仕様。カラーリングの配色以外全く同じ仕様のバイクに椿はエンジンを掛け数度吹かしてから、ギアを1速に入れスロットルを回し走り去って行った。
「俺達もいくぞ」
晃の声に意識を呼び戻され俺は助手席に乗り込み、椿の後を追った。その姿を車の後部座席から奈美さんが覗いていた。
「佳奈、貴女は幸せ者ね。こんなにも愛されてるなんて。……ただ、この子たちの人生を狂わせてしまったのも貴女なのよ。その罪は親の私が背負わせてもらうわ」
晃の車の中で落ち着きを取り戻した俺は椿のバイクについて晃に質問した。
「なぁ、晃。アイツのゼファーやっぱり佳奈さんを意識して?」
「ああ。ちょうど二年前ぐらいにウチの店に持ってきて俺が塗装してやったんだ。パーツもコツコツ集めてついこの間ようやく完成したんだぜ。最初はお前の相棒と一緒のカラーにしたいってうるさかったけど、何とか説得してあの逆カラーで落ち着つかせたんだぜ。」
「そうか。…強く生きてくれてよかったよ」
「ああ。ただよ、椿もお前と同じなんだよ。“黒死蝶”の元メンバーは誰も佳奈さんの事忘れてねーし、忘れられるわけねーんだ」
「そーだな。俺は小せぇな。みんな過去に捕らわれないで今を生きてるのに。…弱ぇ自分に嫌気が指すよ」
俺はそう言いながら、窓から流れる景色を見つめていた。
「お待たせ」
私服に着替えた奈美さんが部屋に入ってきた。ここは始めて奈美さんと会った客室だと思う。その客室に俺と晃、椿と奈美さんの四人がテーブルを挟んで座っている。
「ここで3人が揃うのは三年ぶりね。あの頃を思い出すわ。…佳奈のいる頃は毎日が賑やかだったわね。毎日のように京介くんや椿ちゃんがウチに来て、それに晃くんが付き合わされて。思い出せばつい昨日のように感じるわ。京介くん。約束守ってくれてありがとう。正直あの時のあなたには酷だと思っていたけど、さすが、佳奈の見込んだ三代目ね」
奈美さんは、懐かしむように語りながら真っ直ぐに京介を見つめた。
「奈美さん。俺は駄目だよ。今の今まで逃げて現実を受け入れることができなかった。佳奈さんは本当は生きてて、ひょっこりといつもみたいに現れて、騙されてやんのばーか。って言いながら日常が始まる。あるはずの無い現実にすがって逃げて誤魔化して中途半端に生きてきたんだ。佳奈さんの面影ばっか追いかけて。いくら求めても手に入らない虚像にすがって。佳奈さんだったらって行動全てに理由をつけて。…いざ、目の前に立ってみてわかったんだ。俺の限界を。そしてやっぱりアイツへの憎しみも消えねぇよ。奈美さん。」
京介は自分の想いを包み隠さず語った。晃は目を瞑りその言葉に耳を傾け、奈美さんは少し微笑みながら真っ直ぐに京介を見つめていた。しかし、一人、椿だけが驚愕の表情を顕にして京介と奈美さんを交互に見つめていた。
「さ、三代目って何?黒死蝶は佳奈さんの二代目で解散したはずよ。京介が三代目ってどーゆうこと!?そんなのあり得ない。なんで奈美さんも晃もそんな平然といられるの?京介も何言ってるの?何アイツへの憎しみって?意味わかんないんだけど。だってありえないじゃない」
椿は怒りと困惑、悲しみと疑念に頭が真っ白になり頭を抱えてうつむいた。そして両手で顔を覆い大きく開いた指の隙間から両目を見開き前を向いて言い放った。
「…佳奈さんを殺したのは京介なのよ…」
此処まで読んでくださりありがとうございます。京介の過去の話を書いてみました。シリアス展開はここで休憩し、次話は過去の京介と佳奈さんの出逢いをかきます。また始まるシリアス展開の息抜きにどうぞ。
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