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GW⑥

 澄み渡る青空と窓から流れ込む心地よい風。軽快なアップテンポのBGMが車内に響き渡る中、俺たちは晃の運転するワゴンでGW最後の休日に大阪城の広場で開かれている、よさこいイベントに向かっている。

 昨夜、バイト料をもらった俺たちは、もう一日バイトがあると思っていたので、何も予定を立てておらず、みんなどうしようかと話している中で、椿が提案したのが、このよさこいイベントを見に行こうということだった。

 俺と圭吾が、ちゃんとしたよさこいイベントを生で見たことが無かった為、気を利かせた椿が誘ってくれたのである。

 「今回のお祭りはコンテスト式のよさこいイベントで、審査員が出場チームを審査して、順位を決めるの。それで選ばれた上位2チームが10月に大阪城ホールで開かれる本祭に出場する権利を勝ち取るっていう仕組みになっているわけ」

 後部座席から説明をする椿に、ふむふむと頷き合う俺たち。

 「審査員って、よさこいのプロみたいな人が審査するのですか?」

 圭吾が椿に問いかけた。

 「うーん。確か今回の審査員に一人高知の有名な振付師の人がいたと思うわ」

 椿は目を瞑り額に人差し指を当て思い出しながら圭吾の質問に答えた。

 「けど、よさこい界の有名人や著名な振り付けの先生が審査をすることは稀なのよ。大抵は、その祭りやイベントの主催者やスポンサーの重鎮が審査することの方が多いわね」

 人差し指をピンと立てて機嫌よく圭吾に説明をする椿。

 「ていうか、それじゃぁ、全くよさこいに関係無い人や知識が無い人が審査したりすることもあるってことか?」

 助手席から顔を向けながら質問する俺に椿は、少し考える素振りを見せる。

 「そういうことになるわね。もちろん、イベントによっては、よさこいに理解の深い人達が審査をすることもあるわよ。例えば、さっきも言ったような、よさこいの振り付けをしている先生とか、楽曲を作っている作曲者や衣装を製作している会社の役員とか。けれど、本場高知よさこいや有名な北海道のよさこいソーランのように町全体が主体のイベントならともかく、まだ、よさこいが浸透しきっていない地方のイベントでよさこいの知識が深い人を探したり、招いたりすることなんて現実的な意味合いと金銭的な意味合い両方で不可能なのよ。」

 椿が空を仰いで嘆かわしいわと愚痴る。

 「それって早い話が、素人さんや畑違いのお偉いさんが審査をするってことだよな?そんなのでちゃんとした審査が出来るのか?」

 つまるところ、ダンスコンテストのような、その道のプロが審査を行うもので無いなら、その審査の基準はどうやって決めているのだろうか。

 ただでさえジャンルが無差別級のよさこい踊りなのだから、ほぼその人の好みが審査に反映するのではないだろうか。

 例えるなら、ヒップホップとジャズ、ブレイクダンスにロッキングと何でも有りの審査を自分自身がすると仮定して、単純な初心者クラスと上級者クラスの技能や熟練度の差くらいなら素人の俺でもある程度分かると思う。

 ただ、それがどのジャンルのチームも横一線のレベルとすると、審査の基準は単純に個人的にどの踊りが好きかで決まってしまう。

 もっと酷い例えなら、好みの女性がいたチームにってなこともあるかもしれない。男性ならアラフォーばかりのチームと二十歳そこそこのチームでは圧倒的に贔屓目ひいきめで観てしまうだろう。

 仕方がない。男のさがなのだから。

 女性が審査をする場合もその逆があるかもしれないし、また女性特有の視点で審査をすることもあるだろう。

 だからこそ、審査員はプロかセミプロに任せないと公平さが生まれないのだと思う。

 「だから、入賞を意識するチームは、どうすれば、審査員の目に留まるか毎年試行錯誤を繰り広げないといけない」

 後部席に座るカノンが窓から景色を眺めながら不満げにぽつりと呟いた。

 「自由な風潮が受け入れられて広まっちまった、よさこいは、その自由すぎるが故に節操が無くなってきてるんだよ。鳴子さえ持ってりゃ何やってもいいいんだろってな感じでな。そりゃぁ、観る側にしてみれば、同じ踊りを延々と見続けるより、いろんなジャンルの踊りを観る方が楽しいし飽きないだろけどな」

 晃は運転をしながら目を細め言葉を発した。

 確かに同じ踊りで同じ衣装、同じ曲で延々と踊りを見せられても、よっぽど好きじゃないとそれぞれのチームの違いが分からないし飽きてしまうだろう。

 「まっ、よさこいの世界にも色々としがらみがあるってことよ。京介や圭吾君もよさこい経験が長くなるとそういったことは嫌でも経験するから今はあまり考えないことね。じゃないと楽しめないでしょ」

 椿が締めくくったところで、窓の外に大阪城の天守閣が観えてきた。

 「おーい椿、駐車場までナビってくれるか?」

 晃の呼び掛けに、まっかせないという風に道を示す椿。

 数分後に車を駐車したのは地元小学校のブロック塀際であった。

 駐禁標識があったが、休日は除くと書かれているので、今日は大丈夫なのだろう。というか、地元でも無いのによくこんな穴場スポットが分かるものだ。

 「ん~~っと、さて、それじゃぁ、行くわよ!」

 椿が車から出ると背伸びをし、ついてこいとばかりに後ろを振り返る。

 俺も、初めてのよさこいに心躍らせながら椿の後に続いて歩き出した。

 


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