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一度口にした言葉は……


スポーツ飲料を奢ってもらい、ご機嫌斜めな椿の運転で到着したのは、市内の小学校。その体育館で、一颯の練習が行われているらしい。

俺の他に、まだメンバーには入ってないが体験という形で練習参加するらしい人たちがいてる。

何か初めてやるときって同じ境遇の人が居るのと居ないのでは緊張感が全然違うよな。

ちょっと、気が楽になった感じがする。

周りを見渡すとこの前演舞をしていた人たちが手を振ってくれている。

っと、思いきや俺の隣に居る椿に振っていたらしい。ヤバい超恥ずかしい!そして、椿のバカにした顔がメチャクチャムカつく。くっ、ジュースの件がなければ。

「さて、そろそろ時間だしみんな集まってちょうだい」

奈美さんの合図を皮切りにメンバーが体育館の壇上前に集まってきた。

俺たち新参ものは奈美さんの横に立っている状態だ。

「今日は新しく一颯に入ってくれたメンバーを紹介するわね。さぁ、京介くんからどうぞ」

「えーと、正木 京介二十歳。自衛隊上がりの好青年で、趣味はバイクと山登り、彼女はいてません。好きな食べ物」

「長いわよ!そこまで誰も聞いてないし興味も無いわバカ京介!」

「おまっ!こういうのは第一印象が大事なんだよ。折角の紳士的かつ真面目な俺でいこう作戦が椿のせいで台無しだ!」

「彼女いませんってコメントで既に紳士でも真面目でもないわよアホ京介」

「そこは大事だろう!?もしこの中に“あの人いいかも”って感じた人がいたら、“安心して下さい!フリーですよ”ってアピールしないと失礼ってもんだ」

「うわっ、キッモ~。キモ京介だ」

うわー、ないわー。みたいな顔で俺を見る椿。くそっ、これは間違いなくジュースの件の仕返しだ。

根に持ってやがるなあいつ。

「つばき??」

「きょうすけ??」

「え??二人はそういう関係!?」

「てことは今のは椿さんの嫉妬??」

「痴話喧嘩?」

「「痴話喧嘩!!」」

ものすごい連想ゲームでざわざわとメンバーがざわめきたつ。

椿が真っ赤になってぷるぷる震えながら、立ち上がった。

よし。耳を塞ぐ準備は完了だばっちこい。

「違うわよ!!!」

椿の雄叫びが炸裂。

みな、身がすくんで動けないようだ。

「いい?あたしと京介は、ただの……ただの?……うん?ただのなんだけっけ?」

椿が首をかしげながら振り向いた。

え?そこで俺に振る?!

「おいおいしっかりしてくれよ椿。それ一番重要な部分だろ。つまり、俺と椿の関係は、あれだ、え~と……」

あれ?マジマジと考えれば何だろうな?昔はチームの仲間で、それから嫌われて、和解して、この間ファミレスで戦友っぽくなって、友達ってほど他人行儀じゃないし、親友ってほどの深みも無いし、恋愛的な感情もお互いまったく無いよな。

「友達以上恋人未満な関係だな」

「「「キャーー!!」」」

「な、な、な、何言ってるのよあんたはっ!??」

「つまりつまり、恋人ロードまっしぐら?」

「ちがう!」

「少しずつ愛を育みながら無意識に惹かれ合う若き二人」

「違うわよ!!」

「いつかお互いの気持ちに気付いてしまい、溢れる思いを止められず」

「だから―」

「最終防衛ラインを突破した二人は」

「「ハッピーウェディング!」」

「ほほぁ、二人はもつれ合い爆熱ラブラブ天●拳を放つと言うことですな」

「カノン、あんたねぇ―」

「さぁ、最後の仕上げだ!」

「ええ…」

「ちょっ、待ってだから誤解―」

「「二人のこの手が真っ赤に燃えるゥゥ!」」

「幸せ掴めとッ!!」

「轟き叫ぶ!」

「「ばぁぁくねつッ!!ゴッド!フィンガァァァ!」」

「石!」

「破!」

「「ラァァァブラブゥッ!!天●ォォォけェェェェェん!!!」」

あ~、みんなの暴走が止まらない。

椿の否定の言葉なんて無視だし、カノンは執筆のネタにしようと書き込んでやがるし、何だかカップルなメンバーがノリノリでアニメの名シーン必殺技を全身全霊で演じてるしで、なんだこのカオスな状況は??

あっ、分からない人に説明しよう。

『石破ラブラブ天●拳』とは、流派東●不敗の最終奥義『石破天●拳』の進化版必殺技である。

アニメ史上これ程の熱い情熱に満ちたとても恥ずかしいネーミングの必殺技はないと言える。

長い長いガンダ●シリーズの中でベストカップル賞の座は不動といってもいい。

昔も今も未来もこれを越えることはできない。

だって、必殺技当たった機動戦士の装甲にハートの穴が空いたんだよ!?

どんだけ手の込んだ必殺技だよ!

ちなみに、これを製作したスタジオ内では反対派のプロデューサーやスタッフと賛成派の監督やスタッフとの間で熱いバトルが繰り広げられたらしい。

この事件は、後にラブラブ論争と呼ばれるほどの議論だったとかなんとか。

ちなみに声優陣はみんなラブラブ天●拳賛成派であったみたいだ。

「おめでう!」

「おめでう!」

「めでたいな!」

「おめでとさん!」

なんか、どこかの最終回みたいな終わり方になってるけど、何でこんなにノリがいいんだみんな。

「はいはい。親睦を深めるのはそれくらいにしておいてね。まだ、他の子の自己紹介があるんだから。さぁ、どうぞ」

なんか、もうごめんなさい。

この後に自己紹介とかハードル高過ぎですよね。

振られた本人“え?この流れで!?”みたいにキョドっちゃってるし。

椿なんて真っ白だ。固まったままに動いていない。

後で俺生きてられるだろうか。

一度口にした言葉は取り返しがつかない。

身に染みてわかったような気がするよ。

次からは気を付けよう。

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