寝起きと共に
佳奈さんの墓参り温泉一泊事件から月日が立ち、新年が明けて今は4月。冬の寒さから開放され花粉症との戦いを絶賛繰り広げている今日この頃。俺は町のシンボル“吉宗城”の麓に来ていた。
俺の住んでるW県は、ヨーロッパ風な遊園地に冒険な世界の遊園地。みかんと梅、マグロにクエ、海水浴場とパンダ、修験道の使っていた古道に弘法大師・空海によって開かれた真言宗の総本山。黒飴が名物の神秘的な滝等と案外色んなものが有名な土地だ。
しかし、都会なうえに食い倒れな町O府。歴史的観光スポットが外国人に人気なK府。古都でシカさんと戯れられる大仏さんのN県。そんな周囲に囲まれているせいで中々知名度が低い。多分、近畿に旅行行こーぜってなったら下から数えた方が早い位置にあるんだろうな。
俺的には食い物が新鮮だし、山と海の幸が豊富。海は綺麗で空気も綺麗。都会じゃないけどド田舎って訳でもないし、いや、場所によっては山しかないところの方が多いか。とにかく、遊びに行こうとすれば、周辺の大都会なお隣さんたちに手軽に出掛けられるという中々に立地条件がいい土地だと思っている。
話は逸れたが、そんな地元の中心街、緑地公園の広場を俺は歩いている。
前には椿がいて、俺の両手首を赤いハチマキでがっちりとホールドしてその先端を引っ張りながら目的地に歩いている。
うん。逃げられないね。なぜこんな状況になっているかというと話は今日の目覚めから始まるのだ。
日曜日の爽やかな朝の6時。突然に鳴ったチャイムにフトンの中の俺は身じろぎした。こんな朝早くから誰だよと思いつつ、多分押し売りか何かだろうと思いもう一度夢の世界へ旅立とうとした。数度のピンポンコールの後、諦めたのかチャイムが鳴り止み朝の静けさを取り戻した。
…ズズズ、カチ…ガチャ…キー…
ん?あ~っ晃のやつか。あいつに合鍵渡してたなそういや。ったく、何だよこんな朝からよ~。
「!!」
え?!なんで俺の布団ひっぺがされてんの!
「何してくれてんの!?」
俺は抗議の声をあげながら晃の方を見上げた。
「いつまで寝てんのよ!今日という日はもう6時間も過ぎてるのよ!!」
そこにいたのは何か黒いナイロン系のズボンに黒のタンクトップ。ピンクのパーカーを、羽織って腰に手を当て立っている椿だった。何か無駄に偉そうだな。
「あっ、おはよー椿。今日も元気そうだね」
「え??あっ、おはよう京介。今日もいい天気よ。って違うでしょ!今の現状にツッコミなさいよ!何あたかも普通の日常的なシーンにしてくれちゃってるのよ!!」
「もう朝から五月蝿いな~。椿何しにきたのさぁ?ん?つばき??えっ!?何でいんだよ!ってか、どうやって入ってきたの。鍵なんて渡した覚えないぞ?!」
一気に眠気もぶっ飛んだ俺は今の状況にテンパっていた。
「あー。鍵は晃が貸してくれたのよ」
謎はすべて解けたな。晃あいつは後でシバくとしよう。ったく、俺のプライバシーを何だと思ってるんだアイツは。
「で、とりあえず、今のこの状況って何の前振りだよ?何か約束したこととかあったっけかな??」
ん~、まったくわからん。
「京介!よさこい行くわよ!!」
椿は片方の手を腰に当てもう片方の手で俺を指差した。無駄にキマッたポーズだなおいっ。
「いや、行かないから。しかも6時だよ6時。何でこんな朝早いの?椿、何時に起きたんだよったくー」
「私は4時に起きたわ!昨日は八時に寝たからばっちり8時間は寝たわね。京介それにさっきも言ったけど、今日が始まって6時間も経ってるのよ?寝すぎよ」
「深夜時間は普通計算に入れないからね!普通の一般的な人は朝日が出たらその日の始まりなの!確かに日付け変わるから間違っちゃいないけど。一般常識だから!そう考えたらまだ日の出二時間以内十分早い方だよ。日曜日ってのを考えたらメチャクチャ早い方だよ!!」
椿ってたまに独自ルールでしゃべってくるからな~。しかも言葉的には間違ってないのが妙に質が悪い。朝からハードにツッコミ入れたせいで目覚めちゃったよ。
「いちいちうるさいわね~。細かいこと気にしてたら生きていくの大変よ」
「いや、全然細かくないからね!」
椿節は今日も絶好調だなまったく。
椿はとりあえず部屋の座椅子に座り込みバックを置いた。
「あんた、去年の終わりに約束した“よさこいを見に来なさい”っていうの忘れてないでしょうね」
「あっ、そういやそんな約束したっけかな」
「だから、今日行くわよ」
「急すぎるなおいっ!事前に連絡入れるとかしろよ」
「だって連絡したらあんた、逃げるでしょ?」
うっ、バレてるよ。だからこんな朝早くから俺を拉致りに来たのか。策士め。お前は三国志の孔明か。けど、今日は予定あるから丁重に帰ってもらおうか。
「はぁ~。実は今日晃との」
「あっ、それ嘘だからドタキャンでいいわよ」
…ハメられた。親友に裏切られるなんて……いや、今までいっぱいあるわ。
「これで、状況もわかったでしょ。親友に売られて傷心中かもだけど、とっととベットから出て顔洗って歯磨いてきて。朝のパンとコーヒー作っといてあげるから」
そういいながら台所へと椿は歩いている行った。
そして無理矢理部屋から連れ出され、椿の車に乗せられ現在に至るということだ。朝の9時。広場には結構な人数の人たちが集まっていた。
此処まで読んでくださりありがとうございます。新章大一段やっと京介とよさこいの出会いが来ました。よさこい編と日常的な話を織り混ぜつつ話を進めて行こうかと思うので、よろしくお願いします。




