75. 【閑話】Claudia's Cast
ストリーミングサイト『Arcana Cast』
ユーザ名:Claudia's Cast
※【】内は配信内コメント
◆ ◆ ◆
■①クラウディア ー ナイトホーン:『邪竜認定』
【正直クラランよりナイトフォールの方が邪竜っぽくね?】
【ナイト師匠と並んで立つとクラランの邪竜感薄れるよな】
『んもー、そんなこと無いし!!』
クラウディアさんは、頬を膨らませて尻尾をパシパシさせる。
その様子に、ナイトホーンはコメント欄をちらりと見て目を細めた。
『邪竜って、我のこと?』
『そうだよ!!』
『ふーん』
そんな淡白な反応で、ダークワイバーンは特に否定しなかった。
『お前より我の方が色が暗いし、でかいし。まあそう見えるんじゃない?』
【否定しないのか……】
【ナイトフォール=邪竜 公式認定は草】
そんな様子に、クラウディアさんは翼をバタバタさせる。
『ちょっと~! 否定してよ!!』
『なんで?』
『ボクの邪竜モードが使えなくなっちゃうの! お師匠が邪竜になったら!』
ナイトホーンがじっとクラウディアさんを見る。
『クラウディアさあ』
『なに』
『アビス・メイズで何回我に勝った?』
『…………ゼロ』
『じゃあ、何回我に負けてる?』
『……わかんない』
【十三回】
【十三じゃね?】
【十三】
『それで邪竜名乗れる?』
【ナイト様容赦ない】
【これは邪竜】
【正論パンチで草】
クラウディアさんはプクっと頬を膨らませた。
『次は絶対勝つし!!!』
『楽しみにしてるよ。我から「邪竜」を取り返してみろ』
涼しい顔のナイトホーンと、悔しそうに地面をバシバシと尻尾で叩くクラウディアさん。
【なんか『格の違い』を感じたわ】
【クラ様頑張れ】
【正直永遠に負け続けてほしい】
■②クラウディア - メイ(フェリちゃん):『魔物は怖いですか』
【え、人間いるじゃん!?】
【人間が竜の里に行くの?】
【俺、人間初めて見たわ】
『フェリちゃん映したら、コメント欄めちゃくちゃ沸いてるんだけど』
クラウディアさんがカメラを少し横に向けながら言う。
光の粒子をカメラに当てて、顔は映さないでくれている。
『え。なんで?』
『人間のクラ民も多いんだけど、今は魔物のクラ民のほうが人間を珍しがっちゃって。いつもの逆転現象だね』
『すごい、魔物のひとたちも配信見てるんだね』
【見てるよー】
【見てるぞちな竜】
【竜も見てんのかよ】
『じゃあフェリちゃんに質問。たぶん人間のクラ民からなんだけど——【魔物って怖くないですか?】 って』
『怖くないですよ』
【即答じゃん】
【フェリちゃん、強者の余裕で草】
『フェリちゃんって、魔物に慣れてる感じ?』
『生まれた村に魔物のひとたちも住んでたんで。小さい頃から一緒に遊んでたし』
『じゃあボクみたいな飛竜とも?』
【クラ様は邪竜だぞ 定期的に生贄からプリンを巻き上げる恐ろしい存在】
『いま余計なこと言ったキミ、明日の「贄」ね』
『あはは……』
『えっと、飛竜はナイトフォールとクラさんのふたりしか会ったことないんですけど……話してたら怖くなくなりました』
【でも俺正直ナイト師匠にばったり出くわしたら漏らす自信あるわ】
【安心しろ魔物の俺でも漏らす】
『話してみると、意外とオモシロワイバーンですよナイトフォールも』
『おいー! お前なんか我の悪口言ってんだろ!!』
ダークワイバーンが、ジト目でこちらに近付いてくる。
『言ってない、褒めてんの』
『ホントかぁ?』
『ホントだよ』
【あのナイト師匠をオモシロワイバーン扱いなのフェリちゃん……】
【ガチモンの強者で草】
■③クラウディア - カノンちゃん:『天使』
【ハーピーもいるじゃん!】
【ピンクの羽毛だね】
【かわいい】
『……カノンちゃん映したら、人間のクラ民が沸き始めたんだけど』
『ええっと、どうも……』
【そのシャツとショートデニム似合ってるね】
【かわいすぎ】
『ちょっとぉー! ボク映した時より盛り上がってるの何なん!!』
【お、嫉妬か?】
【だってクラ様いつも裸だし】
クラウディアさんがぷんぷんと翼を振り上げる。
カノンちゃんは苦笑いだ。
【翼見せてー】
【拡げてみてください】
『こうですか?』
桃色の翼が、バサァっと広がる。
【めっちゃ綺麗】
【天使じゃん】
『天使……』
『あはは、ボクもよく天使って言われるんだよ』
『なんか、くすぐったいですね』
カノンちゃんが翼をすこし縮めて、照れ笑いをする。
【んまあクラランは、天使の皮を被った邪竜だけどな】
【擬態して捕食するタイプ】
『あ゛ぁん?』
『あはは……』
カノンちゃんが、コメント欄を見て笑う。
それから、小さく笑った。
『……なんか、いいですね』
『えー?』
『魔物も人間の皆さんも、仲良くコメントをしあう』
『でしょー! ボクが配信好きな理由、これなの! 魔物や人間のみんなと同じものを見て、同じ楽しさを共有するの。そうやって、お互いを分かり合えるから!』
『そうですね』
【カノンちゃん笑った、かわいい】
【これは聖竜様】
【クララン、いいこと言うじゃん】
■④クラウディア ー セフィリア:『マジメな初代様』
『……何だこれは?』
初代魔王、セフィリアさんは端末をじっと見下ろした。
ディスプレイ付きのカメラデバイス。画面の中に自分の顔が映っている。
『私が中にいるのか?』
『違います! 映ってるだけですよー!』
『例の「カメラ」、か?』
『そうです! 今はこの映像が大勢のひとに見られてて』
『…………』
深紫の瞳が、画面とクラウディアさんを交互に見る。
『……大勢?』
『十六万人くらいですかねー今』
その言葉に、巨大な黒龍が固まった。
『多すぎないか……?』
『ほら、コメントもいっぱい来てますよ』
【龍だ!?】
【でかすぎる】
【え、本物?】
画面の端を、これまでの最速ペースでコメントが流れていく。
巨大な龍の登場に、コメント欄は半ば祭り状態となっていた。
『ちょっとみんな、この方は初代魔王のセフィリア様。絶対粗相の無いよーに!!』
【初代魔王様!?】
【やば、初めて見たわ!!】
【セフィリア様、こっち向いてください!!】
『私のことが書いてあるのだな』
『はい、みんなリアルタイムで見てます』
初代魔王はしばらく、流れるコメントをただ黙って見ていた。
やがて、感情の読めない瞳をクラウディアさんに向け、低く呟く。
『返事は……した方がいいのか?』
『してもいいですけど、へんなコメントは絶対に無視してくださいね!』
クラウディアさんが慌てて答える。
確実に『へんなコメントが来る』と分かっているかのように、釘を刺した。
『そうか』
短くそう言うと、セフィリアさんはコメントに目を這わせた。
【本物ですか?】
『ああ、本物だ』
【何歳ですか?】
『覚えていない』
【かわいい】
『…………』
彼女の深紫色の瞳がクラウディアさんに向く。
『クラウディア』
『はい』
『【かわいい】はどう返せばいい』
『無視で大丈夫です!!!』
それ以降、律儀に全レスをする初代魔王に対して、コメント欄で『セフィリア様イジり』が流行り始めてしまったのは、言うまでもない。
『クラウディア、【ダブルピース】とはどうすればいい』
『無視で大丈夫です!!!』
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