第20話 潜入ミッション
「問題? 何かあるのか?」
「ロミも魔人よ。彼女の事どうするの?」
ロミオは目を泳がせながら、カズキの返事が気になる様だ。
「別に、それとこれとは別じゃね?」
「そういう訳にも行かないのよね……相手はロミの格上。宮田が良くてもロミはそうはいかないの」
「お前らは特に大丈夫そうじゃねぇか?」
「私は別に、タカシが仲良くしろって言うから仲良くしているわけじゃ無い。私自身があんまりきにしないから大丈夫なだけで契約者との関係と魔人間の関係は別物なの!」
ロミオは顔を強張らせながら口を開いた。
「マモ様は特別なんです。本来神器の守護者は、僕らの事なんて貴族にとっての平民。中には平気で消したりする方もおられます」
「消したりってそんな……」
「はずかしながら、僕だって最初はそちら側だったじゃないですか!」
そう言われれば、ロミもマモを粛正しようとしていたりと格下にはシビアな感じはする。
「私ですら先代の名前が無ければ新興貴族扱いで虐められる可能性は高いわ……」
マモが魔道着に着替えた瞬間に態度が変わったのは、力の差だけじゃなくそのせいもあったのか。となると仲のいい魔人という期待は出来ない。
やはり無理矢理にでも取り上げるべきなのだろうか。だとしたらそれが唯一可能なのは一緒に住んでいるロミオだ。
「ロミオ、清水さんのオルゴールをこっそり取ってこれないだろうか?」
「ぼ、僕がですか!?」
「彼女の一番近くにいる以上、ロミオが取るのが可能性がたかいんだよ」
「ですけど……ああああ、契約者の物をそれも守護者の神器を取ってくるなんて……」
「やりなさい!」
「マモ様まで……」
「おいおい、お前らロミオに無茶な事言ってやるなよ。先輩の物に手をだす緊張感が分かってねぇのかよ!」
カズキはロミオがしようとしている事の難しさを分かっている、挟まれている事の大変さも。すると彼はため息をつき、立ち上がった。
「俺も行くよ。なんだかんだであそこの両親とは知り合いだから、違和感なく入れる」
「そうなのか?」
「まぁ、中学ん時以来だけどな」
清水さんとカズキは思っていた以上に仲が良かったのかも知れない。それはそうと、入り込んでくれるなら俺たちにとってもありがたい話だ。
「わかった。なら頼むよ」
「まぁ、成功するかは分からないけどな」
とりあえず箱の事は二人に任せる事にして、結果を待つ事にする。当然俺はそのつもりでいたのだが、マモはそうではなかったらしい。
家に帰る途中、黙っていた彼女は口を開いた。
「本当に二人に任せるつもり?」
「とりあえずはそうするしか無いだろ」
「宮田くんはともかく、ロミはどっちに付くかわからないよ?」
「どういう意味だよ」
そういうと、彼女は少しいいづらいのか言葉を逃す。
「ロミはあの子の契約者。 宮田くんの事は好きかも知れないけどいざという時は清水さんの味方になる可能性の方が高いはずよ」
「契約しているからか?」
「それもあるけど、ネックレスの仮守護者となっているからね。アレを使われると強制的に動く事になるの。そのスマートフォンみたいにね」
確かにロミの時にスマホを使うとマモを魔道着に変える事が出来た。つまりは何かしらの強制力を使う事が出来るという訳か。
「ならカズキは……」
「清水さんを上手く説得出来ないと不利な状況になるって事!」
「だとしたら使うしかないよな?」
「やっと気づいたの? そう、今こそ願いを使う時よ!」
「よし【猫にしてくれ!】」
「そう! 猫に……ってアンタ本気で言っているの??」
その瞬間、俺の視界は低くふかふかの毛皮を身に纏い始めた。まさに理想的な猫だ。
「いや、それでどうやって箱を手に入れるつもりなのよ!」
「まぁ、ロミ達に協力するのが目的だからさ」
「いざとなったら、首輪になったスマホの石を触れは私を呼べたり、元に戻ったりできるからね」
「了解、とりあえずは俺を清水さんの所まで連れて行ってくれ」
「もう、わかったわよ……だけど、もうその姿で喋らないでくれる?」
俺の作戦はこうだ。
猫になった俺が清水さんの元に行けば、彼女はきっとこっそりと飼おうとするだろう。もし飼おうとしなかったとしても飼い主を探す間、近くに置いておく事になる。そんな中、カズキとロミにエンカウントすれば、作戦を話して協力する事が出来る!
ふっふっふ……我ながら完璧な作戦だぜ。
「じゃあここからは自分でどうにかしてよね」
「分かった。あとは任せてくれ」
「もう一度いうけど、ロミや宮田くんに話しかけるまで喋っちゃダメよ? 二人に話しかける時もなるべく聞かれない様にきをつけてね?」
「わかった。いや、分かったニャー」
「語尾をニャーにしたらいいと思うなよ?」
マモの殺気を感じ、俺は初めて彼女を怖いと思ってしまった。しかし、こんな姿になってまで実行しなければいけない作戦。
必ずやり遂げて見せる!
清水さんの姿が見えると、俺はゆっくりと近づいてみる。学校の帰り道という事もありゆっくりと歩いている様だ。
どうやって近づくべきか。あまり人懐っこすぎる猫も違和感があるのではないだろうか……。しかし俺には首輪が付いている、当初の予定とはちがうが飼い猫として接してみるのもいいかも知れない。
俺は近づき、一鳴きしてみる。
「にゃ、にゃーん」
「あれ? 猫さんですか?」
「にゃん」
「やけに人間っぽい発音の猫さんですね」
少し怪しまれたものの計画通り。あとはこのまま家まで行けるといいのだが……。どうやらそれ以上は近づいては来ない。普通はそんなにすぐ持って帰ったりしないというのに気づくのが遅かった。
しかし、これで諦める俺では無い。貴重な願いを使ってまで猫になったのだ。立ち去ろうとする彼女に付いていき、どうにか持ち帰ってもらう他はない。
ゆっくりと彼女の後を付いていく。四足歩行で歩くのもこの身体なら容易く付いていける。すると彼女は足を止めた。
「どうかしたのかな?」
チャンス!
これで彼女に近づいていけば……。すると清水さんはしゃがみ込んでくれる。しかし問題は突然に起こり始めた。
視界が低い分、スカートの中が丸見えじゃねぇか。仮にも好きな子のパンツは猫になっていても刺激的な光景だ。
「キミ、なんかふわふわですね」
「にゃにゃーん」
擦り寄って行ったおかげなのか、彼女は俺を抱え上げるとある一部に目が行った。
「男の子ですね、野良猫さんですか?」
首輪に気づかないのだろうか。それとも路地を歩いているからなのだろうか。次の瞬間、彼女の言葉に恐怖を覚えた。
「野良猫さんなら病院で去勢しないとですね……」
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