第19話 新たな神器
マモの表情からそのヤバさは嫌という程に伝わってくる。神器という事は何かしらの魔人の守護者が居る可能性があると言う事だ。
「それってヤバいんじゃねぇのか?」
「うん……唯一の救いは清水さんがロミと契約しているって事」
「契約してたらなんなんだよ?」
「基本的には契約者は神器を起こす事は出来ないから彼女が持っている限りは魔人は出てこない」
「出て来てもまたマモがどうにかするだろ?」
「何言ってるの? 神器の守護者で歴の浅い私より弱い魔人なんて居ないのよ?」
「は? マジかよ?」
そればかりは予想外だった。ロミの時は彼女が格下だった事もあり、マモの力でどうにかなったものだ。確かにロミ自身、マモが神器の守護者だった事に大きく驚いていたのを俺は思い出した。
「アレの守護者を知っているのか?」
「守護者なら会った事はあると思うけど、アレの守護者が誰かまではわからないわ」
会った事がある。つまりは自分より強い魔人しか居ないというのは予想ではなく確定だ。
「だけど知り合いなら……」
「まぁ、契約者次第にはなると思うけど」
「とにかく、あの小箱を回収しないとだよな。とりあえずどうやって手に入れたのか聞いてみるよ」
俺がスマホを手に入れたのは露店だった。しかし彼女が露店でアレを買ったのだとは思えない。誰かから貰ったのか、拾ったのか。どちらにしても危険な物の可能性が高い以上、魔人を呼び出さない様にしなくてはならない。
「あの……清水さん」
「ん? どうしたの? なんかすごく険しい顔をしているけど」
「その箱って、どうしたの?」
「オルゴールらしいのだけど、開ける事が出来ないの……」
確かにオルゴールと言われれば高級そうな所以外は違和感はない。
「それ、どうしたの?」
「昔におばあちゃんに貰った物の中にあって、今朝何となく気になって持って来ちゃって」
「なるほど……」
清水さんの祖母がご存命かは知らない。もし形見なのだとしたら取り上げるのは酷なはなしだ。
「それはでも開けない方がいいよ」
「なんで? どんな曲か聞いて見たいのだけど」
「訳は……開けない方がいいって言ってたから」
「誰が?」
まぁ、そうくるよな。
一連の流れからして、マモが言っていたというのは悪手な気もする。しかし、それ以上の説得力のある答えは思い浮かばない。
「もしかして住穂さん?」
「……まぁ、アイツ魔人だし」
マモが言ったじゃなくあくまで魔人が言っていたという方が納得してくれやすいと思った。だが、そんな意図は彼女には伝わらなかった。
「仲良いんだね」
「そりゃまあ、契約者だし。清水さんとロミみたいなものだよ」
「私達は女の子同士だし、ロミはなんでもしてくれるのだけど……そういう事?」
「いや、ロミに何させたんだよっ!」
「何って、お風呂に入ったり一緒に寝たり」
「いやいやいや。俺らはそんな事してねーから」
「ふうん。そうなんだ」
これ以上話しても、箱をどうにか出来る気がしない。ここは一旦引き下がって作戦を立てるしかないか……。
上手く話を逸らした俺は、マモに相談してみる事にした。ロミやカズキにも協力してもらえたらどうにか出来る可能性が生まれるかもしれない。
「オルゴール……かぁ」
「なんだよ。中の奴が誰かわかったのか?」
「多分だけど、怠惰と好色の魔人ベルフェゴールの後継者の可能性が高いかな」
「なんかヤバそうだな」
「うん。彼はやる気は無いけど本気をだしたら魔王様とも渡り合えるくらいの魔人だよ」
「それってトップクラスにヤベェんじゃないのか」
マモは少し考えこむ様に眉をひそめる。あまり仲がいい魔人では無いのかもしれない。
「まぁ、オルゴールと名前が似てるってだけなんだけどね」
「それ多分外れてるぞ!」
だが、以前魔人のランクを聞いた時にSSRやURが居るのだと言っていた。魔王と渡り合えるという位だからベルフェゴールは多分その中でもURクラスの魔人の可能性が高い。AランクとSランクとの差を考えるとマモが到底勝てる相手では無い。
出来る事ならせめて同格だよなぁ……。7つの守護者の7番目がマモだとして、6番目位なら俺の願いやロミの力でどうにか出来るかも知れない。
いやいや、それより解放させないのが一番簡単だ。まだ彼女が開けられないうちにどうにか出来ないかを考えてみる事にした。
♦︎
「……というわけで作戦会議です!」
「なんだよ急に。つまりはサキのオルゴールを開けなければいいんだろ?」
「まぁ、そうなんだけど」
俺はカズキとロミオを集め、作戦会議をする事にした。ロミオは一緒に住んでいるし、カズキは幼馴染という事もあり清水さんの事をよく知っている。
「今、ロミオと契約していて開けられないっていうなら、別に問題ないんじゃねーのか?」
「彼女が持っている限りはな。そのあたりはマモが説明してくれる」
そう言うとなぜか意気揚々と立ち上がる。
「そうっ! 彼女が持っている限りはね。問題は、持ち歩いている事なんだよねー」
「誰かが契約するかも知れないって事か?」
「いいね、冴えてるね! 問題はそこなんだよね。例えば授業中に落としたりして、それを誰かが拾って開けちゃうと契約されちゃう可能性がある」
「でもよ。悪用する様な奴はクラスにいないだろ」
「……クラスなら、ね」
確かに、こないだの先輩みたいな奴に渡ってしまうと敵になる事が確定する。そうなるとどんな願いを使われるかわかったもんじゃない。
「大体リスクは分かったようね。あとは本人にそのつもりは無くても中の魔人は頭がいいの、容易に唆したり出来る奴も居るのよ」
「頭がいい……ねぇ」
「まぁ、ロミオは良さそうだけど……なぁ?」
「み、みなさん。マモ様をみくびり過ぎですよ! 先代は魔人の中でもトップクラスの策略家なんですからね!」
「それは先代だろ?」
本人に会った事があるから分かっている。真門さんが策略家だとしても驚きはしない。
「なによ! とにかく、どうなるかわからないんだからねっ!」
この切羽詰まった様子から、マモがどう頑張っても勝てる相手ではないと言うのは分かる。頭脳戦を仕掛けても長く生きたであろう魔人には及ばないだろう。
「一つ名案があるんだがいいか?」
「よっ! ヤンキーの叡智!」
「なんだ、カズキやるのか!?」
「なんだよヤンキーの叡智って。いや、単純に俺が開けちまえばいいんじゃねぇかって思ってさ」
確かに……カズキが開けるなら味方になったも同じだ。それに芯の強い彼なら唆される事もないだろう。
「それも考えたんだけど、一つだけ問題があるのよ……」
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