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ネットサーフィンから始まる異世界生活  作者: ミネラル
三章 大冒険の日々
24/24

夢を見た日

「じゃあエミル、改めて紹介するね。

この人はゼールさん。ゼール・ド・ヨーロフさん。

この街の領主様だよ。」

「初めまして、エミルです。」

「ああ、初めましてエミル君。

話はイスカ嬢から聞いている。

ガガン帝国を避けてギルバーツ王国へ行きたいんだよね。」

「はい。戦争に関わっている暇はないので。

…えっとあの、イスカさんとはどういう関係なのですか?」

「はは、なに。嫉妬する様な関係ではないよ。」

「そ、そう言うわけでは。」


「そうだな、私が騎士をやっていたことは知っているかな?」

「はい、知人から聞きました。」

「そうか。7年程前になる。

オルデバラン公国に天災と呼ばれる魔獣が現れてね。

それの掃討作戦に国中の猛者が召集されたんだよ。

イスカ嬢と知り合ったのはそのときだね。」

「そうなんですか。」


「結局魔獣は倒せず、封印されたんだがね。

私が騎士を引退したのもその時さ。

と、この話はもういいかな。

本題に移ろうか。」

そう言うとゼールは、大きな地図を取り出した。

「ここが、ヨーロフだ。

ガガン帝国を抜けるにはオルデバラン公国を北上し遠回りするか、

この、デイビ山脈を越える必要がある。

普通は、山脈の入り口の関所で止められるが、

そこは私が通行証を発行するから問題ない。」

「ありがとうございます。」

「うむ、だが話は最後まで聞いた方がいい。

通行証を渡すのにあたって、やってもらいたいことがある。」

「やってもらいたいこと?」

「ああ、なに。難しいことではない。

近頃、森に異変が起きているのを知っているだろうか。」


異変か。

心当たりといえば、つい先程のブラッドウルフぐらいだが。

何か様子がおかしかった。

「何かある顔だね。私の部下や訪れる商人達から、

森の魔物達が凶暴化しているとの報告が入っていてね。

これの調査をしてほしい。」

「調査?でも僕達そんなに長く滞在する気はないんですが。」


「大丈夫。ちょっと妖精に会うだけだから。」


領主の話はこうだった。

森には、それを管理する妖精が住んでいる。

妖精は人間の前には姿を現さない。

というか、人間には見えないのだ。

妖精が見えるのは亜人種、

エルフ、ドワーフ、獣人の3種族だけ。

俺みたいな半分だけエルフな混血種でも見える。

つうか人間、妖精に嫌われすぎだろ。何したんだよ。

領主は見える者が来るのを待っていた時に、

イスカさんが来たことを知ったらしい。

そこで今回の話だ。

俺達がやることは、森の中心にある泉まで行き、

妖精に異常がないか、聞いてくることだ。

簡単とは言え、やはりあるのか、おつかいイベント。


話を終え、領主を見送った俺達は、

宿屋で借りた部屋へと入った。

「ごめんねエミル。

何の条件も無しにガガン帝国を抜けたかったんだけど。」

「いえ、むしろ助かりました。

僕も森のことは気になっていたので。」

「そう?それならよかったのかな。

それより、エミル。

ちょっと話があります。」

イスカさんは笑顔になった。

「何ですか?」


「うん。エミル、今日、

私はエミルがクエストに行くことを何て言って許しましたか?」

イスカさんは笑顔だ。


「えっと、ゴブリンなら一人で行ってもいいと。」

「それだけ?」

イスカさんはニコニコしている。


「えー、あー、あ!」

「思い出したかな?」

「はい、思い出しました……」

イスカさんは笑っているに見える。


「日が暮れる前には帰って来るようにって言ったよね。

しかも、相手をしたのはゴブリンじゃなくて、

ブラッドウルフ!

危険な相手だって分かったら即撤退。

退路を必ず確保して動くって教えたはずだよね?」

「う、はい。」

怖い。


「私がどれだけ心配したと思ってるの?

エミルに、エミルに何かあったら、私は。」

イスカさんは涙目だ。

「ごめんなさい、イスカさん。」

「ううん。

もういいの。

おかえりなさい、エミル。」

「ただいま、イスカさん。」


イスカさんに抱きしめられながら、

俺は深く反省した。

思えば、今回の戦闘は最初の一撃で退路を作ることは出来た。

俺は少し思い上がっていたらしい。

強くなった俺なら、こいつらなんかに負けない。

逃げる必要なんて無いと。

逃げる事を少しも考えていなかった。

まるで、あの狼達の様に。


こんなんじゃ昔と変わらない。

相手の力量も分からず、

勝手に盛り上がって、勝手に惨敗して、勝手に諦めていた、

前の世界の自分と。





その日の夜は、不思議な夢を見た。

小さな女の子の夢だ。


その子は、昔から他の同世代の子より力が強かった。

そのせいで、友達に馴染めず、いつも泣いていた。


彼女は、親を知らず、施設で育てられていた。

彼女は必死だった。

話に加わろうとしてみたり、

遊びに誘おうとしてみたり、

優しくしようとしてみたり、

彼女なりに頑張ったのだ。


だかある日、事件は起きてしまった。

意地悪な子供が、徒党を組んでやってきた。

彼女を取り囲み、石を投げつけた。

汚い言葉で、彼女を貶し、

数の暴力で、彼女の存在を否定した。


彼女の身体は、傷つかない。

でも、幼い彼女には、

衝撃的な出来事であった。

今まで保っていた一線を、

軽く越えるぐらいには。


彼女にとってそれは、子供同士の対等な喧嘩のつもりだった。

だが、周りにはとっては、違ったのだ。


シスター達に発見され、喧嘩は収まった。


無傷の彼女と、重症の相手。

理由がどうあれ、貴方ならどちらを悪者にする?

そう、言われた気がした。


彼女は、悪者にされてしまった。



悪者の彼女は、独りぼっち。


悪者の彼女は、敵ばかり。


悪者の彼女は、傷つかない。


悪者の彼女は、人ではない。


悪者の彼女は………





目が覚めた。


「エミル。」

「…イスカさん?」

「大丈夫、私がいるよ。」


「だから、泣かないで。」

「……泣く?」

手を添えると、俺の頬は濡れていた。

理由は分からない。

分からないが、

悲しい夢を見た気がする。

「おいで。」

「…はい。」


イスカさんに包まれ、

俺は再び眠りに落ちた。

もう、夢は見なかった。



「さあ、行こうかエミル。」

「はい。」

朝起きて、宿屋で朝飯をとり、

俺達は、森の泉に行くことにした。

城門までの道のりは、昨日より短く感じた。

「やあ、エミルちゃんじゃないか!」

「げっ!」

キラキラしたイケメンが現れるまでは。


「朝から奇遇だね。」

「……。」

「エミル、お知り合い?」

「いえ、知りません。不審者です。

通報しましょう。」

「はは、つれないな。

俺と君の仲じゃないか。」

「気色の悪いことを言うな!」


「あら、やっぱり知ってるんじゃない。

おはようございます、イスカです。」

「ああ、おはよう。美人なお嬢さん。

俺はユーリ。昨日エミルとクエストを共にした者でね。」

「そうなんですか、あなたが。」

「…何か用かよ。」

「特に用があるわけではないよ。

本当に偶然さ。」

「そうか。

ならもういいな、さようなら。」


「まあまあ、

そんなに冷たくしなくてもいいじゃないかエミルちゃん。

これから何処かに行くみたいだが。」

「お前には関係ないだろ。」

「こら、エミル。そんな言い方しないの。

これからクエストで森に行くんです。」

「ほう、そうなのか。それはそれは。

またもや奇遇だね。

僕もこれから森に行くのさ。」

「ふーん。そうか。じゃあな。」

「良ければ、今日も一緒に行かないかい?」

「よくな…」

「良いですよ。」

「!

イスカさん!?」

「でも、帰りは一人で帰ってもらいますけど。」

「ああ、それでいいよ。

じゃあ行こうか、エミルちゃんにイスカちゃん。」

「……むぅ。」


「…何で連れていくんですか?」

俺はユーリに聞こえない様、小さくイスカさんに話しかけた。

「うん?

ああ、理由は簡単だよ。

エミルは昨日この人と出かけたんだよね?」

「はい。」

「じゃあエミルが危険な目に会ったのは

この人のせいかもしれない。

そう思ったら、確かめなくちゃってね?

もし、本当にこの人のせいなら、ふふ。」

「…ああ、なるほど。」

ユーリ逃げてぇー!

怖い、怖いよイスカさん。

何も、起きないといいなー…。


森の入り口に着いた。

俺は、領主に貰った方位磁石を取り出す。

この世界の方位磁石は、

地図で目的の場所を示しながら魔力を流すと、

その方角を示し続けるというハイスペックな物だ。

庶民には手が出ない高価な物の筈なのだが、

それを簡単に貸し与える領主。

流石は金持ちだな。心が広い。


「イスカさん。

結局こいつ、泉まで連れていくんですか?」

「うん。妖精が見えるのは亜人種だけだし、

問題ないかなって。」

「まぁ、そうなんですが。」

「ん?どうしたんだいエミルちゃん。

俺の顔をじっと見て。

あ、もしかして惚れちゃったのかな?

いけないよ、俺には帰りを待つ沢山の女の子達がいるからね。

君一人のモノにはなれない。

ごめんね。」

「……はぁ。」


何なんだこいつは。

「エミルちゃん達は、泉に行くのかい?」

「ああ、野暮用でな。」

「そうか、なら本当に帰りは一人だね。

俺は薬草を取りに来たんだ。

教会で頼まれてね。」

「そうか。」

この街には4つの教会がある。

それぞれが別の神を信仰しているらしい。

こいつが何を信じているかなんて興味ないがな。


「あっちね。

魔物の臭いはかなり遠くだけど、

急ぎましょうか。」

「はい。」

俺達は森を進む。

やはり、イスカさんは頼りになる。

俺もそのうち索敵魔法の一つや二つ覚えないとな。

索敵魔法は風魔法に属するのだが、

シェリルさんは一つも覚えていなかった。

本人曰く、

「イスカがいるから問題ないわ。」

だそうだ。

何というか、本当に大丈夫なのだろうか。

やっぱりイスカさんを俺につけない方が、

色々とよかったのではと、たまに思う。

心配だ、主に屋敷が。


少し木々が開けた所に出た。

「おっと、この辺でいいかな。

俺はこの辺で薬草を集めて帰るよ。」

「そうですね。

近くに魔物の臭いはしませんし、大丈夫でしょう。」

「ああ、ありがとう。

それじゃ、気を付けてねエミルちゃん。」

「はいはい。」


ユーリと別れて30分程で泉についた。

泉までの道はかなり険しいかった。

ヨーロフに来る際に使った整備されているルートとは違い、

本当に獣道しかない。

こんなところで襲われたら堪ったものではないな。

『ストーンストーム』の準備ぐらいしておこうかな。


「じゃあ、妖精を呼びましょうか。

エミル、詠唱は覚えてる?」

「はい。覚えてます。」

俺は領主に教えて貰った妖精を呼ぶ詠唱を唱える。


「我ら、人為らざる血を継ぐものなり。

汝、我らの問いかけに応えよ。

汝、森の守護、泉の精なり。」

詠唱が終わると、泉がゆっくりと渦巻き始める。

中心が発光し、泉全体に魔力が満ちる。

やがて、辺りが光に包まれると、

誰かの声が聞こえてきた。


「はーい!

呼ばれて飛び出てー!

メルちゃんだよー!」


ロリっ子妖精が現れた!


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