サムライになった日
土魔法を極めようと思う。
誘拐犯から逃げるとき、俺は必死で母様の得意魔法、
『イグニオーラ』を使った。
あの時は、やらなきゃ逃げれないという気持ちと、
俺の全魔力を使ったからこそ、できたのだろう。
あれ以来、イグニオーラが完成する兆しはない。
そこでだ。
火魔法より得意な土魔法なら、今の俺でもできるかもしれない。
いや、できる筈だ。できると思う。できたらいいなー。
まずはやってみよう。
今日は観客が二人いる。
お姉様方に見守られながら、俺は魔力を集中した。
イメージはイグニオーラだ。
あれを土魔法で再現する。
身体中から吹き出す土。
その身を土で包む土の化身。
うおおおぉぉぉ!!!
……おおおお?
発動しない。
当たり前か。
何だよ吹き出す土って。
土で包む土の化身って、土じゃん!
身体に流れた魔力は、うんともすんとも言わない。
んー。ちょっと考えようか。
……土、土かー。
「イスカさん。土魔法ってどんなイメージがあります?」
「んー、そうだね。とにかく硬いって感じかな。
前に戦った魔導師の土魔法は、私の剣を折るぐらい硬かったよ。」
硬い、か。
「シェリルさんは?」
「そうね。守ることかしら。どんな攻撃も通さない絶対の壁。」
守る、壁。
俺の知る上級魔法は炎を纏う『イグニオーラ』だけだ。
イグニオーラは身体中の筋肉が活性化した感覚があった。
ならば、上級土魔法とはどんなものなのか。
イスカさんは硬いと言った。
シェリルさんは守る、そして壁とも。
二人がくれたブレスレットと刀。
今日も装備している。
ブレスレットは、俺の腕の太さに合わせて勝手に変化した。
刀は、腰に装備するには長かったので、背に背負っている。
持っていると、まるで二人に護られているようだ。
そうか、俺は護られているのか。
人は魔法がなくても護れる。
なら、魔法とはなんだ。
魔法なら簡単に人を傷つけることができる。
拐うことも、騙すことも。
そして、殺すことも。
俺は思う。
魔法が、手の届かない何かを掴むことのできるものだったら。
護りたいものの為に、父様が必死で力をつけたように。
顔も知らない誰かの為に、母様が無詠唱を作ったように。
俺も誰かを護る為に、この力を使いたい。
刀を抜いた。
右手には抜いた刀と、土魔法を高める腕輪が見える。
自然とイメージできた。
前の世界の歴史。
戦いの中で、侍は家族と国の為に戦ったらしい。
どれだけ強大な軍が現れても、
引くことなく戦う姿は、数百年経っても語り継がれている。
ならば俺もなろうじゃないか。
護りたいもののために、敵の攻撃全てを阻む、
絶対の壁に。
俺を吹き出す魔力が包む。
腕輪によって高まった魔力は、橙色の光を放っている。
さぁ、行こうか。
我、絶対なる壁なり。我望みは、ただひとつ。
護る為の力を、俺に貸せ‼
『グランドオーラ‼』
橙色の甲冑に身を包む、不動なるサムライが、
この日、異世界に現れた。




