誕生日
ここに来て2ヶ月が経った。
季節はもう冬だ。雪が森を白く染めている。
お姉様方はいつも優しい。
たまに、過保護過ぎないか?と思うこともあるが、
良くしてくれることには変わらない。
今日、俺は6歳になった。
わざわざ言うことでもないと思っていたのだが、
先日、イスカさんに聞かれたので答えた。
すぐにシェリルさんが出てきて、
「誕生パーティーをするわ!」
とのことだ。
テーブルには3人で食べきれる気がしないほど、
豪華な食事が並んでいる。
仕事中、イスカさんを見かけないと思ったのだが、
どうやらわざわざ街まで買い物に行ったらしい。
……歩いて行ったら丸一日かかるんじゃなかったのか?
どこまで超人なんだろう。
うん。
出会って間もない俺のために、そこまでしてくれたんだ。
残さず食べよう。
料理はどれも美味しい。
嬉しいな。この人達は暖かい。
まるで、本当の家族のように。
あれ?何でだろう。
涙が止まらないや。
「どどどうしたの、エミル君。美味しくなかった?」
「いえ、美味しいです。美味しいですよイスカさん。
美味し過ぎて涙が出るほどです。」
イスカさんは立ち上がって、俺を抱き締める。
ダメだな、こんな格好悪いとこ見せちゃ。
「い、イスカさん。僕は大丈夫。大丈夫ですから。」
「いいんだよ。不安だったんだよね。
大丈夫、私が必ずお家に返してあげるから。」
不安?そうか、俺は不安だったのか。
母様と別れて、こんな遠いところまで来た。
俺が誕生日を迎えると言うことは、
新しい家族はもう増えているだろう。
いつか自分が母様から忘れられないか。
本当に家に帰れるんだろうか。
何かしていないと、そんな考えが浮かび上がってくる。
だから、仕事に打ち込んだ。だから、訓練に打ち込んだ。
そんな考えから逃げるように、俺は日々誤魔化していた。
帰りたい。
でも、まだ帰れない。
いつの間にか、俺は追い詰められていたのか。
情けないな。
諦めないと決めた。
でも、心はまだそこまで強くなかったらしい。
俺は大声で泣いた。
情けなく泣いた。
気づいたらシェリルさんにも抱き締められていた。
二人の暖かさを感じながら、
俺は泣いた。
「お騒がせしました。」
「ううん。いいんだよ。」
「そうね。泣きたくなったらいつでも言いなさい。」
二人とも優しすぎるだろ。
俺を拾ってくれたのが、この人達でよかった。
「さぁ、エミル。これを受け取りなさい。」
「これは?」
シェリルさんから渡された包みには、
大きなオレンジ色の石が嵌まったブレスレットが入っていた。
「それは、土魔法の威力を高めてくれる魔石よ。」
「こ、こんな高そうな物……」
「いいの。普段から頑張っている貴方へのプレゼント。
それとも、気に召さなかったのかしら?」
「い、いえ。ありがとうございます。」
「私からはこれを。」
それは一振りの刀だった。
「エミル君は強くなりたいそうなので、
男の子なら刀、喜ぶと思ったのですが。」
「あ、ありがとうございます。」
この世界にも刀あったのか。
街並みが完全に中世風だったから無いと思ってた。
格好いいな、この刀。
イスカさんは、また俺を抱き締める。
この人、スキンシップ激しいんだよな。
俺は6歳になった。
まだ家には帰れそうにない。
でも、護りたいものは増えたよ、父様。




