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空と海の掌握者(コンダクター)  作者: 小田崎コウ
第一章
9/27

第八話 ローネの飲むミルクコーヒーは(ry

次回の9話から、当分の間、週二回(水・土)の予定になります。

公開時刻は午後六時前後を予定しています。


年内完結に向けて、加筆修正・校正を行っていきます。

「エト……これでいいですかネ」

 注意事項をまとめた資料を、二回チェックをして保存しました。

 時計を見ると、十一時を少し回ってますネ。

「そうでした。早坂サンを呼ばないとです」

 携帯電話を取り出して、早坂サンに作業が終わった事をメールしました。

「フウ……少しは視線に慣れて来たですかネ……」

 朝は視線を感じて落ち着かなかったですけど、さすがに慣れてきました。ガラス窓に接触禁止の通達のコピーを張っているのも効果があるようです。

「けっこう人通りがあるんですよね……あっ……」

 トイレは目の前なので早坂サンを頼らなくてもいいのが安心です。

 この足音は、早坂サンみたいです。

「中尉お疲れさまっすー。特に変わった事とかはなかったっすか?」

 早坂サンが両手にコーヒーの入ったコップを手にして現れました。中尉と呼ぶ時に、語尾が上がっている時は、愛称で呼ぶのと同じ、ニュアンスです。

「ハイ。通達書をのぞき込んでいく人が、たまにいたぐらいですネ」

 コップを受け取るさいに、わたしも笑みを浮かべて、頭をペコリと下げました。

「ほぼ半分が牛乳の、コーヒーっす。砂糖は入れてないっすよ?」

「いただきますです」

 水のペットボトルもありますけど、やっぱり温かい飲み物はほっとするです。

「そうそう、中尉……。妙なうわさがジョーホンビル内に流れてて、笑ったっスよ」

「ジョーホンビル……ってなんですカ?」

「情報本部のビルだからジョーホンビルって呼ばれているんですよ」

 早坂サンはブラックコーヒーを一口飲んでから、説明してくれました。

「そうだったんですカ……。妙なうわさって何ですカ?」

「ああ、ウチが西欧風の美少女を囲ってるって、もっぱらのうわさなんっすよ」

「エエ? ビショウジョ? ワタシ、もう大人ですヨ?」

 美しいっていうのはさておくとしても、少女っていうのはひっかかるですヨ。

「モー。そのうわさのせいで、人がうろうろしていたんですネ?」

「いいじゃないっすか。いまは情報本部の全部署に通達がでてますから、もう騒ぎになる事はないっす。」



「休み明けの子に頼んでたんスけど、こういうの、持ってないっすよね? どうぞっす」

「ワワッ? かわいいですねぇ。これはクマさんなんですかぁ?」

 透明な袋に入った携帯電話用のストラップを、早坂サンからいただいたです。

「有名なキャラなんだけど……。わたしも大尉も同じのを買ったから。ホラ」

「これ、いただいていいんですか? とってもうれしいです」

 早坂さんの次世代フォンにも、おそろいのクマさんがいたです。

「いいんっすよ。そんな水くさい事言わないでくださいよ」

「アノ……水って、においしないですよ?」

「ああ、遠慮しなくていいって意味っす」

「覚えましたです……コレ、どこにくっつけるんですカ?」

「あー……初めてだとむずかしいっすよね。先を細めて、ここに通すんス!」

 こうやって早坂サンと話していると、なんだか安心できるんですよね……。



「あとですねぇ。ウチと第一にいる女子との間で、ネットワークを作ってるんですよ」

「ネットワークですか……アノ、どうやって接続をすればいいんですか?」

「そういう意味じゃなくて、女の子の横のつながりっスよ」

「ああ、ヂョシカイですね、わかりマス……」

「てっきり、早坂サンが……また危ない橋をわたったのかと思ったですよ……」

「へへっ……。非常時のために端末を使った、裏のネットワークもあるんスけどね」

 早坂サンはわたしの耳元で声をほそめて、そんな事を言ったです。

「そのネットワークで……中尉を、天城を初めとするオトコ共から守るように指示したんす!」

「ホントですか? ヂョシカイの力も借りられるなんてスゴイですね、早坂サン」

「今日も、ウチで昼勤のシフトにいる大原二曹って子がサポートに入るっすから」

「ホントに助かりますケド……。無理だけはしないでくださいネ?」

「大丈夫っすよ。ジョーホンビル内なら、自分が発起人みたいなもんっスからね」

 早坂サンは、大勢に慕われているんですね。

「大原二曹も喜んで手伝うって言ってますし、顔合わせをするようにします」

「ハイ……お願いしますです」

 大原二曹さんって、どんなカンジの人なんでしょうカ?

「サインも決めたっす。左胸に手を当てるような、しぐさをしたらメンバーす。何でも頼ってください!」

「分かりましたです……左胸ですネ」

 早坂サンがわたしのために気をつかってくれたのが、胸にしみるホドうれしいです。

「あ、資料できたです。コレに保存しましタ」

 早坂サンからあずかった記憶装置を、忘れてしまわないうちに、手渡しました。

「了解っす。機密指定で印刷して大尉に渡しておくっすよ」

「このタンマツからは削除したですから、ネットにつないでおきますです……」

 わたしが作業をしているのを、早坂サンは興味深そうにながめながらコーヒーを飲んでいました。

「ひとりっきりで不安でしょうけど、ウチの女子みんなでフォローをするっすよ」

「ヒトリじゃナイ……ですカラ」

 おなじ場所にはいなくても、自分を思ってくれる人がいる。それだけで、トッテモ安心をする事ができるんですよ……アコサン。

「じゃ、お昼にまた呼びに来るっす」

 早坂サンはカラになったコップを手にして、足早に部屋を出て行きました。



「資料、受け取ったわよー」

「あ、お疲れさまです」

「これからトーカンビルにいる、首席法務官と折衝しないといけないのよ」

「トーカンビル……統合幕僚キャンブビルですネ?」

 命名の法則が分かれば理解できるですけど、またかんでしまったです。きっと、言葉の響きでしか覚えてないからですよね? 勉強しないとですね。

「そうそう。お隣のビルで渡り廊下もあるから、よく行き来するわ」

 御笠大尉は暑いのか、手にしたバインダーで首から胸元に、風を送っていました。

「通達はジョーホンビル内でしか通用しないから、そのあたりを折衝にね……」

「そうなんですか……お疲れさまです」

「そういうわけだから、お昼ご飯は、早坂と行ってちょうだいね?」

「わかりましたです」

 御笠大尉に心配をかけないように、姿勢をただして見送りましタ。



「あ、メールが来てるです」

 少しして端末の画面を見ると、メール受信のシルシが出てました。

「初瀬さんですネ……うわ、うれしいです」

 ここで仕事をするに当たって、必用となる情報が入っていました。

 いまは特にやる事もナイですから、これを参考にして勉強する事にするです。



「そろそろお昼ですカネ」

 おなかがすいたので時計を見ると、十一時三十分を少し回ったところでした。

「中尉……これから御笠大尉に、書類を届けにいく事になったっす」

「そうなんですか? なら、ここで待ってマスから」

 足音が響いたかと思うと早坂サンが現れました。

「遅くなるなら大原二曹に同行させますけど、中には入れないっすからねぇ……」

 早坂サンは心配そうに声をかけてくれました。

「わかりマシタ。きっと大丈夫デス」

「んじゃマッハで行って、すぐに戻って来るっス!」

 お二人の妹かのように案じてくれるのはうれしいんですけど……。

 いつまでもこのママじゃ成長できないですから、お昼ぐらいなら、一人でも行けるようになりたいです。

「帰って来ないですねぇ……」

 十二時を少し回ったんですが、早坂サンがまだ帰って来ないです……。わたしは出入り口にはりついて、ガラスの向こうをのぞきました。

「あっ……誰でしょうカネ?」

 誰かが近づいて来るのが見えたので、あわてていすに座りました。


「失礼します。自分は大原二曹と申しますが、いまよろしいでしょうか?」

 二度ノックをした後ドアを開けて、小柄な女性が顔を出しました。

「あ、初めマシテ……早坂サンから聞いてますです」

「こちらこそ……いま第一の子が天城大尉を足止めしていますので、いまのうちに」

 大原二曹サンは、左胸に手を当てるサインをしてくれたです……。

「あ、ありがとです!」

 わたしは携帯電話をたぐり寄せて、あわてて立ち上がって部屋を出ました。



「エト……お願いしマス――」

 大原二曹さんに幹部用食堂まで送ってもらい、一人で列にならんでいます。食事が終わったころに、また迎えに来てくれると言っていました。

「ヨイショ……」

 トレーを傾けてしまわないようにして、テーブルに陣取りました。



「ウン、おいしいです……」

 今日のお昼ご飯には、好物が二つも入ってました。慣れているはずなのに、ひとりで食べるのは、少し寂しいですネ。



「ごちそうさまデシタ……」

 早坂サンが走り込んでくるのを待っていたので、食べ終えるのが遅くなったです。



「エト……こっちですヨネ?」

 大原二曹さんは幹部用食堂の外にいなかったので、来た道を戻っていきました。エレベーターで、第二のあるハチカイまで戻れば何とかなるです。

「あっ、もう大丈夫ですネ」

 エレベーターホールにたどり着くと、上に行くエレベーターが、着いたところでした。



「あっ、箕島中将。彼女がイアルローネ中尉です!」

 エレベーターを出たら、目の前に天城大尉が立っていました――。



 御笠・早坂の、ワンポイント・ミリタリー講座

御笠:「興味ない人は知らない自A隊の階級について説明するわね」

早坂:「一番下が『士』で任期制。『曹』は下士官で任期ないっす」

御笠:「三尉からが幹部で佐官や将官も含まれます。准尉は除外ね」

早坂:「国防軍なので幹部の等級が三二一じゃなくて、小中大っす」


次回ぐらいから、ストーリーが本格的に進んでいきます。

ここまでおつきあいくださった方は、是非続きも読んでクダサイ。

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