表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

二足の草鞋を履けるかな?

ミディは、長期出向に必要な物の買い出しをしている途中、モニカと出会った。

「モニカさん、こんにちは、今日はお一人ですか?」

「あら、ミディ、こんにちは。えぇ、少し足りないものの補充をしてるの」

「あの、私も今買い出ししてるのですが、初めてのことが多くて……。相談に乗ってほしいです」

「……確かにそうね、気付けなくてごめんなさい。一緒に回りましょう」

(勇気を出して、話しかけてよかったぁぁ。モニカさん、ちょっと怖そうな人だと思ってごめんなさい……)

ミディは内心で結構酷いことを思っていた。

一緒に買い物に行き、様々な店を教えてもらうなどして、モニカと交流を深めたミディであった。


買い物を終え、モニカと別れたミディは、錬金ギルドに足を運んでいた。

この街の中でも、かなり高い建物だ。

格式高そうな門を潜り、受付へ向かう。

(馴染みのある薬品の匂いが漂ってるなぁ~)

師匠との修行を思い出し、少し鼻がツーンとしてくる。


「錬金ギルドへようこそ、本日はどのようなご用件で?」

「ミディと申します。薬屋のソニアさんからの紹介ですが、話は通っていますか?」

「確認してまいります、少々お待ちください」

澄ました顔で対応する受付のお姉さんは確認するために、席を外す。

(やっぱり、受付は美人のおねーさんが一番だね!傭兵ギルドは見習ってどうぞ!)

思考はおっさんなのに、言動が徐々に退行しているような少女がいるらしい。


やがて、表情は変えずに、急ぎ足で受付のお姉さんが戻ってくる。

「お待たせしました、ミディ様でございますね。今からギルドマスターの元へご案内致します」

「え?ぎるどますたー?」

いきなり大物の名前が出て、言葉が平坦になる。

「はい、ご案内いたします」

動じないお姉さんに連れられ、立派な扉の前まで案内された。

「アジマ様、ミディ様をお連れ致しました」

「入ってもらいな」

部屋の中から、老婆の声が聞こえ、中へ通される。

中には、小柄だが背筋がピンと伸びている、気品のある年老いた老婆が立っていた。


「よく来たねぇ、ミディ。まずは、顔を見せておくれ」

錬金ギルドのマスターであるアジマは、まるで孫か近所の子供を相手するような口調で話しかけてくる。

(え、知り合い?全然記憶にないんだけど……)

戸惑いながらも、ミディはフードを脱ぎ顔も見せる。

顔を見たアジマは、懐かしそうに見つめる。

「ソニアから話を聞いた時は、まさかと思ったが……その髪、その顔立ち、確かにミディ本人だね」

(偽物の疑いを掛けられてた!?)

「すまないね、「アゼルの弟子」とは、それほどのことなんだよ」

動揺するミディを見て、アジマは理由を語る。

「それに、ワシはお主と数回会ってるよ」

「……もうしわけありません、記憶に無いです」

「そりゃそうだ、物心つく前や、お主が寝ているときにしか会ってないからのぉ!」

クックックとアジマは小さく笑う。


「気難しい師匠と、交流があったのですね」

「お主、意外と毒を吐くんだね。ああそうだ、昔馴染だね、腐れ縁ってやつだ」

「なんなら、恋敵でもあったねぇ」

「詳しく聞きたいです」

「ふっ、それはまた後日、時間があったら語ってやるよ」

残念そうにするミディを、おかしそうな顔でアジマは見つめる。


「さて、本題に入ろう」

お互い、表情を引き締める。

「アゼルの件は聞いたよ。まぁ、互いに年だからいつお迎えが来ても、おかしくないからねぇ」

(突っ込み辛い話題は辞めてほしいなぁ)

「……」

「最後は安らかに逝けたかい?」

「……はい、少なくとも私には、微笑んでいるように見えました」

語りながら、ミディは目頭が熱くなってくるのを感じる。


「……そうかい、ワシもあやかりたいものだね」

再度、返事に困るミディに、笑いながら話を続ける。

「お主は、なぜ傭兵ギルドに入ったんだい?」

ミディは、アジマに経緯と、ついでに紹介状の件も一緒に説明した。

アジマは、苦々しい渋面を浮かべる。

「まったく、あのババアはそんなことも知らなかったのかい!傭兵ギルドのやつらも職務怠慢だね!」

こちらのババアもお怒りだ。


「ふう、すまないね。お主も注意力が足りなかったが、悪いのはあやつらだ」

落ち着いたアジマが物騒なことを言い出す。

「ワシが傭兵ギルドに乗り込んで話を付けてきてやろうか?」

(ヒェ!全然冷静じゃない!?)

「い、いえ、私にも落ち度はありましたので、ここは穏便に……」

「まぁ、お主が言うのならやめておこうかね」

(血気盛んすぎる……)


「さて、最後に聞きたいんだけど、お主は、アゼルから錬金術、調合は教わったのかい?」

「はい、私は魔力容量が低かったので、そちらを重点に教わりました。」

「そうかい、何か作った物はあるかい?」

「はい……、体力回復用と魔力回復用の丸薬です」

答えながら、ミディは、マジックバッグから丸薬を取り出す。


その動作をみていた、アジマから思いがけない言葉が飛び出てくる。

「おや、それはワシが作ったマジックバッグじゃないか」

「え!?そうなのですか?」

「ああ、アゼルから頼まれて作ったんだよ。大変苦労したわ……」

色々な意味で、遠い目をするアジマ。


「作り手が、まず少ない。そして、素材も貴重だから、量産もできないわ」

「そんなに貴重だったのですね……」

「無くすんじゃないよ?」

マジックバッグの価値を改めて知ったミディに、アジマが笑いながら注意した。


アジマは、手渡された丸薬の検分を始めた。

「ふむ、回復効果量は後にするとして、魔力の含有量、成分の練り込みと均等化……うん、申し分ないね」

ギルドマスターのお墨付きがでた。

「全く、最初にうちに来てたら、そのまま囲い込んでたわ」

優秀な人材ミディが手に入らなかったことへの愚痴が止まらない。


「そうだ、ワシの権限で、ギルドの掛け持ちを許可しよう。うちのギルドにも在籍しておきな」


(何言ってるのこのおばあちゃん?)

「へ?掛け持ちってできるのですか?」

「可能だ、ただし、「優秀な者に限る」という条件付きだがな」


(掛け持ちとかあるのかぁ、魅力的だけど、両立できるのかな?)

悩むミディに、さらなる追撃が入る。


「お主、ソニアの所でやっかいになっているのだろ?そこだと、作れるものも限られる。」

確かに、今の部屋では、火を使うこと全般は厳しい。

ポーションの作成等は不可能だ。


アジマはにやりと笑う。

「うちのギルドに入れば、個人用の工房を紹介できるぞ」

(確かにそれは魅力的だ……いつまでもソニアさんの厚意に甘えるのもねぇ)

(でも、ソニアさんと離れるのは寂しいよ……)

自立心と依存心、弱い心がせめぎ合う。


黙り込むミディに、アジマは切り札をきる。

「そういえば、ソニアの隣にある工房が空いてたなー、偶然だなー」

「加入します」

デカすぎる釣り針を呑み込み即答する。

(好立地すぎる!お金稼いだら、その工房の買取りも考えないと)

ミディは、満面の笑みを浮かべた。


アジマは、ミディが将来変な男に引っかからないか心配になったが、優秀な人材の確保ができたから、見て見ぬふりをした。


「さて、そろそろ時間だ、今日は入会の手続きだけでもしていっておくれ」

「わかりました、手続きして帰りますね。」

「ああ、忘れずに頼むよ」

「あと、明日から開拓村でお仕事なので、しばらく戻らないです」

「おや、そうかい。ちょうど……気を付けていってくるんだよ」

(ちょうど?)

何か含みをもたせたアジマに、ミディは頭をかしげながら退出する。


―――退出後、アジマは真面目な顔に戻りひとり呟く。

「暫く居ないなら、丁度いい。うちの新入りのことで、傭兵ギルドにちょいと行ってくるかね」

悪そうな顔をしていた。―――


ミディは、帰宅後ソニアに今日の出来事を話す。

「ソニアさん!ソニアさん!お店の隣の工房、私が借りることになりそうだから、これからもよろしくね!!」

「そうかい、これからもよろしくね」

ソニアは微笑みながら、ミディを抱きしめる。

ミディの幼児化が止まらない、これも自我の成長なのだろうか?おじさん精神はどこへいったのやら……



ミディの徒然日記

〇月#日

買い物中にモニカさんと偶然出会った。

初対面の時はちょっと怖そうだと思ったけど、お買い物に付き合ってくれて、色々教えてくれた。

やさしい!!


錬金ギルドで、ギルドマスターのアジマさんとお話しした。

まさかのスカウト!

ヘッドハンティングは困るけど、掛け持ちなら大丈夫みたい。

むしろ、優秀な証拠だって!

私にそんな価値があるのかな?師匠との縁で誘ってくれただけかな?

どっちか判らないけど、出来るだけ頑張ってみる。

工房の件もあるからね!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ