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魔法少女異譚【書籍化決定】  作者: 槻白倫
第8章 ■■の魔道使い

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突撃! ドキドキルームツアー! 8

「さて、本当なら次の家は飛ばしても良いんだけど、珍しくアイツが断らなかったから向かおうかしらね」


「なんだろう。朱里だったら、断られてても行く気がする……」


「あら、良くご存じだ事」


 春花の言葉に、悪い笑みを浮かべる朱里。


 とは言え、本当は断られたら行くつもりは無かった。仮にも女子の家だ。異性である春花を無理矢理連れて行っては流石に珠緒がかわいそうである。


 朱里が同行しているとはいえ、周囲からの目もある。嫌がっている相手の家に異性同伴で押しかけたなんて知られればイメージも悪くなるのだから。


 そうこうしている内に、二人は珠緒の家へと辿り着く。珠緒の家もセキュリティのしっかりしたマンションである。


 珠緒にエントランスの扉を開けて貰い、珠緒の部屋まで向かう。珠緒の部屋の前まで行きインターホンを鳴らせば、少しして玄関の扉が開く。


「よぉ。ま、適当に入って」


 気だるげに二人を招き入れる珠緒。くわぁっと大きな欠伸をしながら、さっさと廊下を歩いて部屋に入ってしまう。


「お邪魔します」


「お邪魔するわね」


 珠緒の部屋に上がり、二人は珠緒の後を追う。


 珠緒の入った部屋に二人も入れば、朱里は意外そうな顔をする。


「アンタ、意外と綺麗にしてんのね」


 二人が通されたのはリビングだった。リビングにはソファとローテーブル、大型テレビが置かれていた。


 テーブルには食べかけのお菓子の袋や、何やら描き込まれたルーズリーフが散らばっている物の、その他はかなり綺麗にされている。


 リビングに置かれた棚には雑多に小物が並んでおり、その種類に統一性は無い。よく分からないキャラクターが描かれたアクリルスタンドや、精巧な熊や牡蠣の小さな置物。世間で人気のロボットアニメの四頭身程のフィギュアに太った動物の置物等々。所狭しと並んでいる。


「意外とは余計だっつうの」


 朱里の感想にイラっとしたような顔をしながら、珠緒は二人にペットボトル飲料を投げ渡す。


「あら、気が利くじゃない」


「ありがとう」


「ま、一応客だからな」


 渡し方は乱暴だけれど、二人の事をちゃんと来客だとは思っているようである。その割に、髪の毛はぼさぼさだし、よれよれの部屋着姿だけれど。


 珠緒はソファにどかっと座り、またもや大きな欠伸をする。


「何? 寝不足?」


「昨日夜中まで映画観てたから、あんまし寝てねぇんだよ……」


 そう言って、珠緒はまたも大きな欠伸をした後、眠気覚ましのために冷蔵庫から出したコーヒーを飲む。


「これ、凄いね」


 春花は物珍し気に雑多とした棚を眺める。


「あぁ、それ。全部カプセルトイだよ。気になったのあったら回してそうやって適当に飾ってんの」


「にしても適当過ぎない? 種類バラバラだし」


「いーんだよ、適当に並べて楽しんでんだから」


「なんか……見てると凄い整理整頓したくなってくる……。ねぇ。少しだけ、並べ替えちゃ駄目?」


 遠慮がちな表情を浮かべながら春花が珠緒に尋ねれば、珠緒は呆れたような顔をする。


「好きにしろよ。拘りがあるわけでもねぇし」


「ありがとう」


 少しだけ口角を上げながらお礼を言い、春花は早速並べ替えを始める。


 春花の頭の中では既に綺麗にする道筋が立っているのか、迷う事無くあれやこれやと並べ替える。


「二人揃って細けぇなぁ……。お前等神経質過ぎだろ」


「アタシは春花程じゃないわよ。コイツの場合、もうそういう習性みたいなもんだからね……アタシん()のキッチン、アタシが使ってた頃より綺麗に整理整頓されてんのよね……」


「もうなんかの病気なんじゃね?」


 呆れたように酷いことを言う珠緒だけれど、朱里も否定できないくらいに春花は整理整頓の鬼である。


 朱里がしまい方を間違えても怒らないけれど、気付かない間に春花によって修正されている事が多々ある。春花が気になるからしているだけで、それを朱里に強要をしたりはしていないので朱里も気にしない。


 むしろ、そういう面倒臭い所(・・・・・)を知れたのは少し嬉しく思う。あんまりにも拘りが無いとちょっと心配になってしまう。


「拘りが無いよりはマシよ。今の方がよっぽど健全に思えるもの」


「まぁ、確かに。最初は良く分かんねぇ奴ってイメージだったけどな。声小せぇし、表情変わんねぇから何考えてるか分かんねぇし」


「今も無表情寄りだけど、前よりは顔に出るようにはなってきたわね」


「微々たる変化だけどな」


 春花と接している者であればなんとなく分かるくらいの変化だけれど、最初の内はそれも無かった。そう考えると、春花は以前よりも表情豊かになってきている。


「今となってはこの有様だわ。まさか、家事育児大好き人間だったとはな」


 家事は言わずもがな、育児もまた言わずもがなである。


「未婚なのに二児の父とはなぁ。あ、今は四児か」


「血縁上も書類上も赤の他人だけどね。加えて一人は年上だし」


「その上女と同棲もしてると来た。てか、コイツの周り女だらけだな。意外とたらしとか?」


「その割に、本人に欲目が無いのよね。コイツ、真弓の下着洗っても平然としてんのよ?」


「マジ? アイツ結構デカい方だろ?」


「大マジよ。それに、さっき笑良の家行ったんだけど、笑良のお母さんももう凄ったのよ」


 そう言って、朱里はジェスチャーで笑良の母の胸が大きかった事を珠緒に伝える。


「笑良以上って事か?」


 珠緒の問いに、朱里はこくこくと頷く。


「マジかよ……あれよりでけぇって、相当だぞ?」


「もう本当に凄かったんだから。でも一瞬たりとも目を向けなかったのよ。ずーっと笑良のお母さんと笑良の目を見て話してんの」


「嘘だろ? あたしでもガン見すんぞ?」


「アタシだって思わずガン見しちゃったわよ」


 朱里の言葉に、珠緒は信じられないとばかりの表情を浮かべて棚の整理をする春花を見やる。


「……コイツ、本当に男か?」


「アタシもたまーに疑わしく思うのよね……」


 今も女子の部屋に来たと言うのに、棚の整理整頓に夢中になっている。何が楽しいのか、鼻歌まで歌っている始末である。因みに、選曲は詩の歌である。詩に聞いてねと言われたので、家事の最中に聞いているので、自然と憶えてしまったのだ。


「まぁ、コイツが楽しそうなら、それで良いけどね」


 楽しそうに並べ替えをする春花を見て、朱里は仕方ないと言わんばかりの笑みをこぼす。


 結局の所、本人が楽しければそれで良い。


「なるべくなら自分()で完結して欲しいけどな」


「それは……まぁ、そうね……」


 珠緒のもっともな意見に、朱里も同意を示す。


 結局、春花が満足するまで棚の並べ替えは行われた。並べ替えが終わった後に満足そうな顔をして珠緒の家を後にした春花。


 その後、珍しく満足そうな顔をした春花を見てしまったので、珠緒は昨日回してきたカプセルトイを並べる時に少しだけ気を遣って置いたとか。

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